第13話
僕達は洋館内を走り抜ける。
「ショウマ様!俺たちがあいつらの気を引きます!その内に隠れてください!」
「そんな・・・!?ソーマさん達を置いて行くなんて出来ません!」
「人形たちを片付けたら合流しますよ・・・。」
「マリアのことは頼んだぞ。」
「お兄様!?」
「早く行って!」
カーラさんの言葉に僕は頷きマリア達を連れて洋館の奥に走る。
「・・・ここなら大丈夫かな?」
僕はドアを閉めるとその部屋にあった家具でバリケードを作る。
「・・・お兄様たちは大丈夫でしょうか?」
マリアは心配そうにつぶやく。
僕はキサラさんを地面に寝かしてから答える。
「アルスにはソーマさんとカーラさんもついているから大丈夫だよ。」
正直なところわからないが変に不安にさせても良くないと思って答える。
「そうですよね・・・。きっと無事ですよね・・・。」
「うん!大丈夫だよ、きっと!」
僕自身に言い聞かせるようにマリアさんの言葉に頷く。
「・・・主様、帰りたい。」
「そうだな・・・。」
シルビアが不安そうに僕を見上げてくる。
「とりあえず、この洋館で何があったのか確認しないと・・・。」
僕は部屋を見渡す。
部屋の調度品を確認してみる。
可愛らしい家具で統一されているところを見るとここは女の子の部屋のようだ。
「何か手掛かりがあればいいんだけど・・・。」
そう思って部屋を見て回る。
すると、机に一冊の本が置いてあった。
「これは、日記?」
僕は日記と思われる本を開く。
しかし、当たり前だが日本語で書かれている訳はなく文字を解読することが出来なかった。
「ショウマ?何か、見つけたの?」
「うん、日記みたいなんだけど・・・。」
そう言ってマリアに日記を渡す。
「これは・・・。」
マリアは日記を黙読する。
しばらく、ページを捲ると納得したように頷く。
「この日記はこの洋館に住んでいた人のモノみたいです。」
「内容はどんなものなの?」
「はい・・・読みますね。」
マリアが日記の内容を読む。
ブリストア歴559年 4月1日
『今日から日記を始めた。
どんな内容を書こうかな・・・。
とりあえず、私のプロフィールを書いておこうかしら?
私の名前はメリッサ・マルグレーラ。
今年で15歳になるの。
私の母親は屋敷のメイドだったのだが貴族だった父と一夜を共にして私が生まれたと聞いている。
母が死んだ後に屋敷から迎えが来た。
どうやら、父と正妻との間に子供が生まれなかったことから私を引き取るとのことだった。
義母は妾の娘である私に冷たい。
まあ、当たり前のことではあるのだけれど自分たちの都合で連れてきたくせに酷いと思う。
ああ・・・。メリダ村での日々が懐かしいわ・・・。
コウは元気にしているかしら?
逢いたいわ、コウ・・・。』
「ブリストア歴559年って今から何年前の出来事なの?」
「今が609年だから今から50年前ですね。」
「50年前か・・・。」
しかし、何というか物語によくある話ではある。
メイドと貴族の一夜の過ち。
しかし、それで生まれてしまった子供の立場としては本当に迷惑な話だ。
「なんだか、結末はなんとなく想像がつくけど・・・。」
「はい。最後の日付はブリスト歴560年2月1日で終わってます・・・。読みますね。」
『ブリスト歴560年2月1日
私は明後日、貴族の男の元に嫁がされる。
家のために好きでもない男と一緒になるくらいなら死んでしまいたい・・・。
でも、そんなことにはならない。
だって、コウが助けに来てくれるから・・・。
私は彼と生きられるのであれば贅沢な暮らしなんていらない。
彼と一緒に遠くに逃げよう・・・。
ああ・・・早く明日にならないかしら・・・。
愛しているわ、コウ・・・。』
「これで、この日記は終わってます。」
「・・・彼女は愛する人と逃げることは出来たと思う?」
「・・・。」
マリアは首を振る。
僕だって同じ気持ちだ。
きっと、悲しい結末を迎えたのだと思う。
そして、その結果が今なのかもしれない・・・。
「答えに辿り着いたのですね・・・。」
そう言ったのはキサラさんだった。
「キサラさん?目を覚ましたのですか?」
「主様・・・。」
シルビアがキサラさんに近づこうとする僕を止める。
そして、シルビアはキサラさんを睨み付ける。
「貴方、誰?」
「・・・どうやら、君には俺の本当の姿が見えるみたいだね。」
キサラさんが優しく微笑む。
「自己紹介をさせてもらう。俺の名前はコウ。君達に頼みがある。」
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