第62話 グラン

「ここだよ」


 私は心優しく道案内してあげた。


「おお!ここがカリン殿が通う本屋ですか!」


 彼は店の中をキョロキョロと見回している。

 少し不気味に思えるが、やっぱり悪い子ではなさそうだ。


「そういえば何の本を探しているの?」


 私がそう質問すると、彼は嬉々として答えた。


「呪いの本ですな、私めはこう見えて呪術が得意でして...、サトリもその術式を強化するためのサポーターなのです」


 黒い鳥を手にとって可愛がっているが、呪術というパワーワードを聞いた私は少し引いた。

 というか、その黒い鳥の名前サトリって言うのか...。

 私はちょっとその鳥に触りたくなり、手を伸ばすと、さっきまで黙っていたはずのアアルが急に飛び降りてきて存在感を放つ。


「ダメだよカリン!、君の召喚獣は僕なんだから!」


 どうやら、私をこの子に取られると思ったらしい。


「ハハッ、アアルは心配性だな〜」


 私は笑いながら彼の首筋あたりを指で優しく撫でてあげると気持ちよさそうな仕草とる。

 ただ、アアルが喋ったことに対し、目の前の彼が口を開けて驚いていた。


「召喚獣とおしゃべりできるとは!...流石カリン様...賢聖のお嬢様だけはありますね」


 膝を地面につき、彼は私を崇めるように手を上に向けている。

 だが、私にとってそれはただこっぱずかしいだけだったのでやめて欲しくはある。


「ちょっと!恥ずかしいからやめて!」


 私が必死に言うのだが、その一部始終をお店の人に見られて笑われている。


「若いね〜、劇の練習かな?」


 お店の人に茶会されたので早く態勢を元に戻してほしい。

 ようやく立ってくれたかと思うと、今度は私の手を握ってくる。

 全てがの行動が唐突すぎるので、なんか怖く感じる。


「カリン様...、本日のこの偶然の出会いに祝福を...」


 再び腰を下げ、私の手に口づけを交わしてきた。

 最初は少し変だけどいい子のようにも思えていたのだが、やはり少し気味が悪い。


「ごめん!、この後ようがあるんだ!それじゃ!」


 私は逃げるようにその場を後にした。

 なんだろう、変な寒気がしたのは気のせいだろうか?

 グランには悪いが、この場は逃げさせてもらう。


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