第19話:銀行

 3大メガバンク以外の地方銀行は既にM&Aを繰り返していた。

「これは地獄だ」

 吸収合併というのは一見、戦力が倍増しているかのように思えるが、要するに王が奴隷を人身売買したようなものであった。奴隷船を購入する沈みかけの船を買うのも勇気がいる行為であるが、いずれも全てがそうでないにしても、買収するということは、自力での成長が見込めない企業のことを指すのである。

「雷速」

 金成の新しい能力の一つだ。雷を身体に纏い、光の速さの如く走る。だが、実際には光のように1秒間に地球を7周出来るのかと言えば、そういうわけではない。

 あくまでも人間の身体を運ぶためには重力の原則というものも存在するし、そもそも目で終える速度や脚力といった問題もある。実際には、光より遥かに遅い速度であるが、それでも常人とは比べ物にならないぐらいの速さで走れる。

 言ってしまえばジェットフライ並みの速度であった。


 東京銀行についた。

「銀行強盗でもやってやろうかな」

 金成はニマニマした。しかし、金成は銀行強盗をしなかった。

既に先客がいたからだ。ナイフを持って、立てこもっていた。

「ちょっくらあいつらぶっ殺してくるか」

 金成はガラスを割り、目の前にいた男2人をそのまま雷の威力で放電し、息の根を止めた。

「なんだてめえ」

 相手も同じような魔法を使ってきた。

「これは炎か?」

 しかし、金成の速度には遠く及ばない。

「死んでおけ」

 まさにチート技である。異世界に転生したらチートとかいう、例のアレみたいな感じでひたすら無双しまくっていた。

「異世界最高おおおおおお」

 金成は狂っていた。しかし、冷静にちゃんと人質には傷をつけずに、相手を殺し続けた。

「現実世界では絶対に出来ないことだよこれ。ってここは現実世界だったか」

 多くの人質は頭を伏せていた。金成は5人程の銀行強盗と思わしき人物達を瞬殺したのだ。既に何人か人質も殺されていた。彼らには黙祷を捧げた。

「とにかく名前を挙げないことには、国王にも近づくことができねえな」

 狙いはテレビ局であった。しかし同時に自分の命も狙われる危険性はあった。これは賭けであった。

 多くの人は彼に雷の力しか備わっていないと錯覚するが、もう一つ未来を視る力も彼は持っていた。

 それに関しては未来永劫隠し続けるであろう。

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