第23話:ながら運転

 ビルの瓦礫を右手でどけながら、青龍は血を吐いた。

そして、立ち上がり、砂煙を舞う。金成を睨みつけた。

「やるようだな小僧」

「やっぱ一撃で王直属護衛軍は倒せねえか」

「当たり前だ。貴様のような未熟者にやられる俺ではないわ」

「どうやったら死んでくれるんかなあ」

 金成はスマホを取り出し、検索しはじめた。王直属護衛軍の倒し方っと。

「おい小僧、12月1日、つまり今日から何が法強化されたか知っているか?」

「さあ?なんだろうな?」

「ながら運転の厳罰化だ。運転中の携帯電話の通話や画面注視に対して違反点数が約3倍に上昇だ。保有なら1点から3点へ、使用時ならば2点から6点だ。普通車ならば罰則金として6000円から18000円だ。分かったなら、俺との戦いの最中にながら戦闘は辞めることだな」

「ふーん、なら取り締まってみろよ。法律を正当化できるならな」

「こざかしい小僧が!」

 青龍は青い炎を吐いた。対する金成は雷で対抗した。

「疾風迅雷」

 強力な電撃が神速の如く、青龍を襲う。対する金成は青龍の炎をまともに喰らう。しかし金成は雷の鎧を纏い、その炎をものともしない。

「これが炎か?涼しいな」

「なんだと・・・」


 金成にとっては戦が初めてである。しかし、熟練の青龍に対しての圧倒的な実力差を誇るのは技の強さである。マーケティング用語の中に「SWOT分析」というものが存在する。それぞれ強み・弱み・機会・脅威を示す指標だ。企業がよく、自社と他社の相互関係の違いというものを表わすことに用いることがあるが、まさにその分析を事前に行っていた。

 金成は未来を見据える力と雷の力がある。事前に明日の出来事というものが彼の頭の中には入っていた。そして、相手を打ち負かすだけの力が彼にはあった。

 4つの壁において「情報の壁」という恐ろしい壁が存在するが、未来の情報程有益且つ効率のいい情報というものは存在しない。彼はPDCAの中で必勝法というものを悉く発見したのであった。

 そして青龍に対して雷が有効であることも既に把握済みであった。

「まるで廃線危機に奮闘する中学生が講演するかの如くだな」

「後半の失速に対してぶち切れそうだぜ小僧」

 両者の激突は続く。しかし結果は見えた。

青龍の胸を雷が貫通し、青龍の息の根を止めた。金成の勝者であった。

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