第233話 裏切り、過去からの帰還

「〜ッ!?」

 ナイフによる刺突。それを胸部に受けた影人はその激痛に顔を歪めた。そんな影人を見たフィズフェールは変わらずにニコニコとした顔でこう言った。

「いい顔ですね。まあその邪魔な前髪のせいで全体的な表情は分かりませんが」

 フィズフェールは無造作に影人の体からナイフを引き抜いた。瞬間、傷口から血が溢れ出す。血が木の床を濡らす。影人はまともに立っている事が出来ずに、膝から床へと崩れ落ちた。

「ゲホッ、ガハッ・・・・! な・・・・なん・・・・・・・・で・・・・・・・・」

 ナイフが肺を掠めていたからか、口から血を吐きながら影人はヨロヨロと顔を上げフィズフェールを見上げた。影人には本当に意味が分からなかった。なぜ。どうして。こんな状況だというのに影人の中を占めるのはそんな思いばかりだ。

「何でってさっきも言ったじゃないですか。邪魔なんですよ、あなた。あなたのせいで、レイゼロールがまた人を信じ始めようとしている。そうなったら、困るんですよね〜。彼女には、しっかりと人間に憎悪を燃やして孤独になってもらわないと」

 フィズフェールは影人をその灰色の瞳で見下しながら、そんな言葉を吐いた。その言葉を聞いた影人を衝撃が襲う。なぜフィズフェールはレイゼロールの名前を知っているのだ。

「おや、驚いていらっしゃるようですね。何だまだ驚けるだけの余裕があるんですか。見た目に似合わずしぶとい。まあ、ただの非力な人間のあなたはもう死を待つだけの存在です。死ぬまで適当に話してあげましょうかね。暇つぶしというやつです」

 フィズフェールはそう言うと話を始めた。

「まず、あの森を訪れあなた達に接近したのは意図的な私の行為です。レイゼロールは地上で力を使う事の出来る今や唯一の神ですが、彼女はまだ気配隠蔽の力を扱えない。だから、彼女がどこにいるかは私からすれば容易に分かりましたよ」

 クルクルと右手で血に濡れたナイフを回すフィズフェール。その仕草はいかにも暇つぶしといった感じだ。

「初めは私自身がレイゼロールに信頼される人物になろうと考えていました。彼女は人や自分と同族である神すらも信用していませんから、まあ多少は難しいと思いましたが、所詮は幼体、まだ子供です。少し優しくしてやれば心を開く。だが私がそれをする必要はなくなった。それは、あなたがいたからですよ。エイトさん」

「俺・・・・・が・・・・?」

 フィズフェールはそこで影人を見てニヤリと笑った。その笑みは邪悪さを感じるものだった。

「ええ。予想外な事に、レイゼロールはあなたを信頼していた。それもかなり。彼女があれほど心を許したのは、死んだ兄のレゼルニウス以来でしょう。だから、手間が省けたんですよ。必要なのは、レイゼロールが暖かさを感じる信頼された何者か。必ずしも、私がその何者かになる必要はなかった。そして、その信頼された者がいなくなれば、レイゼロールの孤独と絶望はより深くなる」

「お・・・・お前の・・・・目的・・・・・は・・・・いったい・・・・なん・・・・・だ・・・・・?」

 フィズフェールの言葉を朧げに聞いていた影人は、そう声を絞り出した。血は変わらずに流れ出し木の床には血の水溜まりが出来ている。激痛と混濁する意識の中で、影人は質問した。

「えー、そこまで言う必要ありますかね? まあ強いて言うなら、そっちの方が面白そうだからですかね。あなたを殺すのは、まあそういう理由です。あなたが人間に殺されたと私がレイゼロールに伝えれば・・・・くくくっ、レイゼロールはどん底の絶望に沈むでしょうねぇ・・・・・・・・」

 フィズフェールは顔を歪めて笑った。その笑みには狂気が感じられた。その笑みは狂人が浮かべる笑みであった。

「っ・・・・!? て・・・・めえ・・・・! ふざ・・・・けんなよ・・・・! そんな事・・・・は・・・・俺が・・・・絶対に・・・・させねえぞ・・・・!」

 フィズフェールの言葉を聞いた影人は、前髪の下の目からフィズフェールを睨みつけた。再びレイゼロールを孤独と絶望の闇の中に突き落とす。そんな事は絶対にさせるわけにはいかない。

「ははっ、そんなザマで言われても説得力ないですよ。まあ、あなたの亡き骸でもレイゼロールの前に晒せば1発で――」

 フィズフェールが影人を嗤い言葉を紡ごうとした時だった。とある変化が、影人の背後の空間に生じた。

 突如として、影人の後方の空間に黒い亀裂が生じ、黒い歪みが発生したのだ。

「ッ!?」

「これは・・・・・・時空の歪み? どういう事だ。なぜ時空の歪みが急に・・・・っ、まさか」

 その歪みに影人とフィズフェールが驚いたような顔を浮かべる。そして、フィズフェールは何かに気づいたように右手に持っていたナイフを見つめた。

「ああ、やはりこれは『帰還の短剣』か。私が作った、傷つけた対象をその者と最も縁の深い場所へと還す短剣・・・・・・ちっ、適当に取った武器の中からまさかこれを取るとはな」

 フィズフェールは少し納得したような顔を浮かべたが、やはり納得できないといった顔を浮かべた。

「だが、それでもおかしい。こいつは自分を異邦人だと言っていた。ならばどこかに転移されるはずだ。転移は体が粒子となりこの場から消える・・・・だが、現れたのは時空の歪み・・・・・・あなた、いったい何者です?」

 フィズフェールが訝しむような声で影人にそう質問した。影人はその質問に答える事はなく、フィズフェールに怒りの言葉を吐き出した。

「てめ・・・・え、だけは・・・・・・絶対に・・・・・絶対に許さねえ・・・・ぞ・・・・! フィズ・・・・フェール・・・・!」

「はあー、聞きたいのは陳腐な恨み言じゃないんですがね・・・・・・まあ、いいですよ。興味がないといえば嘘になりますが、その答えは諦めるとしましょう」

 フィズフェールは呆れたようにため息を吐くと、影人の方に向かって左手を伸ばした。

「取り敢えず、あなたが死んだという証拠にあなたの服を頂きますよ。あなたの亡き骸を回収するのは、もしかしたら不可能かもしれないので」

 そう言ってフィズフェールは乱暴に影人の服の一部を破り剥ぎ取った。フィズフェールが剥ぎ取った衣服の一部には影人の血がべったりと付着していた。

「っ、なに・・・・・を・・・・」

 影人がフィズフェールの行動に疑問を抱く。するとそのタイミングで、影人は後ろに引かれるような感覚を覚えた。

「な・・・・っ・・・・!?」

「やはり引かれますか、あなただけ。やっぱり取っておいて良かったですね。あなたが死んだ証拠としては些か弱いですが、あなたが永遠に帰って来なければ、レイゼロールもあなたが死んだと理解するでしょう。大丈夫、あなたは人間に殺されたとしっかり伝えておきますよ」

「っ・・・・!?」

 フィズフェールは歪みに引かれる影人にそう言って嗤った。狂気と邪悪さに満ちた灰色の瞳を向けながら。その笑顔を影人は知っていた。人を何とも思っていないその笑みを。自身の欲望のままに浮かべるその笑みを。それは、影人の精神の奥底の禁域にいる、あの影の本体が浮かべていた笑みと全く同じ、邪悪な人外の笑みだった。

「てめ・・・・え・・・・ら、みたい・・・・な・・・・人外が・・・・! 俺は・・・・この世・・・・で・・・・1番、許せねえんだよ・・・・!」

 瀕死の状態であるにも拘わらず、影人は身を焦がすような激しい怒りと殺意を覚えた。影人は痛みと後ろの黒い時空の歪みの引力に抗うように、フィズフェールに向かって右手を伸ばそうとした。

「へえ、死に際でそれほどの怒りと殺意を私に向けて来ますか。くくっ、大した人間ですね。あなたのその根性が気に入りました。最後に特別に私の本当の名前を教えてあげましょう。フィズフェールというのは実は偽名なんですよ。この名を刻み、あの世で永遠に私を恨んでください」

 フィズフェールは面白いといった感じの顔を浮かべ、影人に自分の本当の名前を教えた。


「私の本当の名は――。これが私の真名です。そしてこれが、あなたへの冥土の土産です。せいぜい、苦しんで死んでくださいね」


「っ!? その・・・・名前は・・・・・・」

 フィズフェール、いやフェルフィズの名前を聞いた影人が思い浮かべたのは、とある大鎌の名前。刃までもが黒い、全てを殺す呪われし大鎌。その大鎌の名前こそが「フェルフィズの大鎌」。目の前の男と同じ名を冠する大鎌だ。これは偶然なのか。だが、影人にそれ以上思考する時間はなかった。

「ぐっ・・・・・・! くそ・・・・が・・・・・・!」

 影人は歪みの引力に抗う事が出来ずに、真っ黒な歪みの中へと吸い込まれてしまった。この世界に来た時と同じように。影人の右手は結局フェルフィズには届かなかった。

「ではエイトくん。そんな事は間違いなくありませんが・・・・・・もしあなたが生きていれば、そしてもしまた会う事があれば・・・・・・その時は互いに乾杯でもして語らいましょう。さようなら」

「フェル・・・・フィズゥゥゥ・・・・・・!」

 ふざけた別れの言葉を口にするフェルフィズに、影人は恨みと怒りの込もった声で、悪意と狂気に塗れた男の名を呼んだ。そして、それが過去の世界での影人の最後の言葉だった。

 そして、影人は完全に歪みの中へと引き摺り込まれた。










(ちくしょうが、ちくしょうが! クソッタレが! フェルフィズ、あの野郎・・・・・・!)

 時空の歪みの中へと引き摺り込まれた影人は、全てが見えぬ暗闇の中で依然フェルフィズへ怒りの感情を燃やしていた。

(くそっ、だがどういうわけだ? 何で俺はまた時空の歪みへと引き摺り込まれた? っ、ダメだ。来た時と同じだ。流れが強すぎて、思考がまとまらねえ・・・・・・)

 凄まじい流れの力に全身を弄ばれる影人。加えて、胸部は未だに激しく痛む。影人は変わらず重傷で死の淵にいるのだ。

(ダメ・・・・・・だ。来た時と同じ・・・・・・意識が保て・・・・ね・・・・・・え・・・・)

 そして、影人は意識を失った。











「――人! ――影人! 影人ッ!」

 声が聞こえた。暗闇の中で自分を呼ぶ声が。聞き覚えのある声だ。暗闇の中で影人はそう思った。

「目を覚ましてください影人ッ! あなたはこんな所で死ぬ人ではないでしょう!?」

「っ・・・・・・・・?」

 暗闇の中に響く声は泣きそうな声で、激しく影人の名を呼び続ける。その声に応えるように、影人は前髪の下の両目をゆっくりと見開いた。

「う・・・・・ん・・・・? ここは・・・・・・・・・?」

 暖かな光がまず目に映り、影人はゆっくりと上半身を起こした。すると、ずっと影人に声をかけ続けていた人物が心の底からホッとしたように、こう声を漏らした。

「影人! ああ、よかったぁ・・・・・・・・本当に、本当によかったです・・・・・・・!」

「ソレイユ・・・・・・・・なのか? だが、俺がよく知ってる大人のソレイユだ・・・・いったい、何が起きて――」

 影人は自分のすぐ側にいたソレイユを前髪の下の両目で見た。そこにいたのは大人のソレイユだった。ソレイユは影人が目を覚ました事に感動したような顔を浮かべると、突然影人に抱きついてきた。

「影人、影人・・・・! あなたが生きていてくれて、あなたが帰って来てくれて、私は本当に嬉しいです・・・・!」

「っ、お、おい!? きゅ、急になんだよ・・・・? は、離れろって・・・・!」

 ソレイユに抱きつかれた影人は、ソレイユの体温や柔らかな花のような匂いを感じ、赤面しながらソレイユにそう言った。影人にそう言われたソレイユは、ハッとしたようにすぐに影人から離れた。

「あ、す、すみません・・・・! つい・・・・・・・・」

 ソレイユもどこか赤面したような顔でそう言葉を呟いた。モジモジと両手の人差し指を絡み合わせながら。互いに気恥ずかしくあるためか、少しの間、2人に沈黙が訪れた。

「そ、それで何でお前がここに? というかここは・・・・・・・・神界、なのか?」

 影人は周囲を見渡しながら、ソレイユにそう質問した。まだ気恥ずかしさが抜けないのか、少し言葉は詰まらせたが。

「はい、ここは神界です。私がここにいる理由はそれが答えですが・・・・私の方があなたに色々と聞きたいですよ」

 ソレイユはそう言ってこう言葉を続けた。

「急にあなたとの念話のチャンネルが復活したかと思ったら、あなたからの反応は何もありませんし、視聴覚を同期しても何も分からない・・・・これは何か尋常ではないと思った私は、あなたのいる場所を感知して地上に降りました。あなたがいたのは、あなたがこの世界から姿を消した場所、ローマのコロッセオ内でした。コロッセオ内に私が駆けつけると、複数人の人々が誰かを心配そうに囲んでいました。私がその囲みを確認すると・・・・・・・・胸部から激しく出血し意識を失っているあなたがいました」

 ソレイユはその時の事を思い出したのか、少し顔を曇らせた。

「今にも死にそうなあなたを見た私は、あなたをその場から回収し、あなたをここに運びました。そして、あなたの傷を癒した」

「・・・・・・なるほどな。それで今に繋がるってわけか。確かに気づけば刺された傷もすっかりないしな」

 ソレイユの話を聞きここにいる状況をある程度理解した影人は、露出している自分の上半身に視線を落とした。フェルフィズに刺された傷が綺麗さっぱり消え回復している。どうやら、そのおかげで影人はまだ生きているようだった。

「ありがとよ、ソレイユ。お前が助けてくれなきゃ、俺は今頃死んでた。お前に心から感謝するぜ」

「いえ、それは気にしないでください。ですが・・・・・・・・いったい、何があったのですか影人?」

 ソレイユは影人にそう聞いてきた。ソレイユからすればそれは当然の質問だろう。影人は少し考えるような仕草をして独り言を呟く。

「このソレイユがいるって事と今までの話からするに、ここは俺が元いた時代だ。って事は、俺は帰ってこれたって事か・・・・だがなぜ急に帰ってこれた? そう言えばフェルフィズが何か言ってたな。だがあの時は意識が朦朧としてたし、詳しくは覚えてねえ。だが、考えられる原因は俺があのナイフで体を刺された事くらいしか・・・・・・・・」

「え、影人? ブツブツと独り言を言ってどうしたのですか・・・・?」

「っ、ああ悪い。ちょっと状況の整理をな」

 不思議そうな顔で声を掛けて来たソレイユに、影人はそう言った。そして、右手でくしゃくしゃと髪を掻く。

「そうだな。どこから話せばいいか・・・・・・いいか、ソレイユ。今から俺が話す話は、信じられないかもしれないが全て本当の事だ。まずそれだけは言っておく。後、俺は至って正気だ。それも先に言っとくぜ」

「は、はい」

 真剣な顔でそう断った影人に、ソレイユは少し驚いていた。そして、影人はソレイユに自分が過去の世界に行った事を伝えた。そこで起きた全ての事、自身が体験した全ての事を。

「・・・・・・っていうわけだ。信じられないかもしれないが、これがマジの話だ」

 そう言って影人は話を終えた。影人の話を聞いていたソレイユは唖然とした顔を浮かべていた。

「影人がレイゼロールと暮らしていたあの人間自身・・・・・・・? ま、まさかそんな事が・・・・」

「まあ、お前の反応はもっともだ。誰だろうと、こんな話を聞けばお前みたいな反応をするだろうぜ。だが実際、過去で俺とお前は会ってる。ああ、あん時のお前の呼び名で呼んでやろうか。って言っても、今のお前をこう呼ぶのはちょっとおかしいが。なあ、ガキンチョ」

 影人は試しにソレイユの事をそう呼んだ。すると、ソレイユは驚いたような顔を浮かべた。

「そ、その呼び方は・・・・・・!? ま、まさか本当に・・・・じゃ、じゃあ初めて私と会った時の事は!?」

「川だろ。あの時お前はラルバと一緒にいた。それで俺がレイゼロールを害する者だと勘違いしたお前は、俺に攻撃してきた。お前、昔は本当にお転婆だったよな」

「な、なっ・・・・・・・・・・!?」

 影人の答えを聞いたソレイユは口をパクパクとさせながら衝撃を受けていた。そしてカアアと再びその顔を赤面させていった。どうやら、過去の自分の事をソレイユは恥ずかしがっているようだ。

「よく格闘ごっこもしたし、追いかけっこなんかもしたよな。いやお前マジで元気だった。ああ、そうだ。後は――」

「も、もうけっこうです! あなたがあの人間だという事は分かりました! よく分かりましたからッ! だから、それ以上はやめてくださいッ!」

 影人が言葉を続けようとすると、ソレイユが慌てたようにそう言葉を挟んできた。ソレイユの言葉を聞いた影人は「そうか」と頷き、それ以上その話は続けなかった。

「まあ、誰でも過去の自分に思うところはあるからな」

「分かってるならそれ以上言わないでくださいよ!」

 影人の指摘に、ソレイユはたまらないといった感じで両手で自身の顔を覆った。

「分かったよ。ったく、ならふざけるのはこれくらいにするか。・・・・・ああ、そうだ。ソレイユ、色々と話したい事や言いたい事はあるだろうが、先に1つだけ俺の質問に答えてくれ。お前、フェルフィズって奴を知ってるか? 人間じゃない。人外だ。そして多分、『フェルフィズの大鎌』に関係してると俺は思うんだが・・・・」

 影人はソレイユにそんな事を質問した。フェルフィズ。フィズフェールと名乗り、影人とレイゼロールに近づき、影人を殺そうとした邪悪なる人外。恐らくフェルフィズのせいで、レイゼロールは現在のレイゼロールへとなった。この光と闇の戦いの全ての元凶とも言える人物だ。

「っ!? え、影人どこでその名前を・・・・・・・・?」

「どこって過去でだよ。まあ、その感じだと知ってるぽいな。教えてくれよソレイユ。フェルフィズって奴は何者なんだ? 俺はどうしても、奴の事を知らなきゃならない。頼む。知ってるなら教えてくれ」

 フェルフィズの名前を聞いたソレイユは、驚いた顔を、そしてどこか青ざめたような顔を浮かべた。そして、影人はそんなソレイユに真剣な顔でそう言った。

「・・・・・・・・・・分かりました。フェルフィズの存在は、神界の神々しか知らない事。そして、彼の事はこの神界でも一種の禁忌的扱いで、人に教える事など許されてはいないでしょうが・・・・あなたがそう言うのならば特別に教えましょう。と言っても、私も彼の事は詳しくは知らないので、そこだけはご了承くださいね」

「ああ、分かった。恩に着る」

 真剣な顔でそう断ったソレイユに、影人は感謝の言葉を述べる。そして、ソレイユは最初にフェルフィズが何者であるのかを影人に教えた。

「フェルフィズとは、私が神として生を受ける遥か前に存在した1柱の神の名前。この神界にいる長老と同じ古神こしんとして知られる存在であり、そして・・・・・・・・・・狂いし忌神いみがみとして知られる神です」

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