第347話 異世界でも暗躍を
「――悪いが、今日は議事堂には入れねえよ。月に1回の会議で、お偉いさんたちが今話し合ってるからな」
キリエリゼ北エリア議事堂前。その敷地に入る門の前に立っていた中年手前くらいの見た目の男――頭からツノが生えているので恐らくヘレナと同じ魔族だろう――は、影人たちにそう告げた。
「あら、そうなの。ヘレナとハルはそんな事言っていなかったから知らなかったわ。私たち、世界地図を見に来ただけなのだけれど、それでも無理かしら? 時間は取らないから」
「悪いなお嬢ちゃん。誰も通すなっていう事だから、出来ねえんだ。俺も仕事だからさ。明日なら大丈夫だから、また明日来てくれよ」
「そう・・・・・・それは残念ね」
食い下がったシェルディアに男は申し訳なさそうな顔を浮かべる。シェルディアは言葉通り残念そうな顔を浮かべた。
「意外だな。嬢ちゃんなら無理やり押し通ると思ったんだが。案外素直に引き下がったな」
議事堂から少し離れた所に移動した影人がシェルディアにそう言った。
「別に催眠の力を使ってもよかったのだけれどね。でも、あの通りは人がいたし誰かに見られたら、万が一にもヘレナとハルに迷惑がかかるかもしれないでしょ。あの2人は善意から私たちを泊めてくれたのだし。あの子達のことを考えるとね」
シェルディアが影人の言葉にそう答える。シェルディアが言った2人に迷惑がかかるかもしれないという言葉の意味は、不法侵入をしてシェルディアたちがお尋ね者になるかもしれないという意味だ。そうなれば、身体に特徴がない事が特徴の影人たちの事はキリエリゼ中に知らされ、2人もその事を知る事になるだろう。そうなれば、2人は複雑な気持ちになるかもしれない。まあ、シェルディアが言ったように可能性はほとんどないといえばないのだが。
「へえ、シェルディアって気遣い出来るんだね。意外」
「意外とは失礼ねゼノ。別に、私は気に入った者たちは気に掛けるというだけよ」
シェルディアの言葉の意味を理解したゼノが軽く首を傾げる。そんなゼノに、シェルディアはジトっとした目を向けた。
「それで、結局地図を見る方法はどうするのですか? お2人に別れを言った手前、出戻りは出来ませんし。まあ、ヘレナさんとハルさんは優しいですから、事情を話せばもう1日くらい泊めてくれるでしょうが・・・・・・それは流石に申し訳がないでしょう」
フェリートがその問題を投げかける。フェリートのその言葉に答えたのは影人だった。
「別に何の問題もない。俺が見てきてやるよ。ついでに、地図も複製してくる。それで万事解決だ」
「いや、ですからその方法が・・・・・・っ」
影人の言葉に反射的にそう言いかけたフェリートだったが、途中で何かに気づいたような顔になった。
「そういう事だ。俺を誰だと思ってやがる」
影人はニヤリと笑みを浮かべると、自分のズボンのポケットから黒い宝石のついたペンデュラムを取り出した。
「・・・・・・なるほど。これが世界地図ってやつか」
数分後。スプリガンに変身した影人は議事堂1階のホールに居り、壁に掛けられていた世界地図を見上げていた。どうやらこの世界は巨大な大陸が1つと、数個の島で構成されている世界らしく、ほとんどの国が大陸の中にあるようだ。
ちなみに、影人がどうやってこの場所に侵入したのかというと理由は簡単でスプリガンの力を使ったからだ。スプリガンの透明化の力を使って影人は守衛に気づかれずにここへと侵入したのだった。この方法ならば先ほどシェルディアが言った万が一の可能性は起こらない。
「よしイヴ。この地図を手のひらサイズの地図に複製してくれ」
透明化したまま、周囲に人の姿もなかったので影人は肉声でイヴにそう告げた。影人にそう言われたイヴは『ちっ、仕方ねえな』と言い、空中に地図を作成した。影人はその地図を右手で掴む。
「ありがとよ。完璧だ」
イヴが創造した黒地の紙に白い文字や白い図で描かれた地図に目を落とした影人は、世界地図とそれを見比べイヴに感謝の言葉を述べた。
(さて、後は・・・・・・)
シェルディアたちの所に戻るだけ。影人が持っていた地図に透明化の力をかけた瞬間、
「動くなッ!」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
「っ・・・・・・」
バッと影人は思わず声の聞こえた方向を振り向いた。まさかバレたのか。影人はそう思ったが、しかしそこに人はいなかった。
(何だ? 俺じゃない・・・・・・?)
影人が疑問の顔を浮かべる。自分に対しての言葉でなければ、今の言葉はどこから聞こえてきたのだろうか。少なくとも影人の耳を打ったという事は近くのはずだ。影人は足音を力で消しながら、声のしてきた方向に向かった。
(っ、ここか・・・・・・)
議事堂1階の廊下を進んでいた影人は、とある部屋の前で足を止めた。
ドアが半開きにされていたその場所は、この議事堂に勤める職員たちの働く場所、いわゆるオフィスのような場所であった。その証拠に、部屋には木のデスクや書類などがかなり置かれていた。
「分かってるな? 次に勝手に動いてみろ。この剣がお前たちを斬り裂くぜ」
だが、そこ広がっていた光景は職員たちが働いている光景ではなかった。机やイスは倒され書類は散乱し、職員と思われる者たちはその顔に恐怖と緊張を張り付かせ一箇所に座らされていた。
「はっ、楽勝だったな。ここを制圧するのは」
「ああ。流石はお頭だぜ。この日を狙って大正解だったな。やり易いったらありゃしなかったぜ」
それらの者たちを囲むように、3人の男が職員と思われる者たちに剣を突きつけていた。いずれも若く人間で言うならば20代前半くらいだ。種族は全員ツノが生えている事から魔族。おそらく、先程影人が聞いた声はあの3人の内の誰かの声だ。
(こいつは・・・・・・どうやら、俺はとんでもない事に巻き込まれたみたいだな・・・・・・ったく、どうして俺はいつもこんなに持ってないんだよ)
男たちがどうやって侵入したのかは分からないが、どう見ても事件の真っ最中。緊急事態だ。まさか、異世界でこんな事件に巻き込まれる事になるとは。影人が自身のタイミングの悪さに内心嘆いていると、廊下から男が1人歩いてきた。左手に剣を持っているので、犯人側の仲間と思われる。ただし、ツノの代わりに頭には獣のような耳があるので、魔族ではなく獣人族だ。影人はスッとドアの前から体を動かした。
「おい、お頭の方も問題はない。上手くいったぜ」
「そうか。こっちも大丈夫だ。取り逃した奴らはいない。お頭にそう伝えてくれ」
「分かった」
男は部屋の中に入ると、職員たちに剣を向けている男たちの1人とそう言葉を交わした。そして、男は部屋を出て元来た廊下を歩き、ホールにあった階段を登り2階へと上がっていった。
(・・・・・・あいつは連絡係って感じだな。あいつらの会話と連絡係が上に行ったって事を考えると、こいつらの首領は上階にいるって事か)
わざわざ連絡係を使っているという事は、距離が離れている場所から連絡を取る手段がないという事。影人はスプリガンとして鍛えた観察眼を以て冷静に状況を分析していた。
(この部屋にいる犯人グループは3人。人質は15人。普通なら救助するのは中々難しい状況だが・・・・・・まあ、俺ならイージーだな。息を吸うのと同じくらいに)
この程度の状況ならばどうとでもなる。普段ならば、わざわざこんな面倒事に首を突っ込みたくないのが帰城影人という人間なのだが、今回は事情が別だ。このキリエリゼには影人たちに優しくしてくれたヘレナとハルがいる。この状況は、この街に住む2人と無関係とはいかないだろう。高確率で2人に悪影響が出る。それはよろしくない。影人が望む事ではない。
(・・・・・・一宿一飯の恩は返すぜ。目には見えない形にはなるがな)
足音を消しながら影人は部屋の中へと入って行く。音と姿を消しているので、男たちは影人には全く気づいていない。狩人がすぐそこにいるというのに。
(異世界に来てまでこんな事をやるとは思わなかったが・・・・・・一仕事と行くか、イヴ)
『はっ、つまんねえ仕事になりそうだがな』
イヴは影人にそう言葉を返してきた。そして、影人はスッと右手を男たちへと向けた。
――さあ、黒い妖精よ。異世界でも暗躍を。
「もう1度だけ言おう。諸君らには以下の要求を呑んでもらう。1つ、このキリエリゼの代表を即刻辞退する事。1つ、このキリエリゼの運営権を我らに譲渡する事。ああ、代表を辞退する前に、我らに正式に運営権を譲渡する事を議会で認証していただこう。それが、諸君らの代表としての最後の仕事である」
キリエリゼ北エリア議事堂2階。大会議室。その円卓に座る魔族、獣人族、翼人族、蜥蜴族、悪魔族、魔妖族の6人の代表たちにサーベルを向けながらそう言ったのは、獣人族の女だった。その証拠に頭には狼のような耳がある。その女は20代半ばくらいの赤髪のロングストレートの美人で、右目には黒い眼帯を付け、その顔に嗜虐的な笑みを張り付かせていた。
「ふん、そんな要求を呑めるわけがなかろう!」
女の要求に対しそう言ったのは魔族代表の5、60代くらいの男だった。男は毅然とした態度で女の要求を拒絶した。他の種族の代表たちも女を睨みつけていた。代表たちは椅子に座らされ、女の手下である者たちに剣を向けられているにもかかわらずにだ。そこには、各国家を代表する気概と誇りなどの強い気持ちがあった。
「ふむ、流石は代表。気概がある。だがしかし・・・・・・」
女は感心したようにそう呟くと、目にも止まらぬ速さで魔族の男の右の人差し指を折った。
「ぐあっ!?」
「何か勘違いしているようだ。我々は要求を呑めと言っている。そういった言葉は求めていないのだよ。わざわざもう1度言ってやったというのに・・・・・・いやはや、代表殿は案外に頭が悪いらしい」
突然指を折られ呻いている男を見ながら、女は呆れたようなバカにするような顔を浮かべた。
「次は折るだけでは済まないよ。分かったな?」
「ぐっ・・・・・・」
一転、冷めたように忠告の言葉を投げかける女。そんな女を男は見上げる事しか出来なかった。
「長い赤髪に黒の眼帯・・・・・・お前は『
「おや、流石は同郷の代表殿。私の事をご存知か」
獣人族の代表である屈強な男が女の素性を言い当てる。獣人族の代表にそう言い当てられた女は小さな笑みを浮かべた。
「だが、『迅撃』という呼び名はあまり気に入っていないのだよ。私にはヴァルメリアという名前があるのだから」
「お前の気にいる呼び方などどうでもいい。目的はなんだ? お前たちのような小悪党が、なぜキリエリゼ議会の占拠などという事をする?」
獣人族代表の男がそんな質問をヴァルメリアに飛ばす。男の言葉を聞いたヴァルメリアは笑い声を上げた。
「はははっ! 小悪党か。言ってくれる。やはり、諸君らは気概がある。だがまあ、謹んでその呼び名を頂戴しよう」
ヴァルメリアは余裕たっぷりにそう言うと、こう言葉を続けた。
「さて、私たちの目的だったね。まあ、気まぐれだよ。ちょっと国取りでもして、大きな争いでも引き起こそうかなと。ほら、私たちのような者たちからすれば、乱世の方が儲かるだろ? それくらいの軽い理由さ」
「クズめ・・・・・・! 貴様らのその気まぐれでいったいどれだけの被害が出ると思っている!」
背中から白い翼を生やした30代半ばくらいの女性――翼人族の代表がそう言葉を叫ぶ。その言葉を受けたヴァルメリアはフッと笑みを浮かべる。
「知らないな。そして興味もない。さて、ではそろそろ話は終わりだ。代表諸君、これが最後通牒だ。私の要求を呑まないのならば、まず1人殺す。そして、階下にいる職員たちも殺す。ああ、彼らは1人ずつじゃなくて皆殺しだ。残す意義もないからね。抵抗はお勧めしない。諸君らも知っての通り、この議事堂内は争いが起きないよう魔法が使えないようになっているからね。そして、魔法抜きで諸君らが私たちに勝つ事は不可能だ」
「「「「「「っ・・・・・・!」」」」」」
ヴァルメリアが代表たちを冷たい目で見渡しそう宣言する。その言葉が本気だと理解させられた代表たちはその顔に最も強い緊張の顔を浮かべる。
「・・・・・・俺たちがお前らの要求に屈する事はない。俺らは国家を代表してこの都市を任されたんだ。そういうこった。諦めやがれクソッタレ」
「右に同じく。ここであなた達に屈すれば、より死者が出る。了承する事は出来ない」
黒翼にツノを生やした初老くらいの男――悪魔族の代表と、真っ白な長髪に白を基調とした20代半ばくらいの女――魔妖族の代表がヴァルメリアの言葉に答える。2人の言葉は各国家代表たちの意見らしく、他の代表たちは2人に対し何も言わなかった。
「・・・・・・そうか、残念だ。最後に、その理念だけは立派だと言っておこう。まあ、死ねば何の役にも立たないがね。ギジ、下に言ってマザヘたちに全員殺せと伝えろ。そしてメザジ、悪魔族の代表を殺れ」
「了解っす」
「ああ」
ヴァルメリアの言葉を受け、ギジと呼ばれた連絡係の獣人が部屋を出る。メザジと呼ばれた全身緑の鱗に覆われた蜥蜴族の男が、持っていた剣を背後から悪魔族の代表の背中に向かって突き刺そうとする。場に悲壮な空気が漂い始め、悪魔族の代表が「ここで終わりか・・・・・・」と呟いた時、
突如として、虚空から闇色の鎖が出現し剣とメザジを縛った。
「っ!?」
「っ・・・・・・?」
縛られたメザジは意味が分からないといった顔を浮かべ、ヴァルメリアも不可解な顔になる。その光景を見ていた他の者たちも理解不能といった顔になる。
そして次の瞬間、メザジ以外のヴァルメリアの5人の部下たちも闇色の鎖に拘束された。鎖はヴァルメリアにも放たれていたが、ヴァルメリアは何とか自身の速度で鎖を回避した。
「は・・・・・・?」
「え・・・・・・?」
「な、何だよこの鎖・・・・・・」
体を拘束された部下たちが戸惑いの言葉を漏らす。そんな時、大会議室の入り口の方からドサッという音が聞こえた。一同の注目がそちらに集まる。すると、そこには先ほど部屋を出て行ったはずのギジが意識を失った様子で倒れていた。
「・・・・・・」
そして、ギジの横には1人の男が立っていた。黒い鍔の長い帽子を被り、黒衣に身を包んだ金眼の男だ。男はその視線をヴァルメリアに向けると、こう呟いた。
「・・・・・・案外に速いな。正直、避けられるとは思ってなかったぜ」
「貴様・・・・・・何者だ。なぜこの議事堂内で魔法を使える? この建物の中では何人も魔法を使えないはずだ」
ヴァルメリアが最大限に警戒した様子で男にそう問いかける。その問いかけに黒衣の男は右手で軽く帽子の鍔をつまみながらこう答える。
「・・・・・・別に何者でもない。だがまあ、名前だけなら教えてやる。スプリガンだ。そしてもう1つの質問の答えは・・・・・・多分だが、俺の力が魔法じゃないからだろ」
「スプリガン? 聞かぬ名だな・・・・・・そして、魔法ではないだと・・・・・・? ふざけるな。このような力魔法以外に・・・・・・」
「お前の見解なんてどうでもいい。お前らみたいな奴らと遊んでる時間はないんだ。だから・・・・・・さっさと負けろよ」
黒衣の男――影人の姿がヴァルメリアの視界内から消える。影人は神速の速度でヴァルメリアの背後を取り、ヴァルメリアに背を向けながらそう言葉を述べた。
「なっ・・・・・・!?」
影人の速さに反応出来なかったヴァルメリアが信じられないといった表情で振り返る。『迅撃』の2つ名を持つ自分が全く反応出来なかった。ヴァルメリアはその事実を受け入れる事が出来なかった。
そして、
「終わりだ」
影人は右の拳を振り向いたヴァルメリアの腹部に穿った。当然ながら、ヴァルメリアは影人の拳に反応出来なかった。
「がっ・・・・・・」
結果、ヴァルメリアは影人の拳を受け、その意識を暗闇に引き摺り込まれた。影人は意識を失ったヴァルメリアを抱き止めると、闇色の縄を創造しヴァルメリアを縛り床に転がした。
「なっ・・・・・・」
「信じられん・・・・・・あの『迅撃』を一撃で・・・・・・」
「嘘だ、お頭が一撃でやられるなんて・・・・・・」
その光景を見ていた各国家の代表や鎖で縛られていたヴァルメリアの部下たちは呆然としていた。
「・・・・・・後はお前らだけか」
影人は縛っていた者たちに視線を向けると、ヴァルメリアと同じようにそれらの者を気絶させていった。そして、それらの者たちとギジを闇色の縄で縛りヴァルメリアの側に纏めた。
「・・・・・・階下にいた奴らも同じようにしてある。さっさとどこかにぶち込む事を勧めるぜ」
影人は代表たちにそう告げると、背を向け会議室から出て行こうとした。一応、まだ賊がいる可能性を考慮し階下に闇の騎士を2体ほど残していたが、この様子だと残党はいないだろう。ゆえに、影人は階下にいた騎士たちを消した。
「待ってくれ! 君はいったい・・・・・・!」
魔族代表の男が影人にそう言葉を掛ける。それは反射的に出た言葉だった。だが、全ての代表たちの心を代弁する言葉だった。
「・・・・・・さっき言っただろ。俺はスプリガンだ。それ以上でもそれ以下の者でもない」
半身振り返りそう答えた影人は、その姿を透明化の力で消しその場を去った。
「消えた・・・・・・」
「我々は夢でも見ているのか・・・・・・?」
残された代表たちは呆然とした顔でそんな言葉を漏らした。
「・・・・・・悪い。遅くなった」
議事堂から出た影人はシェルディアたちがいた場所まで戻った。変身はまだ解いていない。スプリガン姿のままで。
「お帰りなさい影人。本当に遅かったわね。何かあったの?」
「まあちょっとな。でも、大丈夫だ。大した問題じゃなかったから」
「そう? それならいいけど」
影人の答えを聞いたシェルディアはそれ以上深くは聞かなかった。影人に嘘をついている様子はなかったからだ。その事は、影人があのテロ事件を本当に大した問題ではないと思っている事を暗に証明していた。
「それで、地図は?」
「ちゃんと創ってきた。ほらよ」
そう聞いて来たゼノに影人は地図を見せた。フェリートとシェルディアもその地図を見た。
「へえ、今はこんな風になってるのね。ここから1番近い国は・・・・・・獣人族の国みたいね」
「獣人族の国の目的地の名前は、確かメザミアという所でしたね。世界地図なので、一国家の詳しい地名は載っていませんが・・・・・・取り敢えず、そこを目指す感じでしょうか」
シェルディアとフェリートがそれぞれ感想を呟く。フェリートは続けて影人にこう聞いて来た。
「この地図はずっと残り続けるのですか?」
「俺が変身してる間はな。だから、次の目的地に行くまでは変身し続ける。変身解除しても、1回見た物は創れるから心配はいらねえよ。取り敢えず、地図は嬢ちゃんに渡しとくぜ」
影人が地図をシェルディアに渡す。影人から地図を受け取ったシェルディアは「分かったわ」と頷いた。
「では、まずは獣人国家のメザミアを目指して旅をしましょうか。メザミアという名の土地は私がいた時にはなかったから転移は出来ないのが残念だけど。まあ、道中に色々と聞いてみましょう」
「そうですね。獣人族国家はここから西のようですから西に進めば着くはずです」
「西側となると、ヘレナとハルの家がある住宅街エリアの方ね。じゃあ、そちらの方から外に出ましょうか。行くわよ、あなた達」
フェリートの言葉を聞いたシェルディアはそう言って歩き始めた。フェリート、ゼノ、影人はシェルディアの後に続く。
「・・・・・・」
影人は最後に議事堂の方にチラリと視線を向けた。すると、警官と思われるような者たちが議事堂へと入って行くのが見えた。恐らく、誰かが知らせ、あのテロリストたちを回収しに行ったのだろう。これで、ヘレナとハルの平穏は脅かされないはずだ。その事を確認した影人は視線を議事堂から外した。
――こうして、一同はキリエリゼを後にし、獣人族の国家を目指すのだった。
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