第247話 局所戦勃発

「1の炎、2の水、3の雷、行け」

 キベリアがそう言葉を唱えると、キベリアの周囲から炎、水、雷の矢が出現した。そして、それらの矢は光サイドの一部の面々に向かって放たれた。

「ちっ、『歌姫』サマよ頼めるか?」

「うん、任せて菲♪ 防御の歌イージスソング――」

 それを見た菲がソニアにそう言った。菲に頼まれたソニアが守るための歌を響かせる。その間にもキベリアの魔法の矢はこちらに襲い掛かってくるが、それらは不可視の壁に阻まれるように虚空に激突した。

「白兵2、矢を放て。守護者ども、お前らも撃てよ」

 キベリアの攻撃を凌いだタイミングで菲が矢を持つ人形に指示を飛ばし、その視線を菲の周囲にいる守護者に向けた。

「分かってる。一々うるさいな」

「『弓者』に同意だ。一流はタイミングを逃さない」

「あいよー」

 菲にそう言われた遠距離武器を持つ守護者たち――ノエ、エリア、ショットがそれぞれ矢と弾丸を放った。

「ちっ、6の鋼、我を守る翼へと変化する」 

 キベリアは舌打ちをすると新たな魔法を行使した。キベリアがそう詠唱すると、キベリアやその周囲にいたダークレイ、フェリート、殺花たちを守るように鋼鉄の翼が出現した。矢や弾丸は全てその翼に弾かれた。

「・・・・・殺花は別にいいとして、何で私があんたらを守らなきゃならないのよ。言っとくけど、次からは守らないから」

 キベリアは苛ついたような目をフェリートとダークレイに向けた。キベリアは殺花の事は気に入っているので守る事に抵抗はない。だが、フェリートとダークレイは苦手、正直に言ってしまえば嫌いだった。

「おや、これは嫌われてしまいましたね。ですが、まずはお礼を。守ってくださりありがとうございます。次からはお言葉通り、自分でどうにかしますよ」

「ふん。別に守ってなんて頼んでないわ。偉そうに言わないで」

 キベリアの言葉を受けたフェリートとダークレイはそれぞれそんな言葉を述べた。フェリートは丁寧な言葉だがどこか慇懃無礼さを感じさせ、ダークレイに至っては、鬱陶しそうにキベリアから顔を背けていた。

「はあー、本当今日ここで死んでよもう・・・・・・・・」

 フェリートとダークレイの言葉を聞いたキベリアは、心の底からそう言葉を漏らした。

「まあ、そう言わないでくださいキベリアさん。ゼノとシェルディア様がこの場から去り、ゾルダート、冥、響斬、クラウンは局所戦を始めた。残っている私たちが、残りの光導姫と守護者の相手をしなければ、レイゼロール様の元に向かわれてしまいます。それはいけない。レイゼロール様はしばらくは自身は戦えないと仰っていました」

「だから協力してあいつらを倒せって? はっ、誰があんたらなんかと。吐き気がするわ」

 フェリートの説明を聞きそう言ったのはダークレイだった。そんなダークレイに殺花が冷たい視線を向けた。

「それは奴らが貴殿の元同族だからか? 元光導姫のダークレイ殿」

「は? そんなもの何の関係もないわ。穿った見方しないでくれる、9の闇人」

「それは失礼した。なら、容赦なく奴らを殺してくれ」

 ダークレイは不愉快さと怒りを込めた目で殺花を睨みつけた。殺花は変わらず冷たい目でダークレイの視線を受け止めた。

「・・・・・・うーむ、やはり我々闇人にチームプレイは向きませんね」

 一連のやり取りを見ていたフェリートは軽く息を吐きながらそう呟いた。












「さーて、どうするか。『貴人』、『傭兵』はイカれてる闇人と、『呪術師』はピエロの闇人と、『鉄血』と『凍士』は道士服の闇人と、『提督』と『侍』は和装の闇人と戦い始めやがった。局所戦勃発だな。ちっ、戦場がグチャグチャだぜ。面倒くせえ」

 フェリートたちが殺伐とした空気を醸し出している一方、菲は自身の2つ名であり光導姫名でもある軍師らしく戦場全体の状況を俯瞰していた。そして菲は自分の周囲にいる光導姫と守護者たちを確認した。

(ここにいるのは光導姫が私と『芸術家』、それに『歌姫』に『巫女』、そして『閃獣』と雇い主様が戦力になるって言った光導姫2人、確かレッドシャインとブルーシャインだったか。守護者は『守護者ガードナー』と『死神』、『天虎』と『銃撃屋』、『狙撃手』と『弓者』、そして『騎士』。光導姫は私を入れて7人、守護者も7人。合計14人か。局所戦を無視して、あそこにいる4人と戦うってなったら、普通はまあ充分な戦力差だよな)

 もちろんそう単純には行かないだろうが、14人対4人というのはこちら側、光サイドにとって大きなアドバンテージだ。単純に闇人1人につき3人で戦える。最上位闇人がいくら強いといっても、こちらも最上位の実力者がほとんど。そう遅れは取らない。ゆえに、人数差は明確にアドバンテージとなる。菲はそう考えていた。

(あの金髪ロリが何でか知らんがどっかに行ったのが1番デカかったな。正直、あいつがいたら絶対ヤバかった。人数とか関係なく一瞬で全滅エンドもあった。戦わなくても分かっちまった。あれはヤバすぎる、理の外の存在だ)

 菲は戦場では基本的に予感や感情を信じない。理性に基づいた観察とそこから得た情報、菲はそれを信じる。しかし、シェルディアはそれを容易に踏み抜く、圧倒的存在感で菲の本能の奥の奥に力を叩きつけた。

(まあこっちも1番重要な存在である『聖女』をどっかに飛ばされたのは痛いがな。『聖女』と一緒に消えたあの闇人がどんくらい強いのかは知らないが、出来れば『聖女』サマにはあの闇人をさっさと浄化して戻って来てもらいたいもんだな。まあ、『聖女』サマを頼りにするような策は考えないがよ)

 思考をフルスピードで回転させながら、現在の状況を再確認する菲。そしてこの戦いの最終目的も思い出す。

(こっち側の勝利条件はレイゼロールの儀式を止めて、レイゼロールを浄化する事。儀式がいつ終わるかは分からないが、早めに仕掛けなきゃならない事は確かだ。つまり、こっから何人かをレイゼロールの元に行かせなきゃならない。だから、今確認した人数差によるアドバンテージは実質捨てなきゃだ。

・・・・・・・・あーちくしょう、考える事多いな。ったくよ)

 菲は取り敢えず思考を纒め終えると、周囲にいる光導姫と守護者たちに視線を向けた。

「おいお前らよく聞け。取り敢えず局所戦始めたアホ共は放っておくとして、ここにいる私らはあの闇人どもをどうにかして、レイゼロールと戦わなきゃならない。だから、ここからは私らも二手に分かれるぞ」

「なるほど合理的な考えだ。流石は『軍師』の名を持つ光導姫ですね。では『軍師』殿、2つほど質問を。チーム分けはどのように? それとどこかに飛ばされてしまった『聖女』ことミュルセール嬢への応援は送らなくても? 彼女は僕たちにとって重要な存在だと思いますが」

 菲の言葉に質問をしたのはプロトだった。プロトの質問を受けた菲は変わらずに闇人たちを警戒しながらも、こう返答した。

「まず、『聖女』サマに関しての質問だが、それは見捨てる。いや言い方が悪いな。自力でどうにかしてもらうしかねえ。どこにいるかも分からないのに応援を送れるほど余裕はねえからな。んでチーム分けについてだが、私の考えで取り敢えずは言わせてもらうぜ」

 菲はそう言うと、各チームのメンバーを発表した。

「まずあの闇人どもを相手にするチームだが、光導姫は私と『芸術家』は確定だ。私は後方支援向きの光導姫だし、『芸術家』は特殊過ぎるからな。レイゼロールの相手をするには守りが必須。なら、こっちで私たちが守った方がいい。後は『閃獣』は確定だ。これは悪いが消去法的にな。『歌姫』サマと『巫女』のどっちかはレイゼロールに当てたいからな。んて次は守護者だが、『銃撃屋』、『狙撃手』、『弓者』は確定。後方の方が強いからな。後は前衛で『天虎』も欲しいな。つまるところ、私を含めた以上の7人は闇人の相手をするチームだ」 「じゃあ菲。余った私と風音、レッドシャインとブルーシャイン、『守護者』と『死神』と『騎士』の7人がレイゼロールと戦うチームって事?」

「あくまで理想だがな『歌姫』サマ。まあそれが私のチーム分けの案だ。悪いがここは素直に従ってくれよあんたら。考えた上でのチーム分けだからな」

 ソニアの言葉に頷きつつも、菲は一同にそう言った。光導姫も守護者もこの戦いの重要性はソレイユとラルバから聞かされていたためか、菲の言葉に反論してくる者は誰もいなかった。

「よし、納得したと見做したぜ。なら・・・・・仕掛けるぜ!」

 菲はニヤリと笑うと、右手に持っていた短い黒い鞭を闇人たちへと向けた。












「っ、仕掛けてきましたか」

 こちらに向かって駆けてきた何人かの光導姫と守護者を見たフェリートはそう呟いた。フェリートがそう呟いた直後、風音は自身の式札にこう指示を与えた。

「第1式札から第10式札、光の矢と化す!」

 風音がそう言うと、風音の周囲に展開していた10枚全ての式札が光線となりフェリートたちを襲った。闇人たちはそれぞれその光線を回避した。

「氷の龍よ、空を駆けろ!」

 続けて明夜が杖を振るい、氷の龍を顕現させる魔法を行使した。氷の龍はダークレイを標的としてその顎門を開き襲いかかった。

「ふん、形態変化モードチェンジワンド。闇技発動、ダークブレイザー」

 闇導姫形態のダークレイは自身のグローブを杖に変化させると、その杖から10条ほどの闇の光線を放った。闇の光線は氷の龍を穿ち、龍を破壊した。

「―― 攻撃の歌ストライクソング前方アップテンポ

 ソニアが歌を紡ぐ。すると不可視の衝撃が空間を弾き始めた。闇人たちはその不可視の衝撃に一瞬注意を向けた。

「うざったいわね。4の――」

 キベリアが魔法を使おうと言葉を紡ごうとする。だがその時、稲妻のような速度でキベリアに何かが向かって来た。

「っ!?」

 箒に乗っていたキベリアは詠唱を中断し、その何かを箒を動かして避けた。それと同時にキベリアを襲った何か――正確にはそれは少女だったが、その少女は驚いたような顔を浮かべ、キベリアの方へと振り向いてきた。

「おおー! 避けられた! 残念だな! いい感じだと思ったのに!」

 キベリアを襲った少女、メティは元気にそう言葉を放った。白い軽装、具体的には上半身は臍の部分くらいまでしか長さがない白いタンクトップのような服で、下半身は灰色のホットパンツを履き、足元は裸足といった格好だった。そこからは褐色の肌が覗かせている。そしてメティは、両手に虎の爪のようなクローを装備していた。それはバグナクといった感じの武器ではなく、クローナイフと呼ばれるタイプの武器に似ていた。

「なら次はもっと速くだな!」

 メティが元気にそう呟くと、メティの全身にパチパチと雷のようなものが纏われた。そしてメティは次の瞬間、雷光のような速さで浮いているキベリアの方へと駆けた。

「ッ!? 6の――!」

 キベリアは突っ込んでくるメティに対して魔法で迎撃しようとしたがそれよりも速く、

「バッチバチだぞ!」

 メティはキベリアを右手の爪で切り裂いた。キベリアの右腕に痺れるような痛みと切り裂かれた痛み、2つの痛みが同時に襲い掛かった。

「ッ!?」

 メティの速さに驚きながらも、キベリアは箒で空中を移動し、魔法を使って自身の傷を回復させた。メティは地上に着地しキベリアの方を見上げた。

「うにゃ? 確かに引っ掻いたのになー。血が出てない? あっ、そっか。お前自分を回復出来るんだな!? あはは、これは厄介だ!」

「うげっ、何よこいつ・・・・何で笑ってるのよ。気持ち悪い・・・・・・・・」

 笑うメティを見たキベリアは気味が悪いといった感じの顔を浮かべた。

「っ、キベリア殿・・・・」

 殺花がキベリアに意識を向けていると、殺花に近づいてくる男がいた。守護者ランキング6位『天虎』の練葬武だ。葬武は右手に持っていた黒い棍を殺花に向かって振るった。

「シッ!」

「っ、ちっ・・・・・・!」

 鍛え抜かれた武人の一撃。すぐにその事を悟った殺花はその一撃を回避し、右手に持っていたナイフを葬武に向かって振るった。だが、葬武も殺花の一撃を避けた。だがそのタイミングで、

「黒兵1、黒兵2、やれ」

 菲の声が響き、青龍刀を持った黒い人形と偃月刀を持った黒い人形が、殺花に襲い掛かった。それは完璧なタイミングだった。

「っ!?」

 避けられないと悟った殺花は反射的に幻影化を使用した。途端、殺花の姿が陽炎のように揺らめき実体を失う。2体の人形の攻撃はその煙のような殺花の体を切り裂いただけに止まり、殺花は少し離れたところで再び実体化した。

「第1式札から第10式札、光の矢と化す! ソニア!」

「うん、分かってるよ風音! 攻撃の歌、前方!」

 風音とソニアは互いに息を合わせると、フェリートに向かって攻撃を行った。そのタイミングで、菲は遠距離を攻撃出来る守護者たちに、再び攻撃の指示を与えた。エリア、ショット、ノエの攻撃もフェリートに向かって放たれる。

「これはこれは、豪華な攻撃ですね」

 10条の光線に不可視の衝撃、更には銃弾と矢。だが自分に向けられたその攻撃に、フェリートは軽く笑みを浮かべただけだった。

執事の技能スキルオブバトラー障壁シールド

 フェリートがそう言葉を紡ぐと、フェリートを守るように闇色の障壁が展開された。光導姫と守護者の攻撃は、全てその障壁に阻まれた。

「すみませんが、この程度の攻撃は効きませんよ」

 攻撃を涼しい顔で凌いだフェリート。そんなフェリートに対して、菲はニヤリと笑みを浮かべた。

「はっ、だろうな。最上位闇人フェリート。てめえならそれくらい普通に出来ると思ってたぜ」

 菲はそう呟くと、戦場全体に届くような声でこう叫んだ。

「てめえら! ! 各自それぞれの役割を果たせよ!」

 菲はそう言うと、

「頭兵、黒兵1、黒兵2、派手に自爆」

 そう言葉を続け、左手で指を鳴らした。

 パチンという音が響くと同時に、等間隔に移動させていた菲の人形が急に爆発した。中国でスプリガンと戦った時の比ではない。爆風を伴った中規模ほどの爆発だ。菲は自爆に自身の力を消費させる事で、爆発の規模を変える事が出来た。

「「「「ッ!?」」」」

 急な爆発に闇人たちが驚いたような顔を浮かべた。だがしかし、すぐにその顔は疑問の色に染まった。爆発は闇人たちにダメージを与えられる距離では起こらなかったからだ。いったい何のために。

 しかし、その答えはすぐに提示された。

「第1式札から第7式札、光の羽衣と化す! 我らに光の加護を!」

 爆発から一斉に光導姫と守護者が闇人たちの方に向かって駆け抜けて来た。駆けると同時に風音は自分、ソニア、陽華、明夜、プロト、壮司、光司に敵の攻撃を1度だけ無効にできる羽衣を付与させた。メティと葬武も一緒に駆けているが、2人に羽衣はなかった。

「みんな! 全速力で!」

 風音が羽衣を授けた面々にそう呼びかける。風音の言葉を聞いた6人は頷きながら、自身の最高速度で真っ直ぐに駆けた。

「は? 何する気?」

「分からないが、向かって来るなら迎撃するまでだ」

「まあ、そうね」

 キベリア、殺花、ダークレイは2秒後には自分たちに接近してくる光導姫と守護者を見てそう言葉を漏らす。3人には光導姫と守護者が何をする気なのか分からなかった。 

(? 何か妙ですね・・・・・)

 フェリートは光導姫と守護者の行動に疑問を抱いたが、すぐに答えに辿り着く事はなかった。

「1の炎、敵を舐めろ」

「闇技発動、ダークブレイザー」

 キベリアとダークレイが向かって来る光導姫と守護者たちを迎撃すべく、力を行使した。キベリアの炎が、ダークレイの幾条もの闇の光線が、光導姫と守護者たちに襲い掛かる。メティと葬武だけはその攻撃を回避したが、光の羽衣がある7人は最低限身を捻っただけで、そのまま闇人たちの方へと駆け抜けた。その結果、7人の羽衣は式札に戻り風音の元へと戻っていった。

「まだ真っ直ぐくるか。いいわ、私の魔法を至近距離で浴びせてあげる」

「ふん・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 キベリア、ダークレイ、殺花が警戒したような顔を浮かべる。そして7人は、


 ――そのまま、全速力で闇人たちの隣を駆け抜けた。


「は!?」

「っ!?」

「っ、どういう・・・・・」

「ッ、そう来ますか・・・・!」

 キベリア、ダークレイ、殺花は意味が分からないといった感じの顔を浮かべたが、疑問を抱いていたフェリートだけは、光導姫と守護者の行動の意味を理解した。フェリートが焦った顔を浮かべた時には――

「お前たちの相手は私たちだぞ!」

「ふん、強者ならば選り好みはせん」

「頭兵、黒兵1、黒兵2、そいつらを攻撃しろ」

 メティ、葬武、人形を再度召喚させていた菲が闇人たちに攻撃を仕掛けてきていた。更には後方にいた守護者たちも何度目かになる援護射撃を行っていた。

「ちっ、何よ急に!」

「邪魔よ・・・・!」

「っ、フェリート殿! これは・・・・!」

「ええ、マズいですね・・・・! 奴らはレイゼロール様の元へ向かう気です・・・・!」

 キベリアとダークレイは襲い掛かってきたメティと葬武の相手をし、菲の人形たちに襲われた殺花とフェリートは人形の攻撃を避けながら、そんな会話を交わした。

「くくっ、ようやく気づいたかよ。だが時は既に遅しってやつだ。頭兵、能力を解放。鬼神と化せ。黒兵1、黒兵2、能力を解放。敵を砕く力を刃に乗せろ」

 菲は悪巧みが成功した顔で笑うと、力を消費し3体の人形を強化した。頭兵は腕が4本になり背の剣を握り強化され、青龍刀と偃月刀を持った黒兵たちはそれぞれの武器に必殺の威力を宿した。頭兵はフェリートに襲い掛かり、黒兵たちは殺花にその武器を振るった。

「作戦は完全に成功だぜ」

 菲が闇人たちの足止めに成功したと確信した時、

「執事の技能、三重奏トリオ。すなわち、壊撃ブレイク加速アクセラレイト強化リィンフォース

 フェリートが自身を強化させ、目にも止まらぬ速さで強化された頭兵を蹴り砕き、凄まじい速度でレイゼロールと戦う役割の7人を追い抜き、7人の前に立ち塞がった。

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

「なっ!?」

 その光景を見た7人はつい足を止めて驚きを露わにし、作戦を立案した菲も信じられないといった顔を浮かべた。

「レイゼロール様の元には行かせませんよ、絶対に。この私がいる限り。あなたたち全員の相手は、私が請け負います」

 フェリートは真剣な表情で、光導姫と守護者たちにそう宣言した。「十闇」第2の闇、『万能』のフェリート。規格外の闇人である、ゼノに次ぐ力を持つ闇人。その力は、最上位の光導姫や守護者を含めた7人に対しそう宣言できる力。フェリートは光導姫や守護者たちにとって、超が付く強敵に違いなかった。


 ――戦いは何が起こるか分からない。『軍師』の思惑を超えて、『万能』が立ち塞がった。

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