第377話 追跡者と逃走者の終点
「・・・・・・」
祠に侵入する事に成功した魔族の女兵士は、コツコツと小さな音を立てて地下へと続く階段を降りて行った。階段はかなり長いようで、未だに階段の先には暗闇しか見えない。
「・・・・・・」
女兵士は階段を降り続けた。深く深く地下に、暗闇へと近づいて行く。どんどん、どんどんと。
そして、長い長い無限にも思える階段の果てに、女兵士は最深部へと辿り着いた。女兵士の前には古びた扉がある。女兵士は笑みを浮かべると、両手でその扉を開いた。扉は簡単に開いた。
扉の先は正方形の小さな部屋だった。女兵士が扉を開けた事が条件だったのか、部屋に設置されていた蝋燭に青い炎が次々と灯り始めた。その炎が暗闇を照らし、部屋の中を明らかにする。扉から真正面の壁に括り付けられていたソレを。
「・・・・・・」
部屋の最奥に括り付けられていたのは少女のような姿をしたモノだった。モノというのは、反応が一切なくピタリとも動かないからだ。顔は項垂れているため見えないが、髪の色は光沢感のあるプラチナホワイト。纏う服は体にピッタリとフィットするような青色のノースリーブのもので、剥き出しの両腕の肌の色は白く、腕にはいくつか黒いラインのようなものがあった。
下半身は局部だけ上半身と同じく青い服で隠され、足の付け根がほとんど見えている形だ。足にも腕同様に黒いラインのようなものがあった。少女のようなものが纏っている服は、例えるならスクール水着と呼ばれるものとほとんど同じに見えた。
そして、その少女のようなモノは雁字搦めに縛られていた。光の鎖、闇の鎖といった魔法の鎖で、ごく普通の鋼の鎖で。ソレは両手を支えとするように縛られていた。
「・・・・・・なるほど。これが生命許さぬ機械仕掛けの神・・・・・・魔機神アオンゼウの器ですか」
ソレを見た女兵士は高い声でそう言葉を漏らした。かつてこの世界を襲った4つの災厄。それを束ねていた真なる災厄。神の名を持つ災厄。意識こそ既に消失しているようだが、その器は如何なる者にも滅せられず、ここにある。この裏世界、第5にして最後の霊地ヘキゼメリに封印されている。
(ここの霊地の脆い点は少し特殊で、アオンゼウの器を封じる鎖と一体化していますね。つまり、霊地を崩すにはこの封印の基点を壊せばいい)
女兵士はその視線を器の胸部に向けた。胸部には複雑な紋様が刻まれたクリアなプレートのようなものがあった。恐らく、これが封印の基点だ。
「ふ、ふふふふっ・・・・・・これを、これを壊せば・・・・・・」
女兵士がどこか狂気を孕んだ笑い声を漏らす。もう少しで本当に自分の目的が達成できる。今度こそ。そう思うと、笑い声を抑える事が出来なかった。
「さて、これで全てを終わりにしましょう」
女兵士は腰部のポーチの中に手を入れ、自分が取り出したい物を思い浮かべた。すると、女兵士の手に何かが触れた。女兵士はそれを握ると、ポーチの中から手を抜いた。
女兵士の手の中には1本のナイフがあった。刀身には複雑で美しい紋様が刻まれている。女兵士は一歩また一歩と、封印されているモノに近づいていった。
「くくっ、ゲームは・・・・・・私の勝ちですッ!」
女兵士がナイフを封印の基点に突き立てんと腕を振るう。ナイフは真っ直ぐに基点を目指し伸びて行く。あとほんの一瞬でナイフが基点に刺さる。
そして、ナイフは基点を穿ち――
「――いいや。ゲームはまだ終わってねえよ」
――はしなかった。突然、女兵士の背後からそんな声が響くと、闇色の弾丸が放たれた。その弾丸は女兵士のナイフを弾き飛ばした。
「っ・・・・・・!?」
ナイフを弾かれた女兵士がバッと後方を振り返る。すると、そこには1人の男が立っていた。右手に闇色の拳銃を持った1人の男が。
「はっ、まさか女に化けてたとはな。別に男が女を装う事は自由だが・・・・・・お前に限っていえば頗る気持ちが悪いぜ。なあ・・・・・・フェルフィズ」
そしてその男、スプリガンこと帰城影人は小さな笑みを浮かべた。
「っ、影人くん・・・・・・なぜ、ここに・・・・・・」
影人の姿を見た女兵士――神器の力で変身していたフェルフィズは驚いた顔でそう呟いた。
「なぜだと? そんなものは決まってるだろ。祠に入って行く影みたいなものを見たからだ。どういうわけか、嬢ちゃんたちは気づいてなかったがな」
フェルフィズの言葉を聞いた影人は何でもないようにそう答えた。
「っ、見ていたのですか私を・・・・・・離れていたからといって油断しましたね・・・・・・」
フェルフィズが悔しげな顔になる。フェルフィズがシェルディアたちに気付かれずに祠に侵入出来たのには理由がある。それがフェルフィズの右手首にある腕輪だ。
これはフェルフィズが作った神器「
「異世界での2回目の感動の再会だ。前回の反省も兼ねて、今すぐにお前を殺してやりたいところだが・・・・・・取り敢えず、その変装を解け。声まで女で気持ち悪いんだよ。やり難いったらありゃしねえ」
「酷い言い草ですね。ですが、既に正体はバレていますからね。いいでしょう」
フェルフィズは軽く肩をすくめると、顔に手を当てた。そして、被っていた神器「変貌の仮面」を外した。瞬間、女兵士の姿が霞み男が姿を現す。そこにいたのは見間違うはずもない、男にしては少し長い髪に薄い灰色の瞳。薄い黒のマントを纏ったその男こそ、影人が異世界にまで来た元凶だ。
「さて、改めてお久しぶりです影人くん。一応、メザミアで1度すれ違いましたがね。まあ、私は変装していて君は気づいていませんでしたから、あれはノーカウントという事で」
「相変わらずふざけた野郎だ。本当、今すぐ殺してやりたいほどにな。
影人はその金の瞳に暗く冷たい闇を灯らせ、フェルフィズを睨みつけた。
「フェルフィズ。てめえ、よくもソラまで利用しやがったな。お前が外道だってのは分かってたが、よくもまあ最低以下の最低をするもんだ。お前、楽に死ねると思うなよ?」
「おお、怖い怖い。ですが、私はきっかけを与えたに過ぎませんよ。ソラ君に嘘をついていたのは君でしょう。子供に嘘をつく君も十分に最低だと思いますが。よくもまあ、私だけを糾弾できますね」
「咎なら当然俺にもある。だがまあ、俺はもうソラとは仲直り済みだ。お前がくれた最低の罠がきっかけでな。そこだけはまあ、感謝してやってもいい。だが、それとこれとは話が別だ」
「くくっ、都合のいい解釈ですね」
「俺は人間だからな。都合のいい解釈なんざ無限にできる」
無機質な地下の部屋に影人とフェルフィズの会話が
「少し話題を変えましょうか。影人くん、これをどう思いますか?」
フェルフィズはそう言うと、封じられているモノ――魔機神の器を指差した。
「・・・・・・時間稼ぎのつもりか? だったら・・・・・・」
「違いますよ。それにメリットもない。どうせ、上のゴタゴタが片付けば吸血鬼や闇人たちもここに来るのでしょう? それに、ここは密室。逃げたくても逃げれませんよ。ここは力の流れが濃すぎるので、転移も難しいですからね」
「・・・・・・」
フェルフィズがふるふるとかぶりを振る。影人は当然フェルフィズの言葉を完全には信用していない。だが、ここで『世界』を展開しても、シェルディアたちとは合流出来ない。『世界』は一種の異空間だからだ。ゆえに、影人は周囲から影闇の鎖を呼び出し、それでフェルフィズの体を縛った。
「おや、随分と乱暴ですね」
「その鎖は何者をも逃がさない鎖だ。少なくとも、お前の力じゃ絶対に壊せない。その状態だったら、お前のくだらない話に少し付き合ってやってもいいぜ」
鎖によって拘束されたフェルフィズに影人はそう言葉を送った。これでフェルフィズは詰みだ。
「で、さっきの質問だが・・・・・・それが魔機神の器か」
「ええ。こうして見ると、アニメチックな格好の少女にしか見えませんが・・・・・・正真正銘の兵器ですよ。しかも、特上以上のね。正直、物作りを司る身としては非常に気になりますよ。彼女がいったいどこから来たのか。なぜ、災厄として現れたのかね」
フェルフィズは顔を動かし、アオンゼウの器を好奇心の詰まった目で見つめた。そこに演技や嘘の色はない。フェルフィズは本心からそう思っているようだった。
「・・・・・・だが、こいつに既に意思はない。シトュウさんに・・・・・・『空』ならその答えも識れるだろうが、お前には永遠に無理だ」
「少し羨ましいとは思いますが、そうやって知った知識にあまり意味はないですよ。過程も含めて知るという事は大事なのです。最も価値ある知識は体験と結びついたもの。私はそう思いますね」
「はっ、
「酷いですねえ、差別ですよそれ」
フェルフィズはやれやれといった顔でそう言葉を漏らした。
「いずれにせよ、この器は宝ですよ。私はこの器が欲しい。ええ、それはそれは心の底から。この作品と私の作品を掛け合わせば・・・・・・くくっ、自然と笑みが出てきますね」
「安心しろ。お前がこの器を手に入れる事はねえよ。それに、お前をあの世に送った後にこの器も俺がこの世から消してやるつもりだしな。『終焉』ならこいつも消せるだろ。危険な力なんてものは、封じるのがいい方法だが、最上はその存在を無くしちまう事だしな」
影人がアオンゼウの器を見つめながらそう呟く。どんな世界にだって、悲しい事だが存在しない方がいいものはあるのだ。
「くくっ、果たしてそれはどうでしょうね。なまじ、機械仕掛けであるからこそ・・・・・・滅ぼし切る事が出来ないかもしれませんよ」
「っ? おい、どういう意味だそれは」
「さあ、どういう意味でしょうね」
意味深な答えをしたフェルフィズに影人は思わずそう聞き返したが、フェルフィズははぐらかすように笑っただけだった。
「ちっ・・・・・・まあいい。無駄話もこれで終わりだ。もうそろそろ、嬢ちゃんたちもここに来る頃だ。地獄に行く覚悟は出来てるか?」
「いいですね、地獄にも1度行ってみたいと思っていたんですよ」
フェルフィズが減らず口を叩いた時だった。地下室の扉が開かれシェルディア、ゼノ、フェリートが姿を現した。
「あら、どうやら既に決着はついているようね」
「あれが忌神フェルフィズですか・・・・・・」
「ふーん・・・・・・なんか案外普通って感じだね」
鎖で縛られているフェルフィズを見たシェルディア、フェリート、ゼノがそれぞれの感想を述べる。特にフェリートとゼノはフェルフィズを初めて見たので、その目に様々な感情の色があった。
「これはこれは。お久しぶりです真祖シェルディア。そして、あなた方は闇人ですかね」
シェルディアたちが来たというのに、フェルフィズは焦る事もなく落ち着いた様子だった。
「さて、嬢ちゃんたちも来た。始めるぜ、お前の終わりを」
影人は右手で軽く帽子を押さえると、言葉を唱え始めた。
「全ての者はこの城へと帰城する。現世絶界。
影人は一息に言葉を唱える。そして、その言葉を口にした。
「『世界』顕現、『影闇の城』」
影人がその言葉を放つと同時に世界が塗り変わる。次の瞬間、先ほどまで地下室だった場所はどこかの城内へと変化していた。
「っ、これは・・・・・・まさか、『世界』ですか?」
その光景を見たフェルフィズが信じられないといった顔になる。影人はその呟きに首を縦に振った。
「ああ、そうだ。ここは俺の世界。不死だろうが何だろうが殺す城。誰も逃がさぬ檻。お前はもうここで死ぬ以外にどこに行く事もない」
「は・・・・・・ははははっ。あなたはつくづく規格外のようですね。まさか、人の身で『世界』を顕現できるとは。更に、そこにどういうわけか『終焉』まで持っている・・・・・・あなた、本当に人間ですか? 正直、悍ましいですよ」
「人間だよ。どこまでもな」
フェルフィズにそう聞かれた影人は真っ直ぐに答えを返す。そして、影人の身に影闇が纏われ始めた。やがて影闇は影人の全身に纏われ、影人は影闇そのものとなった。
『見えるか? お前の胸に魂があるのが。俺はこれからそれに触れる。そして、お前に死の決定を下す。それで、全部終わりだ』
影闇と化した影人が宣言を行う。そして、影人はフェルフィズに向かっての一歩を刻んだ。
「正直、あなたからは色々と話を聞いてみたかったのだけれど・・・・・・それで1度逃してしまったものね。だから、ここでお別れよ。さようなら、忌神フェルフィズ」
「・・・・・・あなたがしっかりと死んだ事を、レイゼロール様に伝えさえていただきますよ」
死へと向かうフェルフィズにシェルディアとフェリートが言葉を送る。ゼノは特にフェルフィズに対して感慨もなかったためか、言葉を送りはしなかった。
「確かに、このままだと私は死にゆく定めのようだ。ああ、残念ですね。あと少しで長年の目的が達成できたというところで死とは。生とはかくも残酷です。ですが・・・・・・私も生物。一応は抗うとしましょうか」
フェルフィズがニヤリと笑うと、黒い閃きが起こった。すると次の瞬間、フェルフィズを縛っていた影闇の鎖が全て切り裂かれた。
『なっ・・・・・・』
純粋な力以外では決して壊れない影闇の鎖が切り裂かれた事に影人が驚く。シェルディア、フェリート、ゼノも「あら・・・・・・」、「っ・・・・・・!?」、「ふーん・・・・・・」と影人と同じような反応になる。
「全てを殺す力を持っているのはあなただけではありませんよ。今の私もどのようなモノでも殺す事が出来るのですから」
フェルフィズの背後から刃までもが黒い大鎌がある。それは全てを殺す力を持った「フェルフィズの大鎌」だった。影闇の鎖は純粋な力以外では破壊されないが、死という特別な、概念であり概念の先を行く一種当然の力だけは例外となる。それはレイゼロールが既に証明していることだ。そして、「フェルフィズの大鎌」は『終焉』と実質的には同じ力だ。ゆえに、大鎌は影闇の鎖を破壊する事ができた。
そして、その「フェルフィズの大鎌」はどういうわけか宙に浮いているように見えた。
「『見えざる腕』を装備しておいて正解でしたね。これがなければ危なかった」
その答えはフェルフィズの腰部に装備された見えない腕の神器が関係していた。その腕は普段折り畳まれており鎖には接触していなかっため、命令を念で与えて動かす事が出来たのだ。そして、腰部のポーチから大鎌を取り出し、影闇の鎖を切り裂いたのだった。
『っ、拘束を解いてもお前が詰んでる事に変わりはない! 俺が『世界』を解除しない限り、お前はどこにも行けないんだからな!』
影人がフェルフィズに向かって踏み込む。フェルフィズは影人の速さに反応する事が出来ない。影人は当然の如くそう考えていた。
だがフェルフィズに近づくと、フェルフィズの影から大きな爪が出現した。そして、そこから闇色の獣が姿を現した。
『っ!?』
影人は反射的に驚いたが、攻撃を避ける事はしなかった。今の影人は不死だからだ。獣の攻撃は影人の影闇の体をぼんやりと切り裂いただけだった。
「こちらの世界で見つけた影に住まう獣です。あなた達がこちらの世界に来ていると分かってから、色々と用意をしていましてね。ああ、まだまだありますよ」
フェルフィズが左手で軽く指を鳴らすと、フェルフィズの影から更に3体の闇色の獣が現れた。それらはシェルディア、フェリート、ゼノへと襲い掛かった。更に更に、フェルフィズはポーチの中から小さなボール状に折り畳んだ複数体の人形を取り出し、それを投げた。投げられた人形たちは敵を襲うという意思の元、影人たちへと接近する。
「さて、後は・・・・・・」
フェルフィズは見えざる腕から「フェルフィズの大鎌」を自身の両手で奪った。そして、フェルフィズは大鎌に自身の生命力を大量に注ぎ込んだ。フェルフィズの、神としての不老不死の無限の生命エネルギーを吸った大鎌はその真の力を発揮する。大鎌の刃が怪しく輝く。
(殺すものはこの空間そのもの。それを強く意識して・・・・・・っ、いや、これは・・・・・・)
フェルフィズが力を振るう対象を意識したが、フェルフィズの脳内にある情報のようなものが入ってきた。それは影人の『世界』の特性。この空間は影人が解除しない限り、どのような空間も認めないというものだ。フェルフィズが今から行おうとする行為はそのルールに抵触する。
(なるほど。詰んでいると言っていたのはこの特性が理由ですか。厄介なルール、もとい特性だ。殺そうと思えば殺せるかもしれませんが、時間がかかりますね。なら・・・・・・)
フェルフィズは違う対象を、影人が『世界』に供給しているエネルギーの流れのようなものを意識した。これを殺せば『世界』はルールに抵触せずに解除する事が出来る。フェルフィズはその流れを殺そうと鎌を虚空に振るおうとした。
『何かしようとしてるみたいだが、やらせねえよ!』
「2回も同じ獲物を逃すわけにはいかないわね」
「主人のためにその命をいただきます」
「悪いけど、壊すよ」
だが、そう簡単にはいかなかった。闇色の獣や人形たちを一緒にして無力化した影人は、影闇の鎖と共にフェルフィズに肉薄し、シェルディアは造血武器をいくつか創造し、フェリートとゼノはフェルフィズに向かって拳を振るわんとした。
「まあですよね。ですが・・・・・・無駄ですよ」
フェルフィズがニヤリと笑う。すると、フェルフィズのいる場所を中心として、ドーム状の障壁のようなものが展開された。影人たちの攻撃はその攻撃に阻まれた。
『っ!?』
「これは・・・・・・」
「なっ・・・・・・」
「壊れない・・・・・・?」
影人、シェルディア、フェリート、ゼノの攻撃を受けても、その障壁はすぐには壊れなかった。4人が驚いた反応を示していると、フェルフィズはこう言った。
「いわゆる無敵バリアのようなものですよ。作るのには運が絡みまくりますし、持続時間は10秒しか持ちませんし、1回使えば壊れますが・・・・・・それでも道具とは使い用です。10秒間はこの障壁はいかなる攻撃にも耐える」
フェルフィズはその神器を靴裏に仕込んでいた。ゆえに、容易に発動する事が出来たのだ。そして、10秒あれば十分。フェルフィズは鎌を虚空に振るい、『世界』の力の流れを切った。瞬間、『世界』を構成する力が途切れ、『世界』が崩壊した。場所が地下室に戻る。
「っ、俺の『世界』が・・・・・・」
元のスプリガンの姿に戻った影人がどこか呆然とした顔になる。フェルフィズはそんな影人の顔に愉快さを覚えた。
「まだ終わりじゃありませんよ」
フェルフィズがチラリと自分の背後、魔機神アオンゼウの器を見つめた。
(霊地を崩すナイフも障壁の外ですし、この状況で霊地を崩すのは無理ですね。ならせめて・・・・・・)
障壁が解除されるまで、後6秒ほど。フェルフィズは再び大鎌に大量の生命力を流し込んだ。黒い刃がまた怪しく輝く。フェルフィズが意識したのは、器を縛る封印と霊地との繋がりだ。器は霊地の力とリンクして封印されている。ゆえに、封印も強力なのだ。
(いくら私の最高傑作が全てを殺す事が出来ると言っても、流石に世界の力の流れは殺す事が出来ない。それは世界を殺す事と同義ですからね。過去にも元の世界で試しましたがそれは出来なかった。だから、霊地とリンクしているこの封印は殺せない。ですが、先ほどと同じ。解釈を変えれば・・・・・・)
残り5秒。フェルフィズがアオンゼウの器に向かい、大鎌を振るう。大鎌は器や鎖を傷つけず、封印と霊地とのリンクだけを切断した。
その結果、霊地の力ありきの封印は解除され、
「・・・・・・」
器は封印から解放された。
――障壁が解除されるまで残り4秒。
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