「ママ、どこに行くの?」

ママは黙っている。

その代わり、運転している男が答える。

「ちょっとした写真撮影だよ」と・・・。


男とママと一緒に向かった先は一室のマンションだった。


わたしはそのマンションに入ると、カメラが何台もあった。

わたしは怖くなって逃げ出そうとした。

ガシッと肩を掴まれる。

「パパとゆうちゃんに会いたいんでしょ?」

ママは怖い顔で言う。


「中に入りなさい」

カメラを持った男がわたしを呼ぶ。

玄関に入り、靴を脱ぐ。

指定された水着を着る。

泣きそうになるが、ママが睨んでいる。

写真を撮られ、いろんな角度を要求される。

写真を撮ったら、パパやゆうちゃんに会える。

我慢しよう・・・。


撮影が終わり、着替える。

そこも写真に撮られる。

そそくさと着替えをすると玄関に逃げる。

ママは男の人からお金を受け取っている。

「こんなにいいのー?」

キャハハと笑いながら受け取っている。

「春香、いい仕事したね。この調子で頼むよ、また!」


朋子は春香の肩を強く掴む。

痛い!

思わずはねのけてしまう。

バシッと頬を叩かれる。

「生意気な子だねー!今日は好きなものを買ってあげようかと思ったけど、やーめた!」

ルンルン気分で部屋の外に出ていく。

わたしもすぐに追いかける。

「ママ!パパ達に会わせて!」

「うっるさいわねー!土日に会わせるって言ってんでしょ!!生意気な事言うとぶつよ」

わたしはお金のために売られたんだ。

悔しくて泣く。

顔に出さないように心で泣く。


家に着くとリビングのソファに座る。

「春香、ここにお金置いてくからなんか食べなよ!」

見たことのない茶色いお札を1枚置いていき、ママは遊びに出掛けた。

ママなんて大嫌い!!

でも、どこへも行けない。

おじいちゃんの家に行っても連れ戻される。

パパの居場所もわからない。

そうだ!おじいちゃんに電話してみよう。

パパの居場所がわかるかもしれない。

メモを残しておいてよかった。

電話の受話器を取り、番号を押した。

『もしもし、並木です』

「おじいちゃん!?」

『春香か?どうした?』

「パパ、どこにいるの?」

しばらく沈黙が続く・・・。

『お父さんはね、病院なんだよ。もう長くはないんだ・・・』

うそ・・・。

「ママが土日に会わせるって言ってたんだ」

『病院に行くつもりなのか?』

「わからない。でも、ゆうちゃんもそこにいるってママが言っていたんだよ」

『ゆうちゃんは児童施設にいるんだよ』

なんで・・・?

「なんで・・・?」

『詳しくはわからないが、施設の人から聞いたのは育てられなくなったとしか言ってなかったよ』

ママは嘘つきだ・・・!!


「おじいちゃんに会いたいよ」

『おじいちゃんもだよ。でも、春香がこちらにきたらママに連れ戻されるよ』

「うん、わかってる」

『ママに良くしてもらっていないのか?』

「今日ね・・・」

わたしは今日有ったことを全て話した。

『なんてヤツだ!子供を売るなんて』

泣きながら話をすると

『お父さんの病院に行きなさい』

タクシーで15分かからないだろう、茶色いお札は1万円札と教わった。

駅まで行き、タクシーに乗る。

「東京渋谷総合病院までお願いします」

「お嬢ちゃん、1人かい?」

「はい」

乗車拒否をするつもりなのか。

「総合病院まで5000円位かかるよ」

茶色いお札を見せる。

「1万円持ってるんだね、じゃあ大丈夫だ」

タクシーの運転手は近道をしてくれて、早く病院に着いた。

「ありがとうございます」

お釣りをもらい、お礼を言う。

「ここで待ってようか?」

「大丈夫です」

タクシーに背を向け、病院に向かう。

看護師さんに受付を聞き、パパの名前を出すと302号室にいると言う。

急いで3階まで行き、病室へ向かう。

病室の前に行くと【村木信治】と書かれている。

「パパ!」

戸を開けると中にパパがいる。

「春・・香か・・・?」

「パパ、会いたかったよ!!」

痩せ細り、顔がこけている

「どうしたんだ?」

「パパ助けて・・・。ゆうちゃんが施設にいるの!わたしはママといるんだけど・・・」

おじいちゃんに話したようにパパにも伝えると、アイツ・・・と宙をにらんでる。

「パパの知り合いに弁護士さんがいるんだ」

パパは携帯電話を持って通話可能な場所に移動すると言う。

「春香、お前と優を守ってやる」





































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