第8話:NISA

見知らぬ男子高校生に女子中学生が逆ナンパするのかと思いきや、金成に「NISAのやり方を教えてください」という質問だ。現実世界の女子中学生のどれぐらいの数がNISAに興味があるというのだ。しかも、社会人にではなく、同じ年代の異性にだ。

だが、現実的にこういった質問をされてしまった以上、何かのテレビの企画かもしれないが、答えるしかないと金成は感じたのだ。

「何故NISAについて知りたいんだ?」

「だって老後2000万円必要なんでしょ?今のうちに資産運用しておかないと!」

とても未成年から発する言葉とは思えない状況であった。今時の子持ちの主婦ですら、そんなことは言わず、ただひたすらにファミレスなどで旦那の暴言を吐くぐらいしかないものと考えられるというのに。

「俺も詳しくはないんだがな、NISAというものは必ず儲かるわけじゃないんだぞ?それにそういったシビアな質問は、俺みたいな見知らぬ男に聞くのではなく、親や学校の先生にでも聞いた方がいいと思うんだが?」

「だってあなた、そういうの得意そうだし、嘘つかなさそうだと思ったから」

女子中学生が言うには、それが金成に教えを請う根拠のようだ。

(これがもしレイプ魔だったら、この子どうする気なんだ?これだから最近家出少女やSNSでのやり取りの中から相手の自宅に平然と上がり込んだり、みだらな行為をする未成年者が多いわけか)

そんな思いとは裏腹に、金成もビジネスの話をするのは好きであった。彼もまた、男子高校生でありながらスマホアプリなんかより、ビジネス書を読むことが趣味であった。「ゲームであってゲームではない、これはビジネスなんだ」というのが口癖でもあった。

「NISAをやるのは単純だ。安い時に買って、高いときに売る。そしてまた安くなったら買い戻し、高くなれば売る。これを繰り返すだけで資産は勝手に増えていくんだ」

女子中学生はメモをとっている。

「だが一番やってはいけないことがある。これは俺の持論だが、株の勉強をして株取引はしてはいけないということだ」

「それはどうして?」女子中学生は疑問を投じた。

「勉強して挑むと、それは自身の型ではないからだ。まず最初にすべきことは、ノー知識で株取引で大きく稼ぎ、その後に何故成功したのか必死に本を読んで勉強する。これがビジネスに於ける必勝法だ」

異端者である彼の考えは、多くの人に疑問を残すが、結果は出ていた。

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