第394話 光司と影人
「――帰城くん、少しいいかな?」
明夜と2人で話をした日から2日後。影人が昇降口で靴を履き替えていると、後ろからそんな声が掛けられた。声から自分を呼んだのが誰か分かった影人は、面倒くさそうな顔で振り返った。
「・・・・・・何の用だ。香乃宮」
影人が振り返ると、そこには爽やかな笑顔を浮かべたイケメン、もとい光司がいた。影人に名前を呼ばれた光司はこう言葉を述べた。
「いや、大した用事ではないんだ。ただ、朝宮さんや月下さんから君と絆を深めたという話を聞いてね。何だかいいなと思ったんだ」
「誤解するな。絆は深めてない。ただ話をしたりさせられただけだ。あと、何だよそれ。よく分からねえ感想を俺にぶつけてくるな」
「ごめん。確かにそうだね」
後半の影人の言葉に光司が苦笑する。苦笑すら爽やかなのだから恐ろしい。やはりイケメンは敵だと影人は思った。まあ、別に影人は自分の容姿にコンプレックスはないのだが。ノリ的にである。
「用がないなら俺は帰るぞ。フェルフィズの奴がいつ動き出すか分からねえが、それまではゆっくりしときたいからな」
「そうだね。英気を養うのは大切だ。それで、用事というよりかはお願いなんだけど・・・・・・その、僕とも話をしてくれないかな? よく考えれば、僕も君と2人でじっくりと話すという経験はないように思うから」
「・・・・・・そうだったか? お前とは何だかんだ話してると思ってたがな」
影人がそう言葉を返す。光司は影人がスプリガンだと知る前から、そして影人がスプリガンだと知ってからは余計に影人に話しかけてきた。そのため、影人は光司と話していないという感覚があまりなかった。
「・・・・・・まあいいぜ。特にやる事はないからな」
「え、いいのかい?」
影人から是の言葉を聞いた光司が意外そうに目を見開く。正直、光司は影人から承諾の言葉をもらえるとは思っていなかった。影人は光司の事をあまり好ましくは思っていないからだ。
「なんだよ。お前から聞いて来たくせに。で、どこで話すつもりなんだ?」
「そ、そうだね。しえらでどうかな?」
「しえらか。まあ安牌だな。だが、話すだけってのも味気ねえな。・・・・・・よし、香乃宮。遊びに行くぜ。話はそのついでに出来るだろ」
「え・・・・・・?」
光司がその顔色を驚愕の色に染める。光司は確認するように影人が言った言葉を呟いた。
「あ、遊ぶ? 僕と帰城くんが・・・・・・?」
「そう言ってんだろ。何だ。俺と遊ぶのは嫌か?」
「いや、そんな・・・・・・ただ、ただ中々これが現実だと信じられなくて。僕と帰城くんが遊ぶ・・・・・・そうか、僕と帰城くんが・・・・・・!」
最初こそ信じられないと首を横に振っていた光司の顔に、徐々に喜びと嬉しさが混じる。やがて、光司は満面の輝かんばかりの笑みを浮かべると、興奮したように影人にこう言ってきた。
「うん、遊ぼう! どうしようか、何をして遊ぼうか! お金はどれだけいるかな? 100万かな、200万かな? 少し待ってくれるかい。今執事に電話して用意を――」
「待て待て待て。何をバカな事言ってるんだお前は! 本気で電話を掛けようとするな!」
ウキウキ気分で電話を掛けようとしていた光司を影人が止めた。
「え?」
「え、じゃねえよ。ったく・・・・・・」
キョトンとした顔の光司に影人がため息を吐く。光司は大金持ちだが普段は常識人だ。だが、なぜか影人が絡んだ時だけ少しおかしくなる。今回もそれが原因だろう。影人はどこか諭すように光司にこう言葉を放った。
「あのなあ、高校生が遊ぶのにそんな金がいるかよ。なんなら金なくても遊べるぜ」
「そ、そうなのかい? ごめん。僕、同級生と遊ぶという経験がほとんどなくて・・・・・・」
光司が申し訳なさそうな顔を浮かべる。その言葉に影人は軽く頭を抱えた。
「微妙に箱入りだなお前は・・・・・・分かったよ。なら、今日は俺が男子高校生の遊び方を教えてやる。今日は遊び尽くすぞ」
あまりにも完璧イケメン過ぎる人気者がために、女子にも男子にも逆に遊びに誘われてこなかったのだろう。影人はそう予想した。そして、続けてそんな宣言をした。
「うん、是非にご教授願うよ! ああ、楽しみだな嬉しいな! 今日は人生最良の日だよ!」
「いちいち大げさなんだよお前は。ほら行くぞ」
影人が歩き始める。光司は少し早足で影人を追いかけると、影人の隣に並んだ。こうして、前髪野郎と完璧爽やかイケメン(どう見てもこっちが主人公)は放課後の街に繰り出した。
「男子高校生の遊びといえばゲーセンだ。つーわけで、適当に遊ぶぞ」
数十分後。影人と光司は近所のゲームセンターに来ていた。男子高校生の遊び=ゲームセンターという図式は些か古い気がしないでもないが、前髪野郎は流行ガン無視系の高校生なので、その辺りの認識は時代遅れというか少し鈍かった。
「ここがゲームセンターか・・・・・・初めて来たけど、何だかすごい場所だね」
「何だよ。お前ゲーセンも初めてなのか? 本当に高校生かよ。つーか、普段お前休みの時何やってんだ。ゲームとかはやらねえのか?」
「そうだね。ほとんどやらないかな。昔父さんとレトロゲームをやった記憶はあるんだけど・・・・・・僕は休みの日は読書だったり、勉強だったり、色々な習い事をしているから」
「うわ、マジかよ。読書抜いたらそれ休みじゃねえだろ。俺なら絶対耐えられねえ」
光司の答えに影人が心底嫌そうな顔を浮かべる。完璧イケメンを形作っているものの一端を、影人は垣間見た気がした。
「なら、最初は俺が適当にゲーセンを案内してやるよ。それで興味のあるゲームがあったらやればいい」
「ありがとう。じゃあ、案内をお願いするよ」
影人と光司は共にゲームセンターの中を巡り始めた。影人はまず定番のクレーンゲームのコーナーに光司を連れて行った。
「これがクレーンゲーム。金を入れてクレーンを動かして景品を取るゲームだ。ぶっちゃけると、基本的に数回で取れる事はない。だが、欲しい景品とかがあると中々やめられない。人間の欲望を刺激してくるゲームだ」
「へえ、これが・・・・・・面白そうだね。ちょっと見て回ってもいいかい?」
「ああ、好きにしろよ」
光司と影人は色々なクレーンゲームを見て回った。お菓子やぬいぐるみやフィギュア。様々な景品がある事に光司は驚いていた。
「うわっ、可愛いねこのぬいぐるみ」
光司が足を止める。光司の視線の先には小さなペンギンのぬいぐるみがあった。
「確かにな。でも意外だな。お前でもこういうのを可愛いと思うのか」
「あ、ごめん。子供っぽいよね」
「何で謝るんだよ。別に悪いとは言ってないだろ。好きな物に年齢が関係あるかよ。俺もこいつは可愛いと思うぜ」
光司が恥ずかしそうな顔を浮かべる。影人はそんな光司にそう言って同意を示した。
「っ、そうだね・・・・・・ありがとう帰城くん。君の言葉はいつも僕の目を覚まさせてくれるよ」
光司が感謝の言葉を述べる。それは光司の心からの言葉だった。
「大げさな事を言うな。で、どうするんだ。やってみるのか?」
「うん。せっかくだから。帰城くん、やり方を教えてくれるかい?」
「いいぜ。小銭はあるか?」
「ちょっと待ってね」
光司がサイフを取り出して中身を確認する。流石お金持ちといった感じで、サイフの中には一万円札が大体20枚くらいは入っていた。影人は反射的に「いいなー」と思ってしまった。
「ごめん。小銭はないね」
「じゃあ両替しないとな。ちょうどそこに両替機があるから両替するぞ」
両替機で一万円札を両替し100円玉を手に入れた光司と影人は、ペンギンのぬいぐるみがあるクレーンゲームの前に戻った。
「まずは小銭を入れる。で、このボタンでアームを動かす。それで狙いを定めたらこのボタンを押して終わりだ」
「なるほど。凄く簡単だね。うん、やってみるよ」
影人の説明を聞いた光司が100円を入れる。軽快な音が流れ始めゲームがスタートする。光司はボタンを押してアームをぬいぐるみの真上に移動させると、アームを降下させるボタンを押した。
アームはぬいぐるみをがっちりと掴んだ。アームはぬいぐるみを掴みゆっくりと上昇した。
「見て帰城くん! もう少しで取れるよ!」
「まあな。ここまでは上手くいくんだが・・・・・・問題はこの後なんだよな」
興奮する光司に対して影人は冷めていた。ぬいぐるみを持ち上げたアームが落とし口に移動を始める。だが、その前にアームは急に掴む力が弱くなったように、ぬいぐるみを落とした。結果、ぬいぐるみはポテンと転がり落とし口には入らなかった。
「ああ、惜しい・・・・・・」
「あそこまでは行くんだよ。だが、あれ以降がな。ゲーセンも慈善事業じゃないから中々難しいんだよ」
「そうなんだね・・・・・・帰城くん、もう少しだけやってもいいかな」
「好きにしろ。だけど、気をつけろよ。ハマると沼だぞこれは」
「うん。注意するよ」
光司が2枚目の硬貨を入れる。アームは再び動きぬいぐるみを掴む。だが、今回もぬいぐるみは落とし口には入らなかった。
「ああ、また・・・・・・でも今度こそ!」
それから光司は3枚、4枚、5枚と100円玉を入れ続けた。しかし、結果は同じでぬいぐるみは取れなかった。
「ダメだ・・・・・・難しいね・・・・・・」
光司がガクリと肩を落とす。影人などは、基本的に景品は中々取れないものだと知っているためそれほど落胆しないが、光司はその事を知らないので落胆しているのだろう。
「もうそろそろだとは思うんだがな。よし、香乃宮ちょっと変わってみろ。俺がやる」
「え、いいのかい?」
「任せろよ。『絶対無限を掴み取る者』といわれた俺の力を見せてやる」
ドヤ顔を浮かべながら今考えた2つ名を恥ずかしげも無く披露したアホは、チャリンと自分の100円を入れた。
「ふっ、ペンギンちゃん。俺に狙われたのが運のツキだな」
馬鹿野郎この野郎前髪野郎はアームを動かしぬいぐるみを掴んだ。持ち上がったぬいぐるみは落とし口に向かう。ぬいぐるみはあと少しで落とし口の上だ。
「これは・・・・・・!」
「行けよッ!」
光司が期待の眼差しを向け影人が力の入った声を漏らす。だが、ぬいぐるみが落とし口の上に到達するかと思われた瞬間、アームはポロっとぬいぐるみを落とした。結果、ぬいぐるみは落とし口の端に引っ掛かった。
「あっ!」
「ちっ、マジかよ・・・・・・!」
光司が残念そうな声を漏らし、影人も悔しそうに顔を歪めた。
「だが、ちょっと押せば取れる。香乃宮、後はお前がやれ。しっかり決めろよ」
「う、うん」
光司が真剣な顔で100円を入れる。光司は慎重にアームを調整すると、アームで落とし口に引っ掛かっているぬいぐるみを押した。すると、ようやくぬいぐるみが落とし口に落ちた。
「やった! やったよ帰城くん!」
「ああ、よくやったぜ香乃宮」
光司が珍しく子供のようにはしゃぐ。影人も素直に光司にそんな言葉を送った。
「うわぁ・・・・・・やっぱり可愛いね!」
ぬいぐるみを取り出した光司がキラキラとした目でそれを見つめる。影人は近くにあったビニール袋を取り、それを光司に渡した。
「ほら、これに入れろよ。初めてのクレーンゲーム景品だな」
「ありがとう。帰城くんの力がなければ取る事は出来なかったよ。このぬいぐるみは一生大切にするよ」
「一生って。重いな」
光司が大切そうにぬいぐるみを袋に入れる。影人は困ったように頭を掻いた。
「じゃあ次の場所巡るか」
「うん」
影人は光司と共にクレーンゲームのコーナーを離れると、次はアーケードゲームのあるコーナーに向かった。
「ここがアーケードゲーム。通称アケゲーのコーナーだ。ここは最新のやつからレトロなやつまであるから楽しめるぜ」
「へえ。帰城くんは物知りだね。流石だよ」
「この程度で物知りなわけあるかよ」
2人は適当にアーケードゲームのコーナーを回った。
「死ねや崩◯刃!」
「うるせえ! カー◯ージ◯ザー!」
「ダブロダブロ!」
「いや捌けんって!?」
影人と光司が回っていると辺りからそんな声が聞こえてきた。今日はいつもより人が多いためか、中々に騒がしい。影人は慣れているが、初めて来た光司は少しビクついていた。
「まあアーケードゲームはやり込んだりしないと色々と難しいが、慣れてきたら凄く楽しいぜ」
「そうなんだね。僕も何かやってみようかな。帰城くんのオススメはあるかい?」
「オススメなぁ・・・・・・格ゲーは敷居が高いし、エクストリームなアレも難しいし・・・・・・ここは単純にシューティングゲームかね」
影人は光司をレトロゲームが集まっている場所に案内すると、とある筐体の前で止まった。戦闘機で攻撃をしてエイリアンを倒すという昔懐かしのゲームだ。
「操作は死ぬほど簡単だ。レバーで戦闘機を動かしてこのボタンで攻撃。まずは手本を見せてやるよ」
影人がお金を入れてゲームをスタートさせる。影人は慣れたように戦闘機で敵を撃破していく。そして、ボスを倒しゲームをクリアした。
「こんな感じだ。次やってみろよ」
「うん」
光司が影人と席を変わりお金を入れる。ゲームがスタートして、光司は先ほどの影人同様に次々と敵を撃破しボスへと辿り着いた。
「やるじゃねえか。筋がいいぜ香乃宮」
「ありがとう。でも、さっき帰城くんが手本を見せてくれたおかげだよ」
光司が嬉しそうな顔になる。だが、ボスは初心者の光司には厳しく光司はゲームオーバーしてしまった。
「ああ・・・・・・」
「仕方ねえよ。初心者にしてはよくやった方だ」
残念そうな声を漏らす光司を影人は軽く慰めた。
「悔しいね。でも、楽しかったよ」
「ならよかったぜ。じゃあ、次は残ってるコーナーを回るか」
影人は次に光司をメダルゲームの場所に案内して少しメダルゲームを楽しむと、最後にエアホッケーのゲームに光司を導いた。
「せっかく2人いるんだ。最後はこれをやろうぜ」
「これは?」
「エアホッケーだ。まあやれば分かる」
影人はお金を入れてゲームをスタートさせた。
「ルールは単純だ。こいつでプラスチックの円盤を相手の陣地に入れる。それで得点の多い方が勝ち。それだけ・・・・・・だッ!」
影人はスマッシャーで円盤を弾き光司の陣地に入れ先制得点した。途端、得点を知らせる音が鳴る。急に攻撃された事に光司が驚く。
「あ、汚いよ帰城くん!」
「はっ、俺は勝つためなら手段は選ばないタイプの人間だ。下に円盤が落ちてるだろ。そら、戦るぜ。構えろよ。『異次元の反射王』と呼ばれた俺に勝てるか?」
「っ、分かったよ。僕も本気で行くよ」
それから熱い男たちの戦いが始まった。両者は本気でエアホッケーに興じる。光司より経験がある影人はそのテクニックで、経験がないながらも影人より身体能力が高い光司は体力を武器に鎬を削り合う。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
互いに一歩も譲らない。だが、終わりはいつか訪れるもの。その結果――
「はあ、はあ、はあ・・・・・・く、くそっ・・・・・・」
「はあ、はあ・・・・・・僕の、勝ちだね」
勝負は光司が勝った。最終的に勝利を分けたのはテクニックの差よりも体力の差だった。
「ちくしょう・・・・・・流石は完璧野郎だな」
「そんなことはないよ。僕も危なかった。でも、楽しかったね」
「はっ・・・・・・まあな」
光司が笑顔を浮かべる。影人も光司につられるように小さく笑った。
「もうこんな時間か」
ゲームセンターを出た頃にはすっかり日が落ちかけていた。時刻を確認してみると夜の7時だ。影人は隣にいる光司に声を掛ける。
「時間はまだ大丈夫か?」
「うん。さっき連絡しておいたから」
「じゃあそこらで適当に飯でも食うか。牛丼屋でいいか?」
「牛丼屋! うん、1度行ってみたかったんだ」
「何だ牛丼屋も初めてか。でも、あんまり期待し過ぎるなよ」
影人と光司は近くにあった牛丼屋で夕食を済ませた。光司は牛丼が出てくるスピードに驚いていたが、「おいしいね」と嬉しそうに牛丼を食べていた。
「・・・・・・さて、それじゃあ適当に駄弁るか」
牛丼屋を出た影人と光司は公園に来ていた。ベンチに腰掛けた影人はそう口を開く。
「うん。帰城くん。まずはお礼を。今日は本当に、本当に楽しかったよ。何よりも君と一緒に遊べたことが良かった。きっと、僕は生涯この日を忘れないよ」
「だから大げさなんだよお前は。俺からすればただの日常にお前がいただけだ。気にするな」
「それでもだよ。でも、今日は何で僕を誘ってくれたんだい? いつもの君なら僕を誘いはしなかっただろう」
光司が今日ずっと疑問だったことを影人にぶつけた。影人は正面の虚空を見つめながらこう答えた。
「・・・・・・お前にも借りはあるからな。零無との戦いの時、お前には助けられた。だから、その借りを返しただけだ」
「借りなんて。君が僕たちにしてくれたことを考えればあるはずがないよ。それこそ逆だよ。僕は君に返しきれないほどの借りと感謝が・・・・・・」
「俺はただ仕事と後半は自分に従って動いてただけだ。お前らからそんなものを受け取る立場じゃねえよ」
影人は光司の言葉を遮った。そして、こう言葉を続けた。
「辛気臭い話はやめだ。今日は楽しかった、それだけでいいだろ」
「っ・・・・・・うん。そうだね」
ハッとしたように光司が笑う。本当に嫌味1つ感じないイケメンスマイルだ。
それからしばらく影人と光司は雑談した。そして、ふと光司がこんなことを言ってきた。
「そういえば、朝宮さんと月下さんから聞いたよ。帰城くんは魔機神を救う道を選んだって」
「ああ。色々考えてな。少し前の俺なら最終的に救う道なんざ選ばなかっただろうが・・・・・・多分、朝宮と月下に多少影響されてるな。ったく、あいつらを影から見過ぎたかもな」
「それを言うなら僕もだよ。朝宮さんと月下さんって不思議だよね。彼女たちの明るさなら何でも出来る、救える気がするよ。不可能を可能にするっていうのかな。実際、レイゼロールを浄化したのも彼女たちだしね」
「・・・・・・そうだな。ハッピーエンドに導ける力を持った奴・・・・・・ああいう奴らを主人公っていうんだろうな。で、そんな奴らを助けて守るのが俺らの役目ってことだ」
影人はそう言うと、光司の方に向かって右の拳を突き出した。
「お前も守護者を続ける道を選んだ。俺も再び
「っ、うん。守ろう。僕たちで。みんなを」
光司は真剣な顔で頷くと、影人の拳に自分の拳を合わせた。それは男同士の、守護者としての誓いだった。
――こうして、影人と光司の普通の男子高校生としての1日は過ぎて行った。
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