第6幕

 薔薇の花園にて、またしてもミアリス姫は転んでしまった。

 しかも今度は、触手のような薔薇のつるに絡まる形である。

 スカートがはしたなくまくれても、両腕まで薔薇に束縛され、直せない。


(どうしよう、もし今、いつもみたいに変なことされたら……)


 主の恥ずかしい姿に、ロザリアが目を丸くしている。


(て、抵抗出来ないっ!)


 こんな状況、あのロザリアが何もしないわけがない。

 気分はまるで、蜘蛛くもの糸に囚われた蝶。


 ああ、何をされてしまうのだろう。

 動けないのを良いことに、恥ずかしいところにキスをされたり。

 もっときつく、敏感な処に蔓を食い込まされたり。


 いえ、あるいはもっと倒錯的な……。

 蜂蜜やミルクを私の身体にかけて、犬みたいにぺろぺろ舐めるくらい、平気でやるに決まっている!


「だ、だめっ……。心の準備が!」


「困りましたわね。取りあえず、ハサミで切りましょうか。それとも、衛兵の方でもお呼びしたほうが良いのかしら」


 冷静に小首を傾げるロザリアに、ミアリスの方がきょとんとする。


「え、あれ……。触ったりしないの?」


「おっしゃる意味が分かりませんが。では、ハサミを探して来ますね」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 長い沈黙。


「触りなさいよ!」


「ふふ、たまには焦らすのも素敵ですね♪」

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