第25話:永山基準

 裁判員裁判には「永山基準」というものが存在した。

要するに宗教の壁による、裁判官が民衆とはまた別の違った見方にするような感じで判決を下すのだ。

 埼玉国に於いて6人の殺傷事件が発生したが、死刑から一変して無期懲役へと変わり、遺族としては納得のいかない形となった。

 また新幹線にて乗客3名を殺害したとされる眼鏡をかけた20代男性に於いては、「殺しきった」という感じで謝罪の意を全く示すことがない状況であった。

 遺族にとっては死刑でも極刑でもどうでもよい。ただ、愛する者が生き返るならそれ以上のものは望まない。しかし結果としては犯人に対してのまともな判決すらされないのであった。


「こいつはひどいな」

 金成は思った。代わりに俺がそいつら始末しに行きたいところだが、残念ながら開国が毎月1回のみだ。それがすぐには叶わぬのは残念で仕方がなかった。

 代わりに自分と同じようなことをしている奴がいれば話は別だが、如何せんこの日本47ヵ国は不自由な国になったというわけである。

「何とも理不尽なことよの。人を殺せば罪の意識に悩まされ、相手に殺されれば自分の天命が尽きようとは、まさにこの世は地獄だ」

 罪と罰があるとすれば、欲望を肯定し、地獄を楽園に変えるしかないようだ。この残酷な世の中には、巨人や恐竜すら存在するとされている。彼らがいつ進撃するかもわからない。しかし、人間というものは多種族よりやっかいなのは、まさにこの4つの壁に代表する「宗教の壁」が存在していることに意義があるというのだ。

「とりあえず次は朱雀か」

 南区を目指す金成であった。47の王なぞ、一つの国に必要ない。彼の考えであった。


 朱雀は鳳凰へと姿を変える。彼の能力は鳥であるが、再生能力が優れていた。つまり彼を傷つけても傷は癒えるのだ。故に不死鳥とすら呼ばれている。

 金成は南区に向かう途中に怪我人を介抱していた医者に出くわす。特に面識があるわけではないが、7人組の銃を持った過激派が現れ、その医者を銃撃した。

 2発胸に命中したが、まだ息があった。「まだ息があるぞ」と叫び、頭に1発命中させ、即死した。これが東京国南区の実態だ。

「外道共が」

 金成は怒りをこみ上げた。そして雷を纏い、銃撃した最初の過激派の首を一瞬でへし折った。次いで残り6人にも襲い掛かる。相手も銃撃で応戦するが、金成の速度には追い付けなかった。

 7人は一瞬にして金成に命を奪われたのだ。

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