第32話 あちら側の者

「・・・・・・・・・やはりここにいたか。シェルディア」

 馴染みのある力の気配を感じたレイゼロールは無意識にそう呟いていた。

 東京のどこか。周囲が森林に包まれた場所。人間を適当に闇奴化させたレイゼロールは、そんな場所にいた。

(あの力の規模は、恐らく『世界』の展開か・・・・・・)

 周囲の空間を自らの望むままに、あるいはその者の本質で周囲を覆う、馬鹿げたわざだ。そんなことはレイゼロールにも出来ないし、またシェルディア以外にそんなことが出来る人物を自分はまだ見たことがない。

(化け物め・・・・・・・・)

 レイゼロールをしてもシェルディアはそう思わせられる存在だ。

 元々が人間である闇人とは違う、純粋な人外。そういう意味ではレイゼロールと同じ存在だが、戦闘能力という面では今のレイゼロールはシェルディアには遠く及ばない。

「・・・・・・まあいい。目的は達した」

 今回のレイゼロールの目的は、シェルディアが東京にいるかの確認だった。その確認のため適当な人間を闇奴化させたのだ。

 目的を達成した今レイゼロールがこの地に留まる理由はない。

 レイゼロールは影へと沈んだ。後に残されたのは静謐な森だけだった。








「はてさてどうするか・・・・・・・・・」

 適当な物陰に隠れ、変身を解除した影人はソレイユの転移により元の場所に戻っていた。

『どうかしたのですか?』

「別に大したことじゃねえよ。・・・・・・・・ただ、子供に送るプレゼントを何にするか考えてるだけだ」

 暇なのか再び語りかけてきたソレイユに、影人はそう答えた。このまま1人でシェルディアに送るプレゼントについて、悩んでいても埒が明かないと悟ったため、第三者に話してみよう考えたのだ。

『子供ですか? 影人に子供がいたとは初耳です』

「んなわけねえだろ。ふざけるのも大概にしろ、クソ女神」

『誰がクソ女神ですかっ! 全く冗談に決まっているでしょう。あなたは冗談も通じないんですね。可哀想な人です』

「おう、てめえ表に出ろや」

 傍から見れば勝手に喋って勝手にキレてるヤバイ奴である。その証拠にすれ違った小学生くらいの子供たちも、「ぶっちぎりでヤバイ兄ちゃんだ」「お薬キメてるのかな・・・・・・」「通報しなきゃ・・・・・・・」などヒソヒソと言い合っている。

 もちろんそんなことには気がつかない前髪野郎は、変わらずにソレイユと話を続けた。

「まあどうでもいいやり取りは終わりにして、女子は何をもらえば嬉しいんだ? お前も女神っていうくらいだから、性別は女だろう? 何かアドバイスはねえか?」

『あなたの私に対する見方はよくわかりました。控えめに言って、1回ぶん殴りたいですが、私は寛大なので今回は大目に見ましょう』

 ブチ切れる一歩手前のようなソレイユの声が響く。寛大な奴はそんな声音にならないと思うが、言えば今度こそキレることが予想されるので、そんなことは言わない。

『そうですね・・・・・・・私の場合はプレゼントというよりは献上品の方が多いですが、たまにラルバがそういったのものをくれることがあります。ラルバは色々なものをプレゼントしてくれますが、私はどんなものでも嬉しいです』

「・・・・・・・・・つまり?」

 ソレイユが何を言いたいのかいまいち理解できなかった影人は、そう聞き返す。

『ありきたりですが、どんなものを貰ってもそこに思いがあるなら嬉しいという事です。そこに性別の違いはありません』

 どこか諭すような口調のソレイユの言葉が脳内に響いた。良いことを言ったという実感がソレイユにはあったのだが、それを聞いた影人は逆に諭すような口調で言葉を述べた。

「は? ・・・・・・・・あのな、そんな当たり前のことは聞いてないんだよ。俺でも分かるわ。聞きたいのは、具体的な例だ。おわかりか、女神さま?」

『え・・・・・・・』

 その反応から、ソレイユはおそらくドヤ顔で言ったのだろうが、影人が聞きたかったのはそんなことではないのだ。

 影人の返答を聞いたソレイユは、目には見えないが明らかにあたふたしていた。

『そそそそ、そうですよねッ! 今のはこう女神的アドバイスの1つと言いますか、あなたがその心を持っている確認といいますか・・・・・・!』

「お前・・・・・・・・」

 別に悪いことはしていないのだが、いまごろ勘違いによる羞恥で顔を赤くさせている女神を想像してしまうと、こうさすがに可哀想な気持ちになった。

『ええとですね、とにかく! ――ん? すみません、影人。来客のようです。この話はまたの機会に。――もう一度言いますが、先ほどの私の言葉はあなたを試しただけですからね!』

「そんなことは1回も言ってねえだろ・・・・・・・」

 ずいぶんと都合のいい来客だなと影人は思った。おそらく嘘ではなかろうか。

 そして、よく分からない捨て台詞と共に、ソレイユは念話を遮断した。

「結局、俺が決めるしかねえか・・・・・・・」

 困ったように頭を掻きながら、影人はため息をついた。







 よく考えればサイフを家に忘れていたことを思い出した影人は、一旦家に戻った。プレゼントをするにしても金がいるからだ。サイフの中に目を通すと、3000円少し。これくらいなら高いものでなければ、ちゃんと買えるだろう。

 喉が渇いたため、リビングにも足を運んだがシェルディアはいなかった。どこかに出かけているのだろうか。

 サイフを持って、再び家を出た影人は悩んだ末ある場所を目指した。

 家から自転車で15分ほどの場所、人通りの多い大通りから1本それた道にある少しボロめの、よく言えば老舗風のオモチャ屋である。看板にはかすれた文字で「タカギ玩具店」と書かれている。

「ここに来るのもけっこう久しぶりだな・・・・・・」

 最後に来たのはいつだったか。確か2~3年前だった気がする。

 この個人店は影人が小さい頃に親に連れてきてもらった所なのだが、それ以来ちょくちょく通っていた場所だった。

 店の前に自転車を止めて、影人は店内に入った。

 中は前に来た時とあまり変わっていないように思える。個人店ならではの古い玩具もあれば、最新と思われる玩具もある。奥のスペースには様々なプラモデルの箱もある。

(そういや、最近プラモ作ってないな・・・・・・)

 そんなことを思いながら影人は店内を物色していく。その時、やっと客がいることに気がついたのか女性の声が聞こえてきた。

「いらっしゃい。ん? 見ない顔だね。ご新規さん?」

 声がして来た方向を見てみると、レジのスペースに女性が1人、椅子に腰掛けていた。

 雑誌を開きながら、こちらに視線を向ける女性はまだ若いように思えた。

 どことなくサッパリとした雰囲気で、髪はそんなに長くはない。たぶん肩口くらいだ。薄いメイクのその女性は美人といわれる類いだろう。そして、座っている場所的にその女性はこの店の店主か店員だ。

 そのことに気がついた影人は疑問の声を上げた。

「あれ? ・・・・・・・・・確かここっておじいさんが1人でやってる店じゃありませんでしたっけ?」

 そう小さい頃から3年ほど前まで、ここにちょくちょく通っていたから、影人はこの店が優しかったおじいさんが1人で切り盛りしていると言っていたことを覚えていた。自分が通っていないこの2~3年でおじいさんに何かあったのだろうか。

「ああ、じいちゃんの頃のお客さんか。実はじいちゃん去年に引退してさ。あ、何かあったとかじゃなくて、私がこの店を受け継いだの。だから、純粋な引退ね。そういうわけで、今はじいちゃんの孫の私がここの店主。髙木たかぎ水錫みすずっていうのが私の名前。よろしく少年!」

「は、はあ・・・・・・・」

 気さくな笑みを浮かべて、そう言った現店主のテンションが妙に高かったので、影人は少し気後れした。

「そうですか・・・・・・・元気ならよかったです」

「あはは、元気も元気。ここしばらくは将棋友達とずっと将棋打ってるし」

 カラカラと笑いながら、前店主のことを話す水錫。一応、前店主のことを心配していた影人はホッと胸をなで下ろした。

「で、君は何を買いにきたんだい? 風洛の制服を着てるってことは高校生だろうし、高校生となるとやっぱりプラモデル?」

「いや、また組みたいなとは思いましたけど、今日はそうじゃなくて・・・・・・・その、悩んだ末にここに来たといいますか」

「ん? どういうこと?」

「ええと、実は・・・・・・・」

 影人は水錫に事情を話した。事情を聞いた水錫は「ふむふむ、なるほど」と相づちを打って言葉を続けた。

「そいつはまた男の子らしい発想というか、安直というか・・・・・・・うーむ、14~15歳辺りの外国人の女の子へのプレゼントか。しかも予算は3000円ちょっと。こいつはまた難しい注文だね」

「まあそうですよね・・・・・・」

 水錫の率直な意見に影人は肩を落とした。水錫の言うとおりだからだ。

「そう肩を落とさないでくれよ少年。一応、おすすめはあるからさ」

 しかし、元気溢れる店主はにかっと笑うとそう言った。

「え、本当ですか?」

「うん。ええと、ちょっと待っててね」

 水錫は椅子から立ち上がると、店内のあるコーナーに向かった。

(いったい、何なんだ・・・・・・・)

 思ってもいない言葉だったので、少し期待してしまう。大人びているとはいえ、シェルディアはまだ子供の部類だ。子供といえば玩具という、水錫の言うとおり安直な考えでここにやって来た影人は、少しの時間レジの前で待った。

「ずばり、私のおすすめはこれだよ!」

「ジャーン!」と言って、水錫が提示してきたのは白いぬいぐるみだった。ただ、普通のぬいぐるみとは少し違う感じがした。

 まず猫なのか熊なのか分からないようなぬいぐるみだ。短い手足になぜか青と白のシマシマパンツを履いている。大きさも普通のぬいぐるみよりは大きい。

「あの・・・・・・それは?」

「よくぞ聞いてくれたね! これはソ○ダという猫のぬいぐるみさ! めちゃくちゃ可愛いだろう!? 私が仕入れたんだ!」

 水錫は興奮気味の口調でソ○ダなるぬいぐるみを影人の前に突き出してきた。

(か、可愛い・・・・・・・?)

 どうやら猫のぬいぐるみだったようだが、黒い目でジッとこちらを見つめてくるそのぬいぐるみはどちらかというと不気味に感じた。

「私も家に置いててね。これよりでかいのも何体もあるよ。一応、この子の値段は税込みで2240円だから金額的にもおすすめだな」

「そ、そうですか・・・・・・・」

 果たしてシェルディアがこれを貰って喜ぶかどうか、あまり想像ができない。シェルディアはこれを受け取ってもキョトンとする気がする。というかそっちの方が想像できる。

「ちょっと真面目な話。外国の女の子がどうかまではさすがに分からないけど、ぬいぐるみってけっこうどの層の女性でも好き人は多いんだ。なんなら大人の方が買ってくくらいだし。だからぬいぐるみってけっこう万人受けするわけよ。これが君にこのぬいぐるみを薦めた理由だね」

「・・・・・・なるほど」

 そう言われればそんな気もする。ただ、やはり可愛いかどうかは別だが。

「これ以外となると、うち的にはあんまりいいのはないなー。女児向けのならけっこうあるんだけどね」

 水錫は苦笑いを浮かべながら、そう言った。無理に商品を押し付けてくることはなく、あくまで自分に任せるということだろう。

 その水錫のサッパリ具合を気に入った事もあって影人は、首を縦に振り決断した。

「じゃあ、それを買います」

「お、いいのかい? 私としては確かにおすすめだけど無理強いはしないよ?」

「いえ、俺はそこまで意志は弱くありませんし、嫌ならちゃんと断ります」

 こんな見た目をしているが、影人はセールスが来たらしっかりと断れる系の男子である。影人の言葉を聞いた水錫は「おおー、その見た目でまじかい。これがギャップってやつか・・・・・」と驚いていた。

「プレゼントを贈る相手は俺からすれば異性だし、それなら同性の水錫さんが選んだ物の方が喜ばれる確率は高いと思いますし。・・・・・後は、ここで決めなかったら多分ずっと迷うと思う・・・・・が理由です」

 一応、シェルディアが影人の家に滞在するのは今日または明日が最後だ。影人の母親ならばもっと滞在しても大丈夫と良いそうだが、タイミリミットは存外短い。

 ゆえに迷っている時間は実はないのだ。

「ふーん、そうか。君はけっこう紳士だな。・・・・・よし、わかった! そういうことなら気合い入れてラッピングしちゃう!」

「ありがとうございます」

 そう宣言すると、水錫はぬいぐるみを梱包し始めた。ぬいぐるみという柔らかい物を梱包するのは難しそうだなと影人は考えていたが、タカギ玩具店の現店主は綺麗にぬいぐるみを包んでくれた。

「ほい、1丁上がり。じゃあ、悪いけどお代頂いていい?」

「はい」

 影人はサイフから1000円を3枚取り出すと、それを水錫に渡した。「まいど!」と言って水錫はそれを受け取った。

「あ、少年スタンプカード持ってない? もし欲しいなら作るけど」

「あるにはあるんですけど、これ最後に押してもらったのだいぶ前なんですよ」

「大丈夫、大丈夫! こんな町中のオモチャ屋さんのスタンプカードに期限なんてないから! じゃあ、貸して」

 こちらに手を出す水錫に、影人はサイフに入っていたスタンプカードを渡した。水錫は手際よくスタンプを押していき、押し終えるとそれを影人に返した。

「あとちょっとで500円引きだから、また来てよ! お姉さん待ってるぜ!」

「ええ、またプラモデルでも買いに来ます。ありがとうございました」

 商売上手な店主にお礼の言葉を述べて、商品を受け取る。手を振る水錫に会釈を返し、影人は店を出た。

 梱包されたぬいぐるみを自転車のカゴに入れて、影人は自宅に向けて自転車を漕ぎ出した。

「・・・・・・・喜んでくれるといいけどな」

 少し不安の色が混じった声で影人はそう呟いた。








「ただいまー」

 プレゼントを自分の部屋に隠して、影人はリビングへの扉を開けた。スマホで時刻を確認してみると、6時半を少し過ぎたところだった。

(けっこうな時間だな・・・・・・まあ、仕方ねえか)

 今日は中々な1日だった。光導姫に自分の姿を確認させたり、プレゼントを選んだり、学校ではシェルディアから逃げ出したりと、けっこうてんこ盛りだった。

「あら、影人。遅かったわね」

「ああ、ちょっとな。――って、何してんだ嬢ちゃん?」

「見て分からない? 料理のお手伝いよ」

 母親と一緒にエプロンをつけて、髪を料理のためかポニーテールに纏めたシェルディアが楽しそうにそう言った。

「そ、そうか。別に無理に手伝わなくていいんだぞ?」

「無理にじゃないわ、私がお願いしたのよ。私は別に食客ってわけじゃないしね」

 どうやら無理矢理にではなかったようだ。まあ、影人の母親もそこまで図々しいわけではない。だが、絶対に嬉しそうに1度断り「じゃあお願い!」と言ったに決まっている。

「ふふっ、影人はそこで待っていなさいな。私、頑張るから」

 そう言って、シェルディアは母親の料理の手伝いへと戻っていった。






「嬢ちゃん、ちょっといいか?」

「何かしら?」

 夕食を食べ終えた影人は、リビングでくつろいでいたシェルディアに声を掛けた。ちなみに、肝心の料理だが普段と変わらなく美味しかった。まあ、シェルディアは本当に手伝いだけに徹していたから、そこまで劇的に味が変わるということはなかったのだろう。

「悪いが、部屋まで来てくれないか?」

「ええ」

 もう少し事情を突っ込まれるかとも思ったが、二つ返事でシェルディアはそう言ってくれた。

 シェルディアを部屋に案内して、影人は先ほど買ったプレゼントをシェルディアに渡した。

「? これは?」

「その・・・・・・・今日のお礼だ。謝罪と感謝を込めてのな」

 恥ずかしそうに影人はなんとかシェルディアに言葉を伝える。今日の自分は弁当を届けに来てくれたシェルディアから逃げ出した。人として褒められた行動では決してない。その謝罪の意と、まだ出会って数日と経たない自分に弁当を届けに来てくれた感謝の意、その2つを込めて影人はプレゼントを手渡したのだ。

 さすがにリビングで渡すのは、妹と母親がいるので恥ずかしかったし、絶対に母親から、からかわれそうだったので嫌だった。

「・・・・・・・・開けても?」

「ああ。・・・・・・・・その趣味じゃなかったらごめんな」

 シェルディアは丁寧に梱包を解いていった。影人が緊張しながら見守る中、プレゼントの中身、白い猫のぬいぐるみであるソ○ダが姿を現した。

「わあ・・・・・・・可愛いわね」

 ジッと黒い目でシェルディアを見つめるシマシマパンツを履いた不思議なぬいぐるみをキラキラとした目で見ながら、シェルディアはそう呟いた。

 その喜び方は年相応の少女そのものだった。

「そ、そうか・・・・・・・」

 どうやらシェルディアもこれを可愛いと感じるようだ。影人はそうでもなかったが、これは感性の違いなのだろう。

「とても、とっても嬉しいわ影人。本当にありがとう、大事にするわ」

 ギュウとぬいぐるみを抱きしめながら、シェルディアは言葉通りとても嬉しそうに笑顔を浮かべた。

「なら、よかった。もしかしたら、ぬいぐるみなんていらないんじゃないかと思ってたから・・・・・・・・」

 思わずホッと息を吐く。どうやら本当にシェルディアは嬉しいようだ。これはタカギ玩具店の店主に感謝しなければいけない。

「そんなことないわ。私、可愛いものは好きだし。それに、あなたからプレゼントだもの。何を貰っても嬉しいわ」

 そう言うとシェルディアはぬいぐるみを影人のベッドに置いて、影人に抱きついてきた。

「な・・・・・・じょ、嬢ちゃん!?」

「ふふっ、こんな気持ちになったのは何年ぶりかしら。ありがとう、影人。私に優しくしてくれて」

「き、気にするなよ・・・・・・・・・そ、それと俺なんかに抱きついてもいいことないぜ? は、早く離れた方がいい」

 子供に抱きつかれただけだ。そう言い聞かせようとしても、心臓は鼓動を速め、顔も熱くなってくる。言葉も震えた。

「もう少し、もう少しだけこうさせて。あなたを感じさせて。私、本当に嬉しいのよ」

 影人の体温や鼓動を感じながら、シェルディアは安らかな顔をしていた。最初はただの人間だとしか感じなかったが、いつの間にか、自分はこの人間のことをとても気に入っていたようだ。

「・・・・・・・・・・・・わかったよ」

 そう言われてしまえば、影人はそう言うほかなかった。










「まさか、あなたが来ているなんて・・・・・・・・」

 神界。ソレイユは数時間前に聞いた巫女からの報告を思い出しながら、無意識にそう呟いていた。

 影人の会話の最中に自分に会いに来たのは『巫女』だった。その事じたいは、ソレイユは巫女がやって来るかもしれないと考えていたので、さして驚きはなかった。恐らくスプリガン、影人のことについての報告だと思っていた。

 巫女の報告の内容はソレイユが予想していたとおりスプリガンに関するもの。だが、それとは別にもう1つ報告があった。

 それは巫女を持ってしても、暴力的なまでの力の差を感じさせる少女の姿をしたものについての報告だった。

 突如として、世界が夜に変わり、その中心に君臨していたについての見た目についても巫女は教えてくれた。

 曰く、豪奢なゴシック服を纏ったブロンドヘアーを緩くツインテールに結った14~15ほどの見た目の少女。

 人外。【あちら側の者】。人とはことわりを別にした者。

 彼女を表す言葉は数多くあるが、ソレイユは彼女の固有名を知っていた。

真祖しんそが1人・・・・・・・・・シェルディア」

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