第16話:麻薬
デモ行進を見ただけという農業大学の若者が捕まった。
警察による誤認逮捕と思われるが、真意はいかなるものか分からぬまま、闇に葬られた。ネットの反応は「興味本位で見に行くんじゃねえよ」ということであった。
他にも逮捕されたのが有名女優による「麻薬」だ。10年以上前から使用されていたと疑われるが、違約金が多く発生しているようだ。
「お金」や欲望が満ちている。
これでは47都道府県に立つ壁を取り除き、一つの国に戻すことは困難だ。
金成にとっては、この状況に虫唾が走るしかなかった。
「こいつらはこの世界にいらない」
400円の女性下着を盗んだ大学教授は欲望を抑えられなかったようだ。
生物学の三大欲求は、食欲、性欲、睡眠欲だ。社会に蔓延る4つの壁だけでなく、生物学についても言及しなければいけない。それだけにこの東京国や他の国で生き抜くということはかなり厳しいものと感じるのだ。
「早急に新しい能力を開拓する余地があるな」
金成はどのようにすれば能力が得られるか考えてみた。大きく2つだろう。
「相手の悩みを解決すること、そして相手の期待を越えること」
経営コンサルタントに求められる資質ともいえることであるが、いかにこの2つを相手に与えることができるか、それが需要と供給の問題である。
しかし金成にとって壁を取り除くことを目的として行動をしている。
だが悩みもあった。
「俺の本当にしたいこととは、それは一体何か?」
よくやりがいのある仕事をしたいという若者が多い。
しかし多くは生活の為だけに、自分の時間を犠牲にしている。いわば、時間の壁に圧し潰されているのだ。
情報不足、周りの状況、真理と仕組みが理解できていない。これらは情報の壁で説明が付くわけだ。
そして世間に認められる、親に話せる仕事内容かどうか。本人からしたらどうでもいいはずなのに、周りを気にしなければいけない。これが宗教の壁。
「くくく、なんともまあ、生きづらい世の中か」
金成は思った。生きづらいな、いっそ死んでやろうか。
名前を書いただけで心臓麻痺で相手を殺せるというノートがもし、この世に存在するならば、たくさん名前を書いてやりたい。そう考えないこともないが、しかしそれでは自分の理想をただ押し付けるだけである。
勿論そんなことはすることができない。では何をもって世界をただすことができるというのだ?
それがこの見える壁と見えない壁を取り除くヒントなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます