第22話 嬉しい誤算と悲しい誤算
そこでただ一人、椅子に座り込んでいた
「次の動きが決まったのか?」
そう言って窓の方へ顔を向けると、佇んでいたカラスが
『ああ。予定通りにダイゴの意識を縛り、意図的にこちらの作戦を流した。恐らく警察側は、今度こそ我々を一網打尽にと、最高戦力で仕掛けてくるだろう』
「残りの
『そこは問題ない。“ボス”も、直々に動く。この前、お前たちが手に入れた
「なに? その言い方だと、前々から現出には成功していたのか?」
『ああ。ただし、まだ手順が必要なのだよ。正確に呼び出すには、
「そんな状態での実戦で、支障は無いのか?」
『あの使い魔の力は一端だけでも強力だ。例え護国聖賢でも、遅れなど取るまい』
「そうか……。ならばこの国を揺るがす日も近いのだな」
羽嶋は強く拳を握り、仰木もカラス越しに鼻で笑う。
『仮物の神霊樹などに頼っている、軟弱な
破邪術師団の思惑は、佳境に入る。
「よし、ハルピコ。ヒーローってのは、いついかなる時も、努力を怠らない。今は俺たちにできることを探す重要な時期だ。準備はいいか?」
「準備って言われても、何をやるんだな?」
昼寝から覚めたハルピコは、道場の広間で
「あの戦いで、ようやくお前の特技を見つけたからな。ずばりハルピコ! お前の特技は、怪魔師と一心同体で戦う――
「こんどう、がいか? 何だか、難しいんだな~」
「そうよ春夢君。ハルピコ君にも分かる名前じゃないと」
「わしは良いと思うぞ? ちとひねりが足らん気もするがな」
「なんで、先生たちまでここに?」
春夢とハルピコが取り組む横で、茶菓子と飲み物を持ち込みながら佇む
二人はまったり気分で見物していた。
「弟子の成長を見届けるのも、わしの務めよ」
「私も気になってね。春夢君たちの初めての術に。やっぱ怪魔師は、必殺技とか持ってなんぼだしね~」
「少年漫画みたいに、ド派手なものじゃないですよ? まあ、黙って見ててください。というわけでハルピコ!」
「分かったんだな、はるむ!」
意気込む春夢に対し、ハルピコも視線を放さず。
そのまま数秒間、互いに見つめ合い。
「あの……春夢君?」
「どうした? 速くやらんか」
「え、ああ、はい! どうしたハルピコ! あの時みたいにドンと来い!」
「え? アレって、はるむが僕に何かをするんじゃないんだな?」
「何言ってんだ? お前の特技なんだろ? 自分を鎧のように変化させて」
「けど僕。一体何をすればああなるのか、分からないんだな~」
「ええ⁉」
思わぬ誤算に、一発目から練習は足を挫く。
こりゃ、気が遠くなるなと。傍から見ていた善一と零香は静かに頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます