空腹
4日目になってもママは帰って来ない。
携帯電話にかけるが繋がらない。
パンは底をついてしまった。
「お姉ちゃん、お腹すいたよ・・・」
弟がお腹をならして言う。
「ママが帰ってくるまでだから我慢して」
わたしもお腹が空いている。
台所に何かないか探してみるとクッキーがあったので弟に食べさせる。
少し満たされると眠気に襲われたのか横になって寝てしまった。
ママはいつ帰ってくるのだろう。
パパに会いたいけど連絡先がわからない。
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。
ママだと思い開けると、知らない人が目の前にいる。
同じ目線に合わせようと座りながらその人物は言う。
「ママはいるかな?」
鋭そうな目をした男だった。
「ママはいないです」
「そうか。ママは何時頃に帰ってくるかな」「ずっと帰ってきてないからわかりません」
そう言うとため息をつきながら男は言う。
「じゃあママが帰ってきたらここに電話するように言ってくれないかな」
男は手帳を取り出し、サラサラと何かを書いてわたしに渡した。
電話番号と名前らしき漢字だった。
難しくて読めない。
「じゃあ、ちゃんと戸締まりはするんだよ」
わたしの頭を撫でると、男は去っていく。
ドアを閉め、鍵をかけるとママの部屋にメモ書きを置く。
「さっきのおじちゃんにご飯のこと言えばよかったかな。」
ママはいつ帰ってくるのだろう。
「おじいちゃんに電話してみよう」
千葉に住む祖父の電話番号がわからず、電話帳を探す。見つからない、電話番号もうろ覚えなので掛けられない。
お腹が鳴る・・・。
冷蔵庫の中からソーセージを見つけて半分食べる。もう半分は弟にあげようと思ったが、空腹に耐え切れられず食べてしまった。
これで少しは耐えられるだろう。
今残ってるお金は120円しかない。
これで食パンは買えるはず・・・。
弟が起きたら、食パンを買いにいこう。
ピンポーン
ピンポーン
チャイムでわたしは起きた。
眠い目をこすりながら、鍵を開けドアを押すと担任の木村だった。
「村木さん、大丈夫?」
「先生、ママが帰ってこないの」
先生が来たって事は、学校が終わっている時間なのかと思う。
「あがっていい?」
先生ははわたしに尋ねる。
「うん」
「お邪魔します」
先生は玄関で靴を揃え、私たちがいるリビングに入った。
「ご飯食べた?」
「ゆうちゃんはクッキーを食べたよ。、わたしはソーセージ食べたよ」
「それだけ?!」
先生は目を丸くしながら驚く。
「先生ね、パンを持ってきたよ」
紙袋からバターロール、メロンパン等を取り出す。
「今日の給食ではパンが出なかったから先生買ってきたの」
ふふふと笑いながら言う。
「美味しいパン屋さんのだから味は保証するわ。さぁ食べて」
急いで弟を起こした。
「ゆうちゃん、起きて!先生がパン買ってきてくれたよ」
う~んと言いながらアクビをして弟が体を捻りながら起きると、すぐにメロンパンに手を出す。
「ゆうちゃん、メロンパン半分こだよ」
わたしもメロンパンが好きなのだ。
「やだー!ぼくのメロンパン」
体を横にしてメロンパンを頬張る。
「もう一つあるから大丈夫よ」
先生はわたしにメロンパンを渡す。
「ありがとう!」
先生はニコリと笑い、わたしたちの様子を見ながら、リビングの周りを見渡す。
リビングには食べ散らかしたパンの袋やソファには脱ぎっぱなしの服がそのままにされている。
その時、ガチャンという音がした。
「春香、誰か来てるの?」
玄関先からママの声がした。
「ママ、お帰りなさい。村木先生が来てるよ」
リビングにママが来ると先生は挨拶する。
「初めまして、春香ちゃんの担任の村木夏美と申します」
「なんの用事?」
ママは不機嫌そうに言う。
「春香ちゃんが学校に来なく、心配でしたので参りました」
「あっ、そう。私、眠いんだよねぇ。さっさと帰ってくれない?」
ママは口に手をあてながらアクビをする。
「あの少しだけお時間よろしいでしょうか」
先生はママにお辞儀をして頼んでいる。
「春香ちゃん、明日から学校来れそうですか?」
「明日からちゃんと行かせるから、今日のところは帰ってよ!」
「わかりました、お邪魔しました」
先生はわたしの方に向かって待ってるねと言い、家を出た。
「ママ、明日から学校行っていいの?」
わたしはおずおずと話す。
「春香さー、なんで人を家に入れてんの?勝手に入れたらダメだって言ってるじゃん」
わたしの頭を叩く。
ライターでタバコをつけ吸うのかと思っていると、わたしの手に押し当ててきた。
「ぎゃー!!!」
その声で弟が驚き、オシッコを漏らした。
「優まで何してんの?めんどくさいなー」
「オムツあるから春香やっときな、私は少し寝るから騒ぐんじゃねーぞ」
私は弟の濡れたパンツを脱がし、オムツを履かせた。
泣きながら火の付いたタバコを押し当てられた手をお水で冷やす。
なんでこんな目にあうの?
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