第27話 猛特訓

 破邪術師団はじゃじゅつしだん討伐を目指して、春夢はるむとハルピコは本格的なメンバーとして迎い入れられた。

 とはいえまだ主戦力としては不安定であり、その間に暴挙が振り撒かれては意味がない。

 春夢とハルピコは一刻でも術を完成させるため、聖燐せいりんへの見舞いを終えるや、西園寺さいおんじの神社を訪れていた。

 場所はかつて、満貞みちさだ誠一郎せいいちろうと対峙した、演習場だ。


「今一度聞くけど、あの術を扱った時にどんな条件が必要か。目途の一つでも無いの?」


「追い詰められていた状態だったからなー」


「なんだな!」


「やけくそでできたわけじゃないでしょ。あの危機的な状況下で、貴方たちは一体何を考えたか」


「あの時」


「う~ん」


 陽沙ひさの問いに、二人は数秒考えたのち。


「そういえば、あの時。必死でハルピコを助けようと躍起になってたっけ」


「僕もそうなんだな!」


「どうやら、単純に呪力じゅりょくを流せばいいって問題じゃないらしいわね。使い魔なら、呪具じゅぐを介するのが一般的なはずだけど……」


「ファミレスで話していた時のように、ハルピコに呪具は無い。ただ、それっぽい品はあるんだけどな」


「それっぽい品?」


 春夢はポケットから、白い勾玉を取り出した。


「ハルピコの降魔書と一緒に、これが収められていた。俺はてっきり現出に重要な呪具だと思ってたんだけど、役立ったのはハルピコを初めて現出に成功したあの日だけ。それ以降、使い所が全く分かっていない」


「ちょっと貸して見せて」


 陽沙も手に取り、唸る。


「呪力が宿っている感じはしない。けど何だろう……微かに妙な気配がある」


「妙な気配って?」


「私の勘よ」


「勘かよ⁉︎」


 期待を寄せるコメントとは裏腹に、信ぴょう性は皆無。

 肩透かしを食らう春夢に、しかし陽沙は断言する。


「とにかくそれは肌身離さず持っておきなさい。きっとハルピコや貴方の足がかりになるはず。それが術に対してなのかは、これか探っていきましょう」


 筆に火を走らせて、陽沙は使い魔現出の文様を描く。


「言っておくけど、生半可な気持ちでこの場を乗り切れるとは思わないでね? 早急に貴方たちの能力を引き出すため、私も全力で取り掛かるわ」


「荒事業なのは覚悟しる。やるぞハルピコ」


「分かったんだな! それで、一体何をすれば良いんだな?」


「今から華火はなびが貴方たちを襲うわ。その間に術を完成させなさい」


「ちょっと待て‼ 開始一発目から殺す気か⁉ 荒事業にもほどがあるわ⁉」


「なんだな、なんだな‼」


「助けたいという想いが切っ掛けなのか。単純に想いを重ねることが重要なのか。短期間で暴くには、実戦が手っ取り速いでしょ」


 口角を和らげる陽沙は、現出した華火を摩り。


「それじゃあ華火、よろしくね?」


「横暴だーーーーっ‼」


「うわああああああああああああ‼」


 華火に対しての微笑は暖かい母のようなのに、春夢ら側からは悪魔の化身にさえ思える。

 文字通り二人はその日、地獄を経験した。

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