第33話 どこ行くの?

 今日学校から帰ってくると、母さんがなにやら用意していたので気になった。


「母さん?、なにしてるの?」


「今から出かけるから、カリンちゃんも準備してね」


「はい?」


 私は母に言われるがまま、お出かけ用の衣装に着替えさせられ、有無を言わさず連れ出された。

 普段着ない様なかしこまった服だったので少し着るのに時間がかかった。


「はっ!?え!?何!?」


 私が驚いていると、母さんも、なにやら準備をし始めていた。

 母さんも、普段のエプロン姿ではなく、できる女の様な派手な赤いドレスを着込んでいる。

 自分の母さんに言うのもなんだが、かなり美人に見える。

 いや、実際美人ではあるのだが、普段近すぎて慣れてしまったというか...、まあそんな感じだ。

 だが、見慣れない綺麗な格好をされると、その美しさを再確認してしまう。

 どう考えても子供を産んだ体とは思えない肢体を見た後、私の視線は母さんの胸に行く。

 やはり大きい、ドレスで強調されている部分ではあるが、それを混みで考えても充分なデカさだ。

 これでは、どこに行こうとしているのか分からないが、他の女性陣が可哀想である。

 私と母さんが着替え終わって外に出ると、白馬に乗った騎士達が私達を迎えにきていた。


「お待ちしておりました、エルカ殿、本日の宴に参加頂き、光栄な限りです」


 母さんはうふふと笑いながら手を頰に置く。


「あら、いいのよ、私もたまには主人と息子に会いたいし、こんな時でもなければ...ね...」


 騎士達は敬礼を済ませると、指をぱちっと鳴らして馬車を召喚する。

 綺麗な物で、白いそれは、まるでおとぎ話に出てくるシンデレラを運んだ馬車の様に思えて、私は目を輝かせた。


「あらあら、カリンちゃんたら...、別に初めてでもないでしょうに...」


(始めてだよ!!)


 私は心のなかで叫んだが、この日が一番、この世界に来てから衝撃を受けたと思う。

 だって白馬の馬車だよ!?これで王子様がいたら100点満点だった...。

 私と母さんが馬車に乗り込むと「行きますよ」と声がしたと同時に馬車が空に浮いた気がした。

 気のせいかと思ったが、気のせいではなかった。

 窓から見える景色に私は驚いた。


「空を飛んでる!?」


 私の驚く姿が可笑しかったのか、母さんが私を見て、優しく微笑んでいた。


「カリンちゃんの目標は、このくらい飛べるようになることだったわね...、お母さんはいつの日かできると思っているわ...」


 ついつい興奮しながら、運転手の方を見ると、白馬から翼が生えており、天翔ける天馬となっていた。


「すごい...」


 つい言葉が出る。


(異世界って本当にあったんだ!!!)


 今更だとは思うが、その事を再確認できるいい機会だったので興奮する。

 外の夜景を見ていると、子供の頃からの夢が一つ叶った気がした。

 私がその光景にうっとりしていると、ふとどこに向かっているのか気になったので、母さんに聞いてみる。


「母さん、そういえば、この馬車はどこに向かっているの?」


 母さんは数秒を置いて答えた。


「王様の住む、この国のお城よ」


「えええええぇぇぇ!!!」


 私は思わず絶叫した。






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