〔ハムスターの迷宮物語〕(一)

野良のハムスターはその路地で

夜空を見上げた


野良のハムスターは煙草をふかして言った

昔、友達だったあいつは死んだ


夜空を見上げて言った

煙草をふかして

透き通った夜空を見上げて


昔、友達だったあいつはあのとき死んだ

鑑別所おくりになったあいつはあのとき死んだ


煙草をふかした後

透き通った夜空を見上げてから

野良のハムスターは路地を走った


あのとき死んだあいつを思い出したせいで

いつの間にか野良のハムスターは迷宮の中へ彷徨い込んでいた


迷宮の中に空は無い

野良のハムスターは、また煙草をふかした


さて、迷宮には案内人がいたはずなのだが


野良のハムスターは、また煙草をふかした

死んだ者を思い出して

透き通った夜空を想って

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