第45話 グヘヘ、裁縫魔法を覚えた

「スライムさん、スゴイ!これってサクラ姉さんよりきれいに切れてるよ。」


「流石はご主人様ブ。」


「やるね。流石は使徒様、口だけじゃなかったね。」


だろ?


もっと褒めて良いんだぜ。


例えばそこにあるこの世の至宝である胸で抱きしめるとかね。


「ただ使徒様の真似がアタイ達には出来ないのは残念だね。もし出来たらもっと裁縫が上手く出来ると思うんだけどね。」


「そうだよね。あれがあればアタシももう少し裁縫が上手に出来ると思うんだけどね。」


俺は見事に変化(※変態)スキルで裁ちバサミを作り出したのだ。


一時はどうなるかと思ったけどキレイに生地を断ち切れた。


仙よりキレイに切れたことで何とか面目を保てた。


それにしても俺の天使が裁ちバサミをほしいとはこれは何とかしないといけない。


天使の願いは何よりも優先すべきことである。


変化(※変態)スキルで触手の先端に裁ちバサミを作り出す。


この触手との付け根部分を切れ離れせば・・・・。


(チョキン)


「あああぁ!!ご、ご主人様。いきなり何を為さっているんですか!だ、大丈夫ですか!」


お、久しぶりに語尾のブが抜けた言葉を仙の口から聞いたな。


怒ったときだけじゃなく驚いたときにも語尾が無くなるとは新しい発見だ。


「大丈夫だぞ。俺には痛覚がないから全く痛くないしな。」


「ハァ。使徒様、そういう問題じゃないんだけどねぇ。いきなり身体を断ち切ったら誰でも心配するし驚くだろ?」


サクラさんが大きなため息を吐くと俺を残念なものを見るような眼を向けた。


「そうだよ。いくら痛くなくても自分の身体を傷つけたらダメだよ。」


フフ、天使は優しいなぁ。スライム相手に身体を心配してくれるなんて。


なんならその俺を抱きしめてくれても良いんよ。


「それじゃ、コレをあげるよ。」


俺の身体で作られた裁ちバサミをユズに渡した。


俺の魔力が少し減るけど天使の笑顔のためなら安いものだ。


「良いの!?」


「良いよ。良いよ。」


フフ、俺の身体の一部を美少女が使う。


言葉にするとエロいかも。


『旦那は何でもエロにつなげる天才っすね。』


だろ?


『全く褒めたつもりはないんすけど・・・』


分かっとるわ!


皮肉や!


「わぁ~い、ありがとうスライムさん。大事にするね。(チュ)」


な、な、なんじゃ今のは!


て、て、天使が俺にキスをした幻覚が見えたぞ。


『旦那、非常に遺憾ながら現実っす。』


お、俺、明日くらいに死ぬかもしれん。


「え、へっへ~。これはアタシからのお礼だよ。」


天使が頬を赤く染めながら照れている。


スライムって鬼人族との間に子供が作れたりしないかな。


『スライムは分裂して増えるので子供を作ることはできないっすよ。』


うん。


知ってた。


ただ一縷の望みを探してみただけだ。


もしかしたら天使ルートが解放されるかと夢みたけど無理だったなぁ。


ほんの一時の儚い夢だった。


『なに言っているんすか。旦那の本性がバレたら破滅ルート入りっすよ。』


その可能性は否定できないな。


「ご、ご主人様。お願いがあるブ。」


天使の唇の感触を反芻していると仙が声をかけてきた。


「ん?何だ?」


「私もご主人様のハサミがほしいブ。」


「お、アタイもほしいね。」


美女三人が俺の体の一部を使う・・・グフ、グフフフ。


『キモイっす。』


ム、気を引き締めよう。


ヤスに何を言われても流せるけど、美女にキモイって言われたら死ねる。


折角天使の好感度が急上昇したのにそんな事態になったら大変だ。


「え~、ダメだよ。スライムさんの身体が減っちゃうよ。」


天使が俺の身体の心配してくれている。


それだけで俺はガンバレるよ。


「ユズ、心配してくれてありがと。でも魔力を少し消費するだけだから大丈夫だよ。」


チョ、チョイと裁ちバサミを作ってサクラさんと仙に渡す。


「ありがとうございますブ。家宝にしますブ。」


オークにも家宝って概念あったんだな。


ん?仙はアンデットだけど子供つくれるのか?作れないと家宝の意味ないよな?


『アンデットも進化したら可能になったりするっす。』


へぇ、そうなんだ。


「使徒様が生地を裁っているときから思っていたけど、この裁ちバサミってのは鋭い切れ味を持っているね。アタイも大事に使わせてもらうよ。」


ウンウン、どんどん俺の体を使ってください。


グヘヘ。


『旦那につける薬はないっすね。』


当たり前だ俺はいたって正常なんだから薬は必要ないだろ。


「さて二人とも一定以上のレベルに達しているから次に行くよ。練習は個々人で後でやってくれ。」


「「はい(ブ)」」


先ほど裁ち切った生地のパーツをサクラさんはまた空中に放り投げる。


「ハァ!」


掛け声と共に右手と針、糸、生地を魔力で包むと高速で動く腕が生地を縫い上げていく。


どうやら魔力で高速に腕を動かすだけでなく生地や糸をある程度コントロールしているように感じる。


でないともっと早く生地が地面に落ちていないとおかしい。


そうは言っても一分も経たないうちにサクラさんの動きが止まった。


「ハイ、出来た。裁縫はこれで全部だよ。二人ともやってみな。」


これも見て覚えろってことですか。


まぁ、これは空中で生地を裁つほど非常識な現象ではないから大丈夫だろ。


単純に魔力を使って高速で縫い合わせるだけだ。


魔力の扱いにはちょっとした自身がある。


今まで魔力を使ったスキルをいくつも獲得してきたからな。


サクラさんがやったように魔力を生地・糸・針に浸透させる。


手の代わりに複数の触手を生み出した。


生地を空中に放り投げて高速で生地を縫い合わせる。


ここで以外にも前世で経験した家庭科の知識が糸を縫い合わせるのに役立った。




ピロリン スキル裁縫魔法を獲得しました。




おお、スキルを獲得したぞ。


フフ、やはり俺は天才だな。自分の才能が恐ろしい。


「どうやら裁縫魔法を覚えたようだ。」


「さすがご主人様です。」


「なんだって!」


「スライムさん、それってホント!」


なにをそんなに驚いているんだ。


裁縫魔法はサクラさんも持っているって言ってたじゃん。


それを覚えるために教えを受けているのにな。


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