不安

ご主人様が家に戻って来て数週間が立った。

ご主人様といろんなお話をした。

楽しかったことや悲しかったこと・・・友達や恋人のこと・・・。

私も今までのことを話した。

紅茶の入れ方の練習やその時の気持ち・・・。

話している内に涙が出てきてそんな時はご主人様が抱きしめてくれる。

ご主人様は昔に比べると大きくなって固くて・・・でも、頼もしくなって・・・。

そんなご主人様を見ると私は焦りを感じる。

このままだと、またご主人様が遠くに行ってしまうんじゃないか・・・?

そんな不安がよぎる。

でも、ご主人様にそんなことは言えない。

言ったら嫌われてしまうかもしれないから・・・。


「イエイヌ。起きろよ、イエイヌ。」

「ううん・・・。ご主人様?」

「もう朝だぞ?お前が寝坊なんて珍しいな・・・。」

「はっ!?すぐに朝食の準備を!!」

そう思って起き上がった時に鼻に香ばしい香りが漂う。

「俺が準備しておいた。」

「ご主人様・・・申し訳ありません。」

私は自分が情けなくて肩を落とす。そんな私の頭にご主人様は手を置いてくれる。

「気にするな。お前はいつも頑張っているんだ。たまには寝坊したっていいじゃないか・・・。」

「ご主人様・・・。」

ご主人様は優しく私の頭を撫でてくれる。その手からはご主人様の優しさが伝わってきた。

「ほら、冷めないうちに食べよう。」

「あ・・・。」

ご主人様の手が頭から離れて少し寂しく感じる。

「どうした?」

「何でもありません。」

私はすぐに立ち上がりテーブルに向かう。


「ご主人様、とても美味しいです!」

「そうか・・・。」

ご主人様は嬉しそうに私を見ている。

「美味しそうに食ってくれるんだな・・・。」

「だって、本当に美味しいんですもの!」

私が本心からそう言うとご主人様は笑顔になる。

「ジャパリパークには食材が沢山あるかなら・・・。そんなに喜んでくれるならもっと頑張らないと・・・。」

「そんな!ご主人様はゆっくりしていてください!ご主人様のお世話は私が!」

「気にするな・・・。俺たちはこの家に一緒に住む家族みたいなものなんだから・・・。」

「家族?」

「ああ・・・。」

そう言ってご主人様は私を抱きしめてくれる。

「もう、俺にはお前しかいないからな・・・。」

「ご主人様・・・。」

「だから、俺たちはこれからも一緒だ。」

ご主人様は震えていた。

(そうか・・・。ご主人様も不安なんだ。)

ご主人様はジャパリパークの外でつらい思いをしてきた。

私は孤独ではあったけどこの数年間の間に他のフレンズとの交流も少しはあった。

でも、ご主人様は家族を・・・友達や恋人をなくしている。

(この人を支えられるのは私だけだ・・・。)

「安心してください、ご主人様。私はどこにも行きません。」

ご主人様の頭を抱きしめ撫でてあげる。

昔、ご主人様が泣いているときいつもしてあげていたこと・・・。こうすると、ご主人様はいつも泣き止んでくれた。

「イエイヌ・・・。」

「私だってご主人様のことが好きです。それこそずっと一緒に居たいと思うほどに・・・。」

「そうか・・・。」

ご主人様は私に顔をうずめる。私もご主人様を抱きしめる。

これからも不安なことがあるかもしれない。

でも、ご主人様と一緒なら何も怖くない。

だって、もう私は一人じゃないんだから・・・。

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