第9話

「あの・・・大丈夫ですか?」

そう言って手を伸ばしてくれたのはフードを被った少女だった。

「うん・・・ありがとう。」

僕は少女の手を取り立ち上がる。

「主様!大丈夫!?」

立ち上がると馬車からシルビアが駆け寄ってきた。

「うん・・・。少し、怖かったけど大丈夫だよ。」

そう言ってシルビアの頭を撫でる。

「・・・銀の髪!?」

フードの少女は驚いたようにシルビアを見る。

「どうかしたの?」

「いえ・・・。」

そう言った瞬間、風が巻き起こり少女のフードが捲れる。

「あっ!?」

フードの下から現れたのはかわいらしい顔をした少女だった。

銀の髪にそれと同じ色の犬耳が付いていた。

「い・・・。」

「い?」

「いやぁ!!!!」

そう言った瞬間、少女の身体から魔力が溢れ出した。

「この魔力は・・・。」

少女の魔力の色は銀色だった。

「まさか・・・。」

「マリア!?」

そう言って慌てて飛び出したのはもう一人のフードの男性だった。

「落ち着け!マリア!」

「いやぁ!!!」

銀の魔力はフードの男性を吹き飛ばす。

「ぐぁ!?」

吹き飛ばされた男性は地面に叩きつけられる。

その際にフードが捲れた。

その髪は赤髪でそれと同じ色の犬耳が付いていた。

「お・・・落ち着いて・・・。」

僕は魔力の奔流に晒されながらも近づいた。

「駄目・・・来ないで・・・。」

「ショウマ様!危険です!お下がりください!」

ソーマさんの声が聞こえるが僕はそのまま進んだ。

(少し、キツイけど・・・。)

僕は魔力を練る。

さっきと比べると魔力の量は少ないがそれでも魔力を練り続ける。

「いやぁ!!!」

少女からかつてないほどの魔力が吹き上がりそれが全て僕に向かって来た。

「はぁ!!」

僕は練った魔力をその魔力の奔流にぶつけた。

その瞬間、一瞬のスキに近づく。

「あっ・・・。」

「大丈夫!もう、大丈夫だから!!」

そう言って僕は少女を抱きしめる。

「あ・・・貴方の魔力・・・。」

「うん・・・。僕も君と同じ魔力の色だよ。」

そう言うと少女は落ち着きを取り戻し、それと共に魔力も霧散した。


「・・・今回はご助力感謝する。」

そう言って赤髪の犬耳男性は僕達に頭を下げる。

彼らを追っていた人たちはソーマさんとカーラさんによって始末されていた。

「いえ・・・。僕はほとんど何もしていませんよ。お礼なら、ソーマさん達に・・・。」

「いえ、俺たちは当然のことをしたまでです!」

ソーマさんとカーラさんは照れくさそうに言う。

「それで、貴方たちはどうして追われていたのですか?」

「それは・・・。」

赤髪の男性は口ごもる。

「兄様、私は彼らを信用しても良いと思います。」

「しかし・・・。」

「それに、これからのことを考えると彼らの力を借りた方が良いと思います。」

「・・・わかった。」

赤髪の男性は銀髪の犬耳少女の言葉に頷く。

「俺の名前はアルス。こっちは妹のマリアだ。」

「マリアです、よろしくお願いします。」

そう言って二人は自己紹介をしてくれた。

「僕も自己紹介をした方がいいですね。僕は真田正真。こっちは僕の護衛をしてくれているソーマさんとカーラさん。そして、森で出会ったシルビアです。」

「よろしくね!」

そう言ってシルビアはマリアに抱き着く。

「よろしくお願いしますね、ショウマさん。」

シルビアを抱きながらマリアは言った。

「さて、俺たちが追われていた理由だが、マリアを見れば分かるよな?」

「・・・銀の魔女絡みですか?」

ソーマさんの言葉にアルスは頷く。

「ああ・・・。マリアは銀の魔女と同じ魔法、「増幅魔法」を使えるため国を追われたんだ。」

「増幅魔法?」

僕が聞き返すとアルスが説明してくれた。

増幅魔法とは銀の魔女が使う魔法の一つで、その魔力を受けると「強化魔法」とは比べ物にならない身体能力、魔力の強化を受けることが出来るとのことだ。

「でも、アルスさんはマリアさんに吹き飛ばされていましたよね?」

「ああ・・・。増幅魔法に拒絶されたからだな。」

「拒否?」

「ああ。」

増幅魔法は特殊な魔法だということ。

増幅魔法はその術者が心を許したもの以外には作用しない。

また、感情が高ぶると魔力を増幅させて暴走させ攻撃するということだ。

「そうなんですね・・・。」

「それよりも、お前のことも聞きたいんだが・・・。」

「うん・・・。僕は破魔魔法の使い手だよ。」

これがマリアとアルスとの出会いだった。

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