第14話 手術前日

 羽根が見舞いに来てくれた。

 母さんが家に荷物を取りに行き、病室に僕と羽根、二人になった。


 羽根は今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「羽根にお願いがある。」


 僕はそう切りだした。


「明日僕の手術が終わり麻酔から目が覚めたとき、羽根のえくぼをみせてほしいな。」


 羽根がほほ笑み、静かに話しだした。


「涼太が前に俺に教えてくれた、えくぼの言い伝えの話覚えてる?」


 僕は羽根の目を見たまま、うんと頷いた。


 羽根が話を続ける。


「その話を聞いたときに俺は思いだしたことがあったの。

 信じなくてもいいから、夢物語だと思って聞いてね。


 俺は前世で涼太のことが好きだったの。


 だけど、周りの皆から反対された恋だった。

 だから生まれ変わったら、絶対に一緒になろうと俺と涼太は約束した。

 俺は女の子になるから涼太は男の子になってねと。


 俺はその約束を忘れないため、絶対に涼太にもう一度逢いたかったから、あの橋で俺はスープを飲まない方を選んだの。


 思い出せたのはそれだけ。


 俺は生まれ変わって大好きな涼太に本当に出逢うことができた。


 でも、涼太のことを好きでそばにいたいと思えば思うほど、自分が女なのか男なのかわからなくなるの。

 優子ちゃんにそれを相談して、いろいろ教えてもらっていたの。」


 僕は羽根の手を握り、

「羽根にばかり辛い思いさせてごめんね。

 僕も羽根のことが好きだよ。」

 と言い、羽根の目を見つめ頬をなでた。

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