ゲームとこたつと肩凝りと 2019/11/09
十一月九日。
今日は土曜日。
朝の気温は八度。
この間の朝の寒さを彷彿とさせる、今季二度めの一桁台の気温である。
ヒートテックの長袖下着にシャツとミリタリージャケット、そこにマフラーを巻いて上半身は完全防備のボクだが、どうなら足元から来る冷気を侮っていたらしい。
何故ジーンズの下にもヒートテックを履いて来なかったのかと、家を出てすぐに後悔した。
立冬とはいえ、まだまだ冬は始まったばかり。
今からガチガチに防寒対策をしていたら、真冬並みの寒さが到来した時にろくに生き残れるか知れたものではない。
「これぐらいの寒さは許容できないと越冬できないんじゃないかと思って、この季節の変わり目あたりはこうして耐え忍んでいるわけだけど…やっぱり寒いもんは寒いよね。」
「まぁ、それを承知で着る物選んでるわけだからそれはしょうがないわよね。ワタシもそうだし。」
彼女は今日もスカートだ。
この寒さの中でもスカート主義を貫かんとするその鉄の意志に感服する。
タイツを履いているとはいえ、ボクの格好より体感温度が低いのは間違いないだろう。
「家を出る必要が無ければ、今日のような日はこたつの中で一日を過ごしているところなんだけどね。生憎と今日も仕事だ。」
土曜日なのに割と電車が混んでいて、少しばかり損をした気分になる。
普段は土日祝日は座って通勤しているのだが、今日はそれは叶わないようだ。
勿論平日よりは大分マシにはなっているのだが。
「ただでさえ肩凝りヒドイんだから、多少は体動かした方が健康にもいいわよ。この時季は特に根が生えやすいんだから。お金も稼げて体も動かせるなら、一石二鳥だと思わないと。」
「すごく真っ当な意見で正しくは反論の余地は無いんだけど、気持ちがそれについていくかというとなかなか難しいね。昨日新しいゲームも買っちゃったし。」
「こたつにゲームなんて、引きこもりまっしぐらね。根が生えるどころか、それを上から溶接するような愚かしい行為だわ。延々とプレイしちゃうやつじゃないそれ。」
「そんな事ないさ。なんだかんだ、ちゃんと仕事に支障が出ない程度の時間に就寝出来たしね。」
去年までのボクは、ゲームの誘惑に耐えられず朝四時ぐらいまでプレイしてしまい、仕事中後悔するなんて事は日常茶飯事だった。
それを昨日はすっぱりやめられた事に、少しは大人になったのかなと感じてみたりする。
「まぁ、次の休日がどうなるかは分からないけどね。明後日は午後休で、家に帰ったらとりあえず掃除をするけど、その後は全く動かなくなるかもしれない。」
肩凝りにも拍車がかかる事だろう。
今朝なんかは背伸びをした途端、背中から脱臼した肩をはめ直した時のような音がした。
昨日の夜も帰宅してすぐ、肩凝りからくる頭痛に悩まされて鎮痛剤を飲んだぐらいなので、こんな事をしていたらそのうち体を壊しそうだ。
「とりあえず、昨日の夜もそうだけど、ゲームのムービーを見てる間にストレッチでもして体をほぐす事にするよ。これ以上肩凝りが酷くなると、仕事どころじゃなくなりそうだ。」
「それがいいわ。血行も良くなるから、寒さにも強くなるだろうし。そもそも血の巡りがワル過ぎるのよ。」
手をひらひらさせながら彼女が言う。
「もうちょっと血圧が高くなれば、色々精力的になって、彼女も出来るんじゃない?アンタには強引さが足りない気がするわ。」
「それはごもっともだけど、今はそれよりも大事なことがあるから当分はいいよ。こんなに仕事で忙しいのに彼女なんて作ったら、尚更ゲームが出来なくなるからね。」
さて今日の日記はこれぐらいでいいだろう。
そう言って、ボクはスマホをポケットにしまう。ひどく呆れた彼女の顔を見なかった事にして、窓の外に視線を移す。
いつもより少しだけ寒色に見えるその風景が、あらためて冬の訪れを感じさせた。
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