第3話

正悟兄さんはグラン王とこれからのことを話すとのことで応接室に移動した。

その間、僕たちはグラン王の隣に立っていた男性に連れられてある部屋に通された。

「まずは、自己紹介をさせてもらいます。私はこのヴァルコイネン王国の宮廷魔導師のマードックと申します。」

そう言ってマードックさんはお辞儀をする。

「今から、皆様には魔法の適性検査を行ってもらいます。」

「適性検査?」

美香姉さんが聞き返すとマードックさんが水晶を指さす。

「はい。魔法の適性や武器の適性などをこの水晶で調べることが出来ます。皆さんの潜在能力を調べて今後の糧にしてもらうのが目的です。」

「便利なものだな。」

正文兄さんは面白そうに水晶を見る。

「では、誰から行いますか?」

「私がやります。」

そう言ったのは美香姉さんだった。

「わかりました、ミカ様。では、水晶に手を置いてください。」

美香姉さんは水晶に手を置く。

すると薄緑色の音符が浮かび上がる。

「これは「音魔法」の適性があるみたいですね・・・。」

「音ですか?」

マードックさんが説明をする。

音魔法は音を使いさまざまは効果を付与する。

味方に対しては音によって戦意を鼓舞したり傷の治りを早めたりすることが出来る。

敵に対しては逆に戦意を挫いたり催眠を用いての状態異常攻撃を可能にする。

「音魔法はとても珍しい魔法です。さすが、勇者様です。」

「そうなのね。」

美香姉さんはなんだかうれしそうだ。

そういえば、美香姉さんは学生の頃から音楽が大好きでそれが高じてアイドルになった所もある。

「次は私ね!」

そう言ったのは美紀姉さんだった。

美紀姉さんは水晶に手を置くと今度は薄水色の槍が映し出される。

「これは「氷魔法」の適性があるみたいです。」

「氷?」

氷魔法は攻撃と防御両方に適応した魔法。

氷魔法で武器を作ったり、盾を作ることも出来る。

大気中の水分を凍らせての範囲攻撃を仕掛けることで大群を相手にも出来る魔法だ。

「へぇ・・・。結構便利ね。」

「次は私ね・・・。」

そう言って美紀姉さんを退かしたのは美沙姉さんだった。

美紀姉さんは少し顔をしかめるが美沙姉さんは気にしない。

「さて、私は何かしら?」

水晶に映されたのは青の二双剣だった。

「水ですね。」

「水ですか・・・。」

「水魔法」は攻撃よりも回復や病気などを癒すことに秀でている。

攻撃に使う場合は主に水圧による圧力で上級の使い手になると城壁すらも簡単に破壊することが出来るとのことだ。

「氷魔法との相性も抜群ですね・・・。」

「そう・・・。」

美沙姉さんは特に興味なさそうに肩をすくめる。

「次は俺が・・・。」

そう言って正文兄さんは水晶を鷲掴む。

「あ・・・あの、もう少し丁寧に扱ってくださいね・・・。」

マードックさんが慌てて言う。

「あ・・・悪い・・・。」

そうしている内に水晶が光り輝く。それは紫色の刀だった。

「これは「雷魔法」の適性ですね。」

「ほう・・・なんかすごそうだな・・・。」

雷魔法は絶対的な攻撃力を誇る魔法だ。

出力を抑えれば敵を痺れさせて動けなくすることも出来るし、出力を上げれば鉄を貫くことも可能。

「俺好みだな!」

正文兄さんは満足そうに頷く。

「最後は私だね。」

そう言って美玖は水晶に手を置く。

その輝きは黄緑の杖だった。

「「木魔法」の適性がありますね。」

「木ですか?」

木魔法は浄化の魔法が多い。

他にも植物の成長を早めることが出来る。

逆に成長を止めたり種に戻すことも可能な魔法だ。

「使いどころが難しそうですね。」

美玖は渋い顔をする。

「皆、凄いね・・・。」

「最後にショウマ様もお願いします。」

「えっ?僕も?」

「はい。一応ショウマ様の適性も見ておいた方がこれからにつながると思いますので・・・。」

「なるほど・・・。」

僕はマードックさんの言葉に頷く。

確かに、僕は勇者ではないけどそれでもこの世界で生きて行かなければいけない。

「僕の魔法ってどんなモノかな?」

出来れば、皆の役に立つ魔法がいいな・・・。

そう思いながら僕は水晶に手を置く。

すると、他の兄妹と比べて光が弱かった。

その色は銀色の盾だった。

「綺麗な銀色ね・・・。」

美香姉さんが感想を述べている。

「あの・・・マードックさん?コレって一体・・・。」

僕は振り返るとマードックさんは青い顔をする。

「これは・・・これはまさか・・・。」

「あの・・・。」

次の瞬間、マードックさんは僕の手を掴み走り出す。

「えっ?」

僕はマードックさんに手を引かれて部屋を出る。


「グラン王!」

「どうしたのだ、マードック?」

そこには正悟兄さんとグラン王はまだ話をしていた。

「実は勇者様方の適性検査をしていたのですが彼の魔法が・・・。」

「どうしたのだ?まさか、「闇魔法」の適性でもあったのか?」

冗談交じりにグラン王が聞く。

「銀色でした。」

「はあ?」

王様が呆ける。

「今なんと?」

「銀色でした。彼の魔法は銀色だったのです。」

その瞬間、グラン王は立ち上がり僕に詰め寄る。

「これは、何と言うことだ・・・。」

グラン王の顔はものすごく険しい。

「それってどんな力なのですか?」

正悟兄さんが僕と王様の間に入って聞く。

王様は冷静さを取り戻して説明をする。

「銀色は「破魔魔法」の適性がありその魔法はかなり珍しいものだ。」

「破魔魔法・・・。」

「破魔魔法はあらゆる魔法や呪いなどを無効化、破壊することが出来る全ての魔法の天敵となる魔法だ。」

「それって最強の魔法では?」

何そのチート?

「まさか、お主は「銀の魔女」と同じ力を持つとは・・・。」

「銀の魔女?」

僕は首を傾げる。

「銀の魔女は魔物の王と呼ばれる大罪人だ。過去に勇者と死闘を繰り広げたともいわれている・・・。」

「これがあの国にバレたら大変なことになりますね・・・。」

「ああ・・・非常にマズイ。」

どうやら僕はものすごい厄介ごとに巻き込まれることになるみたいだ。

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