第185話 楽しめ文化祭

 シェルディアの提案で一緒に文化祭を回る事になった影人、暁理、シェルディアの3人。3人は短い時間で色々と楽しめる2年の出し物がある2階に来ていた。

「確か1組は演劇だったよね。2組はミニカジノ。3組はあべこべ喫茶で、4組は教室迷路。5組はお化け屋敷・・・・・・2年の前半クラスはこんな感じだね。シェルディアちゃんは何かリクエストはあるかい? もちろん後半クラスの僕や影人の教室なんかも行けるけど」

「出来れば1組だけはパスにしてくれ。面倒な奴がいる」

「うるさい。君の意見は聞いてないよ影人。僕はシェルディアちゃんに聞いてるんだ」

 途中で口を挟んできた影人に対して、暁理は容赦なくそんな言葉を放った。暁理にそう言われてしまった影人は、「ひでえなおい・・・・・・・」と言葉を漏らした。

「そうね・・・・・ならそのミニカジノというのから順繰りに回ってみたいわ。影人のクラスの出し物は、影人の休憩が終わってから行きたいし」

「分かった。ならまずは2組からだね」

 シェルディアの要望を聞いた暁理はニコリと笑って頷いた。一方、その言葉を聞いていた前髪は、シェルディアが後で自分のクラスを訪れるという事に戦慄していた。

「ようこそー! 2年2組のミニカジノへ!」

 そんなこんなで2年2組のドアを開けた3人。ドアを開けたと同時に、いかにもカジノらしい白いシャツに黒いベスト、赤い蝶ネクタイを身につけた男子生徒が影人たちを歓迎した。

「まずは軽いご説明から! 当クラスのカジノでは最初にチップが10枚支給されます。それを各ゲームで増やしていただければ、それに見合った景品と交換できるという仕組みです。チップが0枚になってしまっても、アメを1つ配らせていただきますので、ぜひ全力でベットして楽しんでいただければと! それでは説明はこの辺りにして、当クラスのカジノをお楽しみください!」

 説明役の男子生徒はこのミニカジノのルールを述べ終わると、小さなカウンターに案内した。そこで影人たちはそれぞれチップを10枚支給された。

「1番上の景品はあの変な生き物のぬいぐるみか。チップ500枚ね・・・・・・ふっ、別にあんなもんは欲しいとは思わないが、ここは『孤独の灯籠流し』(今思いついた)と呼ばれた俺のギャンブラーとしての血が騒ぐ。仕方ねえ、ちょいとばかり本気を出すか」

 チップを受け取った前髪は何か意味不明な事を言い出した。ここに来て厨二病全開である。端的に言ってキモイので死んだほうがいいと思う。

「うわ出たよ。影人の本当に残念なところが・・・・・シェルディアちゃん。こいつはこういう奴だから、本当に近づかない方がいいよ。教育に悪いから」

「大丈夫よ。影人が時たまに変な事を言うのは知ってるから。そういうところも面白いわ」

 暁理はドン引きしたような表情を浮かべシェルディアにそう忠告したが、精神年齢が大人なシェルディアは笑って流しただけだった。

「さて、なら俺の戦いを始めるか。暁理と嬢ちゃんも楽しめよ。せっかくだから、誰が1番チップを集められるか勝負しようぜ。じゃ、また後でな」

 影人は2人にそう言葉を残すと、テーブルゲームの場所に向かった。その足取りはウキウキとしていた。

「あ、影人! ったく、勝手な奴なんだから・・・・」

「ふふっ、浮き足だっているのでしょう。でも、賭け事にそういう気分で臨むのはあまり良くないのだけれどね。さて、なら私もやりましょうか。ギャンブルを最後にやったのは、ラスベガスが最後だったかしら」

 シェルディアは楽しげに笑うと、ルーレットのある場所へと向かった。

「ラスベガスが最後って・・・・・シェルディアちゃんって一体何者なんだ・・・・?」

 シェルディアの呟きを聞いた暁理は軽く首を傾げて疑問を覚えたが、結局答えは出ないままだったので、仕方なく自分もテーブルゲームの場所へと向かった。











「くそっ、最初のポーカーでさえ勝っていれば・・・・・・・・!」

「いや、明らかに最初の勝負で10枚全部賭けた君が悪いじゃん。本当、バカだよね影人って」

 20分後。カウンター前に集まった影人たち。結果を言ってしまえば今の発言から分かるように、最初の勝負で全てのチップを失いチップが0枚になった影人がビリだった。ちなみに、暁理のチップの数は100枚だ。最初のチップの10倍になったので、まあ上々だろう。暁理はそれを3等のお菓子の詰め合わせセットと交換した。

「そんなバカの影人とは違って・・・・シェルディアちゃんは凄いよね。まさかチップを500枚稼いで一等のあのぬいぐるみゲットしちゃうんだから」

 暁理はカウンターで女子生徒からぬいぐるみを受け取っているシェルディアを見た。シェルディアは見た目からは想像も出来ないような、凄まじい勝負強さを見せ、この短時間でチップの数を50倍に増やし一等のぬいぐるみを掻っ攫った。

「ふふっ、可愛いわね。何の生き物のぬいぐるみかしら?」

 ぬいぐるみを両手で抱えたシェルディアが戻って来た。最終結果を整理すると、1位シェルディア、2位暁理、3位影人という事になった。2人とは違って、影人は残念賞というか情けのいちご味のアメだけを獲得した。

「それじゃ、言い出しっぺの影人が負けたから、3組のあべこべ喫茶は影人の奢りね」

「はあ!? おいそんな事は聞いてねえぞ!」

「何さ敗者には相応しい罰だろ。君は勝負に負けたんだぜ? それくらいはやってみせるのが勝負師ってものだと思うよ」

「ぐっ・・・・・・・・・あーもう、分かったよ! 好きにしやがれ!」

 暁理にそう言われた影人は、少しヤケクソ気味にそう言った。

「やったねシェルディアちゃん。そういう事だから、次のクラスでは1番高い物注文してやろうよ」

「ふふっ、そうね。それくらいはしてもらおうかしら」

 影人から言質げんちを取った暁理とシェルディアは楽しそうにそう言葉を交わしあった。最初はどうかと思ったが、シェルディアと暁理の仲は良好だ。まあ、何も知らない暁理からしてみれば、シェルディアはあくまで可愛らしい外国人の少女なので、関係が悪化するような理由は逆にないのだが。

「それじゃ、次は3組にレッツゴーだね!」

「あんま高いのは注文するなよ。俺金そんなないんだからよ・・・・・」

 元気よく3組のドアを開けた暁理に、影人はため息を吐きながらそう呟いた。

「いらっしゃいませぇー! あべこべ喫茶へようこそぉ!」

 ドアを開けると野太い声が影人たちを迎えた。声のした方向に目を向けてみると、坊主頭の野球部員と思われる男子生徒がメイド服に身を包んでいた。影人はいきなり精神に強烈なジャブを受けた。

「おお・・・・僕が言えた義理じゃないかもだけど、気合い入ってるね」

「なぜ男が女給の格好をしているのかしら? お世辞にも似合ってるとは思わないけど」

「だからあべこべなんだよ。すいません、3人でお願いします」

 暁理とシェルディアはそれぞれそんな反応を男子生徒に示した。シェルディアに関しては素直な疑問と感想なのだろうが、聞く人によっては若干失礼なので、影人はフォローを入れつつ男子生徒に案内を頼んだ。

「では、こちらの席をどうぞぉー!」

 男子生徒はもはや色々と悟ったり吹っ切れているのだろう。明るい声でそう言うと影人たちを空いている席に案内した。

(別に昨今のジェンダー観にとやかく言うつもりは全くないが、いわゆる普通の男子にとっては中々に地獄だよな・・・・・・・俺だったらゲロ吐くぜ)

 影人は男子生徒の目の奥が軽く死んでいたのを見逃さなかった。別に女装が好きな男子もいる。それはそれでいいだろう。しかし、多くの場合は男子は異性の服装を纏うのを嫌がるものだ。まあ、それは女子もそうかもしれないが、影人は男性なのでその辺りの事は正確には分からない。

「はい失礼しまーす! ご注文は何になさいますか・・・・・・・って早川さんだ! あー、やっぱりいいなー早川さん。早川さんがこの衣装着てたら絶対に格好よかったよ」

 注文を取りに来た執事服風の衣装を纏った女子生徒は、暁理の姿を見るとそんな言葉を述べた。たぶん暁理の知り合いか何かだろう。

「あはは、ありがとう。確かに僕もちょっとは着てみたかったかな。ねえ樫谷かしたにさん、この喫茶で1番高いメニューって何かな?」

DXデラックスパフェかな。お値段1500円!」

「あ、じゃあそれお願い」

 暁理は笑顔で女子生徒にそのDXパフェなるものを注文した。注文を受けた女子生徒は「本当? ありがとうー! DXパフェ1つ入りましたー!」と言って去っていった。

「ぐ、こんなんで1500円も飛ぶのかよ・・・・・泣きそうだぜ・・・・」

 バイトもしていない男子高校生にとって、1500円は大金である。影人は自分のサイフの中身が寂しくなるのを悲しみ、大きくため息を吐いた。











「いやー、パフェ美味しかったね。けっこうボリュームあったから、カロリーは気になるけど良かったよ」

「うん、美味しかったわね」

「そいつはようござんしたね・・・・・・・・・」

 あべこべ喫茶を出た暁理、シェルディア、影人の3人はそれぞれそんな感想を漏らした。唯一、影人だけが恨み言のような事を呟いていたが、まあ前髪の恨み言なんていうのは無視されて当然のものなので、どうでもいいだろう。

「次は4組の教室迷路かー。僕、実はまあまあ楽しみなんだよね。迷路って何かワクワクするし」

「ガキかよ・・・・・・と言いたい所だが、分からんでもない。迷路ってのは、中々に気持ちを熱くさせる場所だよな」

「うわ、影人に同意されちゃったよ・・・・・」

「おいこら暁理てめえ。それはどういう意味だ」

「ふふふっ」

 すっかりいつも通りのやり取りをしながら、影人たちは4組のドアを開けた。シェルディアは影人と暁理のやり取りを見て微笑んでいる。

「いらっしゃい! 4組の教室迷路にようこそ!」

 4組に入ると、冒険家風というか探検家風の衣装の男子生徒が影人たちを出迎えてくれた。

「3名様ですね! 当クラスは教室全体が迷路になっています。お客様にはこの迷路からいかに速く出られるかを試していただきます。好タイムを出せた方には、ささやかではありますが景品もございますのでぜひ頑張っていただければと! それでは迷路スタートです! 入り口は2つありますので、お好きな方からどうぞ!」

 男子生徒は迷路に関する軽い説明を述べ終わると、ダンボールで仕切られた2つの入り口を指差した。入り口は2つだが、おそらくゴールは1つのタイプだろう。

「ふっ、『前人未到の単独者(例によって今思いついた)』と呼ばれた俺(呼ばれてない)の踏破ショーをまさかこんな所で開催する事になるとはな。全く、人生ってやつは不思議だぜ」

「不思議なのは君の頭だろ・・・・・・・」

 またもや自身の抑えられぬ衝動を露わにした影人に対して暁理はドン引きした。だが、影人に対してドン引きしまくっていては体が持たないので、暁理は気分を切り替えた。

「シェルディアちゃんはどっちから入る?」

「そうね、なら私は左の方にするわ」

「そっか。なら僕もそっちにしよ。影人は?」

「俺は右だ。単独者っていうのは群れないものだぜ」

「あっそ。じゃ、ゴールで会おう」

 こうして、シェルディアと暁理は左の入り口に、影人は右の入り口に入った。









「ゴール! お客様のタイムは10分40秒です! 残念ながら、タイムは平均以下で景品はありませんがおめでとうございます!」

「くそっ、存外に時間掛かっちまったぜ・・・・・」

 10分後。4組の迷路を抜けた影人は、少し悔しそうにそんな言葉を漏らした。所詮は迷路と思って高を括っていた影人だったが、迷路は予想以上に本格で難しかった。

「ふふっ、お疲れ様。影人」

「遅かったねー影人。いやいや、まさか僕たちより6分も遅いとは思わなかったよ。『前人未到の単独者(笑)』だっけ? あんまり大した事ないね〜。僕たちは最速記録って事で、景品までもらっちゃったぜ」

 迷路を抜けた影人を先にゴールしていたシェルディアと暁理が迎えた。特に暁理はニヤニヤとした顔で、景品であっただろうジュースのペットボトルを軽く振りながらそんな言葉を言ってきた。

「うるせえ。嬢ちゃんについて行っただけの金魚の糞野郎にそんな事を言われる筋合いはないぜ。俺は自分1人で大冒険しながらゴールしたんだよ」

 影人は少し機嫌が悪そうに暁理に言葉を返した。自分は1人で四苦八苦しながら、時に壁をぶち抜こうかと思い悩みながらゴールしたのだ。それこそが勲章。男の美学である。

「君、よくもまあ女子の事を金魚の糞呼ばわり出来るよね。本当に君って奴は色々欠けてるんだと分からされるよ・・・・・・・・・」

 バカの前髪を暁理はいっそのこと哀れな目で見つめた。引くを超えると人間は哀れみを覚えると暁理は知った。

「ま、いいや。君に対していちいち何か思うと、日が暮れるしね。次のクラス行こう。次は5組のお化け屋敷だね。シェルディアちゃんはお化け屋敷好き?」

「怖いとかはないけど、けっこう好きね。色々と驚かせようという仕掛けが面白いから」

「俺も好きな部類だ。魑魅魍魎どもに恐れを抱かぬ者という状況が好きだからな」

「君には聞いてないよバカ前髪。しかも理由がまた終わってるし・・・・・」

 そんな会話をしながら3人は2年5組に向かった。5組のクラスは数人ほど人が並んでいたので、影人たちは最後尾の看板を掲げている包帯を全身に巻いている男子生徒の場所に足を運んだ。

(・・・・・結局、流れで来ちまったな。このクラスは朝宮と月下がいるからあんまり来たくはなかったぜ。それに今日は2人との知り合いの嬢ちゃんもいるしな。だがまあ、あいつら驚かす側だろうからそんなに深く考えなくてもいいか)

 5組には陽華と明夜がいるので、影人からしてみれば色々と思うところはある。だが、お化け屋敷という関係上、接触する機会は少ないだろうと影人は感じた。

「一応、約束もしちまったしな・・・・・・・」

「ん? 誰と約束したの?」

「別に何でもねえよ。ただの独り言だ」

 ついいつもの癖で呟いた独り言。それに反応した暁理に、影人はそう言った。

「お待たせしましたー。次の方どうぞー」

 それから約10分後、影人たちの出番がやって来た。影人たちは暗闇に包まれた教室へと足を踏み入れた。

『ここは呪われた幽霊屋敷。あなたたちはそんな屋敷に迷い込んでしまった不運な客人たち・・・・・あなたたちはこの屋敷から一刻も早く脱出しなければなりません。でなければ・・・・・きっと、恐ろしい目に遭ってしまうでしょう・・・・・・・・』

 教室に入り入り口のドアが閉まると、どこからかそんなナレーションが聞こえて来た。それに伴いぼぅとした青い照明が2つ灯った。

「おおっ、いかにもって感じだ」

「ふふっ、ワクワクしてきたわ」

「ふっ、『不可思議の撃退者(また今思いついた)と呼ばれたこの俺が――」

「しつこいし興味ない。ほら行くよ影人」

「最後まで言わせろよ!」

 影人を無視して歩き始めた暁理に影人はそう言って後を追った。シェルディアも暁理と一緒に歩いていたので、地味にシェルディアからも無視されていた前髪だった。

 ぼんやりとした明かりのついた道を道なりに3人は進んだ。すると最初の脅かしポイントだろうか。3人の前に創作された井戸が現れた。

『1枚、2枚、3枚・・・・・』

 先ほどのナレーション同様、どこからか声が聞こえる。女の声だ。女は低い声で何かを数えているようだった。

「ああ、これはあれか。まあ、ど定番だよな」

「だね。驚きポイントは9枚の所かな」

 このシチュエーションからどんな脅かしが来るか予想できた影人と暁理は、そんな言葉を呟いた。まあ日本人なら大体は知っているシチュエーションだ。唯一、その辺りに詳しくないシェルディアだけは影人と暁理の会話を聞いて軽く首を傾げていた。

『4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚・・・・』

 そしてその間にも声は何かを数え続け、遂にそれは9枚までいった。

(さて、来るか)

 影人が井戸から白い幽霊の格好をした女でも出てくるだろうと思っていると、

「1枚足りなーい・・・・・・・」

 突如として後ろからそんな男の声が聞こえてきた。

「「ッ!?」」

 影人と暁理が驚いたように振り返る。すると超至近距離にピエロの扮装をした男子生徒がニチャリとした笑みを浮かべていた。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「わ、わぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 まさか後ろから来るとは思っていなかった影人と暁理は、情けない叫び声を上げながら次の通路に向かって駆け出した。

「ふふっ、可愛らしいわね。待ってちょうだいなあなたたち」

 シェルディアはピエロには全く驚かずに(というか接近されていたのはとっくに分かっていた)、のんびりと影人たちを歩いて追いかけた。

「うわー、地味にめっちゃ傷つくわ・・・・・」

 シェルディアにガン無視されたピエロ役の男子生徒は3人が去った後にポツリとそう呟いた。


 その後の影人たちは、

「うおっ!? 何かヒヤリとしたのが顔面に当たったぞ!?」

「しかもちょっとヌメってるし!」

 コンニャクに顔面から当たったり、

「ッ!? イソギンチャクかよ!」

「ひゃ!?」

 障子を突き破って来た手の大群に驚いたり、

「ふんふんふん! 君たち! 僕と筋肉を一緒に鍛えよう!」

「「やだよ!」」

 マッチョな男子生徒に追いかけられたりした。これは別の意味で怖かった。


「はあはあ・・・・・で、出口はまだか・・・・・?」

「た、多分もう少しだと思うけど・・・・・」

「大丈夫あなたたち? 私はかなり楽しいけど」

 取り敢えず、連続の脅かしポイントを何とかクリアした影人と暁理は疲れたような顔を浮かべていた。2人がこのお化け屋敷を舐めていた結果である。そして、シェルディアは全くの平常運転であった。

「嬢ちゃんは流石だな・・・・・・ん? おい暁理、あれ出口じゃねえか? 上に出口って書いてあるぜ」

 角を曲がった影人は、正面にドアを発見した。出口だ。ようやくここから抜け出せる。

「本当だ。はあ、よかった。何だかんだ結構怖かった――」

 影人の指摘に安堵のため息を吐いた暁理。だが、油断し切ったその瞬間、

「「ばあ!」」

 突如として後ろからお化け(白いビニール袋を被ったような)とカボチャ頭の怪物が後ろから追いかけて来た。

「ッ!? マジかよ! 性格悪い奴らだなおい!」

「うわー!? 急にはやめてくれよー!」

 この状況下、突然追われれば人は逃げるもの。影人と暁理は叫びながらゴールに向かって駆け出した。

「ふふふ、逃がさないわよ!」

「待て待て〜! お化けちゃんが食べちゃうぞ〜!」

 そんな影人と暁理をノリノリで追いかけてくるカボチャ頭とお化け。その扮装をした2人は結構速く、影人と暁理にあと少しというところまで迫った。だが視界が悪かったためか、お化けの格好をしたその生徒は足をもつれさせた。

「あ・・・・・・」

「ッ!? よ――」

 お化けの格好をした生徒が前のめりに倒れる。カボチャ頭の生徒は、倒れようとするお化けを助けようとした。だがそれよりも速く、

「ちっ・・・・・・・・!」

 お化けの姿をした生徒を影人が抱きしめた。

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