第7話

「ショウマ様!勝手な行動をとって!!」

そう言ってカーラさんは凄い剣幕で僕に捲し立てる。

「す・・・すみません・・・。」

「貴方に何かあったら勇者様方に顔向けが出来ません!もう、今後一切こんなことをしないと誓ってください!」

「はい・・・。」

僕がそう言うとカーラさんは深くため息を吐く。

「しかし、これだけのゴブリンを相手に良くご無事で・・・。」

「ううん・・・。実は助けてくれた人がいて・・・。」

「そうなのですか?」

ソーマさんの確認に僕は頷く。

「はい・・・。アンヤって人が助けてくれたんです。」

「アンヤですか・・・。」

その名前を聞くとソーマさんは少し黙り込む。

「どうしたんですか?」

「いえ、そのアンヤという名前に覚えがありまして・・・。」

「覚えというより、六勇者の1人でしょ?」

ソーマさんの言葉にカーラさんが答える。

「六勇者?」

「ショウマ様のご兄弟の前の勇者様方のことです。その中にアンヤっていう勇者が居たんです。系統は闇。勇者の中でも一・二を争う戦闘能力だったと聞いています。」

「そうなんですね・・・。」

僕達よりも前に召喚された勇者。

闇の勇者、アンヤ。

「それよりも、この魔物は?」

そう言ってカーラさんは僕の足元を指さす。

そこには狼の子供が僕に寄り添うように座っていた。

「この子は、森の奥で見つけたんだ・・・。そうだ!カーラさん達にお願いがあるんだけど・・・。」

そう言って僕はカーラさん達と共に森の奥に向かう。


『お母さん・・・。』

狼の子供は僕たちが作った墓の前に座る。

あの後、僕たちはこの子の親を埋葬することにした。

「まさか、シルバーウルフほどの魔物が殺されているなんて驚きでした。」

「シルバーウルフ?」

僕が聞くとソーマさんが説明してくれた。

シルバーウルフとは討伐ランクAに該当するほどの強さを有している。

だが、滅多なことでは人を襲うことはなくある国では神獣として祭られているほどとのこと。

「親がいないこの子は今後どうなります?」

「見たところまだ生まれて数か月といったところみたいですね・・・。高い確率で野垂れ死んでしまうでしょう・・・。」

「そうですか・・・。」

そう言って僕は子供狼に近づく。

「ねぇ、君。名前は?」

『名前?』

「うん。名前は何て言うのかな?」

『名前は、無いの・・・。』

「無い?」

『うん・・・。お母さんが言っていたの。名前を付けられると私たちは名前を名付けたものに縛られる。だから、名前は付いていないの・・・。』

「そうか・・・。」

「ショウマ様、さっきから何、独り言を言っているんですか?」

カーラさんが不思議そうに問いかける。

「独り言って・・・。僕はこの子と話をしていただけですよ?」

「えっ!?」

カーラさんは驚いたように僕を見る。

「・・・なるほど。ショウマ様は銀の魔女と同じ力を持っているのですから「精霊の耳」を持っていても不思議ではないですね。」

「精霊の耳?」

精霊の耳とは動物や一部の魔物と意思疎通ができる特別なスキルとのことだ。

特に魔物との意思疎通ができる人間はほとんどおらず、かなり貴重だということだ。

「ショウマ様は魔物使いの適性があるのかもしれませんね?」

「魔物使いですか・・・。」

僕は子供狼を見る。

「ねぇ、君さえよければ僕と一緒に来ない?」

『貴方と?』

「うん。ここに居てもまた襲われるかもしれないでしょ?僕は頼りないかもしれないけどソーマさんとカーラさんは頼りになるから安全だと思うんだ。」

『・・・。』

「どうかな?」

僕は子供狼の返答を待つ。

しばらくすると子供狼が僕を見上げる。

『わかった・・・。私、貴方についていくことにする!』

「うん、よろしくね。」

そう言って僕は子供狼の頭を撫でる。

『あの・・・お願いがあるんですけど・・・。』

子供狼が僕を見上げながら言う。

「何かな?」

『私に名前を付けてくれませんか?』

子供狼は僕に言う。

「でも、それって君の自由を奪うことになるんじゃなかったかな?」

『それでも、良いんです!私は貴方と共に居たい!』

子供狼の目は真剣なものだった。

しばらく考えて、僕は頷く。

「わかった。君に名前を付けるね。」

そう言ってから僕はあることに気が付く。

「・・・君って雄なの雌なの?」

『私は雌です。』

「そっか・・・。」

なら、可愛い名前を付けてあげたい・・・。

シルバーウルフ・・・シルバー・・・。

「シルビアって名前はどうかな?」

そう言った瞬間、僕は倦怠感に襲われた。

そして、子供狼改めシルビアの全身が銀色に輝きだす。


目を覚ますと頭に温かい感触を感じた。

「目を覚ましましたか、主様!」

そう答えたのは銀髪の幼女だった。

「・・・君は?」

「あっ!酷いです!昨日、契約したのに忘れてしまったのですか!?」

銀髪の養女はふくれっ面で僕を見る。

「いや・・・本当にわからないんだけど・・・。」

「目を覚ましましたか、ショウマ様?」

そう言ったのはソーマさんだった。

「ソーマさん、この子は一体・・・。」

「信じられないかもしれませんが、シルビアです。」

「えっ?」

僕はあまりのことに言葉をなくす。

「ショウマ様が倒れた後に彼女は狼の姿から少女の姿になったのです。俺もこんなの初めて見てびっくりしました。」

「そ・・・そうなんだね。」

「これからよろしくね、主様!」

こうして、新しい仲間が加わったのだった。

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