ジェニスの町の有り様 1

「……アレン様、申し訳ありません。これは私の失態です」


 執務室へ移動して話を聞こうとすると、カエデが開口一番にそう言って深々と頭を下げた。


「いきなりだな。一体なにがあったんだ?」

「種族間の溝が急速に広がっています」


 簡潔で、だからこそ深刻な報告に息を呑んだ。

 ジェニスの町は、種族に別れて三等分されている。人間の暮らす区画と、イヌミミ族の暮らす区画、その他の種族が暮らす区画である。

 この国で、他種族が纏まって暮らしているのはこの町だけ。それゆえに、様々な種族問題がくすぶっているのは事実だが、それはずっと昔からだ。

 なのに、このタイミングで大きくなった……?


「理由はなんだ? 誰かが扇動している痕跡はあるのか?」

「お察しの通り、何者かが噂を流したようです。噂の内容はいくつかありますが、どれもイヌミミ族が優遇されているというものです。これによって人間の反発が大きくなっています」

「そう、か……」


 この町の弱点を的確に突く攻撃。

 タイミングを考えればリディアかオーウェル子爵家の仕業。リディアが宣戦布告をしてきたとき、ジェニスの町に種族間の問題がくすぶっていることを指摘していた。

 だが――


「オーウェル子爵代行の可能性が高いだろうな」

「なぜそう思われるのですか? リディア様は他種族を排斥したがっていたのでは?」

「だからこそ、だ。もし俺がリディアの立場で他種族を排斥するために流言を使うなら、他種族が人間に不満を抱くように仕向ける」


 ジェニスの町で暮らす他種族はかつてのウィスタリア伯爵によって保護されている。ゆえに、人間が他種族に危害を加える流れになれば、ウィスタリア伯爵は彼らを護る義務がある。

 少なくとも、そうしなければ周辺貴族からの評価は下がるだろう。だが、もし他種族が人間に危害を加えることがあればその限りじゃない。彼らを排する名目が立つ。

 もっと言えば、俺が他種族を護ろうとしても、排斥しなければいけない流れが出来上がる。


 口で言うほど簡単なことじゃないし、そこまでの問題に発展する可能性は低いだろう。だが、人間に不満を抱かせるよりは危険性が高い。

 どちらにしても、ジェニスの町で血が流れる可能性のある攻撃。一線を越えてしまっている以上、リディアがあえて手加減をする必要はないはずだ。だからこれはリディアの考え抜かれた策ではなく、オーウェル子爵代行の刹那的な攻撃である可能性が高い。


 だが……オーウェル子爵代行の仕業だとしても気になることはある。

 父上は、切れ者がオーウェル子爵家にいると言っていた。父上が警戒する相手であれば、いま俺が考えた程度のことは思いつくはずだ。

 それなのになぜ、中途半端な攻撃を仕掛けてきたのかが分からない。


 俺が気付いていないなにかがあるのか、もしくはオーウェル子爵代行が聞く耳を持たなかったのか、もしくはそれ以外の理由か……

 そう考えると、リディアの仕業である可能性も否定できなくなってくる。


 とにかく情報が不足している。

 レナードに情報を集めさせてはいるが、リディアの正体は相変わらず不明で、オーウェル子爵家の切れ者の正体についても不明。少なくとも表舞台にそういう人物はいないそうだ。


 反撃の手はずは着々と進んでいるが、二人の動きが見えないことが不気味で仕方ない。予想外の攻撃が続くことを想定して、早急にこの件を片付ける必要がある。


「アレン様から町の管理を任されていたのに申し訳ありません。この騒動を引き起こした責はすべて私にあります。ゆえに、どのような処分でも受け入れるつもりです」

「……いや、処分するつもりはない」


 深々と頭を下げたままのカエデに向かって声を掛けるとその身がピクリと揺れた。


「寛大なお心には痛み入ります。ですがイヌミミ族が優遇されていると噂されているいま、そのような対応は諍いを加速させることになります。どうか、厳罰をお与えください」

「――聞け。住民の一人一人を監視でも出来ない限り、流言自体を止めることは不可能だった。ゆえにその点について罰する理由はない」


 どこの誰が流言を流すかまで分かっていれば、ずっと見張って現場を押さえることも可能だろう。だがそうじゃない限りは防げるはずがない。


「それよりも俺は、大きな問題が発生する前に気付いたことを評価する」

「……評価、ですか?」

「カエデは最善を尽くした。それを罰しては悪例になるだろ?」


 問題を報告したら罰せられるかも知れない。そう思った部下が上司に報告せず、一人で対処しようとして状況を悪化させる――なんて話はありふれている。

 問題が発生した時点で即座に報告したカエデの行動は評価に値する。そんな風に諭したのだが、カエデは迷うような素振を見せた。

 ……いや、違うな。どちらかというと、戸惑い……動揺している?


「不満、か?」

「……いいえ。アレン様がそう決めたのであれば、私はその決定に従います。このご恩は、身を粉にして仕えることでお返しいたしましょう」

「期待している。おまえがいなきゃこの町は纏められないからな」


 流言ではイヌミミ族が優遇されていることになっているそうだが、実際にはそんなことはない。むしろカエデは同族であるイヌミミ族を冷遇している。

 そうしなければ人間に迫害されると分かっているからだ。


 だが、人間が町の代表として同じことをすれば、イヌミミ族は反発していただろう。イヌミミ族であるカエデだからこそ、ジェニスの町を纏めることが出来ているのだ。


 だが――人間が誤解しているというのなら、カエデが弁明したところで苦しいだろう。それにオーウェル子爵代行はもちろん、リディアの攻撃もこれからだろう。

 俺が人間達の代表と会って、この状況を早々に収拾する必要がある。



 ――翌日、人間の代表たる有力者達を屋敷の会議室へと呼び寄せた。

 彼らはこの町で暮らす人間達の有力者。初老の男が商業ギルドの代表で、頑固そうな男が農業ギルドの代表、そして切れ者そうな青年がこの町に拠点を置く商会の代表だ。


 ただ、有力者ではあっても町の代表はあくまでカエデ。いままではカエデを通して連絡していたので、こうして実際に会うのは初めてだ。


「よく来てくれた。俺がこの町を統治するアレン・ウィスタリアだ」

「これはこれは、お会いできて光栄です」


 三人がそれぞれ名乗り返してくる。そのときのやりとりから、おおよその性格は第一印象と変わらなさそうだと判断する。


「今日、おまえ達に来てもらったのは他でもない。町の有力者であるおまえ達に頼みたいことがあったからだ」


 俺がそう切り出すと、三人は思い思いの表情を浮かべた、中でも困惑するような表情を浮かべる農業ギルドの代表へと視線を向ける。


「どうした? なにか言いたいことがあるのなら言うといい」

「では、お尋ねします。今日はお飾りの小娘がイヌミミ族を優遇している件で呼ばれたと思っていたのですが……違うのでしょうか?」

「その噂の件で間違いはないが、おまえが想像しているのとは違うな。俺はその噂をなんとかしてもらいたくて、おまえ達を呼んだんだ」


 農業ギルドの男は目に見えて困惑する。だが、商業ギルドは無表情で、商会の代表は納得する素振りを見せる。同じ人間族の中にも異なる考え方を持つ者はいるようだ。


「まずおまえの認識から聞いておこう。イヌミミ族が優遇されていると言ったが、具体的にはどのようなことが優遇されているというのだ?」

「それは……色々とありますが」

「構わないから言うといい。それで罰することはないと約束しよう」


 では――と、農業ギルドの男が口火を切った。

 ブラックボアの狩りで恩恵を得ているのが、イヌミミ族を始めとした他種族であること。新しい農法を教えられているのがイヌミミ族のみであること。用水路で水が引かれているのがイヌミミ族の区画しかないことを理由に、いかにイヌミミ族が優遇されているかを力説した。


 続いて商業ギルドの男が流通についても不満を口にする。

 在庫が乏しくなっていた塩が先日、アストリー侯爵領から運び込まれた。それを町に流したのだが、どうやらイヌミミ族を優先するように流れたらしい。

 それらを聞いていると、本当にイヌミミ族が優遇されてるように思えるな。


「いままでは伝統に則ってイヌミミ族が町の代表に収まっていましたが、いまはアレン様が統治しているのでしょう? だったら、人間を優遇するようにしてください」

「そうですな。人間の街なのに、イヌミミ族が代表だったのがそもそもおかしいんです」


 色々と言いたいことはあるが、俺はなにも言わずに無言を貫いた。

 他人より自分、他種族よりも同族を優遇して欲しいと思うのは当たり前の感情だし、彼らの話を聞く限り、誤解をしても仕方がない部分が多い。

 いまの事実だけを知れば、俺だって彼らと同じような誤解をしたかも知れない。

 だから――


「まずは順を追って話そう。まずはブラックボアの狩りに人間がほとんど参加していない理由だが、これは初期メンバーが他種族のみで編成されたからだ」

「……? つまり、イヌミミ族を優遇した結果と言うことではありませんか?」


 農業ギルドの男はピンとこなかったようだ。

 あまり踏み込んで話すべき案件じゃないんだが……いや、そうやって伏せたからこその誤解か。全員に話すわけにはいかないが、彼らには教えておくべきだろう。


「ブラックボアが危険なことは知っているな?」

「森に生息する魔物が危険なことは子供のころから聞かされています。ですが、いまは罠を使うことで安全に狩っているのでしょう? それなのに、イヌミミ族を初めとした他種族ばかりが選ばれ、成果を上げるたびに特別手当を受けていると聞いております」

「……なるほどな」


 たしかに結果だけを見れば、イヌミミ族が優遇されている。


「ブラックボアの狩りで被害がほとんど出ていないのは、俺の姉が開発した罠のおかげだ。だが、最初の狩りでその効果は保証されていなかった。初期メンバーは……決死隊だ」

「……決死隊、ですか?」

「これから話すことは他言無用だ。もしも誰かに話したら相応の対応を取ることになる」


 父上のように威圧する。あまり慣れないことだったが効果はてきめんだったようで、農業ギルドの男は息を呑み、残りの二人もびくりとその身を震わせた。

 俺は威圧するのを止めて口を開く。


「カエデはたしかにイヌミミ族を守ろうとしている。だが、決して優遇はしていない。むしろ冷遇すらしている。その理由は……分かるか?」

「人間との軋轢を避けるため、ですか?」


 答えたのは商会の代表だった。彼はジェニスの町に拠点を置いているが、厳密にはこの町の人間ではないため、客観的な視点を持ち合わせているのかも知れない。


「森での被害は決して小さくはなかった。だが、ブラックボアの討伐には大きな被害が予想された。だからこそ、カエデはイヌミミ族を中心にメンバーを編成したんだ」

「い、意味が分かりません。そのようなことをして、どんな意味があるというのですか?」

「人間に被害が出ていたら、おまえ達はどのような反応をした?」


 農業ギルドの男はうっと唸って口を閉じた。もし人間に被害が出ていれば、それをやり玉にカエデを責めていたと思い至ったんだろう。


「この町の状況は微妙だ。カエデがイヌミミ族を優遇したら、たちまち確執が広がる。人間に被害を出しても同じだ。それを避けるために、カエデは同胞を死地に向かわせたんだ」

「で、ですが、それならば何故、いまだに人間の参加者が少ないんですか?」

「危険を承知で赴いた初期メンバーに人間がいなかったのに、安全で旨味があると分かった途端に人間を増やすわけにはいかないだろ?」


 そんなことをすれば、今度は他種族からの不満の声が上がる。


「それに加えて、この町の兵士に人間は少ないからな」


 兵士になる理由は様々だが、敵が居ない状況では正義感や復讐心で危険で薄給な兵士になろうという者は少ない。この町の兵士の多くは食うに困って志願した者達だ。

 つまり、生活難に晒されている他種族が多い。


「だから、ブラックボアを狩るメンバーに人間の兵士は少ないと言うわけだ。決してイヌミミ族を優遇した結果ではない」

「で、では、新しい農法や用水路の件はどう説明するつもりですか?」

「新しい農法についてもまったく同じだ。成功する保証がなかったため、失敗を覚悟の上で誰かに実験してもらう必要があった」

「……であれば、それもしばらくは人間に教えないとおっしゃるのですか?」

「いや、それはない。安全だと分かった時点で新しい農法を公開する予定だったが、それまでにも希望するというのなら種族に関係なく農法を伝えてもいい」

「それは誠ですか?」

「ああ。ただし、さっきも言ったが新しい農法だ。必ずしも良い結果になるとは限らない。彼らは実験台だ。それを理解した上で自分達もというのならもちろん教える」


 肥料やその他はともかく、新しい農法は四年周期で行われる。一年目が順調だったとはいえ、今後もそうである補償はない。

 地域が変わるだけで上手くいかなくなることもあるのが農法だ。前世の世界で主流だったからと言って、この世界で通用するとは限らない。


「だが……そうだな。近くの畑で試すよりも、少し離れた畑で試す必要もあるか。畑を持つ人間にも何人か実験に加わってもらおうか」

「……い、いや、その……わ、私の一存では決めかねます」


 怯んだ様子を見せるが、ここで逃げるなんて許すはずがない。


「イヌミミ族ばかり優遇するのは狡いと、おまえ達が望んだことだろう。あまりに悲惨な結果になった場合は補填をしてやるから何人か見繕え」

「わ、分かりました。何人か候補をあげておきます……」


 少し脅し口調になってしまったので、農業ギルドの男はすっかり怯えてしまった。

 実際には、失敗に終わる確率はかなり低いと思っている。

 だが、そこを強調してしまうと、イヌミミ族を優遇しているという疑惑が払拭されない。少なくとも、イヌミミ族達と同じだけの覚悟を持って実験に参加してもらう。


「で、ですが、用水路はどうなのですか?」

「それこそ、イヌミミ族が冷遇された結果だ。俺が用水路をイヌミミ族の区画から広げたのは、単に川から近い――町から遠い場所を選んだからだ」


 昔はイヌミミ族の集落から始まった。

 だが、時が流れるに連れて人間が大きな力を持つようになり、便利な土地は人間が使うようになった。新しく広がる他種族の土地は不便な場所が多い。


「――では、塩の流通についてはいかがですか?」


 すっかり勢いを失った農業ギルドの男に変わって、商業ギルドの男が尋ねてきた。農業ギルドの男には全て反論した俺だが、それに関しては困惑せざるを得ない。


「塩をイヌミミ族に優先的に流しているという話だったか?」

「そうです。塩の在庫が減っていることは、まだ気付いていない者がほとんどなので大きな問題にはなっていません。ですが、人間の区画に流通する塩が減少しているのに対して、イヌミミ族を初めとした他種族へ流れた塩は減っていないと調べが付いています」


 俺は腕を顎に手をやって考える。

 カエデがそのような愚かな選択をするはずがない。だが、商業ギルドが調べたというのも嘘ではないだろう。そしてその結果もまた、間違っているとは思えない。

 誰かが意図的に流通の量を操作した? ……リディアか? もしリディアの仕業なら、彼女がこの町の流通にまで食い込んでいることになる。由々しき事態だ。


「アレン様、発言をお許しいただけますか?」


 そう口にしたのはこの町を拠点にする商会の代表だった。

 本来であれば外から入ってくる塩については商会が多少なりとも関わっている。だが、先日ジェニスの町に入ってきた塩は、アストリー侯爵家からの横流し。

 彼らは蚊帳の外だったはずなのだが……なにか思うところがあるのだろうか。


「なにかあるのなら言ってくれ」

「では……もともと他種族は、人間と比べて塩分の摂取量が少ないのはご存じですか?」

「……いや、初耳だ」


 多少の文化は違えど、食生活もほとんど同じだったと認識している。だから、彼の言葉は俺にとって予想外だった。


「人間と同じ量の塩分をとり続けると体調を崩すなんて話も聞きますが、その辺りについての確証はありません。ただ、人口に対しての消費量が少ないのは事実です」

「ふむ。続けてくれ」


 他種族の塩分摂取量が少ない理由ではなく、その事実が重要だと言うのだろう。塩分の摂取量が少ないことも興味はあるが、いまは本題を進めさせる。


「本来であれば、オーウェル子爵領から輸入した塩は、それぞれの種族の商業ギルドが直接買い取っていました。ですが先日輸入した塩は、カエデ様の管理下で各種族に下ろされました」

「そうです。それでカエデが、イヌミミ族や他種族を優先して塩を分配したのです」


 商業ギルドの代表が同調するように声を上げる。誤解を解くために理由を究明していたのだが、カエデが他種族を優先した状況証拠を突きつけられる結果となった。

 だが――


「いえ、私はそうは考えていません」


 商会の代表は俺達の結論を否定した。


「……どういうことだ? 残念ながら、俺にも彼の言葉が正しく思えてきたのだが」

「おそらくですが、カエデ様は公平に三つに分けたのだと思います。人間の内政に関わりを持たない彼女は、自分達の塩分摂取量が少ないことを把握していなかったのでしょう」

「……ふむ」


 たしかに、カエデは人間が暮らす区画の流通については詳しくないかもしれない。だが、レナードが調べたデータをカエデは持っていたはずだ。

 知らなかったとは考えにくい。


 ……なにか、あるのか? いや、ないとは考えられないな。その理由までは分からないが、いまはそれを追求するときじゃない。


「すまない。詳しい事情は調べてみなければ分からないが、こちらに不手際があったのはたしかなようだ。塩の分配については早急に対処しよう」


 俺は商業ギルドの代表に向かって頭を下げた。

 だが、待てど暮らせど商業ギルドの代表からは反応が返ってこない。いくらなんでもおかしいと思って顔を上げると、彼はぽかんと口を開けていた。


「……なんだ?」

「いえ、謝罪をされるとは思っていませんでしたので」

「俺だって失敗くらいするし、失敗すれば頭も下げる」

「しかし、故意ではなかったとしても、失敗したのはカエデではありませんか。それなのにあなたが頭を下げるのは、イヌミミ族を優遇しているから、ですか?」

「少し違うな。俺はどの種族も優遇するつもりはない。あえて言うのであれば、冷遇されている他種族をなんとかしたいとは思っているが、人間を蔑ろにするつもりはない。いま俺が頭を下げたのは、カエデが俺の指示に従って動いているからだ」


 ジェニスの町はもともとイヌミミ族の町だった。それが時間とともに人間の町へと変わり、他種族はそこに間借りしているような立場になった。


「俺は、ジェニスの町を様々な種族が仲良く暮らす町にしたいと考えている」

「……何故、です? ここは人間の国ではありませんか……っ」


 商業ギルドの代表が感情を高ぶらせた。農業ギルドの代表も同調するように頷いている。これが、この町の現実なんだろう。

 俺が当主の座を掴むだけなら、この確執に蓋をする道もあるだろう。だが、町に恒久的な平和をもたらすには、この確執を打ち払わなければならない。

 だから――


「おまえ達の考えは間違っている」


 町でずっとくすぶっている種族問題に踏み込んだ。

 

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