第5話 三人組


しばらく談笑しながら歩いていた真也達四人組は駅に到着した。

沙耶は二駅先、鹿助は三駅先に家があるのでここで別れる。


「じゃあ梨花っち、真也っち、またねー」

「うん、また明日」

「あぁ、また明日会おう」

(とっとと失せやがれ)


沙耶と鹿助が駅に入り見えなくなると、再び梨花と真也は歩き始める。

梨花の家と真也の家は意外と近かったのである。


その事を知り、僅かに喜悦の様子を見せた梨花と、


(ふざんけんなよ!?)


と憤怒した真也との温度差が如実に現れていた。



▲▲▲▲▲



「へぇ、じゃあ西園寺さんは一人っ子なのか⋯⋯」

「うん、パパもママも子供は一人で満足してるからって⋯」


閑静な、しかし時々子供達が公園で元気いっぱいに遊ぶ声が微かに響く道を二人は歩いていた。

真也としては梨花と口もききたくないのだが、梨花が色々な話題を振ってくるので、答えない訳にもいかない。

今はお互いの家族の話題に及んでいる。


梨花の家庭は三人家族で子供は梨花一人だけという、どこにでもいる普通の家族だ。


「真也君の所は?」


梨花としては自分の事なんかよりも真也の事を聞きたい。


「俺の家族も普通の四人家族だよ…両親と妹が一人」

「へぇー、真也君妹さんがいるんだ?」

「ああ、とても可愛くて賢くて…自慢の妹だよ」

「とても妹さん思いなんだね」


当然の事ながらそんな訳ない。

真也は、容姿以外の総てが自分より優れている妹を蛇蝎だかつのごとく嫌っている。

尚、妹からしてみては、カッコよくて優しい、自慢の兄だと思われているのだが。


(チッ…あのクソ妹の事を思い出しちまったじゃねぇか。お前のせいだぞ賄賂女が!)


お前が話題に出さなければ! と理不尽な怒りを振りかざす真也。

いつの間にか梨花のあだ名が賄賂女になっているが、完全な濡れ衣だろう。


「進学する為に実家を離れる時も泣きながら見送ったりと、兄離れがちゃんと出来てるか心配だが…」

(ププッ…あのマヌケな泣きっ面は中々どうして面白かったぜ)

「そういえば、真也君は東京出身じゃ無いんだっけ?」

「ああ、自己紹介の時にも言ったが俺は群馬で生まれ育ってな、無理を言ってこの高校に進学させてもらったんだ」

(ま、俺は将来億万長者になる事が確定しているからな、これくらいは先行投資はしてもらわないとな)


その自信は一体どこから来ているのだろうか?


「という事は、真也君は一人暮らし?」

「そうだな、マンションに居を構えている」

「マンションって、向かいの所の?」

「そうだ」

(え、何コイツ? 何でここまで事細かく聞いてくるんだ? 絶対なんかやましいこと考えているだろ!)


お前は四六時中やましい事しか考えいないだろ。

自分の事を棚に上げて他人を貶すのは真也の得意技だ。

とても誇れる事ではないが。


その後も様々な事を話し合い、傍から見ればカップルのように和気藹々と歩いていた梨花と真也。


しかし―――


「あれ? 梨花じゃん」


梨花の様に髪を染めた、しかし、梨花よりも素行が悪そうな女性三人組が真也の方に近づいてくる。


「…エミリ、リリカ、アイラ」


梨花はそう呟く。

彼女達の名前は、エミリ、リリカ、アイラと言うらしい。


「隣の男は…あ! 朝のイケメンじゃん」

「え、マジで!? うわっ本当だ!」

「おい梨花、抜け駆けがけは良くねぇだろー」


真也の方を見て次々と騒ぎ立てる、エミリ一行。

真也の血管は今すぐにも切れそうだった。


(おい糞ブス三人組! 俺に対する礼節も知らないで話しかけた挙げ句、その汚らしい声で喚くとはいい度胸してるじゃねぇか!?)


内心で三人組を凄む真也だがそれを表に出せる勇気も度胸もない。


「今日は、沙耶ちゃんと鹿助君と一緒に帰ったの…」


どことなく弱々しく言う梨花に先程までの楽しげな雰囲気は霧散していた。


「ふーん、あっそ。じゃあ私は今日カレシとデートだから。バイバイ」

「うん…またね」


エミリと見られる女性は素っ気なくそう答えると二人を伴って何処かへ言ってしまった。


「じゃあ、私達もいこっか」


何でもない事のように装う梨花だが、生憎真也にそれは通じない。


(アイツらとなんかあるな…)


真也はそう思わずにはいられなかった。



▲▲▲▲▲



あの後、梨花と別れた真也は自分か住んでいるマンションの自室に到着した。

今日は学校初日と言う事もあって昼下校であり昼食を食べなければならないので早速買い溜めしてあるカップラーメンにお湯を注ぐ。


待っている間に考える事は先程の梨花の様子。

例の三人組と会う前と会う後の様子が明らかに違っていた。


(あの三人組は朝、賄賂女が俺に声を掛けてきた時に後ろにいた奴らだったな確か。さっきの三人組の態度といい、以前から関係があるのは確定。イジメでもされてるのか?)


そう推察する真也だが、すぐに頭を振ってその考えを払拭する。


(まぁ、賄賂女が何をされようと俺の知ったことじゃねぇ)


そう考え、丁度3分経過したカップラーメンをむさぼるように食べるのだった。




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虚栄男のハッタリ学園生活 〜俺より優秀な奴などいねぇ!〜 ユーヤ @yozakura-san

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