第8話

それから数日。

僕達は時々、魔物との戦闘をしながら森の中を進んでいった。

「そろそろ、森を抜けます。」

そう言った瞬間だった。

「きゃあ!!」

女の子の悲鳴が前方から響き渡る。

「ショウマ様!」

「うん!行こう!」

僕達は馬車の速度を上げて悲鳴がする方に向かう。


「とうとう追い詰めたぞ・・・。さあ、こちらに投降してもらおうか・・・。」

「嫌だと、言ったら?」

「なら、死んでもらうのみだ。」

そう言って男たちはフードを被った男性の方に剣を振りあげる。

「カーラさん!」

「わかりました!」

次の瞬間、カーラさんは馬車から飛び上がった。

「はあ!」

「むぅ!?」

男はカーラさんの突然の攻撃に剣の矛先を変えてカーラさんの剣を受け止める。

「何者だ!?」

「貴方たちに名乗る名はありません!」

そう言ってカーラさんは剣を構える。

「ショウマ様!この馬車から出ないでくださいね!」

「えっ!?僕も戦います!」

「実戦経験がほとんどないショウマ様が出てきても足手まといです!いいから、おとなしくしていてください!」

そう言ってソーマさんも馬車を止めて飛び出す。

「そこのお前、助太刀する!」

「・・・すまない。」

そう言って男性は剣を構える。

「ちっ・・・!数が増えたところで・・・!」

そう言って男たちはそれぞれの得物を構える。

「・・・。」

僕は馬車の中で様子を窺う。

横にはシルビアが怯えたように僕にしがみついていた。

(数は5人。剣の構えを見る限り、ただの素人って訳じゃないな・・・。)

正文兄さんの試合などを観て僕もある程度であるが剣の型が分かるようになった。

まあ、相手が素人か経験者か分かる程度の知識だが・・・。

(そう考えると、あの人たちはただの盗賊なんかではないということかな?その証拠にみんな同じ型を取っているし・・・。)

こちらの世界の剣術についてはよく分かっていないけど、とりあえず様子を見ることにした。

「行くぞ!」

そう言ってソーマさんは剣を突き立てる。

すると、地面が盛り上がり男たちに土の壁が立ちはだかる。

「ちっ!?こんな壁、さっさと壊してやる!」

そう言って男の一人が魔法を纏う。

「はあ!」

男の斬撃を受けて土の壁は燃え上がる。

(あの男は火魔法の使い手か・・・。でも、魔法を“放つ”のではなく“纏う”ということは獣人の可能性があるな・・・。)

そんなことを考えていると、カーラさんがものすごいスピードでその男に接近する。

「やぁ!」

「ぐはぁ!」

カーラさんの斬撃を受けた火魔法使いはありえないほど遠くに飛ばされた。

(カーラさんのあの速さ・・・。風魔法を使ってスピードを上げたんだ!それに剣に風魔法を付与して斬撃に乗せることでノックバックまでするなんて・・・。)

「この!」

剣を振り終えたカーラさんにもう一人の男が接近する。

「させるか!」

そう言ってソーマさんは石礫を放つ。

それが男にぶつかり仰け反る。

すかさずカーラさんが斬撃を加える。

「くっ・・・。こいつら、強いぞ!?」

リーダー格の男が他の男達に警戒を促す。

「お前たちはあの二人を何としても食い止めろ!その間に俺が銀の魔女を!」

そう言って男たちはそれぞれ行動を起こした。

「させるか!」

ソーマさんが石礫を放つがそれを叩き落とす。

「俺達だってやらなければならないんだよ!」

そう言ってソーマさんに男は体当たりをかます。

「くっ!?」

ソーマさんは突然のことで体勢を崩す。

「ソーマ!」

「お前の相手はこっちだ!」

助けに行こうとするカーラさんだったがもう一人の男が立ちはだかる。

「さて、終わりだ!銀の魔女!」

そう言ってリーダー格の男が剣を突き立て突っ込んでくる。

「させない!」

その間に僕は盾を構えながら立ちはだかり剣を受け止めた。

「なっ!?もう一人居たのか!?」

リーダー格の男は驚いた表情を浮かべる。

「ショウマ様!なぜ、出てきたのですか!?」

「ゴメン、ソーマさん!でも、結果オーライでしょ?」

そう言って僕はそのままリーダー格の男に体当たりをする。

「ちっ!」

リーダー格の男は僕を睨み付けてくる。

(うわぁ・・・。物凄く睨みつけているよ・・・。)

正直、怖くて脚はガクブルだ。

「おい!」

その時、後ろから声がした。

それは、フードを被った男性の方だった。

「そんな状態で戦えるのか?お前、震えているじゃないか?」

「そりゃ、初めての実戦なら怖いさ・・・。でも、何もしないという選択肢はないよ。」

そう言って僕は盾を構えリーダー格の男を睨む。

「君達が誰なのかはわからないけど、困っている人はほっとけない!」

「・・・おかしい奴だな。」

そう言ってフードの男が隣に立つ。

「なら、お前はアイツの動きを少しの間止めてくれ。その間に俺が仕留める。」

「・・・わかった。」

僕は腹を決めて構える。

「ふん・・・。素人に防げるほど俺の攻撃は柔くないぞ!」

そう言ってリーダー格の男は魔力を溜める。

リーダー格の男の魔力の色は赤・・・。

つまり、火魔法の可能性がある。

「なら・・・。」

それに対抗できる魔法を僕は持っている。

でも、それが成功するかは賭けだ。

(集中・・・集中・・・。)

僕は魔力を身体の中心から盾に流すイメージを浮かべる。

(全身に纏わせるわけじゃないんだ・・・。ただ、盾に僕の魔力を纏わせることが出来れば・・・。)

「食らえ!」

リーダー格の男は燃え盛る剣を振り下ろす。

「はぁ!!」

僕は盾を構える。

次の瞬間、盾が銀色の光を放つ。

「なっ!?」

その瞬間、燃え盛っていた剣は勢いを失い残ったのは重い衝撃のみだった。

「よくやった!」

そう言ってフードの男は僕の横を通り過ぎリーダー格の男を切り捨てた。

「ば・・・馬鹿な・・・。」

リーダー格の男はそれを最後に倒れた。

「やった・・・。」

僕はその場に座り込む。

どうやら、緊張がピークに達していたようだ。

こうして、僕の初めての実戦は終わりを迎えるのだった。

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