小さき者たちの王国

〔しょぼくれ山のドングリ〕(1)

しょぼくれ山に木が生えました。

だけど、しょぼくれ山にはその木を成長させるだけの栄養がもう無かったのです。


しょぼくれ山に男たちが集まり始めていました。

何しろしょぼくれ山に木が生えたのは、もう何十年ぶりのことだったからです。


男たちには、死んだ愛する者たちがそれぞれにいました。

男たちは、しょぼくれ山の木を死んだ愛する者なのだと信じたのです。


しょぼくれ山に木が生えました。

きっとドングリのなる木でしょう。

だけど、しょぼくれ山にはその木を成長させるだけの栄養がもう無かったのです。


しょぼくれ山に男たちは集まりました。

男たちは、しょぼくれ山の木は死んだ愛する者なのだと信じたのです。


男たちは、死んだあいつにもう一度会いたいと願ったのです。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る