第4話
「これは由々しき事態だ。」
僕達は城の中にある会議室に集まった。
会議室の中にはグラン王とマードックさん。
そして、僕達兄妹全員が集まっていた。
「なあ・・・。破魔魔法ってそんなにヤバイ魔法なのか?」
正文兄さんがマードックさんに聞く。
「はい、マサフミ様。まずは、銀の魔女について説明しなければいけませんね。」
そして、マードックさんは語りだす。
600年前。
当時の人々は魔王が率いる魔族と銀の魔女が率いる魔物によって絶滅の危機に瀕していた。
それに対抗するため当時の王が6人の勇者を召喚した。
彼らはそれぞれ「火」・「水」・「風」・「土」・「光」・「闇」に目覚めた。
彼らの快進撃はすさまじく次々と魔王と魔女の配下達を倒して行った。
そして、遂に魔王と魔女を打ち倒し世界に平和が戻るのだった。
「銀の魔女に操られた魔物は銀の魔力を宿していたと言われています。さらに、魔女は魔法の力を封じる力を有しており過去の勇者達も苦労したそうです。」
「つまり、正真に発現した魔法はその銀の魔女と同じものだったということか?」
「はい。銀の魔力を纏った者は不浄の者として処刑されるのです。」
「処刑!?」
僕はその言葉に青くなる。
「そんな・・・!?貴方たちは私の正真を殺すつもりなの!?」
美香姉さんがグラン王たちを睨む。
「いや、我が国は「ブリスト教」を信仰していないためそうはならない。」
グラン王はきっぱりと言い切る。
「ブリスト教?」
初めて聞いた言葉に聞き返すと説明をしてくれた。
ブリスト教とは北の大国「ポライネン帝国」で信仰されている人間至上主義の宗教団体だ。
その教えの中に、獣人やエルフなどの亜人や銀の魔女と同じ魔法を使うものを不浄な存在として排除し、人間だけの楽園を作るのが目的とのことだ。
「なんというか、過激な宗教だな・・・。」
「ああ・・・。私も彼らの考えには否定できでな・・・。過去の王はブリスト教を信仰していたのだが私の父の代から信仰を禁止したのだ。」
「では、グラン王は正真をどうにかしようとは考えていないわけですね?」
正悟兄さんの問いにグラン王は頷く。
「しかし、私たちの国はポライネン帝国に比べると弱い。ショウマ殿の存在が知れれば侵攻の口実を作ることになってしまうだろう・・・。」
「そうなのですね・・・。」
つまり、僕がこの国に居ることで迷惑が掛かるということだということだ。
「貴方たちにしてみれば、正真はこの国に置いておきたくない存在なのですね?」
「・・・否定はしない。」
美沙姉さんの言葉にグラン王は頷く。
「ふざけないで!正真はただでさえ、私たちに巻き込まれてこんな世界に来たのよ!それを都合が悪いからって追い出そうというのは無責任すぎるわ!」
美紀姉さんがテーブルを叩いて立ち上がる。
「俺も同じ意見だ。大切な弟を追い出すつもりなら俺達もこんな国出て行ってやる!」
「正文兄さん、落ち着いて・・・。」
僕は正文兄さんに言う。
「でもよぅ・・・。」
「グラン王様、僕がこの国から出て行かなければこの国はどうなりますか?」
「お主の存在が分かった瞬間に侵攻を受けるだろう・・・。そうなれば、お主の兄妹は最前線で戦うことになるだろう・・・。」
「・・・そうですか。」
「正真、馬鹿なことは考えないで!」
「でも、それしか方法はないよね?皆には使命があるんだから・・・。」
「ショウマ殿・・・。」
「グラン王様、一週間の猶予を下さい。その間に僕はこの国から出て行きます。」
「・・・すまない。」
グラン王は僕に頭を下げるのだった。
それから、一週間。
僕は、旅立ち準備を進めてきた。
マードックさんから向かうべき場所を紹介された。
「ここから、南に下ると冒険者の国「シニネン王国」があります。魔王領に近いですがブリスト教の勢力が一番弱い地域ですのでショウマ様にとっては安全な場所です。」
「わかりました。」
「あと、その道中を彼らが警護を致します。」
そう言って二人の男女を紹介された。
「彼らは我が王国の腕利きの騎士です。今回、ショウマ殿の旅に同行するにあたり除隊しています。」
「そんな・・・!僕のためにそこまでして頂かなくても・・・。」
「いえ、私たちにはこれくらいしか出来ませんので・・・。それに、彼らも納得してくれています。」
「でも・・・。」
「私たちが志願したのです!」
そう言うのは女の人の方だった。
「私達の国のために国を出る決断をした貴方の助けになりたいと考えました。今日から私は貴方の剣です。」
そう言って女の人は膝をつく。
「俺もこいつと同じ考えです。どうか、俺達を連れて行ってください。」
そう言って男の人も女の人と同じように膝をつく。
「・・・ありがとうございます。では、これからよろしくお願いします。」
僕は頭を下げる。
「では、最後に私からショウマ殿にこれをお渡しします。」
そう言って渡されたのは盾だった。
「これは?」
「我が王国に伝わる盾です。きっとあなたの力になるでしょう。」
「ありがとうございます。」
盾を受け取るとマードックさんは下がり、兄妹達が前に出る。
「正真・・・。きっとお前を迎えに行く。それまで、絶対に生きていてくれ。」
「うん・・・。待っているよ、正悟兄さん。」
正悟兄さんと握手をする。
「正真のためにお姉ちゃん頑張るから!帰ってきたらお姉ちゃんに甘えていいんだよ。」
そう言って美香姉さんが抱き着く。
「うん・・・。」
僕は美香姉さん受け止める。
「正真。私は魔法の研究をするわ。絶対に元の世界に帰る方法を見つけてみせるわ。」
「無理はしないでね、美沙姉さん。」
「正真!頑張るんだよ!」
「ありがとう、美紀姉さん。」
美沙姉さんと美紀姉さんも僕を抱きしめてくれた。
「正真。俺、もっと強くなる!そして、そのブリスト教の連中を駆逐してやるから!その時には迎えに行くからな!」
「無理はしないでよ、正文兄さん・・・。」
正文兄さんの言葉に僕は苦笑いを浮かべた。
「本当は私もついていきたいけど、正真兄さんが帰って来られる場所を守るね。」
「うん。頼んだよ、美玖。」
僕は美玖の頭を撫でる。
そして、兄妹達の顔を見渡す。
「じゃあ、行ってきます!」
『行ってらっしゃい!』
僕は兄妹達に別れを告げ馬車に乗り込む。
そして、皆の姿が見えなくなるまで手を振るのだった。
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