引きこもりは闇の眷属

森水鷲葉

引きこもりは闇の眷属

【ユキ】

おそようー

早く起きなさいよ


【純】

あー

まだ眠いよ


【ユキ】

何言ってんの、もうお昼だよ?

また明け方までゲームやってたんでしょ


【純】

わかってるなら寝させてくれ


【ユキ】

だーめ

引きこもってばかりじゃ身体に悪いよ


カーテンもいつも閉めてるでしょ

ちゃんと太陽の光を浴びないと


【純】

それが、身体に悪いんだけどな


【ユキ】

え、なんで?


【純】

いや、なんでもない


それより、おまえも暇だよな

休みなのにすることないのかよ


【ユキ】

休みだから連絡したんでしょ

今日遊ぶ約束してたじゃない


【純】

約束?


【ユキ】

約束したでしょ、この間!


【純】

そうだったか?


【ユキ】

そうだよ!

今日は1日、外で遊ぶって言ったでしょ


【純】

いつの話だよ?


【ユキ】

おととい

既読スルーされましたけど!


【純】

そうだったっけ?


【ユキ】

私、もう出かけちゃったから

駅前の噴水のところにいるよ


【純】

そんなこと言われてもな


【ユキ】

いいから!

すぐ来なさい!


【純】

やだ

面倒くさい


【ユキ】

ひどーい

幼馴染のお願いなのに?

かわいいワンピース着て待ってるのに!


【純】

自分でかわいい言うな

俺は眠いんだよ


【ユキ】

もう!

なんで?

昔はあんなに優しかったのに


かくれんぼで一人になった私のこと、

純は探しに来てくれたよね?


日が暮れて、

みんな気づかないで帰っちゃったのに……


【純】

ガキの頃の話だろ

いいから、ほっといてくれ


【ユキ】

このバカ!

私はまた純に会いたいよ……


【純】

だって、おまえが一方的に

約束しただけだろ

俺には関係ないね


……?


言い返してこないのか?


【ナレーション】

<ユキさんから着信があります>


<ただいま1件の留守電があります>


【純】

……ユキ?


なんで電話した?

ワン切りだし


おい

なんで既読にならないんだ?


ユキ!!


駅前にいるんだよな!?


【ナレーション】

数時間後……


【ユキ】

さっきはありがとう


【純】

ったく、めかしこんでるから

変な奴に目をつけられるんだ

人混みでは気をつけろよ


【ユキ】

ふふっ、でも、目出し帽にサングラスで来るなんて

純のほうが危ない人みたいだったよ


【純】

しかたないだろ!

つまり、あれだ、俺、対人恐怖症なんだよ!


【ユキ】

ごめんごめん

かっこよかったって


【純】

まったく……


【ユキ】

でも、助けてくれた後、

「トマトジュースが飲みたい」なんて

そんなに好きだったの? 変わってるね


【純】

ああ

そうでもしないと、

おまえの血を吸ってしまいそうだったからな


【ユキ】

え?


【純】

いや、なんでもない


【終わり】

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