第249話 呪術師VS道化師

「ピエロを呪うのは初めてね! いいわ、面白そう!」

 時は少し巻き戻り、菲たちがフェリートたちと睨み合っている時。クラウンとの局所戦を開始した真夏は、右手に持っていた畳んだ蝙蝠扇をクラウンに突きつけ、ニヤリと笑みを浮かべた。

「道化師が呪われるというのは、何とも面白そうですねー。うん、間違いなく喜劇になる事でしょう」

 真夏の声を聞いたクラウンはニコリと笑った。自身の2つ名の通り、道化師らしいペイントが施された顔で。そしてクラウンは、その亜麻色の髪を揺らしながら、恭しく真夏にお辞儀をした。

「それでは『呪術師』のお嬢様。これより、不肖このワタクシめのショーを始めさせて頂きます。きっとお客様を満足させてみせましょう」

「はっ、ならさっさと私に呪われてくたばりなさい! それが私が満足する方法よ!」

 真夏は左手で右手の袖口から数枚の札のようなものを取り出した。真夏が呪符と呼ぶ物だ。真夏はその呪符をクラウンに向かって放った。呪符はまるでそれ自体が意志を持っているかのように、クラウンに向かって飛び始めた。

「まあそう言わずに。ショーはまだ始まったばかりですよー」

 クラウンは顔を上げると、まるで軽業師のようにヒラリと呪符を避けた。呪符はなおもクラウンを追うが、クラウンはどこまでも身軽に呪符を回避する。

「のらりくらりと腹立つわね! なら、これはどうよ!?」

 真夏は左手を前方へと伸ばした。すると、真夏の左手に紫色と黒色が混じったような光が纏われた。真夏の左手に光が纏われた瞬間、クラウンを襲っていた呪符にも同じ光が纏われた。

「おや、これは・・・・・・・・」

「呪符よ、我が意を受け彼の者を怨嗟の爆へと奉れ。呪符、爆散」

 真夏がグッと光が纏われた左手を握ると、クラウンの周囲にあった呪符が突如爆発した。複数枚あった呪符が同時に爆発したため、その爆発の規模は中々のものだった。

「これなら避けるもクソもないでしょ?」

 爆発に巻き込まれたクラウンを見た真夏が、少しドヤ顔になった。あそこから避けるのは不可能なはずだ。あのふざけた闇人は丸焼きになったか体の一部が吹っ飛んだ事だろう。真夏は呑気にそう考えていた。

「――確かにそうですねー。まさか札が爆発するとは。いやはや、これも立派な奇術ですね」

「っ!?」

 だがどういうわけか、突如として真夏のすぐ後ろから戯けたような声が聞こえて来た。真夏はハッとしたように後方を振り返った。

 すると、真夏から10メートルほど離れた場所に、今爆発に巻き込まれたはずのクラウンが立っていた。無傷でだ。クラウンはパチパチと手を叩きながら、笑みを浮かべていた。

「はあ!? どういう事よ! あんた爆発に巻き込まれたはずでしょ!? 何で無傷でそこに移動してるのよ!」

「そこはまあ、秘密という事でー。ただ、爆発からの脱出は奇術の醍醐味の1つですからね。お客様に楽しんで頂くために、色々研鑽を重ねまして」

 意味が分からないといった感じに喚く真夏に、クラウンは右の人差し指を口元に立ててそう言った。クラウンの言葉を聞いた真夏は、「そんなフワッとした答えは聞いてないのよ!」となぜか怒ったような口調になった。

「まあまあ、どうか落ち着いてくださいー。さて、では次はワタクシめの奇術をお目に見せましょう。まずはワタクシの両手にご注目」

 クラウンは両手を開けて真夏に見せた。そして、グッと両手を握ったかと思うとすぐにパッと両手を開けた。するとクラウンの両手の指と指の間に、闇色のボールのようなものが複数出現した。指の間で挟めるので大きさはそれ程でもなかった。

「あら不思議。何もないところから、ボールが出てきました。いったい、このボールは何なのでしょうか?」

「知らないわよ! って言うか、あんたただの人間じゃなくて闇人でしょ! 人間じゃないんだから別に不思議でも何でもないわよ!」

 クラウンの少しわざとらしい説明に苛ついたのか、真夏はまだ怒ったような口調でクラウンに突っ込みを入れた。

「これは手厳しいお言葉。ですが・・・・ドキドキはしてもらえるかと思います!」

 クラウンは両手のボールを真夏に向かって投げた。ボールは勢いよく真夏へと接近する。

「どんな攻撃かは知らないけど・・・・!」

 真夏は右手に持っていた蝙蝠扇を広げた。扇の面の部分には、墨字で何かの言葉が書かれている。「我が呪よ。我を守り給え。呪天結法じゅてんけっぽう

 真夏がそう言葉を紡ぐと、扇面の墨字の一部分が光り始めた。すると次の瞬間、真夏の周囲の空間から黒い亡者のような腕が複数出現した。出現した黒腕は真夏を包むように結束し、やがてドーム状の黒い結界と化した。これならばどんな攻撃をされても大丈夫だ。

 そして、クラウンが放ったボールはその結界に着弾し、

 強烈な光を発して弾けた。

「っ、閃光弾!?」

 その強烈な光に真夏は反射的に瞼を閉じた。どうやら、クラウンが放ったボールの正体は目眩しの道具だったようだ。

「ご安心をー。失明をさせるほど強力なものではありませんから」

 瞼を閉じ視界が封じられた真夏の耳に、クラウンの声が響く。強烈な光はまだ輝いているため目を開ける事は出来ない。だが、あと数秒もすれば大丈夫のはずだ。

(私には結界があるから攻撃は受けない! 取り敢えず、そこは安心して目を瞑っていられるわね)

 慢心からではなく事実として真夏はそう考えていた。今の真夏は決定的な隙を晒しているが、結界のせいでクラウンも真夏を攻撃出来ない。そう考えていた。

(ッ、よし今なら!)

 そして、やがて光が収まった。真夏は閉じていた目を開けた。

 すると、なぜか

「ワタクシ、穴抜けも齧っておりまして」

 。クラウンは真夏に近づき右手でソッと真夏の腹部に触れた。

「なっ!?」

「お触り失礼お客様。そして、衝撃を失礼。――奇怪な衝撃フリークショック

 どのようにしてか結界内に侵入したクラウンに、真夏は驚愕する。クラウンはニコリと笑みを浮かべながら、そっと真夏の腹部を押した。本当にそっと。そっとだ。まるで仲の良い友達の肩を押すくらいの力。

「がふっ・・・・・!?」

 だが不思議な事に、真夏は自身の肉体の内側から弾けるような強烈な衝撃を感じた。真夏は結界を破って吹き飛ばされた。結界は外からの攻撃や衝撃には強いが、内からの攻撃や衝撃に弱かった。まあ当然と言えば当然だ。なにせ、結界は内側から攻撃される事など想定されていないのだから。

「がはっ、げほっ、げほっ!」

 派手に吹き飛ばされた真夏は地面を転がり、内側からの痛みに顔を顰めつつ吐血した。どうやら衝撃は臓器にまで及んでいたようだ。

(くそっ、体が震える! さっきからいったい全体どうなってるのよ!? あの闇人の能力、あまりにも掴み所がなさすぎる!)

 左手を支えに真夏は何とか立ち上がろうとする。だが、先ほどの衝撃が響いているため中々立ち上がる事は出来なかった。

「すみません。これはショーでもありますが、戦いでもありますー。ですからお客様が痛みを伴う事は避けられません。ご批判は甘んじて受け入れます。しかし・・・・・・・・お客様が倒れるまで、このショーは続けさせていただきます」

 そして、その隙をクラウンは見逃さなかった。クラウンは再び両手に闇色のボールを複数個出現させると、そのボールを真夏の方に向かって投げた。

「このショーの幕は、お客様のご遺体で閉じさせて頂きます」

「はっ、趣味の悪いショーね・・・・! 反吐が出るわ・・・・・!」

 また閃光弾が来ると思った真夏は、無理やり体を立ち上がらせると、左手で右袖から呪符を複数枚取り出した。そして真夏は、呪符をボールに向かって放った。

「おや、何をするおつもりでしょうか?」

「はっ、私は『呪術師』よ。ならやる事は・・・・・決まってるわ!」

 首を傾げるクラウンに、真夏はそう言うと左手の人差し指と中指を立てこう言葉を続けた。

「我が呪よ、呪え!」

 真夏の言葉と同時に呪符がボールへと張り付く。そして呪符に張り付かれたボールは、やがて真夏の方に飛来し、

 ――そのまま、コロリと地面に転がった。

「おや、これは・・・・・・・・」

 その光景を見たクラウンは軽くその目を見開いた。今クラウンが放ったボールは、何かに触れた瞬間爆発するように仕掛けがしてあった。だがなぜかボールは爆発しなかった。考えられるのは間違いなく・・・・・・・・

「ふん、さっきと同じで何か細工がしてあったんでしょうけど無駄よ。この私に同じ手は2度と通用しないわ!」

 クラウンの予想の答えを示すかのように、真夏が強気な笑みを浮かべた。

「・・・・お見事でございますー。どうやらお客様のお力によって、ワタクシめの奇術は不発に終わった様子。ああ、道化師として情けない限りでございます」

「ふふん、そうでしょう! 私は凄いのよ! でも、あんたにいいようにボコられた私からすれば、あんたの言葉はムカつくのよ。ピエロ野郎!」

 クラウンの言葉を聞いた真夏は苛立ったようにそう言うと、その感情のままに詠唱を始めた。

「我が呪よ。我が呪門じゅもんを開け。呪門より来れ、我が下部しもべ。百鬼夜行に名を連ねし、がしゃ髑髏よ!」

 真夏がそう唱えると、真夏の後ろに黒い門が出現した。するとその門が開き、中から巨大な骸骨の妖怪が姿を現した。がしゃ髑髏が現れると同時に、門は消えた。

「ッ! 全く、スケールの大きなお客様ですね・・・・・!」

 これには今まで飄々とした態度を崩さなかったクラウンも、その顔色を変えた。

「さあ、やってやりなさいがしゃ髑髏! あいつをボコボコにするのよ!」

「カタカタッ!」

 真夏の指示を受けたがしゃ髑髏は、まるで了解したと言わんばかりに骨を鳴らすと、クラウンの方に向かって襲い掛かって来た。

「これは少しピンチでございますねー!」

 巨大な骨の腕を振るったがしゃ髑髏。クラウンはその攻撃を回避し思わずそう言葉を漏らした。この質量の攻撃だ。もし当たれば、闇人であるクラウンと言えどもタダでは済まないだろう。

「ふははは! これで終わりじゃないわよ! 呪符よ行きなさい!」

 まるで悪役のような笑い声を上げつつ、真夏は追加で呪符をクラウンに放った。呪符はクラウンに張り付こうと、クラウンへ飛来する。

「ワタクシは本職の軽業師ではないのですがね・・・・!」

 クラウンは何とかがしゃ髑髏の攻撃と呪符を回避した。だがこのままだと長くは持たないだろう。がしゃ髑髏の攻撃か呪符による攻撃か、いずれは喰らってしまう。クラウンは虚空からジャグリング用のボーリングのピンに似たクラブを、右手に3つ、左手に3つ取り出すと、それをがしゃ髑髏に向かって投擲した。

笑顔のジャグリングスマイルクラブズ!」

 6本のクラブは回転しながらがしゃ髑髏に向かい、がしゃ髑髏の頭部や胴体部を打った。見た目に反し、クラブはかなりの破壊力を持っている。ゆえに、クラウンはそのクラブでがしゃ髑髏の骨を砕けると考えていたのだが、

「ははっ、無駄よ無駄! その程度の攻撃じゃ、がしゃ髑髏は傷1つ付かないわ! カルシウムが違うのよカルシウムが!」

「っ、どうやらそのようですねー・・・・・!」

 クラブはがしゃ髑髏の頭や体を打つだけで、骨を砕く事はなかった。

「そして隙ありよピエロ!」

 真夏は左手に先ほどと同様のオーラを纏わせた。途端、クラウンを襲う呪符にも同様のオーラが纏われる。

(これは先ほどの・・・・・・・・・・!)

 自身の周囲に展開されている呪符を見たクラウンに先ほどの爆発の記憶が過る。クラウンは今度は別の方法で爆発を回避しようと、軽くジャンプした。

雲のように柔らかな球クラウドボール

 クラウンは跳び上がった自分と地面の間に、真っ白な大きいボールを召喚した。そして、クラウンはそのボールを思いっきり踏み、更に天高く上昇した。次の瞬間、呪符は爆発したがクラウンにダメージはなかった。

「なっ!?」

「天高く舞う道化。中々滑稽な光景でありましょう?」

 驚く真夏を見下しながらクラウンは笑みを浮かべる。この距離まで飛べば爆発には巻き込まれないし、地を這うがしゃ髑髏の攻撃も届かない。爆発が終われば地上に戻ろう。クラウンはそう考えていた。

「・・・・・・なーんて何度も驚く私じゃないわ! あんたがそうするって言うんなら!」

 だが真夏はそれを逆にチャンスと捉えると、がしゃ髑髏にこう指示を与えた。

「がしゃ髑髏、黒闢こくびゃくの光を放ちなさいッ!」

 光導姫としての力を多量に消費する感覚が真夏を襲う。次の瞬間、がしゃ髑髏がガバリとその顎門を開けた。矛先は、宙に舞うクラウン。がしゃ髑髏の口に真っ黒な黒い光が集まっていく。

「っ!? まさか・・・・・!?」

 真夏が何をしようとしているか察したクラウンの表情が変わる。だがもう間に合わない。がしゃ髑髏は漆黒の光線、その咆哮をクラウンに向かって放った。

「塵すら残さず呪われなさいッ!」

 宙に舞うクラウンにこの攻撃は避け切れないはず。真夏はそう考えていた。

「確かにこれはかなりのピンチ! ですねー! ですがしかし! 道化師はどんな時だって笑う存在です!」

 黒い光線が今にも自身の身を焦がさんという状況であるにもかかわらず、クラウンは自身の道化師としての矜持から笑ってみせた。

「さあさあさあご観覧くださいませ! ワタクシ、クラウンめの一世一代の逆転劇を!」

 クラウンはそんな口上を述べると、両手を黒い光に向かってかざした。

鏡よ鏡よミラーミラー!」

 クラウンがそう叫ぶと、クラウンの前に1枚の鏡が出現した。姿見くらいの大きさの鏡だ。クラウンの前にあるため、必然がしゃ髑髏の光線はその鏡へと向かう。

「ふん、何をしたいのか知らないけど、そんな鏡くらいで! がしゃ髑髏の力を甘く見過ぎなのよ!」

 真夏が勝利を確信したような口調でそう言うと、黒い光線は鏡に触れた。光線は鏡を貫通しクラウンを焼き尽くす。そう思われたが、

「――さーて、それはどうでございましょう?」

 クラウンがニコリと笑う。すると次の瞬間、どういうわけか、鏡に触れた光線は反射したように軌道を変え、光線を放ったがしゃ髑髏の頭部を消し飛ばした。

「は、はあ!?」

 頭部を自分の光線で消し炭にされたがしゃ髑髏は地面に倒れた。そして残った胴体は黒い光となって虚空へと消えた。真夏は唖然とした顔を浮かべた。

「ほっ、はっ、と! さてお客様。この道化師めの奇跡の生還ショーはお楽しみ頂けたでしょうかー? 出来る事ならば、1つ拍手をお願いいたします」

 その間に落下したクラウンは、どういう原理か空中を2度ほど跳ねると、安全に地上へと落下した。そして芝居掛かった口調でそう言って、優雅にお辞儀をした。

「こ、この・・・・! よくも私のがしゃ髑髏をぶっ壊しやがったわね!? しかも、さっきからふざけた戦い方ばっかりしてムカつくのよ! 後がしゃ髑髏がぶっ壊れた方法、とんだ間抜けみたいじゃない! ああムカつくわ! 腹立つわ!」

 クラウンにそう言われた真夏は、ムキーと怒りが爆発したかのように地団駄を踏んだ。それを見たクラウンはつい笑ってしまった。

「あははは、先ほどから思っていましたが、感情が豊かなお客様ですねー。ショーのやり甲斐があります。ありがたい事です」

「何よバカにしてるつもり!?」

「いえ、そんな事は全く。ワタクシ個人としましては、感情が豊かな事はとても良い事だと思いますー。ええ本当に」

 更に憤る真夏にクラウンはふるふると首を横に振った。そう感情が豊かな事はいい事だ。それだけ感動できるという事なのだから。感情がなければ、人は感動する事が出来ない。クラウンは人間時代の自分の記憶を思い出しながらそう言った。

「嘘よ! あんた嘘吐きピエロでしょ!? 絶対バカにしてるわ! 許さない、絶対に許さないんだから! 吠え面かかせてやるわ!」

「いえ、確かにワタクシはピエロですが、この言葉は本心で・・・・・・・・」

「教えてやるわ! この私をバカにする事がどういう事なのかを!」

 真夏の言葉を否定しようとするクラウン。だが、怒りが頂点に達していた真夏はクラウンの言葉を聞く前に、そう言葉を被せた。

「あんた・・・・呪い殺してやるわ!」  

 真夏がそう宣言すると、真夏に黒い透き通るようなオーラが纏われた。まるで黒い宝石のようなオーラだ。それを見たクラウンは少し驚いたように目を開けた。

「おや、もうそれをお使いになられますか・・・・・・これは意外ですね・・・・」

「はっ、怖気付いた? でももう遅いんだから!」

 真夏はニヤリと笑うと、ある詠唱を始めた。

「我は光を臨む。力の全てを解放し、闇を浄化する力を! ――光臨!」

 それは『光臨』の詠唱。真夏がその詠唱を唱え終わると、真夏の体が光り輝き世界を白く染め上げた。

「――その目を見開いてよーく見なさい。これが大『呪術師』たる私の神々しき姿よ!」

 光が収まる。すると、そこには光導姫としての力を全て解放し、光臨した真夏の姿があった。

 光臨する前の真夏の格好は、白色の単に黒の狩衣。下半身は黒のスカートで、一言で表すなら現代風にアレンジされた平安装束といった感じだった。

 だが、光臨した真夏の衣装はどちらかと言えば当時の平安装束に近いものであった。下半身のスカートが黒の指貫さしぬきに変化し、頭に立烏帽子も飾られている。ここまで見るなら、単純な平安装束だ。

 しかし、真夏は狩衣の上にこれまた黒い着物を羽織っていた。その奇妙なアレンジが、真夏の姿を少し奇妙なものに見せている。

 そして最も変化していたのは真夏の右目だった。真夏の右目には星の形が、より正確に言うならば五芒星が刻まれていた。

「なるほど。それがお客様の真のお姿ですかー。ならば、ワタクシめも気合いを入れ直さなければなりませんね」

「せいぜい後悔する事ね。私をこの姿にさせた事を」

 少しだけ緊張したように笑うクラウンに、真夏はゾッとするような笑みを浮かべ、こう言葉を続けた。

「あんた・・・・・・・・碌な死に方しないわよ?」

 その笑みは『呪術師』に相応しい笑みであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る