第341話 忌神との戦い(2)
「ふぅ・・・・・・スッキリしたぜ。やっと、てめえのムカつく顔を殴れたからな」
フェルフィズを右拳で殴り飛ばした影人は、小さな笑みを浮かべそう言った。
「おー、よく飛んだな。あれは頬骨砕けて歯も何本か逝ってそうだ。ははっ、愉快愉快」
「ふふっ、余裕ぶっていた者が泡を食う光景は面白いわね。それが黒幕気取りの者とあれば余計に」
「ふん・・・・・・無様だな、フェルフィズ」
その様子を見ていた零無、シェルディア、レイゼロールがそんな感想を漏らした。
「ぐっ・・・・・・あ・・・・・・」
一方、影人に殴り飛ばされたフェルフィズは痛みに朦朧としながら口の中に異物感を感じ、それを吐き出した。すると、血と共に何本かの歯が地面に落ちた。全身も受け身を取れなかったため鈍く痛んだ。痛いと感じるのはいったいいつぶりだろうか。
「な、なぜ・・・・・・私の場所が・・・・・・」
フェルフィズはよろよろと何とか立ち上がると、理解できないといった顔を浮かべた。自分は今殴られるまで、誰にも触れられていない。発信機のようなものをつけるのは不可能だ。それに加えて、万が一転移の言葉から転移先を特定されないように、転移先もランダムに設定した。どうしてこんなに早く自分を追って来る事が出来たのか。フェルフィズには見当もつかなかった。
「わざわざお前に教えるわけねえだろ。絶望を与えるっていう意味で教える選択肢もあるにはあるが、今回は教えない方が圧倒的に利点があるからな」
フェルフィズの呟きを聞いた影人はしかし、その答えを与えはしなかった。ここで得意げにその方法を教えるのは不注意極まりない。三流のする事だ。影人は一応、自分がそれなりの暗躍者であるという自覚はあるので(正直どうかと思うが)、その選択をしたのだった。そして、影人がその選択をしたのはフェルフィズを警戒しての事だった。
「あ・・・・・・案外に頭が回りますね・・・・・・い、意外です・・・・・・私に騙された、お人好しのバカだと・・・・・・思っていたのですが・・・・・・」
大きく腫れた左頬のために左目を細めながらフェルフィズはそんな言葉を述べた。フェルフィズは小さな笑みを浮かべていたが、その笑みは強がりの笑みにしか見えなかった。
「まだそんな口利ける余裕があったか。存外にタフじゃねえか。いいぜ、ならてめえがどこまでそんな口叩けるか試してやるよ」
「ま、まるでチンピラのよう・・・・ですね・・・・・・どうやら・・・・・・品性はないようだ・・・・・・」
フェルフィズは何とか影人にそう言葉を返すと、左手で自分の腫れた頬に触れた。すると、触れた箇所がボゥと暖かく光った。
「っ、何をしやがった?」
「わざわざ、あなたに教える意味がありますか? ですが、私は優しいので教えてあげましょう。先ほどと同じ魔術ですよ。自然治癒の効果を高めるね。神は人間とは違い不死なので自然治癒力が高い。それを更に高めたのでほら、この通り腫れもかなり引いたでしょう」
ほとんど元通りの滑舌に戻ったフェルフィズが影人にそう説明する。フェルフィズの説明を聞いた影人は「なるほどな」と呟いた。
「だが、お前が優しいってのは嘘だろ。今の説明も時間稼ぎが目的だろ」
「気づいていましたか。本当に、頭の回転だけはそれなりですね。・・・・・・そして、少し腹が立ちますね。時間稼ぎをされても別に問題はないとあなたが、いやあなた達が思っている事が」
フェルフィズは影人とその背後にいたレイゼロールやシェルディアなどを睨んだ。影人がフェルフィズの思惑を言い当てたように、フェルフィズも影人たちの考えを見透かしていた。
「別に舐めてはいないわよ? ただ、色々と程度が知れたと思っただけ。確かに、魔術を使える事は驚いたけど、それは一種の技術のようなもの。極めたとしても、出力はそれほどでもない。私たちの脅威にはならないわ」
「ふん、黒幕を気取っている者が表舞台に引き摺られた時点で状況は詰みだ。加えて、お前がどこに逃げても我たちはお前の居場所が分かる。お前の敗北は必至だ」
「まあ、全員不死みたいな連中に加えて不死殺し。それに大体の状況をどうにかする力もあるからな。対してお前は1人で、神力も振るえない。魔術という小手先の技や自分の作った神器しか頼れない。そして、逃げれないとくれば・・・・・・まあ、どう見ても結果は分かるよな。安心しろよ『物作り屋』、多少付き合いのある仲だ。この吾が散り様くらいは見届けてやるよ」
シェルディア、レイゼロール、零無はフェルフィズにそう言葉を返した。
「・・・・・・癪に障る奴らですね。そんな奴らは、ああ・・・・・・殺してしまいたい」
フェルフィズは低い声でそう呟くと、腰のポーチを開け、取り出したい物を思い浮かべながら手を入れた。このポーチの中は亜空間になっており、様々な物(亜空間ゆえ大きさは関係ない)を収納する事が可能だ。これもフェルフィズが作った神器だ。そして、フェルフィズはポーチの中からある物を取り出した。
いや、その物の形状からするに引き出したという方が適切か。フェルフィズは何か黒い棒のような物を握りポーチの中から徐々にそれを引き出す。そして、それは完全に姿を現した。
「なっ・・・・・・」
「っ!?」
「っ・・・・・・なるほど、あの戦い以来それが行方不明だったのは・・・・・・」
「へえ・・・・・・ちょっと面白くなってきたな」
それを見た影人、レイゼロール、シェルディア、零無がそれぞれの反応を示す。影人とレイゼロールは純粋に驚愕したように、シェルディアは真剣な顔を、零無は言葉通り楽しげな笑みを浮かべる。
フェルフィズが握っていたのは大鎌だった。ただし、普通の大鎌とは違いその刃は黒く染まっていた。そして、その大鎌の名前を影人たちは知っていた。
「『フェルフィズの大鎌』・・・・・・」
影人がその大鎌の名前を呟く。それは握っている者と同じ名を冠した、全てを殺す大鎌だった。
「どういう事だ・・・・・・? 何であの大鎌をあいつが・・・・・・」
フェルフィズの大鎌をフェルフィズが握っている。その状況を理解できなかった影人がその顔を疑問の色に染める。あれはラルバがレイゼロールを殺すために壮司に与えた物のはず。確かにその制作者はフェルフィズだが、使用者は違ったはず。影人がそんな事を考えていると、シェルディアがこんな言葉を掛けてきた。
「ああ、あなたはまだ知らないのね。実は、あの大鎌は最終決戦の後に行方不明になっていたの。レイゼロールが投げたあの大鎌は後日捜索されたのだけど・・・・・・どこにもなかったわ」
「・・・・・・その答えが今分かったな。どうやら、奴が回収していたらしい。ふん、火事場泥棒とはまさにこの事だな」
レイゼロールがフェルフィズを睨む。レイゼロールにそう言われたフェルフィズは、ふっとバカにするように笑った。
「心外ですねえ。これはそもそも私が造った物ですよ。正当なる所有者は私だ」
フェルフィズがどこか狂気的な笑みを浮かべ、両手で大鎌を持ち構える。そして、フェルフィズは言葉を続けた。
「さて、私の手には私の最高傑作が、全てを平等に殺す武器がある。さあ、これで対等です。あなた達全員、死の奈落へと落としてあげましょう!」
フェルフィズが叫ぶと、フェルフィズの周囲に小さな魔法陣が複数出現し、そこから小さな火球がいくつか放たれた。恐らく、これも魔術だろう。
「ははっ! さあ、死を晒しなさい!」
同時にフェルフィズも一歩を刻み1番近い影人の方へと近づいて来る。火球とフェルフィズどちらにも意識を割かねばならないその攻撃は、普通ならば脅威だ。しかも、フェルフィズの武器が全てを殺す大鎌ならば尚のこと。
だが、
「はっ、当たるかよそんな攻撃」
残念ながらというべきか。影人は、いやフェルフィズ襲撃に参加した者は誰1人普通ではなかった。影人は何でもないようにその火球を避けると、逆にフェルフィズへ肉薄した。
「っ!? そう来ますか! ですが、それは――!」
悪手。フェルフィズはそう言葉を紡ごうとして、自身の名を冠した大鎌を振るおうとした。しかし、影人は大鎌が振るわれる前よりも速く、フェルフィズの腹部に右の蹴りを放った。
「がっ!?」
「・・・・・・そんな大振りでトロい攻撃あくびが出るぜ。もう1度言ってやろうか。当たるかよ、そんな攻撃」
フェルフィズがその顔を苦悶の色に染める。影人は冷たい声でそう言うと、フェルフィズを蹴り飛ばした。フェルフィズは大鎌を持ったままボロ雑巾のように飛ばされて行った。
「確かに、お前がその大鎌を持っている事には驚いた。だが・・・・・・それだけだ」
蹴り飛ばしたフェルフィズを見下ろしながら、影人はつまらなさそうな顔を浮かべる。不死だろうが何だろうが全てを殺す「フェルフィズの大鎌」は確かに脅威だ。影人はもちろん、シェルディアやレイゼロールも油断は出来ない。
しかし、対処法としては単純明快。攻撃に当たらなければいいだけだ。そして、フェルフィズと影人ではその速さの次元が違う。速さの次元が違えば、基本的に攻撃には当たらない。かつて影人が零無に『終焉』の闇を当てられなかったのと同じように。
それに加えて、影人は何度も「フェルフィズの大鎌」を相手にした事がある。しかも、かつて大鎌を扱っていた壮司はフェルフィズよりももっと速かったし、鎌捌きも壮司の方が上だった。以上の理由から、影人は「フェルフィズの大鎌」に対しての対策が出来ていた。
「ゲホッゲホッ! ああくそ・・・・・・流石に化け物ですね、スプリガンは・・・・・・」
影人の蹴りによって内臓にダメージを負ったためだろう。フェルフィズは吐血した。そして、左手を腹部に当て自己治癒力を増進させる魔術を使用した。正直大怪我なので、すぐには治らないが気休めにはなるだろう。フェルフィズはそう考えた。
「おい影人。もういいだろう。さっさと我にそいつを殺させろ」
「本気で殺る気かよ? 別にまあ、お前を止めるつもりはねえが・・・・・・」
痺れを切らしたようにそんな事を言ってきたレイゼロールに、影人はそう言葉を返す。すると、シェルディアがこんな言葉を挟んで来た。
「最終的に殺すのはいいけど、すぐにはもったいないわ。有名な狂神にして忌神が生きていたのだもの。面白い話もいっぱいあるだろうし聞きたいわ。だから、今は捕縛しましょう。ねえ影人、あなたの『世界端現』の鎖でフェルフィズを縛って」
「おいシェルディア、何を勝手な事を・・・・・・」
「嬢ちゃんらしい理由だな。だがまあ、いいぜ」
影人は苦笑を浮かべると、倒れているフェルフィズに右手を向けた。
「『世界端現』。影闇の鎖よ、出でて我が意に従え」
影人がそう唱えると、虚空から闇色の鎖が出現した。純粋な力以外では壊せぬ何者をも縛る鎖だ。一部の例外以外、捕えられた時点でその者は拘束から抜け出せない。まあ、今までこの鎖を使用した相手は全員例外だったので、未だに完全に対象を捕らえたという実績はないという皮肉があるのだが。
影闇の鎖がフェルフィズへと向かう。だが、フェルフィズはボソリと言葉を唱えていた。
「ゆ、『行方の指輪』よ・・・・・・」
影闇の鎖がフェルフィズを捕らえようとする。しかし、ほんの刹那の差でフェルフィズは黒い粒子となってその場から消えた。
「ちっ、また逃げやがったか。転移の途中なら捕えられたんだが・・・・・・運のいい奴だ」
転移したフェルフィズに対し影人がそう毒づく。だがまあいい。どうせフェルフィズは逃げる事は出来ないのだから。
「シトュウさん――」
影人はシトュウに念話を試みた。
「ゲホッゲホッ・・・・・・はあ、はあ・・・・・・」
どこかの平地へと転移したフェルフィズが血混じりの咳をする。鎌を杖代わりにしながら、フェルフィズは思考した。
(全く大ピンチですね・・・・・・ですが、レイゼロールのあの言葉を信じるならば、奴らはすぐに現れるはず。また転移をしなければ・・・・・・)
レイゼロールは「お前がどこに逃げても我たちはお前の居場所が分かる」と言っていた。普通ならばフェルフィズを追い詰めるためのブラフの言葉だ。フェルフィズも敵の言葉を信じ切る事は出来ないが、ヒントが何もない今1つの指標にはなる。そして、それを確信に変えたい。フェルフィズはそう考え、いつでも逃げられるように「行方の指輪」に言葉を吹き込んだ。
「・・・・・・よう、また来てやったぜ」
すると少しして、影人たちがまたフェルフィズの前に現れた。やはり、自分の居場所がバレている。フェルフィズは指輪を使ってまた転移した。
「あ、おい・・・・・・ちっ、また逃げやがったか。往生際の悪い奴だな。シトュウさん、何回も悪い。次にあいつが転移した場所まで転移を頼む」
『神使いが荒いですね・・・・・・ですが、分かりました』
影人がシトュウに念話をして、シトュウが了解の言葉を返す。シトュウは全知の力を知ってフェルフィズの場所を識ると、影人たちを転移させた。これが影人たちがフェルフィズを追いかけられている理由だった。
そしてそれから――
「はあ、はあ、はあ・・・・・・」
「・・・・・・鬼ごっこはもう終わりか?」
転移による幾度かの追いかけっこが展開された。最終的に、フェルフィズの指輪が短時間での無理な連続使用によって壊れた事により、フェルフィズはどこかの崖の上へと追い詰められていた。
「え、ええ・・・・・・白状すると、私はもう転移は出来ない。ですので、鬼ごっこは終わりです。ですが、私も大体分かりましたよ。あなた達がどうやって私を追っていたのかが。・・・・・・あなた達は因果のようなものを辿って私を追っていますね。目には見えぬ絶対的な何かの力で。でなければ、気配を隠蔽している私を追えるはずがない」
「・・・・・・どうだかな」
ある意味当たっていたフェルフィズの答えに、影人はそう呟く。フェルフィズはその言葉を聞いて、「その答えだけで充分ですよ」と小さく笑った。
「私が知りたかったのは、確信したかったのはその事ですからね・・・・・・さて、なら非常に嫌ですが最後に賭けといきますか・・・・・・!」
フェルフィズはポーチから2つの小瓶を取り出した。小瓶には黒と赤の何やら液体のようなものが入っていた。
「やらせるかよ・・・・・・!」
「そろそろ、終わりにしましょうか」
「終わりだ・・・・・・!」
フェルフィズの言葉から何か悪足掻きをするつもりだと踏んだ影人がフェルフィズに肉薄する。同時に影闇の鎖も呼び出す。影人に続きシェルディアとレイゼロールもフェルフィズへと近づく。速度の次元が違うフェルフィズは行動を起こす前に捕えられる。
だが、影人たちや鎖がフェルフィズに近づいた瞬間、フェルフィズの姿がフッと煙のように掻き消えた。
「「「っ!?」」」
3人が驚いた顔を浮かべる。まさか、先ほどの言葉はブラフでまた転移か。いや、だが今までの転移の消え方と今の消え方は違う。影人たちがそんな事を考えていると、パリンと何かが割れる音が聞こえた。
「私が転移して、あなた達が追いかけてくるまでには数秒の時間差がある。それだけが唯一の私の利点。だから、私はその間に仕込みを1つさせていただきましたよ」
声は影人たちの背後から聞こえてきた。影人たちが振り向くと、数メートルほど離れた場所にフェルフィズがいた。フェルフィズは自身の神器と魔術を組み合わせる事で、擬似的な瞬間移動を行ったのだ。これはフェルフィズの隠し札のため、切るべきタイミングをフェルフィズは見計らっていた。
もちろん、フェルフィズは影人たちの速度には反応出来ないので、隠し札は先ほどの炎の魔術と同じ設置、もしくは地雷型に設定していた。
「そして、どうやら賭けは私の勝ちです」
フェルフィズが狂気を宿した笑みを浮かべると、フェルフィズの背後にパチパチと黒いスパーク迸る闇色の穴が出現した。
フェルフィズが割った2つの瓶は互いに混ざる事によって次元と空間を数秒間だけ不安定にさせるものだ。その結果、向こう側の世界への入り口を開くというものであった。
ただし、試作品のためその成功率は10パーセントほど。ゆえに、入り口を開けるかどうかは賭けだった。失敗すればフェルフィズは万策が尽き、フェルフィズは終わりだったが、幸運はフェルフィズへと傾いた。
「更にそして・・・・・・私の最高傑作の真の力を使いましょう」
フェルフィズは自身の生命力をフェルフィズの大鎌へと流し込んだ。いや、喰わせた。フェルフィズが大鎌に喰わせた生命力は普通の人間ならば即死するような量だ。しかし、フェルフィズは不老不死の神。いわば、無限の生命力を宿した存在だ。地上にいてもそれは変わらない。ゆえに、フェルフィズに影響は何もなかった。
「・・・・・・!」
フェルフィズの生命力をエネルギーとして吸収した大鎌の刃が昏い輝きを放つ。フェルフィズは目には見えぬ、「自身に関する情報を知られる」という因果を意識し虚空に向かって大鎌を振るった。その結果、その因果は殺された。これで、因果から自分の居場所を知られる事はなくなった。
「・・・・・・これで憂いはなくなりました。では、さようなら皆さん。2度と会いたくはないですが、いずれまた会う日もくるでしょう」
「逃すか! 『世界』顕現、『影闇の――!」
フェルフィズは別れの挨拶をすると、フッと体重を後ろに掛けて穴の中に倒れようとした。影人は『世界』を顕現しフェルフィズを逃さないようにしようとし、シェルディアとレイゼロールはフェルフィズに神速で接近し、フェルフィズを逃すまいと手を伸ばしたが間に合わず、フェルフィズは穴の中へと姿を消した。同時に、闇色の穴も虚空へと収束した。
「っ、ちっ! 今度はどこに逃げたか知らねえが無駄だ。シトュウさん、フェルフィズの所まで頼む!」
舌打ちをした影人はシトュウに幾度目かの同じ言葉を伝える。だが、シトュウから返って来た答えは今までのものとは違ったものだった。
『すみませんが・・・・・・どういうわけか彼の忌神の場所を識る事が出来ません。先ほどまでは識る事が出来ていたのですが・・・・・・』
「っ!? って事は・・・・・・」
『はい。残念ですが・・・・・・ここで一旦追跡は中断です。申し訳ありません』
「いや、シトュウさんが謝る事は何にもねえよ。でも、そうか・・・・・・」
影人はシトュウにそう言うと、悔しげな顔を浮かべた。影人の雰囲気から何かを悟ったのか、レイゼロールとシェルディアは厳しい顔になり、零無は「ふむ」と何かを考え込んでいた。
(油断したつもりはなかった。条件もこっちが圧倒的に有利だった。だが、フェルフィズの奴には逃げられた。・・・・・・不甲斐ないぜ)
最初から『影闇の城』を展開するなり、『終焉』を使って殺す気でいけばよかった。シェルディアやレイゼロールがいたので、少しだけ気が緩んでいたかもしれない。影人はそう自分を分析すると、己を責めた。
(・・・・・・今回は俺の負けだ。だけど、次は俺が勝つぜ。待ってやがれ。必ずまたお前を見つけてやる・・・・・・!)
影人はそう誓いを立てるとギュッと拳を握った。
――こうして、フェルフィズとの戦いはフェルフィズが影人たちから逃げ切ったという形で幕を下ろした。
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