第32話 迷子の僕

「母さ〜んどこ〜」


 僕は泣きながら街を彷徨っていた。

 あれはいつ頃だっただろうか?。

 夏の虫の声が鳴くなか、俺は寂しさに追われながら街を彷徨い続ける。

 ふとした時に、僕と同じ年くらいの女の子と出会う。


「君も迷子なんだね、実は私もなんだ!、ねぇ、一緒に母さん達を探そうよ!」


 女の子は僕の手を取って一緒に両親を探してくれた。

 女の子なのに、泣きもせず、なんて強い子なのだろうと思った。

 そう思うと、男なのに泣いている僕が許せなくなってきた。

 頑張って涙を堪えて、彼女に兵士の詰所まで送って貰うと、僕の両親が心配したように僕を抱きかかえてくれた。

 彼女は、迷子の振りをして僕をここまで送ってくれたのだ。


「良かったね僕!、じゃあ私はこれで!」


 彼女が去る前に僕は自分の名前を叫んだ。


「僕はトウマ!君は!?」


 彼女も振り向いて笑顔を見せてくれた。


「私はカリンだよ!、トウマ君!また会えるといいね!」


 走り去っていく背中に大声で誓った。


「僕もう泣かない!、大人になったら君みたいな優しい子を守れるように強くなる!、僕がこの国で一番強い男になってやる!!」


 奇しくもこの後、幼稚園で彼女と同じクラスとなり、今に至るまでずっと一緒に育ってきたが、フレイはおろか彼女にも劣る自分が許せない。


(カリン...俺は...、お前を守れるくらい強く...)


 目指すべき場所は遠く険しい茨の道だが、俺はそれでも突き進むつもりだ。

 いつのまにか公園のベンチで眠っていた俺は、そのまま夜を明かしていた。

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