第36話 パニラ

「あっ!、カリンちゃん!」


 私は不意に声をかけられたのでそちらの方を向く。

 あからさまに豪華な服を纏う彼女を見た私は(ヤベェ...誰だ...?)と考えてしまう。

 もし、まかり間違って、変な言葉を選んでしまい、後にカリンの本当の人格が戻って来たときに困るのは彼女なので、友人関係を壊すわけにはいかない。


「あ...うん久しぶり!」


 とりあえず友人を装う事にする。

 てか、この世界美人多いな、幼女だけど、レベル高い奴が多い...。

 クラスの連中も可愛い子多いし、カリン自体も悪くない、って...今考えることそれじゃないよね!

 不自然な行動をとる私を不審に思ったのか。


「カリンちゃん?」


 その子は心配そうに私の方を見てきた。


「な...何でもないよ...」


 と私が言うと、彼女は手を口の前に置いてプッと吹き出す。


「嘘だ〜」


 彼女は長いクリーム色の髪を揺らしながら笑う。

 紅い服を着込んだ彼女は、小さい黄金の冠を被っている、まるで王様のようだが、こんな小さい子が王様な訳ないか...。

 私が小さく笑うと、母さんがその子を急に抱きついたのでびっくりした。


「母さん!?」


「パニラちゃん久しぶりね〜、いい子いい子...」


 急に抱きつかれた彼女は、頭を撫でられて喜んでいるようであった。


「エルカ様は昔っから変わりませんね!」


 彼女はニコッと笑顔を作ると、母さんの顔を見ている。


(変わらないって...、実の娘以外にもこんなことしてるのかこの親は...)


 事実、何度かこういう風に抱きしめられたことがあり、それはあくまで親子のスキンシップというやつかと思っていたのだが。

 この現場を見るに、親しい者には全員にこういう事をしていきそうだなこの人はと思った。

 私は何とも言えない表情でその様子を見ていると。

 パニラがアホそうな笑顔をこちらに向けてくる。

 そのままこちらに近づいてきて、私の手を掴みながら呟いた。


「カリンちゃん、パーティが始まるまで遊ぼうよ」


 私たちのやり取りを見ていた母さんが静かに微笑んでいた。

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