第21話 僕と俺の約束

「ねー?

 俺のこと覚えてる?」


 君がそう言いながら舞い降りてきたのは、園庭の隅で僕が泣いていたときだったね。


「君のこと?

 僕、何もわからない…


 僕のママはどこに行っちゃったの?」


「大丈夫だよ。

 お迎えの時間になったら、ママは来てくれるからね。」


「君は誰?」


「俺は羽根だよ。」


「羽根は空を飛べるの?」


「空は飛べないよ。」


「僕、さっき羽根が飛んでいるとこ見たよ。」


「ちがうよ、俺は木登りが得意なの。

 先生に見つかると女の子が木登りなんかしちゃダメだって怒られちゃうけど、ここなら見つからないと思って木の上にいたの。

 君が下で泣いていたから、気になってジャンプして降りただけだよ。」


「羽根は僕のこと知ってるの?」


「知ってる…

 俺、君に会ったことあるもん!


 名前はまだ知らないけど。」


「僕は涼太だよ。

 羽根も木の上で泣いていたの?」


「俺は泣いてないよ。

 探し物をしていただけだよ。」


「羽根は何かを無くしちゃったの?」


「そうなの。


 ヒ・ミ・ツだけど…俺は毎日探し物をするために幼稚園に来ているんだよ。」


「僕も…一緒に探してあげようか?」


「涼太も一緒に探してくれるの!?

 でも…すごく難しい探し物なんだよ?」


「うん!僕も一緒に探してあげる‼

 今日見つからなくても、明日も見つけるの手伝ってあげるね‼」


「涼太、ありがとう!」


 羽根の笑顔を初めて見たとき、それまで泣いていた僕も笑っていた。


「約束だよ‼」


 僕と。

 俺は。

 手を繋ぎ、園庭に向かってかけだした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

i l y 僕の羽根 @ao627

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ