第7話:首里城

11月1日となり、24時間だけが開門となった。

この時間を過ぎてしまうと、次はまた来月1日まで待たなければならない。

沖縄国の方では、何やら謎の放火により国王の住む「首里城」が何者かに襲われた。幸いにも死傷者は出ていない状態ではあるが、明らかなクーデターが予想された。沖縄国は日本国の中でも、最も海を介してたどり着ける場所であり、フェリーでしかそこに行くことは出来なかったのだ。


この機に帰国する若者も多い。家に携帯電話の忘れ物がないか、必要な書類は持ったかなど、入念にチェックをする。この壁の制度によって学校の研修や修学旅行も1ヶ月程の旅路が必要としているのだ。人々にとって、「時間」という概念に縛りが生まれてしまったのだ。それが争いを無くす時に犯した神の罪でもあった。

壁がなければ自由に国を行き来できる。観光名所にも行けるが、1日のみの観光だと日帰りで有給をとるのも困難だし、何より生活が戻る時が大変不便である。

金成は一刻も早く壁を取り除きたいとそう感じたのであった。


「お金の壁に時間の壁か」

祖父の残した「4つの壁」には、そう記されていた。

お金や時間の大切さを知らなければならなかった。例えば5歳児の男の子が110番通報をし、「ハッピーセットをください」と注文した。警察は発信元を頼りに、ハッピーセットを持参し、子供に110番通報はどういった時にするべきことなのかを諭したという。まさにお金と時間とが大切である、と幼少期に教えることのできる千歳一隅のチャンスでもある。

勿論こんな優しい大人ばかりではない。人を平気で騙す大人も多いのだ。金成はとにかく「ありがとう」の言葉を多く欲した。どこか出かけてみるか、と考え、広場へと出かけた。


道行く人は多くいる。健康の為にウォーキングを続ける年配や、ゲートボールを楽しむ者、キャッチボールやスマホゲームをベンチに座って楽しんだりと、人の趣向はまさに十人十色である。さて、俺に何が出来ようか?そんな期待をしていた。

すると一人の女子中学生が金成に話しかけてきた。

現実世界では中々ありえない光景である。本来ならば、このような場面を大人と子供が対峙したら、確実に「不審者情報」として警察にあぶりだされるからだ。

「何か用か?」金成は彼女に尋ねた。

「もしよろしければ私にNISAのやり方を教えてください」

非現実すぎてありえない展開が待ち受けていた。

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