第441話 前髪野郎と光の女神(3)

「真夏、お願いします」

「任されたわ!」

 試合開始のホイッスルが響くと同時に、ソレイユは真夏にバスを出した。ソレイユからボールを受け取った真夏は、早速ドリブルで敵の陣地へと切り込んでいく。

「ふはははは! 私の華麗なドリブル捌きで全員ごぼう抜きよ! 退きなさい名物コンビにレイゼロール!」

「行かせないよ会長!」

「ええ!」

 真夏の前に陽華と明夜が立ち塞がる。2人は流石のコンビネーションで真夏に激しいディフェンスを仕掛けた。

「くっ、やるわね! でも、サッカーは個人戦じゃないのよ! ソレイユ様!」

 1人では陽華と明夜を抜く事が難しいと判断した真夏が、ソレイユにパスを出す。真夏は我が強い性格だが、周りが見えていないというわけではない。そうでなければ、光導十姫に名を連ねる事も、生徒会長という役職を任される事もないからだ。

「はい!」

 真夏からパスを受け取ったソレイユが右サイドから青チームの陣地に攻め入る。だが、そんなソレイユの行方をレイゼロールが遮った。

「っ、レール・・・・・・」

「・・・・・・勝負である以上、貴様らには負けん。ソレイユ、そのボールを頂くぞ・・・・・・!」

 レイゼロールは右足でソレイユの持っているボールを取ろうとした。だが、ソレイユはボールを動かし、レイゼロールの足を避けた。

「それはこちらも同じです・・・・・・! レール、元々の運動センスは私の方が優っていたという事実を思い出させてあげますよ!」

 ソレイユはレイゼロールの左半身側に向かってボールを蹴りドリブルを行った。

「くっ!? キベリア!」

「え、え!?」

 ソレイユに抜かれてしまったレイゼロールが後方にいたキベリアの名を呼ぶ。だが、キベリアは闇人としての力を解放しなければかなりの運動オンチだ。そのため、当然というべきか、キベリアはソレイユを止めきれなかった。

「っ!」

 ディフェンダーであるキベリアを抜いた事によって、ソレイユが青チームのゴールキーパーである光司の前に立つ。光司は真剣な顔でソレイユと、ソレイユの持つボールを注視した。

「ソレイユ様!」

 ソレイユがシュートを打つか、ギリギリまでドリブルで距離を詰めるかを考えていると、そんな声が聞こえてきた。チラリとソレイユが声の聞こえた方に視線を向けると、中央から出てくる真夏の姿が見えた。真夏の背後には陽華の姿があり、明夜は急いでソレイユに向かって距離を詰めてきた。

「真夏!」

「くっ!?」

 この状況ならパスを出した方がシュートが決まる確率が高いと判断したソレイユが、真夏に向かってパスを出す。明夜はそのパスをカットしようとしたが間に合わなかった。

「ナイスパス! さあ、記念すべき・・・・・・先制点よ!」

 陽華を振り切った真夏はソレイユからのパスを受け取ると、そのまま右足で鋭いシュートを放った。「くっ!」

 光司は何とか真夏のシュートに反応し手を伸ばしたが、光司の手はボールに弾かれた。結果、真夏の放ったシュートは青チームのネットを揺らした。

「ゴール。赤チームに1点追加です」

 審判であるイズがそうアナウンスする。シュートを決めた真夏は「よっしゃ!」とガッツポーズをした。

「やったったわ! ソレイユ様! イェーイ!」

「イェーイ!」

 真夏がアシストをしたソレイユに向かって手を挙げる。ソレイユは自身の手で真夏の手を叩き、ハイタッチをした。

「おお、先制点だ。あの光導姫の子もそうだけど、やっぱりソレイユは運動神経がいいな」

いいねトレビアン。どうやら、我がチームのストライカーたちは優秀なようだ」

「会長もソレイユの奴も普通に上手え・・・・・・」

 ラルバ、ロゼ、影人が先制点を取った感想を漏らす。なんにせよ、真夏が先制点を決めた事で赤チームには精神的な余裕が出来た。

「ごめん。止めきれなかったよ」

「ううん。仕方ないよ! 香乃宮くんもみんなも頑張ったんだから!」

「そうよ。まだ1点取られただけ。切り替えていきましょう」

 光司がゴールからボールを取り出しながら謝罪の言葉を述べる。陽華と明夜は明るい様子で光司を励ました。

「ちっ、ソレイユの奴め。無駄に活発な所は健在か・・・・・・キベリア。責めるわけではないが、お前はもう少し頑張れ」

「え、それ普通に責めてません・・・・・・?」

 レイゼロールにそう言われたキベリアは軽く泣きそうになった。

「ふふっ、私の『世界』でサッカーの観戦が出来るなんて贅沢な事ね」

 一方、1人で優雅にイスに座りながら試合を観戦していたシェルディアは、満足げな様子でそう呟いた。本当ならば、シェルディアも混ざりたいところだ。だが、いかんせんシェルディアの身体能力はセーブしても高すぎる。シェルディアが混ざれば、サッカーは成立しなくなってしまうのだ。

「キトナも一緒に観れればよかったわね。まあ、夜にでも話してあげましょう」

 キトナは残念ながら出かけていた。そのため、このイベントに誘う事は出来なかった。

「赤チームが点を獲得したため、ボールは青チームに渡ります。では、試合を再開します」

 イズがピッとホイッスルを鳴らす。陽華はセンターラインに置いたボールを、明夜に向かって蹴った。

「明夜!」

「受け取ったわ陽華! さあ、反撃よ!」

 陽華からボールを受け取った明夜がドリブルでボールを運ぶ。そんな明夜を止めようと、真夏が立ち塞がった。

「反撃なんかさせてあげないわよ! さあ、ボールを寄越しなさい名物コンビのバカ担当!」

「誰がバカ担当ですか!? くっ、陽華!」

 明夜は反射的にそうツッコミながらも、陽華にボールを戻した。

「うん! 任せて!」

 明夜からのパスを受けた陽華は、持ち前の運動神経の良さでぐんぐんと赤チームの陣地に切り込んでいく。

「悪いが行かせるわけにはいかないな」

 陽華の行手に赤チームのディフェンダーであるロゼが立つ。ロゼは陽華に対し激しくプレスをかけた。

「くっ!」

「私はサッカーの本場、欧州出身だ。小さい頃は父とよくボールを蹴り合って遊んだものだよ」

 ロゼのプレスはすぐに振り切れるようなものではなかった。陽華は何とかロゼにボールを奪われないようにボールをキープした。

「ふん、情けない。1人すら抜けんとはな。おい、こっちだ。ボールを寄越せ」

 レイゼロールが陽華にパスを呼びかける。だが、陽華とレイゼロールを遮るようにラルバが割って入る。

「やらせないよレール。君も知ってるだろうけど、ソレイユは勝負に負けると不機嫌になるからね。八つ当たりはされたくないんだ」

「っ、ラルバ・・・・・・貴様、我を殺そうとしたくせに何を格好をつけている。調子に乗るなよ。何なら、ついでに長年のお前の想いをソレイユの奴に暴露してやろうか」

「それだけは本当にやめて!? あと、その節は本当にごめんなさい!」

 ギロリとレイゼロールに睨まれたラルバが悲鳴を上げる。だが、ラルバは陽華からレイゼロールへのパスコースを防いだまま動きはしなかった。

「っ、陽華・・・・・・!」

「行かせないわよ!」

 明夜は陽華を助けに行きたかったが、真夏が張り付いてマークしているため、中々助けに行く事が出来なかった。

「中々に苦しい状況だけど・・・・・・でも、頑張るよ!」

 陽華は自身に気合いを入れ直すと、ロゼに対し激しくドリブルで揺さぶりをかけた。

「やるね・・・・・・! だが、そう易々と通せはしないな・・・・・・!」

 しかし、ロゼは陽華の揺さぶりに置いていかれはしなかった。ロゼは陽華を抜かせず、逆にカウンター気味に陽華のボールを取りに行った。

「っ!?」

「もらったよ!」

 ロゼのカウンターに陽華は驚いた顔を浮かべ、ロゼはボールの奪取を確信する。

 だが、

「掛かったねロゼさん!」

 陽華は次の瞬間にはニヤリと笑っていた。陽華は、スッとロゼの股の間にボールを通すと、そのままロゼを抜き去った。

「なっ・・・・・・!? っ、しまった。今のは誘いか!」

 ロゼがその顔色を驚愕の色に染める。カウンターを仕掛けたつもりだったが、罠に嵌ったのはロゼの方だった。しかし、その事に気づいた時にはもう遅かった。

「っ!?」

 ロゼが抜かれた事で、陽華が完全にフリーになる。それはつまり、赤チームのゴールキーパーである影人との距離がなくなっていくという事だ。影人はその顔に緊張の色を奔らせた。

「ヤバっ!」

「っ!」

 陽華がロゼを突破した事に焦った真夏とラルバが、明夜とレイゼロールのマークを外し陽華の元へと走る。結果、明夜とレイゼロールがフリーになる。

「っ! ダメです真夏、ラルバ! それでは明夜とレールがフリーになります!」

 敵陣にいたソレイユはその事に気づくと、自身もディフェンスに参加すべく自陣の方に向かって駆けた。

「ふん、もう遅い。光導姫、パスを寄越せ!」

「陽華!」

 フリーになったレイゼロールと明夜が赤チームのゴールに向かって駆け出す。陽華は既にいつでもシュートを打てる位置にいる。オフサイドのルールもなく、明夜とレイゼロールもフリー。陽華はパスを出そうと思えば2人にパスを出す事も可能だ。

(ディフェンスは間に合わねえな。朝宮がシュートを打つか、朝宮からパスを受けて月下がシュートを打つか、はたまた朝宮からのパスを受けてレイゼロールがシュートを打つか・・・・・・3択か。中々に厳しいな)

 なまじ、スプリガンの経験があるせいで、無駄に一瞬間の状況分析能力が高い前髪野郎は内心でそう呟く。

「はっ、いいぜ。俺が止めてやる。俺はゴールキーパー。最後の砦だからな」

 しかし、影人はニヤリと笑うと腰を落としいつでも反応できるように神経を研ぎ澄ませた。来るなら来い。守護神の力を見せてやる。

「行くよ帰城くん! 勝負!」

 陽華が右足を振りかぶる。言葉的には陽華がシュートを打って来る可能性が高い。だが、陽華が駆け引きをしないという選択肢はない。

(朝宮が右端、月下が真ん中、レイゼロールが左端。朝宮がパスを出すとすれば、レイゼロールよりも信頼度が高い月下の可能性が高い。これで実質2択。さあ、勝負だ)

 影人は自身の勘も頼りにしつつ、陽華の挙動に注目した。陽華の足がボールに触れる。さあ、シュートかパスか。影人の緊張は最大限にまで高まった。

「レイゼロール!」

「っ!?」

 陽華が選択したのは逆サイドのレイゼロールへのパスだった。1番可能性が低い選択肢が現実となった事に、思わず影人の顔が驚きに歪む。

「っ、いいだろう。責任を持って我が決めてやる」

 陽華からパスを受け取ったレイゼロールは、一瞬自分にパスが回ってきた事に意外そうな顔を浮かべたが、すぐにいつもの顔に戻ると、右足でシュートを放った。

「っ、クソっ!」

 レイゼロールへの警戒を意識的に排除していた影人が、レイゼロールの放ったシュートを止められるはずもなかった。レイゼロールの放ったシュートが赤チームのゴールネットを揺らした。

「ゴール。青チームに1点追加です」

「見事な連携ね」

 イズがピッと笛を鳴らす。観戦していたシェルディアはパチパチと拍手をした。

「ふん。我にかかればこんなものだ」

 得点を決めたレイゼロールがクールにそう呟く。そんなレイゼロールに向かって、陽華と明夜が近づいてきた。

「ナイスシュート! やったね、レイゼロール!」

「ベリベリナイスね。闇の女神の名前は伊達じゃないわね」

 陽華と明夜が右手を小さく掲げる。レイゼロールは自分が何を促されているのかを知った。

「・・・・・・ふん」

 レイゼロールは仏頂面ではあったが、パン、パンと2人にハイタッチを行った。

「うわっ、あのレイゼロール様が光導姫とハイタッチしてる・・・・・・」

「・・・・・・感動的な光景だね」

 その光景を見たキベリアは信じられないといった顔を、光司は小さく笑みを浮かべた。

「っ、まさかあそこでレイゼロールの奴にパスするとはな・・・・・・」

 一方、ゴールを守りきれなかった影人はボールをハーフウェーライン転がす。そんな影人にチームメイトたちが声を掛けた。

「ま、決められちゃったものは仕方ないわ。切り替えていきましょ! なーに、また私が点を取ってあげるわよ!」

「そうだね。私も次こそは抜かれないように努力するよ」

「俺も頑張るよ」

「ドンマイですよ影人!」

「・・・・・・ああ、ありがとう。俺も次こそはゴッ◯ハンドを決めてみせるぜ」

 真夏、ロゼ、ラルバ、ソレイユの言葉を受けた影人はチームメイトに感謝の言葉を述べる。これが雷◯中の仲間か。暖かい。と、自分を円◯守と思い込んでいる前髪不審者はそう思った。前髪野郎如きが、あんな正統派主人公になれるはずがない。レ◯ルファイブに謝れ。

「現在1対1の同点です。青チームが得点したので、ボールは赤チームからとなります。では、試合を再開します」

 イズが再びピッと笛を鳴らす。真夏はソレイユにパスを出すと、一気に敵陣に駆け込んだ。

「今度は私が決めてみせます!」

 ソレイユがドリブルで敵陣に向かって仕掛ける。だが、ソレイユの前に陽華とレイゼロールが立ち塞がる。

「ソレイユ様! すみませんけど、ボールをもらいます!」

「先ほどのようには抜かせんぞ」

「くっ! ラルバ!」

 陽華とレイゼロールは激しくソレイユにプレスをかけた。流石に2対1はキツい。ソレイユは何とかボールを取られないようにしながら、後方にいるラルバにパスを出した。

「っ、行くしかないか・・・・・・!」

 ソレイユからのパスを受け取ったラルバはドリブルでボールを運ぶ事を選択した。今の状況では、攻撃陣であるソレイユと真夏にパスを出す事は難しいと判断した。

「キベリア、ラルバに対処しろ」

「え、わ、私ですか?」

「お前は守備だろう。仕事をしろ」

「は、はいぃ・・・・・・」

 ソレイユをマークしていたレイゼロールがキベリアにそう指示を出す。キベリアは泣きそうな顔になりながらも、ラルバとの距離を詰めた。

「え、えい!」

 キベリアはラルバの持っているボールを奪おうと足を動かした。

「よっと」

 だが、ラルバは華麗にキベリアの足を避けた。足を空振らせたキベリアは「きゃ!?」と体勢を崩した。

「一応、ソレイユほどじゃないけど、運動は得意な方なんだ。そう簡単には取らせないよ」

 キベリアを抜いたラルバが青チームのゴールに迫る。だが、まだゴールまでは少し距離がある。シュートは狙えない。

「行かせません!」

 ソレイユのマークをレイゼロールに任せた陽華がラルバに迫る。陽華のディフェンスは、キベリアのディフェンスとは比べ物にならないくらいに激しく、しつこかった。

「っ、やるね。でも、俺だって・・・・・・!」

 長年の想い人にいいところを見せたい。分かっている。自分にそんな事を考える資格がないことは。ラルバが犯した大罪は未来永劫消える事はない。

「だけど、それでもッ! 俺だって男だ! そう簡単に諦め切れるもんか!」

 ラルバが溢れ出る自身の想いを力に変える。ラルバは陽華よりも優っているフィジカルの強さを生かし、陽華を突破した。

「あっ!?」

「このまま決める!」

 陽華を突破したラルバはそのままドリブルを行うと、右足を大きく振りかぶった。そして、ゴールに向かって渾身のシュートを放った。

「っ! はあッ!」

 しかし、ラルバの渾身のシュートを光司がパンチングで弾いた。結果、ボールはコートの外に出た。

「連続でゴールはさせませんよラルバ様。僕もキーパーですからね」

「っ、やるな。光司・・・・・・!」

 光司にゴールを阻まれたラルバが悔しげな顔を浮かべる。すると、イズがホイッスルをピッと鳴らした。

「赤チーム、コーナーキックです。キッカーはコーナーエリアに移動してください」

「よし、では私が行こう」

 ロゼが手を挙げる。ディフェンダーがコーナーキックを蹴る場合カウンターが怖いが、ここはリスクを取ってでも得点が欲しい。コーナーキックは得点を狙える大チャンスだ。

「頼んだわよ『芸術家』!」

「必ずゴールを決めますねロゼ!」

 真夏とソレイユはロゼにそう言葉を送った。ロゼは「ああ、任せてくれたまえ」と笑みを浮かべ、コーナーエリアに移動した。

「みんな! 頑張って守り切ろう!」

「コーナーキックはピンチだけど、カウンターのチャンスだわ。逆に得点を狙いましょう」

「ふん。言われずともそのつもりだ。キベリア、次は抜かるなよ」

「わ、分かりました・・・・・・」

 陽華、明夜、レイゼロール、キベリアの青チームもそれぞれ配置につく。明夜はソレイユに、レイゼロールは真夏に、ラルバにはキベリアがついた。唯一フリーの陽華はいつでもカウンターが出来るように、少し離れた場所で待機していた。イズはピッと試合を再開する笛を鳴らした。

「では・・・・・・行くよ!」

 ロゼがコーナーからボールを蹴った。ロゼの蹴ったボールは、美しい弧を描きながら空中を舞った。同時に、赤チームと青チームが動き始めた。

「決めてやるわ!」

「やらせるか・・・・・・!」

「ここで!」

「やらせませんよ!」

「次こそ!」

「あんただけには絶対に決めささないわよ!」

 真夏、レイゼロール、ソレイユ、明夜、ラルバ、キベリアが宙を舞うボールに集中する。

 ロゼの放ったボールは特定の誰かを狙ったものではなかった。ロゼの意図はゴール前のどさくさに紛れて、誰かがゴールする事だった。そして、遂にボールが落下し始め――

「やらせない!」

 しかし、そのボールを光司がジャンプしてキャッチした。光司はゴールを守る事よりも、ボールをキャッチするというリスクの高い選択した。

「朝宮さん!」

「ありがとう香乃宮くん!」

 ボールをキャッチした光司はすぐさまボールを陽華の方に向かって投げた。カウンターの準備をしていた陽華は、光司からボールを受け取ると一気に赤チームのゴールを目指した。

「ヤバっ!?」

「っ、影人!」

 真夏が声を上げ、ソレイユが影人の名を呼ぶ。もはや、陽華と影人の一騎打ちは避けられない状況だ。

「決める!」

「やらせるか! 俺は円◯守だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 陽華がシュート圏内まで接近し、右足を振りかぶる。影人は右手を後方に引いた。

 そして、陽華の必殺のシュートが放たれ、影人の神の右手がゴールを守るように突き出された。

「はあぁぁぁぁぁッ!」

「うおぉぉぉぉぉッ!」

 陽華の放った必殺シュートが影人の右手に吸い込まれる。バチバチと火花が散り、貫く力と止める力が拮抗する。これぞ、まさに超次元サッカー。

 ――という展開になるはずもなく、陽華の放ったシュートは影人の右手に掠る事もなく、綺麗にゴールの右上に決まった。

「・・・・・・あ、あれ?」

 影人は右手を前に突き出したまま、首だけ動かし自分の守っていたゴールを見つめた。ゴールの中にはしっかり闇色のボールが転がっていた。

「ゴール。青チームに1点追加です。そして、ちょうど20分が経過したので、前半戦はここまでとなります。10分の経過の後、後半戦を開始します」

 イズが笛を鳴らしそうアナウンスした。


 ――というわけで、後半戦に続く。

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