第3話:高尾山
金成の住む東京国は以前は版籍奉還、廃藩置県と47都道府県と名称があった。
しかし今は「廃県置国」という変な言葉で表されている、そんな言葉が日本国に存在するのかどうかはさておき、東京国は国に変身してからは5つの区に別れている。
東京東区、西区、南区、北区、中央区である。金成の住んでいるところは東区であった。
そして、今回彼が予知能力で察したのは、都市型より少し離れた場所「北区」にある「高尾山」であった。そこで、広告収入稼ぎたいがために、むちゃぶりをかます動画配信者が、この時期初雪の(といってもまだ10月である)登山を「生配信」するという内容であった。しかし、登山禁止が出て、閉口されている立ち入り禁止区域に足を運び、そこで配信している途中で足を滑らしてしまうのだが、それをなんとか金成は防げないかどうかと考えたのだ。
「明日の16時にこの事件が起きるというのか。おそらくこれを配信者本人に言っても、無駄だろう。一番ベストなのは彼が足を滑らせて転落しかけたところ、俺が助けるということぐらいしか、彼女を救う手立てはない」そう金成は確信した。
次の日のことであった。16時頃、高尾山に一人の女性が防寒着に登山用リュック、そしてスキーのスティックみたいなものを左手に持ち、右手にはビデオカメラを回している。おそらく、あれで配信しているのだろう。
金成は先回りした。彼女がどこで転落してしまうのか、事前に場所が分かっていた。
そこで待ち伏せており、(そう表現すると今から別の事件が起きるかのような言い方だが、彼は今から人助けをするのだ)彼女はその場所にやってきた。
予知通り彼女は足を滑らせた。しかし、金成は彼女の腕を間一髪のところで掴んだ。西部劇のようにカッコよく縄紐で縛り付けて上に引き上げたいが、彼にそんな能力は無かった。ベターなやり方ではあるが、彼は腕を掴み、それで引き上げた。
彼女はわんわんと泣きながら金成に抱き着いた。その状況は生配信にもうつっていた。賞賛のコメントが彼に送られる。
「助けてくれてありがとう」彼女は鼻を赤くしながらそう言った。
「礼には及ばない。こういう無茶は二度としないでくれ」彼の説得に応じ、彼女は下山した。一つの未来が、別のニュースへと変貌する瞬間であったのだ。
金成は自宅に戻り、水晶玉に今日の出来事を伝えたのであった。
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