第110話 守護会議(後編)
「今回も守護会議は例年通り、レイゼロール率いる闇サイドとの状況についての話し合いやその他の様々な議題を話していく。だが、今回話すべき最も重要な議題は既に決まってる。それは・・・・・・・・・今年になって出現した正体不明・目的不明の怪人、スプリガンについての議題だ」
守護会議の冒頭、ラルバは円卓につく守護者たちに向かってそう言葉を述べた。
「この場にいる全員に俺は手紙を送った。だからお前達もスプリガンっていう奴の存在に関しては認知していると思う。今日議論するのは、そのスプリガンを敵と定めるか否か。それに関する各々の意見を聞かせてくれ」
スプリガン――その存在については、ここにいる者たち全員が知っているはずだ。スプリガンがレイゼロールと戦った時、スプリガンが光導姫と守護者に攻撃を行った事に対し、ソレイユとラルバは意見を交わした。その時に、各ランキング10位までにスプリガンの存在を伝えるという事になったからだ。ソレイユはもちろん、ラルバもその約束に従い守護者のランキング10位まで全員にその旨を伝える手紙を送った。
「スプリガンってアレっすよね。闇の力を使う正体不明・目的不明の怪人。戦場に不定期に現れては光導姫とか守護者を助けたり攻撃したり、闇人とかと戦うっていう意味不明の奴」
「ああ、その認識で合ってるよショット」
ラルバのその発言に確認するようにランキング8位『狙撃手』のショットがそう言葉を述べた。ショットの発言にラルバは首を縦に振った。
「うーん、正直言うと難しいっすよね。こっちに攻撃してきたら俺なら対処しますけど、確かそいつフェリートとかレイゼロールとかに勝ってるんすよね? そんな化け物みたいな奴、何もしてこないなら俺は刺激はしませんけどね」
ショットは自分の肩から垂れている髪を弄りながら自分の意見を言った。しかし、ショットの情報を訂正するような声が2つ上がった。1つは3位の席から、もう1つは10位の席からだ。
「そいつらだけじゃないぜ、ショット。この前なんか最上位闇人の冥もぶっ倒してた。しかも気絶させてたし」
「魔法を扱う最上位闇人キベリアも撃退していました。キベリアとスプリガンは異空間にしばらく消えていましたが、異空間から戻って来た時はキベリアは満身創痍でした。その結果が示すところは明白です」
「げっ、マジかよ。どんだけ強いんだよそのスプリガンは」
刀時と光司からそう言われたショットはその顔を顰めた。最上位闇人の力がどれ程のものかを知っている人物からすれば、どれだけスプリガンが荒唐無稽な存在なのかよく分かるからだ。そしてショットはランキング8位という事もあって、最上位闇人の力を知っている。
「・・・・・・今の『侍』と『騎士』の発言に少し疑問がある。なぜ2人はその情報を知っている? それに今の言い方だと、まるでお前たちはその状況を見てきたように感じられたが」
ショットの右隣、ランキング7位『銃撃屋』のエリアがそう発言する。エリアはそのような情報は知らない。ゆえに刀時と光司に疑問を抱いたのだ。
「それに関しては俺が答えるよエリア。実はこの2人はスプリガンと邂逅した事があるんだ」
エリアの疑問に答えたのはラルバだった。ラルバは刀時と光司がスプリガンに邂逅した事のある守護者である事、またそれに関するキベリア戦、冥・殺花戦について知っている範囲の情報を円卓に着く全員に伝えた。そして光司に関しては、恐らく最も多くスプリガンと邂逅した事のある人物であるだろうという事も。
「なるほど・・・・理解した。俺の意見を言わせてもらうなら、スプリガンという人物は敵だと認定しておいた方がいいと考える。確かに光導姫を助けたという事実もあるのだろうが、余りにもその要素が不確定だ。しかもこちらにも攻撃してくるという。ならば、敵と認定しておく方がこちらも動きやすい」
ラルバの話を聞いたエリアがランキング7位としての意見を述べた。その意見は客観的事実と戦場に赴く者の冷静な視点から述べられたものだった。
「・・・・・・・・・戦場において最も危険なのは、判断がつかないことだ。でなければ死ぬからな。スプリガンをもし敵と認定しない場合、光導姫、俺たち守護者はどう動けばいい? そこには迷いや一瞬の判断の遅れが生じる。そういった事が起きないようにするためには、敵と認定しておいた方が都合がいい。スプリガンを味方と仮定するには、リスクが多すぎる」
エリアの意見に続くようにランキング2位『傭兵』のハサンが静かな口調でそう発言する。ハサンもエリアと同じ意見のようだ。
「エリアとハサンの意見は分かった。2人とも、スプリガンを敵と認定する意見だな。ショットは今のところどっちつかずって感じか」
3人の意見を一旦ラルバが整理した。8人の内2人が敵とするのに賛成、1人が中間意見だ。
「刀時はどう思う? お前は実際にスプリガンと会った事もあり、かつスプリガンの力を目の当たりにしている貴重な奴だ。そんなお前の意見はどっちだ?」
「俺の意見ですか。俺の意見は、ぶっちゃけ敵と認定する派ですかね。敵対宣言の事もありますけど、スプリガンの目の冷たさは本物でした。ありゃ、いざという時はやる奴の目ですよ。あの目とスプリガンの力を見た時、俺は危険だと思いました。ショットの言うように、やり合わないならそれに越した事はないですけど、いつスプリガンが俺たちに本格的に牙を剥いてくるか分からない。ならリスクはありますが、敵と認定しとく方がいいと俺は思います」
ラルバに促され、ランキング3位『侍』の刀時は自身の意見を口に出した。敵対宣言という単語が出た辺りで光司以外の守護者たちは表情を変えた。実はラルバはスプリガンの敵対宣言の事をこの時点では話していなかった。ラルバは光司と刀時以外の守護者に向けて「その敵対宣言の事については、また後でちゃんと話す」と言った。今はとりあえずランカーたちの意見を聞くのが先という事もあるが、ラルバはにはもう1つ狙いがあるからだ。
「刀時の意見も分かった。これで認定派は3人だな。イヴァンと
ラルバが今度はエリアの右横の黒髪の少年と、その右横の燻んだ銀髪の少年に言葉を掛けた。ラルバの問いかけに先に答えたのは、黒髪の少年の方だった。
「・・・・・・俺もそいつを敵とする事に賛成だ。冥を倒した程の実力なら、そいつは間違いなく強い。俺は強いそいつと戦いたい。なら、そいつが敵のほうが俺にとって都合がいい」
短めの黒髪に簡素な綿の服に綿のズボン。上は半袖に下のズボンは7分丈の長さ、肩には黒い上着を羽織ったランキング6位『天虎』は、他の守護者とは違った種類の意見を述べた。
「相変わらずだな『天虎』・・・・・・・・お前のその戦い以外には興味なさそうなところ」
「実際に興味がないからだ。守護者も戦いがあるからこそ俺はやっている。お前とはそもそもの動機が違う『侍』」
「意見を決める場で、そんな欲望全開の理由で意見決めるってどうかと思うけどな・・・・・」
葬武の言葉を聞いた刀時は呆れたような表情を浮かべる。刀時の言葉を受けた葬武はさしたる感慨もないように淡々と言葉を返す。刀時はそんな葬武にまだ色々と言いたいようだったが、ラルバが仲介に入った。
「まあまあ刀時。お前の気持ちも分かるが、葬武の意見も立派なランキング6位の意見だ。ここにいる全員は実力を認められてここにいる。そして葬武の意見もその理由もまた、どんな理由であれ認められるものだ」
「まあ、そりゃそうすっけど・・・・・・」
ラルバの言葉に渋々といった感じではあるが、刀時は理解を示す。ともあれ、葬武の意見を足すとこれでスプリガンを敵と認定する意見は4つとなった。ちょうど今いる8人の半分の意見だ。
「俺は・・・・・・めんどいから認定派にしときます。敵とか敵じゃないとか、正直どうでもいいんで。多数派に入れときますよ」
葬武の意見の後に、疲れたようなやる気のない声でそう言ったのは銀灰色の髪色の少年だった。その声に惹かれるように、その顔も灰色の瞳もめんどくさそうな色を示していた。
抜けるように白い肌とは対照的に、少年(といっても見たところ歳の頃は、エリアと同じ18くらいだが)黒いコートを無造作に羽織ったランキング5位『凍士』のイヴァンはこれまた他とは違う理由から、意見を述べた。
「ふっ、面倒だからか・・・・・お前はやはりロシア人らしくないロシア人だな『凍士』」
「・・・・・・・ロシア人がみんな真面目で冷静な奴っていう偏見はやめてくれないか『銃撃屋』。あんただってイタリア人のくせに陽気とは真反対な奴じゃないか。なら、面倒くさがりのロシア人がいても別にいいだろ」
「確かに。お前の言い分の通りだな。非礼と偏見を詫びよう。素早く自分の非を認められるのが一流だからな」
エリアの言葉にイヴァンはそう反応して息を吐いた。イヴァンに痛い事を言われたエリアは少しだけ口角を上げ帽子に手を当てた。
(戦いたいから、面倒だから・・・・・? これは重要な会議だ。そんな理由で本当に大丈夫なのか・・・・・・?)
葬武とイヴァンの意見の理由を聞いた光司は、その真面目さゆえからそんな事を思っていた。いや、先ほどラルバが言ったように実力でこの場にいる者には、その意見と理由もどのようなものであれ認められるものだ。だが葬武、いや特にイヴァンの理由などは例え認められるとしても、光司にとっては疑問を抱かざるを得ないものだった。
「イヴァンらしい理由だな。イヴァンの意見は分かった。これで認定派は5人、この場の過半数がスプリガンを敵と認定する事になった。でもまだ後2人意見を聞いてないし、次はお前の意見を聞かせてくれるか、プロト?」
ラルバがその顔を自分の左隣、そこに座るプロトに向けた。必然、ラルバ以外の円卓全員の視線もプロトに集まる。プロトはランキング1位。別に守護者にランクの偉さなどはないが、ランキング1位という、ある意味守護者の顔である人物はどのような意見を述べるのか、この場の全員が興味を覚えたからだ。
「僕の意見ですか。そうですね、僕の意見は・・・・・・スプリガンを敵と認定する事には、反対です」
「っ・・・・・!?」
「へえ・・・・・・・・それはまたなんでだ?」
ランキング1位『守護者』のプロトは少しだけ笑みを浮かべて意見を述べる。今までの賛成派とは違う意見に光司は驚いたような表情を浮かべる。他の守護者たちも光司ほどではないにせよ、驚いたような又は興味深そうな表情を浮かべていた。
「光導姫や守護者を助けた、という事実があるからですね。もちろんスプリガンを敵と認定する認定派の意見はもっともだと思います。ですが、単純に彼を敵と定めてしまうには、どうもその部分が引っかかります」
ラルバの問いかけにプロトはニコリと笑うと言葉を続けた。
「完全に敵であるならば、光導姫と守護者を助ける必要はありません。聞けばスプリガンは1度ではなく何度も光導姫や守護者を助けたとの事。彼の目的は分かりません。光導姫や守護者を助けた事もあれば、光導姫や守護者を攻撃する事もある。そのような存在は確かに危険でしょう。ですが、そういった存在をただ危険と恐れ敵と定めてしまうのは、余計な争いを生むだけです。余計な争いに力を注ぎ込むのは、正しくないと僕は思います」
プロトはランキング1位としての自分の意見を述べ終えた。今までの中でただ1人のスプリガンを敵と認定しない、否定派の意見。プロトの意見が述べられた後、円卓には数瞬の間沈黙が訪れた。
「・・・・・・・甘いな、『守護者』。お前の意見はどこまでも甘い」
「希望的観測が多いように感じるな」
そんな声が2位の席と7位の席から上がった。前者はハサン、後者はエリアだ。
「甘い、という意見と希望的観測が多いという意見は充分承知しているよ。でもこれが僕の意見だ。スプリガンは敵とは認識しない。それがランキング1位としての意見だよ」
だが、そんな2人の言葉を受け入れつつもプロトは自身の意見を変える事はなかった。ただ朗らかな笑みを浮かべ続けているだけだ。
「お前の意見は分かったよ、プロト。お前の意見も立派なランキング1位としての意見だ。・・・・・・・・でも、スプリガンは必要があるなら、光導姫や俺たち守護者を潰すという宣言を既に行った、といったらどうする?」
プロトの意見を認めたラルバ。しかし、ラルバはそこで先ほど説明すると言っていたスプリガンの「敵対宣言」の事を持ち出した。
否定派が現れる。このタイミングでスプリガンの敵対宣言の事を話すのが、ラルバの狙いの1つだった。
(悪いなプロト。タイミングをこちらの都合のいい方に持ってこさせてもらった。別に肯定派は過半数を超えたし、スプリガンを敵と認定する事はほとんど確定みたいなもんだが、せっかくなら全員肯定派の方がいいからな)
ラルバはスプリガンを敵と認定したい。だが、この会議の結果に関する決定権を持っているのは、自分ではなくあくまで守護者たちだ。ゆえにラルバの一存でスプリガンを敵と認定する事は出来ない。
だが、印象操作をする事は出来る。会議の進行をしているのはラルバだからだ。ゆえに、ラルバは否定派が現れたタイミングでスプリガンの敵対宣言の事を言おうと決めていた。その方がスプリガンの印象は悪く、さらに危険なものという印象を与える事が出来るからだ。
「・・・・・ラルバ様、それはいったいどういう事ですか?」
「ああ、さっき刀時が言ってた敵対宣言の事だよ。実はだな――」
疑問から眉をひそめるプロト。もちろん、光司と刀時以外の守護者たちも難しいような顔を浮かべていた。
「――ていう訳だ。スプリガンは俺たちサイドが目的の邪魔をすれば敵対すると宣言した。自身の目的が何かも明かさずに一方的にだ。こんな態度を取られたら、スプリガンに歩み寄る意志はないと俺は思うわけだが・・・・・・どうだプロト。これでもお前はまだ否定派のままか? ああ、別に無理矢理お前の意見を変えたいわけじゃない、そこは勘違いしないでくれよ。ただ、単純に俺は意見に必要だろう材料を提供しただけだからな」
ラルバは笑顔で淡々とそう言った。もし、ラルバの本心を知る者がこの場にいるならば、よくもまあいけしゃあしゃあと、と思うのだろうが、残念ながらラルバの本心を知る者はここにはいない。ラルバが自分の都合がいい方の結果を引き寄せるために、発言のタイミングを窺っていた事を知る者など誰も。
もちろん、ラルバは本心からスプリガンを危険だと思っている。ラルバのこの考えは光導姫や守護者にとってスプリガンは危険な存在であるという意識から来ているので、ラルバが悪という事はない。ただ、自分の意思と都合がスプリガンを敵と認定する方に完全に傾いているというだけだ。
「・・・・・なら、尚更敵と認定しておいた方がいいだろ」
「『傭兵』の言葉に同じだな」
「まあ、結局問題はそこだよなー」
「・・・・・・・・どうでもいいけど、潰すって言ってるのなら敵じゃないの?」
「敵でいい。戦えるからな」
「うーん、それ聞いちゃったら俺も敵認定派かなー。流石にそれなら敵と認定しといた方がやりやすい」
ハサン、エリア、刀時、イヴァン、葬武、ショットがスプリガンの敵対宣言にそのような言葉を示した。そして、スプリガンの敵対宣言によりどっちつかずの意見であったショットも認定派に回った。これでスプリガンを敵と認定する派は、6人となった。
「・・・・・・・・失礼を承知で申し上げますが、そういった重要な事はもっと早く言っておいてほしかったですね。ラルバ様」
ラルバから敵対宣言の事を聞かされたプロトは、少しため息をついてそう言った。プロトの指摘はもっともだ。そんなプロトの指摘にラルバは、「悪い悪い」と苦笑した。
「じゃあ、重要な判断材料を聞いたお前から改めて意見を聞きたい。プロト、お前の意見は?」
ラルバが再びプロトにそう問うた。流石に他の守護者よりは甘い意見のプロトもこれを聞けば意見を変えるのでは、とラルバは考えていた。
「僕の意見は・・・・・・・・・・・変わりません。依然として、スプリガンを敵とは僕は認定しない」
「っ・・・・・・その理由は?」
しかし、プロトが意見を変える事はなかった。
これには流石のラルバも多少驚かされた。まさか、プロトがまだ意見を変えないとはあまり思っていなかったからだ。
「わざわざそういう宣言をしたからです。先ほどもいいましかたが、本当に敵ならわざわざそういった事をする必要はありません。むしろ、僕にはスプリガンの宣言は『そちらが何もしないのなら、こちらも何もしない』と言っているように聞こえます。だから、僕は意見を変えるつもりはありません」
その様はまさに泰然自若。再び堂々とプロトは自分の意見を円卓につくもの全てに伝えた。
「ふん・・・・・・お前のそういう甘さは、やはり嫌いだな」
「いやー、プロトって感じだなー」
「本当、変わってないなー我らがランキング1位は」
「甘いと分かっていても自分の意志は曲げない・・・・・それもまた一流だ」
プロトの言葉に、ハサンは呆れ、刀時とショットはただ笑みを浮かべ、エリアは一種の尊敬の念を送った。イヴァンと葬武は別段何の表情の変化も見せていなかった。
(それが・・・・・・・・・『守護者』の意見か)
自分の目標でもあり、憧れの対象でもあるプロトの意見に、光司は複雑な気持ちを抱いていた。
プロトの意見は光司とは違う意見だ。光司はまだラルバに聞かれてはいないが、認定派の意見だ。憧れであり目標の人物の意見と自分の意見は違う。光司はそこに複雑な気持ちを感じていた。
「・・・・・・分かったよ、プロト。俺が野暮だったな。これで認定派6人、否定派1人になった。最後は・・・・・・・・・光司、お前はどういう意見だ?」
ラルバは仕方がないと軽く息を吐くと、この円卓につく最後の人物、光司に意見を聞いた。まあいい。どちらにせよ結果は変わらない。
「僕の意見は・・・・・・認定派です。僕は何度か奴に会った事がありますが、僕はずっとスプリガンは危険だと思っていました。・・・・・それが僕の意見です」
ランキング10位『騎士』の光司は、神妙な面持ちで自分の考えを述べた。これが光司の意見だ。ずっと前から、スプリガンと出会った時から、光司はスプリガンの事を危険だと感じていた。スプリガンを信じている陽華や明夜には申し訳ない気持ちもあるが、それが香乃宮光司の変わらぬスタンスだ。
「光司の意見も分かった。お前は何度もスプリガンに直接出会った奴だ。そんなお前がそう感じるなら、説得力もある。・・・・・・・・これで、この場にいる全員の意見が揃ったな。スプリガンを敵と認定する認定派が7人。スプリガンを敵と認定しない否定派が1人。『死神』と『弓者』に関しては、会議に出席できない代わりにもう意見は聞いてある。『弓者』は認定派、『死神』は多数派に1票って事だから、これで認定派は9人になった。残念だけどプロト。ここは多数派の意見に従ってもらうぜ」
「はい。多数派が僕以外の全員ならば、僕もその意見に従わざるを得ないでしょう。了解しました」
ラルバが全ての意見をまとめ終え、プロトにそう確認を取った。プロトも仕方がないといった感じではあるが、ラルバの言葉に頷いた。
「悪いな。では守護会議の意見を全てまとめた結果を改めて発表する。守護者側はスプリガンを・・・・」
ラルバはそこで少し間を置くと、会議の結果を発表した。
「――敵と認定する事とする。これは厳正なる守護十聖の意見、論議の結果である。守護者の神、ラルバはこの結果を保証し認める」
守護会議の結果は、スプリガンを敵と認定する事に決まった。これで光導姫側でもスプリガンを敵と認定する事が決まれば、スプリガンは光サイドから明確に敵と認定される事になる。
「よし、じゃあ1番論議しなきゃならないやつは終了したな。後はいつも通りの会議といくか」
ラルバはそう言って、他の議論について話し始めた。他の守護者も態度は様々であるが、ラルバの言葉に耳を傾ける。守護会議はそれから淡々と進行した。
――スプリガンを敵と認定したいラルバ。スプリガンを現状は敵と認定されたくないソレイユ。神々の思惑が絡み合うその全ての結果は、守護会議と同時に行われている光導会議に託された。
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