渡辺 美羽Ⅲ

私は徹君と走ったのは何年振りだろう。電車がもうすぐ来るから徹君と急いで走った。私はあまりの嬉しさにずっと笑っていた気がした。今も私は徹君と息を上げながら駅まで走っている。

「今の時間は?」

と徹君が尋ねてきたから、私は手に持っていた、スマホに電源を入れて、時間を確かめた。

「今、16時58分。もうすぐ電車が来る」

「ごめん、俺は全力で走るな」

え、今まで私に合わせて走っていたの?それより、今よりスピード上げるって、どれだけ体力あるの?

「それだけはやめて。私を置いてかないで。それより、徹君って、そんなに足速かったっけ?」

私は体力が無くなりそうになりながら、徹君に尋ねた。

「それなりに、足は速い。50メートルで、6.46秒。100メートルで12.5秒かな。あと。、持久走は10分で一周200メートルのグランドを16周かな」

「宗助君とあまり変わらないじゃん」

「宗助はもっと速いし、体力もある。急げ、もう電車が来ている」

私たちは電車が発車する20秒前に電車に乗ることが出来た。私も徹君も息を上げて、椅子に座った。

「久しぶりに6割以上で走った」

と徹君が喋っていた。私は

「私は全力だよ」

と、まだ息が上がった状態で喋った。徹君の方はもう呼吸が整い始めていた。

「ねえ、今度描く小説はどんなの描くの?」

「今回も恋愛系かな。ただ、いろいろな気持ちの部分に迷っている」

徹君は迷いもなく、答えてくれた。徹君の小説は近くの本屋で全部買っている。徹君は主に恋愛やファンタジー系を描く。今回は恋愛小説。私は楽しみになった。

「何の気持ちに迷ってるの」

私は詳しく知りたかった為、徹君に聞いた。

「誰にも言わないな。約束しろよ。約束破ったら、俺はこの町から出ていくからな」

彼はそう念押しに聞いてきたので、私ははっきりと

「約束するとも」

と言った。徹君は少しの間私をにらんでいた。

「ネタバレになるけどいいか?」

そのことは考えてなかった。ヒロインの事を聞くということは、ストーリーを知ってしまうという事になる。でも、少しでも徹君の役に立つなら、ストーリーくらい知っても構わない。だから私は

「別にいいよ」

私は徹君がカバンからノートを取り出した、そして何かを書き始めた。5分ほどで徹君がシャーペンが動くのをやめた。そして徹君が私にノートを見せてくれた。書いていたのは今回徹君が描く小説の内容だった。

「ヒロインは最終的には主人公と再会して付き合うのだけど、ヒロインの気持ちと主人公の気持ちがいまいち俺が分からなくて、いろいろと矛盾しているところが多くて、特にヒロインの気持がダメなんだ」

なるほど。私はこの物語の大体の流れを知り、徹君が悩んでいる事もわかり、うなずきながら徹君の話を聞いていた。

「主人公の方はまだ、ましなんだけど・・・」

徹君は少し落ち込んでいた。私は少し考えこんだ。何か、いいアイデアはないか、徹君のために必死で考えた結果、

「なら、今度私とデートしよう!」

と言ってみた。徹君の反応はもちろん嫌そうな反応をしていた。

「私とデートに行くことで、主人公の気持ちがわかるし、ヒロインの気持ちは私が教えるから、デートに行こう」

私は具体的に言って、徹君を説得した。

「デートに行く本当の理由は」

「そんなの決まってるでしょう。徹君と出かける・・・あ」

私はつい本音が漏れてしまって、遅いが口を手で押さえた。徹君はため息を一つして

「だと思ったよ。でも、悪いけど、計画は小説どうりになるから。お前が好きに動くことが出来るのは余った時間くらいだが、いいか?それに俺なんかより、宗助と行ったほうがいいのじゃないか?」

私は徹君が言っていることに理解するのに少し時間がかかった。そして理解した後、勢いよく笑ってしまった。

「別に私宗助君の事好きじゃないよ。ほんと鈍感だね。私は徹君がいいの。それに余った時間を満喫するから」

「そうなのか⁉それは知らなかった。そうなんだ・・・・。あ、話は戻すけどデートは今週の土曜日。10時に噴公の時計下集合でいいか?」

私は徹君の誤解が解けて安心して、今週の土曜日に予定がないか確かめた。予定は空いていた。

「空いてるから大丈夫」

「わかった集合場所と時間はさっき言ったとうりで、よろしく」

私は予定表の土曜日に徹君とデートと書き改行して、噴公時計下、10時集合と書いた。ちなみに噴公は、噴水公園の略で、私と徹君が住んでいるあたりはみんな、噴公と言っている。私は土曜日になるのが楽しみになった。

今日は水曜日。早く土曜日にならないかな・・・

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