神谷 宗助
最近、周りの友達が恋愛に絶好調みたいだ。親友の栄一は、連絡まで交換して、毎日一緒に下の兄弟の迎えに行っている。もう一人の親友徹は、何も変わってないが、幼馴染の渡辺さんが徹とデートに行く約束をしたそうだ。ほとんど徹の小説のアイデアを探しに行くだけそうだが。
俺の恋は今といった進展はない。話すことすらできないままだ。でも、俺は彼女の事は諦められない。彼女とは、同じクラスの委員長をしている坂神美玖だ。彼女は大人しくて、優しい人だ。俺はそんな彼女の事が好きになった。告白のタイミングは徹が許可がないとしない。俺は授業中に彼女にどう話しかけたらいいか、ずっと考えていたら
「じゃあ、この証明の問題を、神谷。神谷この問題を解いてくれ」
と急に問題の答えを求められた。俺は慌てて、教科書を見てみたが、さっぱりわからない。俺は素直に
「すいません、話を聞いてませんでした。どこの問題ですか?兼好法師ですか?それとも夏目漱石ですか?」
と先生に尋ねた瞬間。
「神谷、今は数学の時間だ。しっかりしろよ」
とクラスのみんなに笑われた。クラスの奴に笑われるのはいつもの事だから、あまり気にしてない。先生が問題の場所を教えてくれたけど、解らなかった。その時にいつもは親友に助けをもらうのだが、今日は栄一が欠席していた。徹は席が遠すぎて、助けてもらうことが出来ない。だから俺はここも素直にわからないと言おうと思ったとき、隣からコツコツと机を鳴らした音が聞こえた。俺は音の方を向いてみると、彼女がノートを先生に見つからないように渡してくれた。俺は小声で
「ありがとう、助かる」
と言った。俺は彼女のお陰で見ごとにその問題を解くことが出来た。俺は席に戻り彼女にノート返した。その授業が終わった後
「あの時は助かったよ。ありがとうな」
と彼女に改めていった。彼女はいつもみんなに見せている笑顔で
「ううん、別にいいよ。いつも木宮君に助けを求めてるのを知っていたから、たまたま貸しただけだよ」
と優しい声で彼女は言った。本当に優しい人だ。よく周りを見ている。さすが、委員長。俺は彼女の横顔を少し眺めていたら、
「宗助。次、移動授業だから、早く行こうぜ」
と徹が声をかけてきた。俺ははっとした。俺はさっき授業中に考えていた、彼女と話し方を忘れていた。でも、俺は彼女と話すことが出来たから、今は忘れたままでいいと思った。
午後の授業が終わって、今日は部活が休みのため、俺と徹、渡辺さんと帰ることにしている。徹が図書館に用があるそうだから、俺たちは図書館に行った。俺は図書館に入るのは2か月ぶりだった。図書館に入ってみると、そこには彼女がいた。彼女は2学期になって、委員長と図書委員を仮にやっている。図書委員は希望する人がいないから、彼女が代わりにやっている。もちろん希望する人がいたら、彼女は委員長だけになる。俺は徹と渡辺さんが本を探している間に
「委員長さん、こんにちは。お疲れ様です」
となぜか上から言ってしまった。緊張のあまり、敬語にもなった。
「こんにちは。ってさっきまで同じ教室にいたのに挨拶なんておかしいね」
彼女は軽く突っ込みを入れてきた。俺は頭を掻きながら、笑ってごまかした。
「今日は仲良し組で帰るのですのね。仲の良い人がいるっていいですね。羨ましいです」
彼女からは意外な言葉が出てきた。俺はあまりに驚いたため「えっ?」と声に出てしまった。俺は慌ててさっきの言葉を撤回しようと思ったが遅かったため、率直に聞いた。
「何が羨ましいいんだ?」
彼女はさっきまで動かしていた、ペンを止めてた。そしてペンを置いて
「私はこう見えて不器用なんです。みんなは私が何でもできる人だと思い込んで距離を取られてしまってるの。みんなと仲良くしたいのにできない。14年間友達がいませんでした。何をやってもうまくいかない。努力しても友達作りだけは報われなかったんです。だから、神谷君が羨ましいです」
俺は彼女の話を最後まで聞いた。俺は何を言ったらいいか分からなかった。その時、徹たちが本の貸し出しの許可を取りに彼女のところに来た。徹が図書館の出口に向かうときにすれ違ったときに周りに聞こえないように
「宗助の言いたいように言ったらいい」
と言った。俺はとても小さな声だったが一言も聞き逃さなかった。そして、俺は
「悪い徹、先に帰ってくれ。渡辺さんもごめんな。あと、頑張れよ」
とだけ言った。その時に徹が
「変なことを言うな」
「任せておいてよ」
と同時に徹と渡辺さんが言った。そうして、二人は図書館を出て行った。俺は彼女の方に向いて
「さっきの話だけど、話していい?」
「構わないけど、いいの?一緒に帰らなくて」
と彼女は聞いてきたので俺は出口の方を向いて
「いいんだよ。多分徹なら察してくれてるから」
俺は徹の優しさを久しぶりに感じたことに嬉しくなった。これも渡辺さんのお陰だと思った。でも、今は彼女の問題を俺が解決する。
「坂神さんから見たら、俺たちは羨ましい存在かもしれないけど、俺たちは最初から仲が良かったわけじゃないんだよ。俺たちはいろんな辛いこと乗り越えたから、今がある。そして今も俺たちは壁や目標をもって過ごしてる。でも、俺たちも不器用だから、その壁を超える事が今もできていない。だから、俺は今その壁を超える第一歩を踏む。坂神さん俺はあなたの事がずっと前から・・・好きでした」
俺はこの言葉を言うために今まで努力してきた。でもいざとなると、緊張してうまく話せない。でも、彼女の事を助けたい。
「俺はあなたを助けたい、手を貸してあげたい。好きだから。あなたの事が好きだから。だから、まず俺と友達になりませんか?」
俺は告白をしておいて、友達申請をするなんて、自分でも思わなかった。だけど、今は自分が言いたいことを言う。徹が言ってくれたから、不安や恐怖などはない。ただ、俺が言いたいことを今、彼女に伝えた。
「嬉しいです。神谷君からそんな事を言ってくれるなんて。私の事を好きだと思っていてくれてるのが、とっても嬉しいです。だから、私と友達になってください。神谷君を初めての友達になってください」
俺は今、彼女の友達になった。俺が初めての友達の彼女から。嬉しかった。でも、告白の返事も聞きたいという欲もあったけど、今は友達になれたことに喜ぼうと思った。
「そして、私にたくさんの友達が出来たら、また、好きと言ってくれませんか、断る可能性はありますけど、その時はごめんなさい。でも、ありがとう」
彼女から意外な言葉が出てきた。俺にも可能性があるという事に、俺にも彼女の恋人になることが出来るかもしれないと思うと嬉しさが隠さなくなってきそうだった。
「わかった。その時はまた、告白するよ。それまで、もっと俺は坂神さんの事を好きになるよ」
俺はだいぶ恥ずかしいことを言ってしまったがでも、後悔はない。だって俺は彼女の事が
・・・・好きだから。
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