第332話 怪人の立ち位置は
「・・・・・・」
4月30日火曜日、午前8時過ぎ。魅恋は教室の自分の席に座りぼうっとした様子で虚空を見つめていた。
(本当、何だったんだろ。土曜日に見たあの骸骨の怪物と、あの黒い男の人は・・・・・・)
あの日からずっとあの光景の事ばかり考えている。突然現れた骸骨の怪物。そんな怪物から魅恋と海公を助けてくれた黒衣の男。スプリガンと名乗ったあの金の瞳の男の事が。
(気になる。知りたい。あの光景の意味が。この世界でいったい今なにが起きてるのか。あの人が何者なのか・・・・・・)
寝ても覚めてもその気持ちが魅恋の胸中を占め続ける。だが、魅恋にはそれを知る手段がない。だけど、このままこの気持ちが消えるとは思えない。どうするべきか。魅恋がそんな事を考えていると、
「――魅恋。魅恋ってば!」
「え・・・・・・な、なに?」
そんな声が魅恋の耳を打った。友人である女子生徒に呼びかけられた魅恋はハッとしたような顔でそう言った。魅恋の言葉を聞いた女子生徒は呆れたような顔を浮かべていた。
「何じゃないよもう。何回も呼びかけてたのに。どうしたの魅恋。なんかいつもと違うよ?」
「大丈夫魅恋? 体調悪いとか?」
「保健室行っとく?」
女子生徒は魅恋にそう言って、周囲にいた他の女子生徒たちも魅恋にそんな言葉を掛けた。最初に声を掛けて来た女子生徒とは違い、こちらは主に心配するような口調だった。
「あ、ああゴメン。・・・・・・ちょっと考え事しててさ。体調悪いとかじゃないから、そこは気にしなくてオケだから」
女子生徒たちに対し、魅恋は慌てたように笑みを浮かべた。魅恋の答えを聞いた女子生徒たちは安心したような顔になる。
「そう? ならよかった」
「考え事ってなに? 悩んでるみたいだったら私たちに相談してよ」
「い、いやその・・・・・・そ、それは言えないっていうか・・・・・・」
魅恋が言葉に詰まる。脳裏に浮かぶは土曜日に遭遇した黒衣の男の言葉。魅恋はあの光景を他人に伝える事、それ自体をあの男に禁止されている。正直に言えば、今すぐにでもこの事をいま魅恋の周囲にいる友人たちに伝えたいし、あれは単なる脅しで喋っても問題ないのではという思いもある。
しかし、話してしまえばこの繋がりのようなものが消えるかもしれないという漠然とした思いも同時にあり、結局魅恋は男の言葉を守っていた。
「えー、私たちにも言えない考え事ってなに? 怪しい〜」
「あ、私分かっちゃったかも。魅恋、それ絶対恋の悩みでしょ! あー、遂に魅恋にも好きな人出来たか〜!」
「え!? ちょ、違うんですけど!?」
急にそんな事を言われた魅恋は驚き焦ったようにその首をブンブンと横に振った。だが、魅恋の反応を照れ隠しだと思ったのか、女子生徒たちはニヤニヤとした顔になると、更に盛り上がった。
「照れるなって! で、誰を好きになったの? やっぱり女子にぶっちぎり1番人気の香乃宮先輩? それとも他の人?」
「ねえ、教えてよ〜!」
「だ、だから本当に違うんだって! 勘違いすんなし!」
「嘘だ〜! いいから教えろ!」
魅恋は必死に弁明したのだが、1度恋愛話と思い火がついた女子たちは中々納得しなかった。結果、魅恋の周りはいつも通り賑やかになった。
ちなみに、魅恋たちの話を聞いていた男子生徒たちは、「き、霧園さんに好きな人が出来ただと・・・・・・!?」「そんなぁぁぁ!」「許せん、誰だそいつは!」「も、もしかしたら俺かも・・・・・・!」「ワンチャンある・・・・・・!」などといった反応だった。この学校の男子はとにかくアホが多いようである。
「・・・・・・」
そんな魅恋たちの様子を教室の隅から観察していた男がいた。影人だ。前髪の下の両目で影人はジッと魅恋を見つめていた。こういう時、前髪が長いと視線が他人には分からないので便利だ。
(・・・・・・まだ土曜の事を喋ってはないみたいだな。脅しが効いてるか)
魅恋を監視していた影人は内心でそう呟いた。お喋りだと勝手に思っていたが、魅恋は影人が思っているよりも口が堅かった。
ちなみに、魅恋がSNSなどにあの日の事を書き込んでいないか影人は出来る限り調べてみた。魅恋のSNSのアカウントは知らないので、呟きそうなキーワードを入れての荒っぽいやり方だったが。その結果、一応魅恋があの事を発信してはいないと影人は考えていた。
(そして、こいつも・・・・・・)
「・・・・・・」
影人は視線を自分の隣の席に座っている海公に向けた。そう。魅恋だけでなく海公も影人がスプリガンとして口止めした1人だ。海公に関しては魅恋ほど心配してはいなかったが、海公も今のところは誰かにあの事を吹聴した様子はない。海公は真剣な、それでいて心ここに在らずといったような顔を浮かべていた。
「・・・・・・大丈夫か春野。お前、なんだかやけに表情が硬いが」
影人は海公に声を掛けた。海公がそんな顔を浮かべている理由は大体予想がついていたが敢えて。影人にそう話しかけられた海公は少し驚いたような顔になり、影人の方に顔を向けて来た。
「え? そ、そうですかね・・・・・・?」
「ああ。この休みの間に何かあったのか? もちろん、言えないようなら言わなくてもいいが」
影人はさりげなく海公に鎌をかけた。脅しを掛けた当事者が抜き打ちをするという、中々えげつない方法だが仕方がない。これは必要な事だ。それに、影人にしか取れない方法でもある。ならば、このアドバンテージを利用すべきだろう。海公がポロリとあの日の事を漏らすかどうか、影人は確かめた。
「あ、そ、その・・・・・・実は・・・・・・」
影人にそう聞かれた海公が何かを言いたげな表情を浮かべる。言うか。言わないか。影人は前髪の下の両目を細めた。
「・・・・・・すみません。やっぱり何でもないです。ちょっと考え事してただけですから」
その結果、海公は苦笑いを浮かべその首を横に振った。海公もスプリガンの言葉を守った形になった。
「・・・・・・そうか。考え事の最中に口出しして悪かったな」
「いえ。お気遣いありがとうございます。素直に嬉しいです」
影人が少し申し訳なさそうな声でそう言うと、海公は笑みを浮かべた。その笑みはかなり可愛らしくとても男性には見えない。世の中は不思議だなと海公の笑顔を見て急に哲学的な事を思った影人は、鞄の中から図書室で借りていた本を取り出しページを開いた。そして、文字に目を落とす。聞き耳を立てながら。
(引き続きしばらく観察はするが・・・・・・取り敢えずは2人とも大丈夫ってところだな)
2人の様子を観察していた影人はそう判断した。そして、文字を読まずに見つめながら思考に耽る。
(とにかく、他にも色々やらなきゃいけない事、気になる事があり過ぎるから、霧園と春野の問題にばかり構ってられねえんだよな。本当、今度こそせっかく全部終わったってのによ・・・・・・)
フェルフィズの事、あちら側からの流入者の事、シトュウと再び会わねばならない事、そして復活する光導姫・守護者のシステムなど、思考のリソースを占めるものが多過ぎる。全く、集中して本も読めやしない。
「はあー・・・・・・ああ、今日もいい天気だな」
窓の外に広がる青空に視線を移し、影人は現実逃避気味にそう言葉を漏らした。
「――え? 僕はまた光導姫になるのかって?」
昼休み。影人は暁理と一緒に学食エリアの端の席で昼食を摂っていた。突然影人にそんな事を聞かれた暁理は、カレーうどんを箸に挟みながら軽く首を傾げた。
「ああ。ソレイユの奴から聞いてないか? また光導姫と守護者の存在が必要になったんだ。で、元光導姫のお前はどうするのかと思ってな。ちょっと聞いてみたかったんだ」
弁当のちくわの磯辺揚げを箸で摘みながら、影人は補足するようにそう言った。昼休みの学食エリアはかなり賑やかなので、こういった話をしても喧騒がかき消してくれる。少し違うが、木の葉を隠すなら何とやらと実質的に同じだ。まあ、例え誰かが自分たちの話を聞いたところで、ゲームか何かの話だと思うのが関の山だろう。ゆえに、影人は問題ないと考えていた。
「僕をお昼ご飯に誘った理由はそれか・・・・・・君から誘うなんて珍しいからちょっと嬉しかったのに・・・・・・これじゃあ喜び損じゃないか・・・・・・」
「?」
暁理が暗い顔でブツブツと何か言葉を呟く。聞き取りにくい声だったので、暁理が何と言っているか影人には分からなかった。
「で、どうなんだ? ちなみに、ソレイユの話だと朝宮とか月下の一部の奴らはもう光導姫に戻ってるって話だ。まあ、あいつらの場合は戻るっていうか再継続って言った方が正しいかもだがな」
影人が催促の言葉を述べる。ちなみに、影人が再継続の方が正しい云々と言ったのは、その光導姫たちが零無との戦いの時点で光導姫に戻っていたからだった。
「なにそれ。変な言い方。というか、君ソレイユ様とちょくちょく会ってるの? 君がスプリガンっていうのはもう分かったけど、結局それ以外は僕ほとんど知らないからさ」
「ああ、そういやそうだったな。別に話してもいいんだが、長くなるんだよな・・・・・・まあ、また時間ある時に話すぜ。で、質問の答えだが、ソレイユとはまあそんな感じだ」
パーティーの時に影人が暁理に明かしたのは、自分がスプリガンだという事実だけだ。影人がなぜ暗躍していたのかなどは今度暗躍譚として話すと言ったが、今日も時間がありそうにない。影人は再びその話を先に流した。
「ふーん、そうなんだ・・・・・・こっちも質問の答えだけど、あったよ。昨日の昼ぐらいに急に神界に呼び出されてさ。急に呼び出してごめんって言われて、ソレイユ様から話があった。金曜日の世界規模の地震に、まさかあんな意味があったなんて思わなかったよ」
暁理は真剣な顔になるとその首を縦に振った。暁理はソレイユからあの地震以降のこの世界の状態からを教えられた。もちろん、その黒幕たるフェルフィズの事も。前回の反省や、伏せるべき情報もなかったため、ソレイユは光導姫たちに全てを正直に話していた。
「そうか・・・・・・それで、お前は何て答えたんだ? ソレイユにもう1度光導姫になってくれないかって聞かれたんだろ」
「うん、聞かれた。僕の答えは・・・・・・これさ」
暁理はそう言うと、自身の右手の制服の袖口を捲った。すると、暁理の右手首にブレスレットが見えた。緑色の宝石がついたブレスレットが。
「っ、それは・・・・・・」
そのブレスレットに影人は見覚えがあった。陽華と明夜の変身媒体であるブレスレットだ。といっても、陽華のブレスレットの宝石は赤で、明夜のブレスレットの宝石は青だったが。
「うん。光導姫になるための変身媒体だよ。やっぱり知ってたんだ」
「ああ、まあな・・・・・・」
影人の反応を見た暁理がそんな言葉を述べる。暁理の言葉を聞いた影人はコクリと頷いた。
「でも、そっか。朝宮さんと月下さんも光導姫に戻ったんだね。まあ、あの2人ならそっちを選ぶだろうなとは思ってたけど」
影人の先ほどの言葉を思い出しながら、暁理はそう言った。あの2人が戦う理由を暁理は知らないが、お人好しで知られている2人だ。恐らく、光導姫に戻ったのも放っておけないとかそんな理由だろう。暁理はそう思った。
「・・・・・・なあ暁理。お前は何で光導姫に戻ったんだ? お前は知ってるだろ。光導姫がどんなに危険な仕事か。下手すれば死ぬ。それは変わらない。だけどお前は光導姫に戻った。・・・・・・なぜなんだ? 金か? それとも・・・・・・お前が戦う理由は何なんだ?」
影人は少し真剣な顔を浮かべながら暁理にそう質問した。友人として、また自身も戦う者として影人はその事が知りたかった。
「っ、僕が光導姫に戻った理由・・・・・・? 別にお金とかじゃないよ。確かに光導姫は望めば仕事代は貰えるし、今回もそれに変わりはないってソレイユ様も言ってたけど・・・・・・僕が戦う理由はそれじゃない」
「じゃあ何なんだよ」
「そ、それは・・・・・・」
影人が軽く首を傾げる。暁理は言葉に詰まった。暁理が光導姫として戦っていた理由、光導姫に戻った理由は同じものだ。そう。目の前にいる少年と共に過ごすこの日常を守りたいという理由。だが、それを正直に言うのは恥ずかし過ぎる。絶対に無理だ。
「べ、別に何でもいいだろ。それより、君はどうなのさ?」
答えに窮した暁理は、露骨に話題を逸らすように逆に影人にそう聞き返した。暁理にそう聞かれた影人は不思議そうな顔になった。
「俺?」
「うん。詳しい事は知らないけど、君はスプリガンとして暗躍し戦ってたんだろ? なら、君はどうするのかなって」
「俺は・・・・・・色々あってスプリガンに戻った。だから、また戦うつもりだ。ムカつく奴がいるからな。そいつをぶん殴る。それが今の俺の戦う理由だ」
暁理の問いかけに、影人はご飯を口に放り込みそう答えた。フェルフィズを倒す。それがスプリガンの今の主な存在目的だ。
「な、なにその野蛮人みたいな理由・・・・・・」
「ふん、野蛮人で悪かったな。だけど仕方ねえだろ。それが本音なんだからよ」
引いている暁理に影人は軽く鼻を鳴らした。そして、箸入れに箸を戻し手を合わせる。
「ご馳走様でした。じゃあ、話はそれだけだからまたな」
「あ、ちょっと待ってよ影人!」
昼食を終えた影人は立ち上がり、弁当箱を持ってこの場から去ろうとした。そんな影人を暁理は呼び止めた。
「何だ?」
「君はこれからどう立ち回るつもりなの? 前は謎の怪人として振る舞ってたけど・・・・・・君のこれからの立ち位置はどうなるの? 君は僕たちの味方・・・・・・なんだよね?」
心配と真剣が混じり合ったような表情で、暁理は友人を見つめた。未だに多くの事を知らない暁理からすれば、スプリガンとしての影人がこれから自分たち光導姫にどう関わってくるのか、あまり予想がつかなかった。
「・・・・・・安心しろ。もう、お前ら光導姫や守護者と戦う事はない。だからまあ、俺は味方だ。ただ・・・・・・立ち位置はそんなに変わらないと思うがな」
「っ? 影人、それどういう――」
影人の答えを聞いた暁理が、よくわからないといった感じで影人に疑問の言葉を投げかけようとした。しかし、影人は振り返らずに暁理に軽く手を振り、
「そのうち分かるだろうぜ。俺とお前がまた戦場で会えばな」
そう言ってこの場を去っていった。
「あ、影人! もう・・・・・・結局どういう意味なんだよ・・・・・・」
去りゆく影人の背中を見つめながら、暁理は軽くため息を吐いた。
「――ねえ海公っち。今日は一緒に帰らない?」
「え?」
放課後。魅恋は海公にそう声を掛けた。魅恋にそう言われた海公は、帰り支度をしながら少し驚いたような顔を浮かべた。
「2人っきりで。お願い。ダメかな?」
「っ・・・・・・」
魅恋が真剣な表情でそう聞いてくる。魅恋のその顔を見た海公は、魅恋があの事を話したいのだと察した。
「魅恋ー、遊びに行かないの?」
「ごめん、今日ウチちょっと用事あってさ。悪いけどパスって事で」
呼びかけて来た女子生徒に魅恋はそう言葉を返した。魅恋の答えを聞いた女子生徒は「りょーかい」と言って、他の女子生徒たちと一緒に教室を出て行った。
「で、どう?」
「そ、その・・・・・・」
催促を受けた海公はチラリとその目を影人へと向けた。ここ最近は影人と途中まで一緒に帰る事が多いからだ。あの話は影人がいては出来ない。海公がそんな事を考えていると、
「ああ、じゃあ俺はお先に失礼して」
影人は鞄を持って立ち上がり教室の外へと向かって行った。魅恋がいたので、少し丁寧な言葉を述べながら。そして、影人は教室から出て行った。
「っ、帰城さん・・・・・・」
影人が出て行ったのを見た海公は、影人が気を利かせてくれたのだと理解した。海公は心の中で影人に感謝をすると、その目を魅恋に向け直した。
「はい、大丈夫です。僕も今日は霧園さんと帰りたい気分だったので」
そして、海公も真剣な顔でそう答えを述べた。
「そっか・・・・・・ありがとう。じゃあ、行こっか」
「はい」
2人は互いに頷き合うと、並んで歩きながら教室を出た。
『そういや、よかったのかよ? あいつらを尾行しなくて。一応警戒してんだろ』
約30分後。教室を出た影人は珍しく学校の図書室で本を読んでいた。教室にいる間は集中して読めていなかったからだ。影人が読書をしていると、暇なのか突然イヴがそんな事を聞いて来た。
(ん? ああ、別にいいんだよ。互いに目撃者であるあいつらがその事について話す分には問題ないからな。適度に気にする事が大事であって、気にし過ぎはよくないからな)
図書室では静かにしなければいけないという事もあって、影人は心の中でイヴにそう言葉を返した。影人の答えを聞いたイヴ『けっ、そうかよ。クソつまんねえ理由』と言って悪態をついた。
『つーか、こんな所で時間潰してたらあのヤンデレ幽霊がうるせえぞ。大丈夫なのかよ』
「っ、そういや零無の事忘れてたな・・・・・・」
イヴの指摘に影人は思わず声を漏らした。間違いなく、零無は影人の帰りが遅ければイヴの予想通り文句を言ってくるだろう。想像するのが容易すぎる。
「俺の優雅な時間が・・・・・・はあー、仕方ねえ。帰るか」
影人はため息を吐くと、本に栞を挟んでそれを鞄の中に入れた。そして、影人が図書室から出ようとした時、
キイィィィィィィィィィィィィィィィィン
「っ・・・・・・!?」
影人の中に突如そんな音が響いた。その音が聞こえた同時に、影人の脳内にある場所までの地図のようなものが広がった。かなり近い。ここから約1キロかそれくらいの場所だ。間違いない、これは――
『影人!』
次の瞬間、影人の中にソレイユの声が聞こえてきた。真剣な声だ。
(ソレイユか。何があった? それにこの合図は・・・・・・)
『ええ。闇奴出現の時と同じものです。これもそのまま使えるので流用しました』
(っ、って事は・・・・・・)
『はい。【あちら側の者】が現れました。しかも、敵対的な者です。ゆえに、私は近くにいた陽華と明夜、ラルバは10位の守護者を向かわせたのですが・・・・・・』
「10位って事は香乃宮か。それで、戦いになったんだな?」
図書室から急いで出た影人はソレイユにそう聞いた。
『はい。ですが、3人は苦戦しています。ゆえに、あなたに助力をお願いしたいのです』
「それは別にいいが・・・・・・その相手はそんなに強いのかよ? 今のあいつらが苦戦するって相当だぞ・・・・・・?」
光司は言わずもがな、陽華と明夜の2人も今では相当な実力者だ。今のあの2人の実力は最上位の光導姫にも引けを取らないと影人は思っている。影人は警戒と緊張を強めた。
『いえ、相手が強力という事も確かに一因ではあるのですが・・・・・・3人が苦戦している主な理由はそれではありません。それは見てもらえば分かります。とにかく、あなたは現場に急いでください!』
「ちっ、分かったよ・・・・・・!」
影人はそう言うと階段を駆け降りた。そして、校舎を出た影人は人目につかない場所に移動し、ズボンのポケットからペンデュラムを取り出した。
「
影人が力ある言葉を呟く。すると、ペンデュラムの黒い宝石が黒い輝きを放つ。そして、影人は黒衣の怪人スプリガンへと変身した。
「行くぜ・・・・・・!」
影人は透明化を使用すると、一陣の風の如く戦場に向かって駆け出した。
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