道端で魔剣を拾ってしまった

森水鷲葉

道端で魔剣を拾ってしまった

【魔剣】

わはははは! よくぞ我を拾ったな小僧!

我は古より魔の力を秘めし魔剣なり!


【タケル】

しまった、変なの拾っちゃったぞ!

うっかり、かっこいいと思った、数十秒前の俺のバカ!


【魔剣】

ふふふ、謙遜するな!

小僧、貴様を、世界を救う勇者にも、世界を滅ぼす魔王にもしてやる!


【タケル】

いや、ここ現代日本だし

勇者とか魔王とか言ってたらマジきついし……


【魔剣】

なにをいう、我を拾ったからには、貴様に我を振るう資格があるのだ

さあ、我が力を望むままに使うがいい!


【タケル】

いや、いらない


【魔剣】

うわあ、放り投げるな!


【タケル】

見なかったことにしよう。俺は何も拾ってないぞ


【魔剣】

待て、我を使えば強大な力が手に入るのだぞ


【タケル】

そんなこと言って、代償があるんだろ? 魔剣だし


【魔剣】

たしかに、我を使うたびに貴様の魂を喰らわせてもらう

だが、たいしたことはない。ちょっとずつだぞ


【タケル】

うわあ、ほんとにいらない


【魔剣】

待て待て! 無欲な奴よ


さあ、我を使うがいい


【タケル】

飛んでついてくるなって!


こうなったらしょうがない


【魔剣】

おお、我を振るう気になったな


ん? こんな場所に我を置いてどうする気だ?


【タケル】

燃えないゴミ、回収してくれるかな?


【魔剣】

こらー!

我を捨てるなー!


ちょ、ネットでくるむんじゃない!


【タケル】

カラスがイタズラすると困るからな


【魔剣】

はなせー!


【ナレーション】

数十分後……


【魔剣】

ふふふ、あきらめの悪い奴め

貴様は我から逃れられないのだ


【タケル】

どっちがあきらめ悪いんだよ……


そうだ、こういう時はだいたい、火山に捨てに行くんだ


【魔剣】

えっ、おまえ、発想が勇者っぽいな!?

おとなしく我を使ったほうが……


【タケル】

火山の火口に捨てれば、魔剣も封じられるだろ


【ナレーション】

(そして、ヘリで移動)


【魔剣】

ぎゃー、やめろー!


熱っ……!?

こんなんで我が熔けると思ったら大間違いだぞ!


【タケル】

しかたない。こうなったら、太陽系外に向かってロケットで飛ばすか


【魔剣】

ねえ、なんでそこまで、財力があるの!?


【タケル】

ロケット発射用意!


3……2……1……


【ナレーション】

ズゴゴゴゴゴゴゴ……!!


【タケル】

よし、なんとかなったな


【ナレーション】

しかし……


【魔剣】

ふははははは!

貴様と我とはもはや離れられない運命なのだ!


【タケル】

まさか宇宙から戻ってくるなんて……


もしかして、特別な金属でできてるのか?


【魔剣】

ふふふ、もちろんだ。我は魔剣だぞ


おい……ところで、この香ばしい匂いは?


【タケル】

ドネルケバブ焼くのに使おうと思ったけど、いまいちだなあ

シュラスコのほうがいいのか?


【魔剣】

我を串焼き肉用の串にするなー!!


【タケル】

だって、熱にも強いみたいだし、切れ味もいいんだろ?


【魔剣】

む、ようやく我を認めたのか?


【タケル】

だから、串焼き用ってことで


【魔剣】

ふむ、まあ、そこまでいうなら……


って、言うと思ったか!?

誰がだまされるか!


【タケル】

まったく、使えないなあ


【魔剣】

魔剣として使えと言ってるだろう!


ふっ、貴様と我は一生離れられぬ運命なのだ!


「こうして、魔剣と俺の奇妙な共同生活が始まった」


【タケル】

お前が言うな!


【終わり】

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