第292話 2度目の帰還

「・・・・・・俺の零無との因縁は、まあこんなところだ。まさか、誰にも話さないつもりでいたこの話を、零無の奴が復活して話す事になるなんてな。ったく、本当に人生ってやつは予想外の事しか起こらねえな」

 自身の過去の話を、ソレイユ、ラルバ、レイゼロール、シェルディア、シトュウに話し終えた影人は、少し疲れたようにそう言った。

「「「「「・・・・・・」」」」」

 影人の話を聞き終えたソレイユ、ラルバ、レイゼロール、シェルディアの4人は言葉を失った。影人と零無の因縁は、想像を絶するほどに深いものであり、またその悲劇についても、どう言葉を掛けていいものかは分からなかったからだ。

「・・・・・・そうでしたか。ならば、零無を追放した者の1人として、あなたには謝罪をしなければなりませんね。謝して許される事でないのは承知していますが・・・・・・帰城影人、申し訳ありませんでした。私たちが零無をこの世界に追放した事が原因で、あなたは大切なものを失った。真界の神々を代表し、心より謝罪いたします」

 一方、4人のように言葉を失っていなかったシトュウは、真摯な顔を浮かべ影人に頭を下げた。まさか、零無が残りの貴重な力を使ってまで人間に干渉するとはシトュウは、いや他の真界の神々も思っていなかった。真界の神々にとって、人間など森の樹の一葉と同じなのだから。

 だが、結果として零無によって大切なものを失った人間がいたのだ。ならば、シトュウは謝罪をしなければならないだろう。零無を追放した1人として、零無の跡を継ぎ「空」になった者として。その責任がシトュウにはある。ゆえに、例え自分より遥かに下の存在である人間に、シトュウは頭を下げた。

「・・・・・・別に気にしないでくれ。・・・・・・って言いたいところだが、悪い。やっぱり多少は苛立ちは感じちまう。俺は聖人君子じゃなくて、普通の人間だからな。だからさ、シトュウさん。俺があんたに協力するように、あんたも俺に協力してもらうぜ。零無を今度こそどうにかする事にな」

 影人は自分の複雑な気持ちを誤魔化す事なく、シトュウにそう言葉を返した。その言葉を聞いたシトュウはコクリとその首を縦に振った。

「ええ、それはもちろんです」

「なら、それでいいよ。これ以上あんたにぐちぐち言いたくはないしな」

 その反応を見た影人は軽く息を吐き、自身も1度頷いただけだった。

「さて、俺の話はこんくらいにして、次の話でも――」

 影人が気を取り直すようにそう言おうとした時だった。突然、ソレイユがこう言葉を挟んできた。

「ま、待ってください! あなたの話は、そんなすぐに流す話ではないでしょう!?」

「・・・・・・はあー、何だよソレイユ」

 そんなソレイユに、影人は面倒臭そうな顔を浮かべた。

「影人、あなたは・・・・・・あなたはずっと、ずっと1人で戦って来たんですね。私は、そんなあなたを知らずに、あなたを・・・・・・!」

 ソレイユは今にも泣き出してしまいそうな顔で、そんな言葉を漏らした。だが、涙はグッと堪える。本当に泣きたいのは間違いなく影人の方なのだから。ソレイユは、影人の壮絶な過去に心の底から同情し悲しんだ。そして、改めて影人を無理やりスプリガンにさせた自分を激しく責めた。

「・・・・・・なあ、ソレイユよ。どうせお前の事だ。また俺をスプリガンにした事でも悔やんで、俺に同情でもしてくれてるんだろうが・・・・・・はっきり言ってやる。そいつは違う。違うんだよ。決定的に、呆れるほどに違うんだ」

「え・・・・・・?」

 そんなソレイユに対し、影人はキッパリとそう言い切った。ソレイユは不思議そうに声を漏らす。

「まあ、最初は最悪だと思ったが、俺がスプリガンになった事は今思えば必然だった。過去に行った事、そこでレイゼロールと出会った事を考えるとな。運命ってやつを俺は安易には信じたくねえが・・・・・・こればっかりは決まってた事なんだろう。だから、お前が気にする必要はない。本当にな」

「っ・・・・・・」

 影人がそう言うと、少しだけ影人の隣に座っていたレイゼロールの表情が動いた。レイゼロールの表情が動いた理由は、単に自分の名前に反応しただけか、それとも何かを感じたのか。それは影人には分からなかったが、影人は言葉を続けた。

「後、同情はいらねえよ。俺は不幸自慢をしたり、同情してもらうためにこの話をしたんじゃない。必要だからしたんだ。それ以外に理由はねえよ。じゃなきゃ、俺は絶対に他人にこの話はしなかった。信用してるしてないの問題じゃない。俺がそう決めてたからだ。だから気にするな。俺もずっとこの記憶は封じてたから、割り切ってるとは全く言えねえが・・・・・・それでも、昔よりは整理がついてるつもりだから」

「影人・・・・・・」

 影人の言葉を聞いたソレイユは悲しみと暖かさが混じったような声でそう言葉を漏らした。本当に、この少年は。優しすぎる、あまりにも。心が強過ぎる、悲しいほどに。影人の言葉が強がりでも何でもなく、ただ事実を述べているのだという事を、ソレイユはもう知っていた。付き合いはもうそれなりに長いから。

「・・・・・・いいえ。そこは、そこだけはあなたの方が違うわ。本当ならば、あなたという個人を尊重して、異を唱えるべきではないけれど・・・・・・敢えて言わせてもらうわ。あなたは、間違っている」

「嬢ちゃん・・・・・・?」

 だが、意外な事に影人の隣に座っていたシェルディアがそんな事を言ってきた。影人は前髪の下の目を開き驚いたような顔を浮かべた。

「確かに同情は時としては、または個人の性格によっては不快と感じる事もあるでしょう。だけれど、同情されるというのは必ずしも悪ではない。なぜなら、同情するという事は、それだけその人の事が大切だと思うからよ。同情とは哀れみでもあり、おもいやりでもあるのだから」

「っ・・・・・・」

 シェルディアの真摯な言葉。それを聞いた影人はどこかハッとした顔になった。

「だから、私やソレイユはあなたに同情するわ。今まで辛かったわね。1人でずっと背負い続けて来て。そして、よく頑張って来たわね。影人、あなたのその悲しいまでに強い心に賞賛と暖かさを。もう1人で背負わないでいいのよ」

「あ・・・・・・」

 真っ直ぐに、どこまでも真っ直ぐにシェルディアは影人にそう言ってくれた。その言葉を送られた影人は、どこか間抜けな声を漏らし呆然としてしまった。

「・・・・・・シェルディアの言う通りだ。お前のその気持ちは、心の有り様は理解できる。なにせ、兄さんとお前を失った後の我がお前と似たような心持ちだったからな。そんな我の言葉に説得力はないかもしれんが・・・・・・お前はもっと人を頼れ。お前は頼ってもいい事をしてきたのだから」

 レイゼロールも影人に対してそんな言葉を述べた。そこには、影人に対する暖かな思いが確かにあった。

「は、ははっ・・・・・・まあ、そうなのかな。いや、多分そうなんだろうな。ソレイユや嬢ちゃん、レイゼロールの反応や言葉が正常で、正しいんだろうな・・・・・・」

 自分に対する真摯な言葉を聞いた影人は、まだどこか戸惑ったような声でそう言葉を呟いた。

「・・・・・・悪い。そんな事を言われたのは、正直初めてだから、まだ戸惑ってる。多分、まだ俺は言われたみたいに素直にみんなを頼れない。だけど・・・・・・ありがとう。その言葉はちゃんと受け止める」

 影人は照れたような、そして少し泣きそうな何とも言えない笑みを浮かべた。

「ん。まあ、今はそれでいいわ」

「ならばいい」

 影人のその笑みを見たシェルディアとレイゼロールは、それぞれそう言って頷いた。

「影人。私はあなたに返し切れないまでの大きな恩義があります。だから、いつでも頼ってくださいね」

「俺も・・・・・・俺に出来る範囲でなら力を貸すよ。君に対して俺は許されない大罪があるからね。壮司を使って君を何度も殺そうとした大罪が。こんな事で贖罪にはならない事は百も承知だけど・・・・・・それでも、頼ってほしい」

 2人に続くようにソレイユとラルバもそんな事を言ってきた。ソレイユは真面目な顔で。ラルバは罪悪感に満ちた顔で。

「はっ、お前らもかよ・・・・・・だがまあ、ありがとよ」

 ソレイユとラルバの言葉に影人は再び感謝の言葉を述べた。全く、こんなに真っ直ぐな言葉を掛けられたら恥ずかしいというものだ。しかし、影人にはその恥ずかしさが、なぜか少しだけ嬉しいように思えた。

「よし、それじゃあ今度こそこの話は終わりだ。次の話は・・・・・・」

「まあ待ってちょうだい影人。取り敢えず、一旦休憩にしましょう。一息つかないと、精神が中々着いて行かないわ」

 影人が改めて次の話に進めようとすると、シェルディアがそう提案してきた。

「あ、出来れば私もそうしたいです。ちょっと影人の話が重過ぎたので・・・・・・」

「俺もかな・・・・・・」

「・・・・・・我は別にどちらでもいい」

「私もどちらでも構いません」

 シェルディアの提案に、ソレイユ、ラルバ、レイゼロール、シトュウはそれぞれそんな意見を述べた。賛成はシェルディアを含め3、どちらでも構わないが2。その意見を聞いたシェルディアは笑みを浮かべた。

「なら決まりね。お茶にしましょう」

 シェルディアはそう言うと、影を操作してシエラの元に向かわせた。すると10秒ほどして、シエラが現れた。

「注文?」

「ええ。私は紅茶とミックスのホットサンドをお願い。ほら、あなた達も注文しなさい。お代は私が全部出すから」

 シエラに自身の注文を告げたシェルディアは、テーブルに着いている一同に向かってそう言った。

「え? ほ、本当にいいんですかシェルディア?」

 シェルディアのその言葉に1番早く食いついたのはソレイユだった。その顔には少しの興奮と確かな期待があった。レイゼロールとの戦いで、基本的にずっと地上に降りていなかったソレイユからすれば、地上の物は全て興味深いのだ。むろん、それは食べ物や飲み物なども含まれる。

「そう言ってるでしょ。ああ、でもあなたはここに来るの初めてだから、何があるか分からないわよね。シエラ、悪いけどメニューを持って来てくれる?」

「ん、分かった」

 シェルディアにそう頼まれたシエラは、1度店内に戻りメニュー表を取ってきた。そして、それをソレイユに手渡した。

「うわー・・・・・・! どうしましょうどうしましょう。いったいどれにしましょうか・・・・・・!」

 メニューを見たソレイユはキラキラとした目でメニューを見つめた。その様子はまるで子供のようだった。

「シエラの作る物はどれも絶品だから、どれでもいいと思うよ。一応、俺のオススメを1つ教えておくと、アップルパイかな。あ、しえら。俺はホットコーヒーのブラックをお願い。・・・・・・ご馳走ありがとう。シェルディア」

 そんなソレイユに、ここの常連客であるラルバがそう言葉をかけた。そして、ラルバは飲み物を注文すると、隣に座っていたシェルディアに感謝の言葉を述べた。

「構わないわ。でも・・・・・・何度も影人を殺そうとしたあなたの事、私は気には食わないから」

「ああ。それは充分に分かってるよ」

 ラルバからそう言われたシェルディアは、感謝の言葉を受け止めながらも、厳しい言葉を投げかける事も忘れなかった。シェルディアにそう言われたラルバは、当然だとばかりの顔で頷いた。

「ほら、あなたはどうするの影人? 遠慮はいらないから、好きな物を頼んでちょうだい。蘇ってまだ何も食べていないから、お腹が空いているでしょう?」

「あ、そうだな。言われてみれば・・・・・・じゃあ、素直に甘えさせてもらうよ嬢ちゃん。すみません、しえらさん。バナナジュースとハムとチーズのホットサンド、後ナポリタンをお願いします」

 蘇って今に至るまで、かなり緊張した空気だったので、シェルディアの指摘と同時に空腹感が来たのだろう。かなりの空腹感に襲われた影人は、ガッツリめの注文をした。

「ん。レイゼロールとそっちの人は?」

 注文をメモしたシエラは、レイゼロールとシトュウにそう聞いた。ソレイユはまだメニューを見ていて時間がかかると思い、ソレイユは数には入れなかった。

「・・・・・・冷たいコーヒーでいい。後、甘味はあるか?」

 レイゼロールが注文をすると同時に、そんな質問をシエラにする。ここに来るのは初めてで、かつソレイユがメニューを独占しているため(本人は興奮からの無意識で気づいていないだろうが)、メニューが分からないからだ。隣だから、チラリと見ればいいと思うかもしれないが、レイゼロールの方からではメニューは見えなかった。

「色々とあるよ。でも、大体の物は作れるから、食べたい物があったら言ってみて」

「ならば・・・・・・パフェを頼む。作れるか?」

「出来るよ。じゃあ、パフェを1つね」

 レイゼロールの問いかけに頷いたシエラがメモにパフェを追加する。隣でレイゼロールのオーダーを聞いていた影人は少し意外そうな顔を浮かべた。

「へえ、お前甘い物好きなのか。ちょっと偏見っぽい言い方になるが、お前もやっぱり女子なんだな」

「おい、それはどういう意味だ影人」

 影人の言葉に、レイゼロールはムッとしたような顔になる。その顔を見た影人は、ニヤニヤとした顔を浮かべる。

「いや別に。ただ、可愛いところあるじゃんって思っただけだ」

「っ・・・・!? か、可愛いだと・・・・・・!? ふふ不愉快な事を言うな!」

「ははっ、悪かったよ」

 影人にそう言われたレイゼロールは、恥ずかしそうにカァッと顔を紅潮させた。そして、プイッと影人から顔を背けた。その様子を見た影人は面白そうに笑った。

「・・・・・・」

 そんなレイゼロールと影人のやり取りを見ていたシェルディアは複雑そうな顔を浮かべた。いつもならば、面白くないといった顔を浮かべるところだが(それを言うならばソレイユもだろうが、ソレイユは現在メニューに夢中なので、2人のやり取りには気づいていない)、影人に恋愛感情がないと知った今、影人の言葉の意味が、シェルディアには今までとは違うように感じられたから。

「ふむ・・・・・・なら、私はオレンジジュースとパンケーキという物をお願いします。しかし、飲み物や食べ物を食するのは随分と久しぶりですね」

 一方、隣のソレイユのメニューをチラリと見たシトュウは(シトュウはレイゼロールとは違い、角度的に見る事が出来た)、そんな注文をした。シエラはシトュウのメニューもメモに書き付けていく。これで残るはソレイユだけだ。

「えーと、えーとじゃあ・・・・・・これとこれとこれをお願いします!」

 ソレイユは悩み抜いた末に、メニューに書かれていたコーラとカツサンド、それにアップルパイを指差した。

「ん、承った。じゃあ、先に飲み物持ってくる。食べ物はちょっと時間が掛かるから待ってて」

 シエラは頷きそう言うと、メニューをソレイユから預かって店内へと戻って行った。

「さて、じゃあ影人。飲み物と食べ物が来るまで少しお話しましょうか。あなたが誰にも言わずに消えた事について」

「うっ・・・・・・」

 ニコリと笑みを浮かべながら、シェルディアは影人にそう言った。だが、その目は全く笑っていなかった。正直さっきの自分の話のショックで有耶無耶になっていると思っていた影人は、マズイといった感じの顔になった。

「そうだな。なに、多少は加減してやる。だが、しっかりと反省はさせてやる。2度も我の前から勝手に消えた罰だ」

 レイゼロールも冷たさの中に確かな怒りを宿しながら、そう言ってきた。両側をレイゼロールとシェルディアに挟まれている影人は、無意識にその肩身を狭くした。

(南無三、俺・・・・・・)

 影人が最後に内心でそう呟くと、シェルディアとレイゼロールはその怒りを解放し言葉に乗せ、どうしようもない前髪を言葉でボコボコにしたのだった。













「うわー! 凄いです! シュワシュワとシュワシュワとしますよ! これがコーラなんですね! アップルパイもカツサンドも、凄く美味しいです!」

 影人がシェルディアとレイゼロールに詰められてから数十分後。頼んだメニューを堪能していたソレイユは、端的に言うとはしゃいでいた。

(いっぱい食べるソレイユも可愛いな・・・・・・)

 そんなソレイユをコーヒーを飲みながら見ていたラルバは、内心でそんな事を考えていた。

「ふむ、甘くてふわふわとしていますね。上に乗っているクリームとハチミツも、よりパンケーキを甘く際立たせている。素直に美味しいと言えます」

 シトュウも自分が注文したパンケーキを食しながら、そんな感想を漏らした。感想がどこか食レポ気味なのは、何かを食すという事が久しぶりで、砕けた感想を言い慣れていないからだ。基本的に、真界の神々は神界の神々と同じく、栄養や水分を摂取しなくても生きていける。

「ふん・・・・・・」

 レイゼロールは黙々とフルーツパフェを食べていた。いつも通りの仏頂面だが、そのスプーンでパフェを削るペースは速い。どうやら、言葉には出していないが、しえらの作ったパフェが気に入っているようである。

「ほら、影人。いつまで項垂れているの。心の強さがあなたの長所でしょ。そろそろ立ち直りなさいな。料理が冷めるわ。早く食べなさい」

 シェルディアは紅茶を飲みながら、隣でガクリとしている影人にそう言った。その顔は一見すると呆れているように見えるが、その目は確かに暖かった。

「て、手厳しいな嬢ちゃん・・・・・・だけどまあ、嬢ちゃんの言う通りだよな。しっかり怒られて、しっかり反省したんだ。なら、これ以上は落ち込んでも意味ないよな。・・・・・・よし、気を取り直すか」

 シェルディアにそう言われた影人は、シェルディアに指摘された、持ち前の無駄に強い心で自身を立ち直らせると、手を合わせた。そして、「いただきます」と言って、ハムとチーズのホットサンドにかぶりついた。

「美味え・・・・・・流石しえらさんだぜ・・・・・・生き返って空っぽの腹に染み渡る」

 ホットサンドは分かってはいたが絶品だった。美味しい物を食べて自然と笑顔を浮かべた影人を見たシェルディアは、幸せそうに笑った。

「ふふっ、そうよ。あなたはそうでなくっちゃ。ああ、そうだわ。忘れていたけど・・・・・・改めておかえりなさい。あなたが死から帰還するのはこれで2度目ね。全く、そんな人間きっとあなた以外にはいないわよ」

「あ、私も言うの忘れていました! おかえりなさい影人!」

「・・・・・・ふん、まあお前がまた戻って来た事は素直に祝してやろう」

「じゃあ、一応俺も。おかえり。まあ、俺に言われても嬉しくはないだろうけど」

 シェルディア、ソレイユ、レイゼロール、ラルバ。4人は影人にそう言ってくれた。シトュウだけは空気を読んだのか、敢えて何も言って来なかった。

「っ・・・・・・ああ、ただいま」

 4人の帰還を祝された言葉を聞いた影人は、一瞬驚いた顔を浮かべたが、小さな、それでいて確かな明るい笑みを浮かべた。


 ――こうして、かつて変身ヒロインを影から助けた少年は再びこの世界に帰還した。それは、シェルディアの言った通り、死からの2度目の帰還だった。

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