第10話 友と謎の光導姫?

「やあ、2人とも心配をかけたね」

 フェリートの襲撃から2日経った昼休み。廊下で陽華と明夜に出会い、2人から腹部付近の負傷の心配をされた光司は、爽やかな笑顔を浮かべながら、そう答えた。

「香乃宮くん! よかった、でも本当に大丈夫だったの?」

「そうね、かなりの重傷みたいだったけど・・・・・」

 陽華がホッと胸をなで下ろし、明夜が未だに心配そうに光司を見つめる。だが、パッと見て今の光司は健康そのものに見える。

「幸いなことに強烈な打撲で済んだよ。守護者時の僕の肉体は頑強だからね。いや、本当に情けない姿を見せてしまった。心から謝罪するよ」

 そう言って光司は頭を下げた。学校の有名人が名物コンビに頭を下げている姿に、廊下を行き交う生徒たちは何事かと好奇と訝しげな視線を送る。

「こ、香乃宮くん!? いきなりどうしたの!?」

「と、とりあえず頭を上げて!?」

 突然、光司が頭を下げだしたので陽華と明夜は慌てた。そもそも、2人にはなぜいきなり光司が頭を下げたのか全くわからない。

「ああ、すまない。ここでは迷惑だったね、でも僕は君たちを守る守護者なのに、結果的に君たちを危険な目に遭わせ、僕はあの様だ。・・・・・本当に不甲斐ない、自分が嫌になるよ」

 いつもは明るい香乃宮光司が沈んだ顔で、自らの謝罪のわけを語った。どうやら光司は一昨日のフェリートとの戦いのことについて陽華と明夜に謝ったようだ。

「香乃宮くんは必死にやってくれたよ! それを言うなら私たちだって――!」

「香乃宮くん、そんなに自分を卑下しないで。あなたは何度も私たちを助けてくれた。不甲斐ないのは私たちの方よ、一昨日だってあなたがいてくれなかったら――」

 2人は光司の言い分を否定した。光司は新人の光導姫である自分たちを助け守ってくれた。フェリートが襲来したときも光司は、囮を買って自分たちを逃がそうとしてくれた。何があっても陽華と明夜を守ろうとしてくれた光司が不甲斐ないはずがない。

「いや、一昨日君を助けたのは僕じゃない。あのスプリガンとかいう男さ」

 明夜の言葉の途中に光司はそう口を挟んだ。その顔はどこか不信感や疑念といった感情が滲んでいた。

 その言葉で陽華は、光司がなぜスプリガンを信用できないと言ったのか、その理由を聞きたいと思った。しかし、陽華がそのことを聞こうとしたが、明夜が言葉を挟んだ。

「それは――!」

 明夜が何か言いたげな表情で光司を見る。しかし、光司は首を横に振った。

「それが事実だよ。――と、すまない。少し用事があってね、僕はこれで失礼させてもらうよ。じゃあ、また」

 光司はそう言って微笑むと、そのまま廊下を進み階段へと姿を消した。

 後に残された2人は心配そうにお互いに顔を見合わせた。





「ぐっ・・・・・・!?」

 陽華と明夜と別れた光司は、人が少ない校舎の陰に移動した。この場所は昼休みでも人が通ることは滅多にない場所だ。

「やっぱり・・・・・・きついな・・・・!」

 腹部付近を抑え光司はうめき声を上げる。実はフェリートとの戦いで光司は肋骨の1本にひびが入っていた。いくら守護者時の肉体が頑丈でも、最上位の闇人の一撃をモロに喰らったのだ。それくらいのダメージは受けるものである。

 現に今もコルセットを巻いているが、呼吸をする度に痛みが響く。しかし、この程度で学校を休むわけにはいかない。

 ただでさえ昨日は休んでしまったのだ。これ以上自分が休めば、陽華と明夜はきっと心配するだろう。あの2人は優しいから。

「守護者の僕が、これ以上、彼女たちに心配をかけるわけにはいかない・・・・・!」

 光導姫を守る守護者が、光導姫に心配されるなんて守護者失格もいいところだ。それは光司の守護者としてのプライドが許さない。だから、光司は陽華と明夜の前でいつもと変わらないように振る舞ったのだ。

「ははっ・・・・・・・情けないな、は」

 ポツリと自分の心情を独白しながら、光司はしばらくそこで体を休めた。

 その姿を見られているとも知らずに。







光司が陽華と明夜と話しているのを廊下で盗み聞きしていた影人は、光司の様子に多少の違和感を抱き、2人と分かれた光司の後をつけた。そして、校舎の陰に移動した光司の様子を観察していた。

 光司のその様子を、男として見てはいけないと思いながらも、見届けてしまった影人はすぐさまきびすを返した。

(香乃宮、お前は・・・・・・)

 光司の意地を見た影人は、思わず尊敬の念を抱いた。香乃宮光司という男はただの優しいイケメンではない。男としてもまさにおとこであった。

 普段、人に対して尊敬の念どころか、ほとんど何も思わない影人だが、光司に対しては人として尊敬できると感じた。

「おっと、あまり俺らしくないな・・・・・・」

 教室に戻る途中、思わずそう呟いた影人だが、今まさに影人とすれ違った男子生徒は「こいつ大丈夫か?」的な顔をされたことに気がついていない。一体何がお前らしくないのか。男子生徒はどうでもいい疑問を抱えてしまった。非常に可哀想である。

 そのまま人が多い昼休みの廊下を進み、影人の所属クラスである2年7組に入ろうとしたところで声が聞こえてきた。

「おーい、影人」

 世にも珍しい自分を呼ぶ声である。影人は仕方なく声が聞こえた方向に顔を向けた。まあ、この学校で自分の下の名前を呼ぶ人間は1人しかいないので、振り返らずとも誰だか分かっているが。

 影人が振り返ると、そこには隣の2年6組、この学校唯一の友達である、早川はやかわ暁理さとりが苦笑いで立っていた。

「・・・・・何だ暁理?」

「いやー、5時間目の教科書忘れちゃってさ。数学なんだけど貸してくれないかな?」

 暁理が片目をパチッと閉じて、両手を合わせてそう言ってきた。ボブほどの髪の長さで、その整った顔は男子にも女子にも人気がある。現に暁理を見かけた女子生徒たちが、「あ、早川さんだ。やっぱ格好いいよね」「え、でも彼――」「そんなことはいいのいいの! 格好いいんだから」などと話し合っていた。

「断る。イケメンは敵だ」

 その会話を聞いたからではないが、影人は一応友達であるはずの暁理の頼みを無下にした。理由は今自分が言った通りである。

「は!? 誰がイケメンだよ! 失礼な奴だな!」

「どこが失礼だアホ。つーか、真面目な話、お前なら俺以外にも他のクラスに友達いるだろ。そいつから借りろよ」

 影人は面倒くさそうに答える。すると暁理はジト目で影人を見つめ返した。

「相変わらず影人は面倒くさい性格だな。別にいいじゃないか、それとも貸すの嫌なの?」

 暁理と影人は中学こそ違うものの、中学時代からの知り合いだ。そして入学式でたまたまこの風洛高校で再会した。1年も同じクラスではなかったが、2人は友達と呼べる関係になっていた。

 だと言うのに、中学時代からこの前髪の長すぎる友人は、なぜか教科書を貸すのさえしぶる。まったく、自分たちの友人関係を疑う気になってしまう。

「・・・・・・・別に。わかった、貸すから今度なんかおごれよ」

 仕方なく影人は、自分の机から数学Ⅱの教科書を持ってくる。そしてそれを暁理に手渡した。

「ありがと、影人。せっかくだから今日一緒に帰ろうよ。帰りなんかおごるしさ」

 暁理は嬉しそうにニコッと笑った。普通なら、友人の笑顔で貸した側も笑みを浮かべたりしそうなものだが、影人は別の理由で笑みを浮かべた。

「言ったな? その言葉、忘れるなよ。いいもんでもおごってもらうぜ」

「・・・・・・影人ってさ、若干というかクズだよね」

 突如、機嫌をよくした友人に暁理は少し引いた。クズで見た目は冴えないどころか、顔の半分は前髪で覆われている。おまけに癖は独り言だし、少し厨二病。しかも本人は孤独を好んでいる。正直、よくこんな奴と友達になったものである。

「・・・・・・まあ、仕方ないか。結局、影人って良い奴だし、面白いしね」

「は? いきなりなんだ?」

「いや、こっちの話。じゃ、ありがたく借りるよ。また放課後」

 そう言って暁理は自分の教室へと戻っていった。暁理が教室に戻ったと同時に、昼休みの終了を告げるチャイムの音が鳴り響いた。

「・・・・・・結局、何だったんだ?」

 その音を聞きながら、影人は友人からの自分に対する評価のようなものが何だったのか疑問に思った。








「お待たせ。いやーごめん、そういえば今日から教室の掃除当番だったよ」

 放課後。2年6組の前で暁理を待っていた影人は、笑って教室から出てきた暁理にそう声を掛けられた。どうでもいいが、その元気の良さは一体どこから来るのかと考える影人である。

「ほい、これありがとう。取りに来なかったってことは、6時間目、数学じゃなかったんだよね?」

「ああ。というか、返すなら5時間目と6時間目の休憩の時に返しに来いよ」

「あはは、ごめんごめん。つい、面倒くさくなっちゃって。じゃ、行こうか」

 影人と暁理は放課後の騒がしい校内を出て、そのまま正門を潜る。そして、そのままブラブラと当てもなく歩きながら、とりとめも無い話をする。

「そういや、クラスの奴らが話してたのを聞いたが、体育の上田勝雄またお見合い失敗したらしいな」

「それ盗み聞きだよ影人・・・・・・しっかし、そうか。上田先生またお見合い失敗したのか。可哀想に、南無三だね」

 そんなことを話しながら歩いていると、左前方に緑色が特徴の某コンビニエンスストアが見えてきた。ちょうど小腹が空いていた影人は暁理さとりに寄っていこうと話した。

「おい、暁理。お前なんかおごるって言ってくれたよな? ファ〇チキおごってくれよ。腹から狼の唸り声が出そうだぜ」

「別にいいけど、表現が意味不明な上にきもいよ影人。普通にお腹が減ったって言えないの? まあ、確かに僕もお腹減ったし寄ろっか」

 2人はコンビニに入り、店内を回った。影人はミネラルウォーターと、自宅に帰って食べる用の某ペッパーベーコン味のおつまみを購入した。暁理は、烏龍茶を1本に影人の分のファ〇チキと自分の分のファ〇チキ。それにハッシュドポテトを購入した。どうやらよっぽど腹が減っていたようである。

 そのまま影人と暁理は近くに小さな公園を見つけ、ベンチはなかったためブランコに座った。そして、暁理が影人にチキンをを渡した。

「はい、影人。よーく感謝して食べるんだよ?」

 どこか意地悪そうな顔でチキンを渡してきた暁理から、チキンを受け取ると影人はフッと笑みを浮かべた。

「断る。お前なんかに感謝するのは時間がもったいないんでな。それより、早く俺の内なる獣にこいつをくれてやるのが先だ」

「・・・・・・あーヤバイ、すっごい殴りたい。というか、ごめん影人。ムカついたし殴るね」

 そう言うと、暁理はニコニコと笑顔で影人の横腹に軽めのジャブを放った。まさか本当に殴られるとは思っていなかったクソ野郎は、「ぐふっ!?」と思わず頬張っていたチキンをこぼしそうになった。

「・・・・・ゴクッ! てめえ、何しやがる!? オヤジにもぶたれたことないんだぞ!?」

「うるさいよゴミ野郎。馬に蹴られて死ねばいいのに。というか、僕はぶってないよ。軽めにジャブしただけだし」

「なお、悪りぃよ!?」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 そして突如訪れる静寂。

「ぷっ・・・・・」

「ふ・・・・・・・」

「はははははははははははははっ! 何か久しぶりだなこういうの!」

「まあ、そうだな」

 暁理は本当に楽しそうに笑い、影人はニヒルを気取り口角を上げた。どうやら、暁理はよほどそのやり取りが面白かったらしく、少し涙まで浮かべていた。

「あー面白い・・・・・・でも影人最近つき合い悪くなったよね。何か理由でもあるの?」

 暁理が右手で涙を拭いながら、そんなことを聞いてくる。影人は残りのチキンを食べながら、言葉を返した。

「・・・・・・・別に。たまたまだ、というかそう言うならお前も昔からよくドタキャンしてたし、今もするだろ。何か理由あんのか?」

「あはは、それは本当にごめん。ほら、ぼく影人と違ってけっこう人気者でしょ? だから色々な予定が被ったりしちゃってさ」

「張っ倒すぞてめえ。ま、どうでもいい話か。それより――」

 それからまた他愛のない話をしている内に、日も暮れてきた。来た時は淡い青空が広がっていたが、今やこの小さな公園は夕焼けで遊具も真っ赤に染まっている。

「と、けっこう日も暮れてきたな。どうする暁理、まだもうちょい駄弁だべるか?」

「うん、そうだね。影人さえよければ僕はまだ――」

 暁理が答えを返そうと口を開いたが、暁理は突然その口を閉ざした。そして、仕切り直したように、影人に笑顔を向けてきた。

「・・・・ごめん影人。そういえば今日はちょっと用事があったんだった。ということで、今日はもうお暇させてもらうよ。・・・・・・・本当にごめん」

「そうか、気にするなよ。んじゃ、途中まで一緒に――」

 影人がブランコから立ち上がろうとすると、暁理は慌てたように手を振った。

「いや、僕は急ぐから走って帰るよ! じゃ、またね!」

 そう言い残すと暁理は鞄を持ってさっさと走り去ってしまった。後に残された影人は少し呆気にとられてしまった。

「・・・・・・そんなに急ぐ用事なら前もって言っとけよな」

 チキンを食べた後のゴミを、コンビニのビニール袋に入れると丸めてズボンのポケットに突っ込み、影人はトボトボと帰路についた。

 空を見上げてみると、星が1つか2つほど瞬いた。そんな光景を見て、影人はとりあえず家でゴロゴロしようと、どうでもいいことを心に決めた。








 夕日が沈み、空に安寧の闇が訪れる。夜という闇は終わりであり、始まりでもある。仕事を例にするならば、夜には仕事が終わり、夜から仕事が始まるという人々もいるだろう。まあ、昨今ではブラックだなんだと仕事が夜に終わらないという人たちもいるかもしれない。しかし、それでも夜というものは古来から人々に安らぎを与えてきたものだ。

「グルルゥゥゥゥゥゥ!」

 そんな安寧を裂くように、獰猛な唸り声が閑静な住宅街に響く。

 場所は東京と埼玉の県境。辺りはまだ夜が浅いというのに、人1人見当たらない。そんな静かな世界にその人外の獣はいた。

 灰色の体毛に鋭い牙。犬の面影を感じさせる顔。人間を簡単に引き裂くであろう爪。それは狼と呼ばれる種類の獣だ。

 だが、通常の狼とは違いそれは二足歩行を可能にしていた。その体躯も膨張した筋肉が見て取れ、ただの狼でないことは一目瞭然だ。一言で言うなら、それは狼の獣人と表現するべき存在だ。

「・・・・・・・なるほど、獣人型か。また面倒くさそうだね」

 コツコツと狼の獣人の前に人間が1人現れた。淡いエメラルドグリーンのフードを被った右手に壮麗な剣を持ったその人物は、その怪物と言えるべき者を見て、全く恐怖の感情を感じさせない口調でそう呟いた。

「厄介だな。獣人型は闇人と闇奴の中間点だし、けっこう強いんだよね」

 フードで顔が見えず性別はわからないが、少し高めの声がその人物から発せられた。

「グルゥ?」

 そして獣人はその人物がいることに気がついた。獣人は警戒するようにその謎の人物を注視し、腰を低く落とした。

「おっ、来るかい?」

 獣人が唸り声を上げながら、その顎を大きく開き謎の人物に突撃を仕掛けてきた。その速度は凄まじく、10メートルは離れていた距離を即座に詰めてくる。

「おお、速い。流石、狼の獣人タイプ。でも、それじゃあまだ僕以下かな」

 軽口を叩きながら、フードを被った人物はその顎をひらりと避ける。そして、謎の加速により、獣人から再び距離を取った。獣人は獲物にその攻撃を避けられるとは思っていなかったらしく、キョロキョロと辺りを見回している。

「知能がないとやっぱやりやすいな。・・・・・・いけないいけない。僕まで独り言が癖になりつつあるな。これも全部あいつのせいだ」

 独り言を呟きながら、いやいやと首を横にふる。正直、そんな癖は全くもっていらない。厄介な友人を持つとこんな癖まで伝播するようなものなのか。

「グルァァァァァ!!」

 ようやくフードの人物を見つけ怒りの感情を迸らせた咆哮を上げ、獣人が再び突撃を仕掛けてくる。しかし、今度は食らいつきによる攻撃ではなく、その凶悪な獣爪による攻撃を選択したようだ。

「・・・・・・・悪いけど、今日はちょっと気が立ってるんだ。友人との楽しい時間を潰されたからね」

 フードの人物は、その壮麗な剣を自分の正面に水平に構え、続けてこう呟いた。

「風よ、我がつるぎに宿れ」

 その間にも獣人の凶爪が迫り、今にもフードの人物を引き裂こうとしていた。その距離はおよそ10センチといったところか。

 だが、フードの人物がその一撃を食らうことはなかった。

疾風一閃しっぷういっせん

 その前に一陣の風が過ぎ去ったからだ。

「グルゥ? グ――」

 そして狼の獣人は斜めに斬られた傷から光を発して倒れた。後に残された獣人は不思議なことにやがて全身が光に包まれて、男性の人間に変貌した。

 フードの人物はその男性を介抱して適当な電柱にもたれ掛けさせた。そして、フードの人物はその場を後にした。

「全く、中々面倒だったな。あの獣人タイプ、まともにやってればもうちょい手こずっただろうし。・・・・・・・まあ、でもこの前戦った敵の親玉よりは全然ましだけど。本当、強いとかいうレベルじゃなかったからなー」

 ついこの前、敵の親玉レイゼロールと初めて戦ったがまるでレベルが違った。しかも、レイゼロールはかなり手を抜いていたのがありありとわかったし、できればもう2度と戦いたくない相手だがそういう訳にもいかない。

 なぜならレイゼロールの浄化こそが女神の悲願であり、自分たちはそのために戦っているのだから。

「おっと、そうだった。解除しないと」

 そう謎の人物が呟くと、その姿に変化が生じた。淡いエメラルドグリーンのフードは光に溶け、どこかの学校の制服に変化した。そして右手には、緑色の宝石がついたブレスレットが装着される。

「はあー、これで明日も普通に学校だって言うんだから嫌になっちゃうよね」

 ため息をつきながら、その人物はに手を突っ込んだ。

 不思議なことに先ほどまで人1人いなかった住宅街に、何人かの人間がまばらに歩いているのが見て取れた。

「さて、そろそろかな」

 その人物は電灯の当たらない暗い路地へと足を踏み込む。そして、しばらく立ち止まっていると、その人物は光に包まれどこかへと消えた。

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る