第22話:四神

 東区の青龍、西区の白虎、南区の朱雀、北区の玄武。彼ら4人は「四神」と呼ばれた王直属護衛軍であった。

「俺がデモ隊とかいう訳の分からない組織を崩壊してきてやる」

 青龍が動いた。彼の能力は「龍」であった。口から炎を出すその力は、かつての神話に出てくる「八岐大蛇」の如くであった。青い炎を纏、全てのものを焼き尽くした。

 中央区は魔法対象外区域に指定されていたが、東区ではそうではなかった。

 しかし彼には加減というものを知らない。デモ隊は女性や子供を人質にとったが、その人質もまとめて焼き尽くしたのだ。

 無慈悲にもほどがあるが、彼は相手に隙を与えれば、被害はもっと甚大になる。このデモはさっさと終止符を打たねばならぬという思想の中で、彼の行ったのは絶対的王政服従であった。税金を払わらない奴らは全員死ねということであった。

 ニートも、生活保護も、高齢者も、皆死ぬがよい。彼は青い炎で焼き尽くした。その炎はやがて警察隊にもついた。

「あつい、助けて!」

「俺の攻撃範囲に入るな。お前らは邪魔なだけだ」

 青龍の放つ炎はまさに恐怖そのものであった。


「暴れてやがるなあ、化け物め」

 金成は青龍を見つけた。

「あれが王を守る直属護衛軍ね」

 ポリポリと頭を掻きながら、考えた。

壁を崩すことができるとしたら、王を討つ以外に術はあるんかいな?

 その昔王政の争いに神は痺れを切らして壁を作られたと説いた。ならば、その王政を崩壊させてしまえば、もしかするとだが、東京国と千葉国の王を討てば、もしかするとこの両国の壁は無くなるのだろうか?

 単なる仮説思考に過ぎない。しかしこの仮説思考こそが大事で、多くの戦略は「計画的戦略」と「創発的戦略」の2つがぶつかり合い、初めて「実現した戦略」へと変わる。言葉ではいくらでも形式知で伝えることができても、言葉で伝えることの出来ない部分は暗黙知だ。暗黙知は美しい背中をいかに上司が見せられるかにかかっているわけである。

 その背中を金成は果たして見せることができるのか。

「まずは、お手並み拝見」

 雷を纏った。

「雷神」

 一気に高速で青龍の背後に接近し、青龍は殺気を後頭部に感じた。

一瞬反応したが、金成の蹴りの方が早かった。青龍は脳震盪を起しながら、吹き飛び、ビルに衝突し、瓦礫の下に埋もれた。

「今の一撃で一発ノックアウトならいいんだけどなあ」

 金成は期待した。本来の物語のストーリーならば、徐々にランクを上げるのだが、彼はいきなりSランク級を相手した。

 レベル1の主人公がいきなり第5ステージのボス戦に挑むぐらいの無謀な攻めであった。

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